東京公園 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101277417

感想・レビュー・書評

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  • 好きな人の幸せを願うこと。たとえ離れて暮らしていても。そうすることで温かい気持ちになる。

    遠くからそっと見守ることは、その人の幸せを願うことなのかもしれない。たとえ横に並ばなくても。

    映画”Follow me”のオマージュとのこと。映画も観てみたい。

    お姉ちゃんのお母さんに対する思いが興味深かった。お母さんは別の人だしその生き方を認めることはできるが、同じような生き方はしたくないという思い。「お母さんに対する思い」について書かれた本についても読んでみたくなった。

  • 【あらすじ】
    写真家をめざす大学生の圭司は、公園で偶然に出会った男性から、奇妙な依頼を受ける―「妻の百合香を尾行して写真を撮ってほしい」。砧公園、世田谷公園、和田堀公園、井の頭公園…幼い娘を連れて、都内の公園をめぐる百合香を、カメラ越しに見つめる圭司は、いつしか彼女に惹かれていくが。憧れが恋へと成長する直前の、せつなくてもどかしい気持ちを、8つの公園を舞台に描いた、瑞々しい青春小説。

    【感想】
    読み終えてまず、ふたつのことを思った。ひとつは、無性に写真を撮りたくなったということ。それも、人物の写真を。わたしも写真を撮るのは好きだけれど、普段は、空や花、飼っている犬、観光でいった場所くらいしか撮らない。でも、この本を読んで、人物を撮りたいと思った。人の表情や仕草、動きなどを追ってカメラに収めていくのも楽しそうだなと思った。もうひとつは、公園に行ってみたいと思ったということ。東京にはこんなにたくさん有名な公園があるんだなと知った。本を読み進めていくにつれて、それぞれの公園の特徴を知り、その公園に行って公園の様子も知りたいと思ったし、人間観察もしてみたいと思った。そんなことを思わせてくれたのは、この不思議な物語のおかげだ。奇妙な依頼を受けた圭司が、百合香とその娘を、カメラを携えて追い続ける。その姿を見ているこちらがまたハラハラして、でも楽しく読むことができた。

  • こころ温まる。
    カメラを直接会って返してもらうのではなく、郵送で返してもらう。というのがなぜかすごくいいなと思った。
    終わり方もよき。

  • 母のカメラで小さなころから家族写真を撮りつづける主人公がいつものように公園で写真をとっているときに出会う男性の妻を尾行するよう頼まれ、回を重ねるごとにどんどん恋の手前のような感情がお互いに生まれていく話。ちょっとはらはらしますが、とてもすっきりした最後でお話は気に入ってます。もどかしさとかうまく言い表せない感情に引っ張られます。

  • どれもまだ途中なんだよな

  • 大学生の主人公がひょんなことから人妻の浮気調査(?)を頼まれ、東京のいろいろな公園へ写真を撮りに行くおはなし。
    写真を仕事にしていた亡き母、離れて暮らす建築の仕事をする父、その再婚相手の義母と連れ子の義姉。ルームシェアをしている友人。幼馴染で初恋の相手でもある女友達。バイト先のゲイのマスター。それぞれのキャラクターが丁寧に、あくまで主人公との関わりの中で見える範囲で描かれていて生き生きとして感じ、そしてその皆に違った形で愛されている主人公もまた派手ではないけれど好感の持てる作品。
    登場するいくつもの実在する公園は行ったことのある場所もそうでないところもあり、知っていればはっきり思い浮かぶけれど知らないければ情報不足に感じる描写量。タイトルこそ『東京公園』ですが話の中心が必ずしも公園そのものではないので、しつこく描写すると冗長になるのかもしれないし、そのあたりのバランスは難しい。
    また登場人物が映画(のDVD)を観るシーンが多々あり、その内容がおそらく本作の内容ともリンクしているのだと思いますが、私は映画に詳しくないので、知っていればもっと楽しめたのだと思います。そう考えると登場人物は(私から見て)みんな多趣味で知識が広い。若くてもそれが不自然には感じません。主人公は写真が好きで仕事にしたい、友人たちも少し変わり者だけれど視野が広く常識にとらわれない性格で、口だけじゃなくやりたいことのために努力して、偏らない経験や知識を得ようという姿勢だからだと思います。キャラクターたちのひとつひとつの行動が矛盾せず、ちゃんと人生の積み重ねの上で存在している感じが素敵。
    マスターが先立たれた妻の命日にビルの屋上へ友人や常連客を呼んで星空観賞をするシーンがとても好きです。

  • いいなぁ、こうやってわたしも東京中の公園をこどもとお散歩したいよ!いいなぁ、いいなぁ!
    いい本だった。求めていたのは、これです、これ。
    メヒコで読み始めて、コスタリカのトランスファー待ちで読み終わる

  • よく足を運ぶ公園が舞台となっていたので、つい書店で手を伸ばしました。公園で繰り広げられる様々な人間関係を真正面で受け止め、”人が何にむかって生きていくか、何を大切にするのか”をゆっくりと見つめていく主人公に入り込んでしまった。シンプルな文章で、どことなく淡い色の描写が印象的でした。
    出てくる公園に行ってのんびり読み直したいです。

