近大マグロの奇跡: 完全養殖成功への32年 (新潮文庫)

  • 95人登録
  • 3.93評価
    • (9)
    • (20)
    • (10)
    • (1)
    • (0)
  • 16レビュー
著者 : 林宏樹
  • 新潮社 (2013年11月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101279619

近大マグロの奇跡: 完全養殖成功への32年 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 32年かけてマグロの完全養殖を成功させた、近大「魚飼い」研究者の執念に脱帽。
    銀座にある近大マグロの店に行ってみたいなぁ。

  • ここ何年か、目にする機会も増え、気になっていたワード「近大マグロ」
    世界初の養殖に成功した魚である事や、そこに至るまでの32年間の苦労、そして「魚飼い」達の情熱など、初めて知った事や驚きが沢山ありました。
    著書は少し古い(2008年出版)ですが、その後近大は豊田通商と提携し、本格的に近大マグロの販売を始めるなど着実に拡大の道を歩んでいます。
    今後も一マグロファンとして、近大マグロの動向に注目したいと思います。

  • 「近大マグロ」につきましては、その完全養殖成功の一報以来、テレビなどでも喧伝されてゐましたので、広く人口に膾炙するところとなりました。まあもつとも、わたくしなんぞの認識では、「いやあ、てえしたもんだ」レベルで終つてゐましたが。
    そこで、この一大プロジェクトの成功に至るまでを俯瞰してみませうと、本書を手に取りました。
    まづ基礎知識として、マグロの定義やクロマグロを取り巻く現状などをレクチュアしてくれます。乱獲により天然ものはその漁獲量が激減し、絶滅さへ心配される状況、勢ひ価格はうなぎ登り、最大の消費国である日本としては手を拱いてゐる訳には参りません。

    欧州では、稚魚を捕まへてから成魚に育てる「蓄養」と呼ばれる方法が主流らしい。しかしこれでは結局自然財産を喰ひつぶすことに変りはありません。どうしても「完全養殖」のサイクルを確立させる必要がありました。むろん、簡単なことではありません。何しろ、クロマグロの生態はまだほとんど知られてゐなくて、魚のプロほど「養殖なんで絶対無理」といふ意見でした。
    その難関に敢へて挑戦したのが、近畿大学水産研究所であります。

    1970(昭和45)年、水産庁が指定した養殖実験事業で、サケ、タラバガニとともにマグロが選定されました。期間は三年。前述の如く、未知の分野でありますので、当初は失敗の連続でした。まづ幼魚の「ヨコワ」を活け捕りせねばならぬのですが、このヨコワ、触つただけでも死んでしまふほどのデリケートなもの。結局最初の三年間では、捕まへたヨコワは全滅してしまひます。ここで水産庁の予算も打ち切り。
    しかし当時指揮を執つてゐた原田輝雄氏は諦めませんでした。熊井英水氏をはじめとするメムバアたちもリーダーの心意気に応へます。近大では、養殖ハマチやタイを販売し、それを研究資金に回せるといふ利点があつたのです。

    それでも産卵が11年も無い時期が続き、リーダーにも迷ひが生じます。この間に原田氏は他界し、熊井氏が指揮官を引き継いでゐたのですが、この熊井氏、近大の二代目総長・世耕正隆氏に相談しました。資金を費やすのみで、全く成果が挙がらぬ研究を続けて良いものか......
    「もうやめろ」との指示も覚悟したところ、世耕氏は「生きものというのは、そういうものですよ。長い目でやってください」と励ましたといふのです。平凡な総長だつたら、ここで研究は終つてゐたかもしれません。やはり偉業の陰にはかういふ人物の存在がゐるものです。

    待ちに待つた「完全養殖」が達成されたのは、2002(平成14)年のこと。研究開始から、何と32年の歳月が経過してゐました。
    初代総長・世耕弘一氏の「不可能を可能にするのが研究だろ」といふ言葉を現実にした訳であります。
    その後は養殖クロマグロも次第に安定供給が出来るやうになり、現在では大阪と東京で、近大マグロを食べさせる店を開店してゐるほどであります。熊井氏によると、最終目標は「現在天然界から獲っている年間三〇万尾のヨコワを、すべて完全養殖の稚魚で賄えるようになることと、天然の海洋資源を回復させること」だとか。

    熊井氏は成功の要因として、忍耐・観察眼そして愛情を挙げてゐます。諦めずに、正確な観察を続け、研究対象や仲間を大きな愛で包む。分野は違へど、全ての研究者に当てはまる要素でせう。否、学究の徒に限りません。ビジネスの場でも同様ではないでせうか。
    原田氏・熊井氏をはじめとするリーダー、精神的支柱である二代に亘る総長の存在、私学であることの強み、「魚飼」のプライドを持つたスタッフたち......いづれの要素が欠けても成功は難しかつたでせう。このプロジェクトに関つた人人すべてに、拍手を送りたい気持ちであります。

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-624.html

  • 立派な先生のもとで頑張った方が良いね。

  • 興味深い話題だったんだけど・・・

  • 20140815読了。完全養殖に成功した近大マグロの話。
    クロマグロの完全養殖に挑戦した研究者の32年間。ドラマチックに描かれているわけではない。しかし完全養殖にたどり着くまでの失敗、迷い、試行錯誤や成功が淡々と綴られている部分に、研究者たちの情熱がより強く感じられる。愚直に研究に対して真摯に取り組んできた結果、そしてまだ研究半ばで今後も引き継がれていくことにすごさを感じた。
    バブルの時代前後から日本人がトロ信仰にはまってしまいマグロを消費。今では世界で獲れるクロマグロの8割を日本で消費している現実。中国などで人気が高まるにつれて価格も高騰。完全養殖はそんなクロマグロを今までと同じ価格で口にするための一つの解決策でもある。
    味が天然物に遜色なく、安全性も天然物よりも高い。安定供給できるようになれば言うことなし。

  • 近畿大学がマグロの完全養殖に成功するまでを書いたものです。32年ものあいだ、あきらめずに辛抱強く待ちつづけたことが今日の成功につながっている、あきらめない大切さを教えてもらった…そういった感想を持つと同時に、信じて待つということが、どれほど難しいかも感じました。

  • 世界で初めて完全養殖に成功した近大マグロについての、ガイアの夜明けやカンブリア宮殿的内容。

    熊井さんを中心とした近畿大学水産研究所の物語としても面白かった。

    読み終わった後はとにかく近大マグロが食べたくなる。
    巻末の解説にもあるように、近大マグロの拝啓にある物語と一緒にね。

  • 本当は、★3.5。

    昨年、近大水産研究所が大阪・梅田と東京・銀座に
    開業したのは、記憶に新しいですね。
    行ってみたいと思っているんですが、まだ果たせず。

    クロマグロの完全養殖を
    世界ではじめて成し遂げたのが、
    近畿大学という私学であったのは、
    非常に興味深いものがあります。
    私学だから、逆に、30数年も継続できた