  • まるで体温と同じ温度の水のように
    するりと入ってきて染みてくるようだ。

    恋愛物の青春小説だが、ちっとも嫌みなところがない。
    ふんわりと温かみがあって、素直に読める。
    田舎から上京してきた人間にとって
    東京タワーと一二を争うお話ではないかと
    個人的には思う。
    筆者も主人公も同じ北海道出身なこともあり
    東京に住んでいて感じることについて同感できることが多い。
    よくあるような感じで都会である東京をけなすわけではなく
    淡々と、本当に実際にあちこちの公園へ行って
    「こんなものがあるんだ」というような
    素直で素朴な感動があった。


    たとえば
    東京に出てきて何年たっても、雪のない冬にはどこか違和感がある。
    多分、この感覚は一生消えないのだろう。

    二人で暮らしていてどちらかがいない夜
    気が抜けたような淋しく軽くなったような感じになるのも
    とてもよくわかる表現。
    同じ経験がある者は、思わず頷いてしまうのではないだろうか。

    北海道に飛行機で帰ろうとすると、乗っているのは一時間なのに
    都会の混雑の中空港に向かうのも
    田舎の外れにある空港から市内へ向かうのも随分時間がかかって
    途中でのんびりご飯でも食べようものなら
    結局半日近く潰れてしまったりする。
    単純に距離があるだけでなく、海を越えるというのはまた違っていると思う。

    そして東京に帰り着くと東京の気配
    社会人としての空気を纏うという表現もよくわかる。


    富永の、女を捨てたいという話は中々よくわかるものがあった。
    彼女のキャラクター自体はちょっとでしゃばりというか変わっているかなとは思うが
    憎めなくて、物語上のエッセンスになっていると思う。


    義理の姉と圭司が一緒に実家に帰るシーンは印象深い。
    この人とこんなことをしていて不思議で
    この町に住んでいた頃は子供でそんなこと考えられなかったのに
    今はそれなりに大人になって、タクシーをひろえてしまう。
    何年も離れていても普通にリモコンでテレビをつけたり、覚えているものだ。
    その流れから、そうして大人になり
    父の恋愛話を聞き
    姉に母の話を聞き
    更に自分の話をするという流れは秀逸だと思う。

    咲実の
    認めることはできても、同じような生き方はしたくなかった
    という親に対する思いは非常に共感。
    子供としてありがたくは思ってもその生き方は認められない。
    親のような人生は送たくない。
    親を尊敬するとか好きであるとか、そういったこととはまた別の問題である。
    子供だとは言え、親とはまた別のひとりの人間なのだから。

    日常と違う物が組み込まれて日常の幅が広がって行く
    という表現が好きだった。
    おとなになるというのはそういうことなのだ。

    真山の言う、
    同じ方向、光差す方向
    という表現も好き。
    絶対別れないんじゃなく、そうなっても後悔しないということ。
    自分の為に生きることも、誰かの為に生きることも
    両立できる。矛盾するものではなく
    一緒に生きていくっていうこと。
    それぞれ別の場所で暮らしても。
    みんなが幸せな方向へ。
    その答えに圭司が辿り着くところには思わず笑顔になる。


    自分も写真が好きなので、写真にはそのときの空気感
    被写体の感情やそういったものが写ると思うし
    被写体とカメラマンにはある種のとても濃密なものが
    通い合うと思う。
    このあたりの記述はとても同意。
    自分の思っていることがそのまま書かれているような感覚だった。


    ラストに富永の提案した本はとても魅力的だ。
    とても見たいと思った。

  • 東京バンドワゴンではまった小路さん。

    東京の公園がいっぱい出てきます。
    東京の公園ってきれいに整備されてるから心地いい。

    カメラマン志望の大学生の主人公が、ひょんなことからある男に妻を尾行して欲しいと頼まれる。
    その妻というのが何故か、赤ちゃんを連れて公園に行きまくる。
    話の展開がなかなか読めず、単なる若者のモラトリアム系じゃなくて面白かった。

    変わった人物が結構出てくるけど、中でも富永って女の子が特に謎。
    彼女のスピンオフのお話があってら面白いと思う。

著者プロフィール

1961年、北海道生まれ。広告制作会社勤務などを経て、2002年に『空を見上げる古い歌を口ずさむ pulp-town fiction』で、第29回メフィスト賞を受賞して翌年デビュー。温かい筆致と優しい目線で描かれた作品は、ミステリから青春小説、家族小説など多岐にわたる。2013年、代表作である「東京バンドワゴン」シリーズがテレビドラマ化される。おもな著書に、「マイ・ディア・ポリスマン」「花咲小路」「駐在日記」「御挨拶」「国道食堂」「蘆野原偲郷」「すべての神様の十月」シリーズ、『明日は結婚式』(祥伝社)、『素晴らしき国 Great Place』(角川春樹事務所)、『東京カウガール』『ロング・ロング・ホリディ』(以上、PHP文芸文庫)などがある。

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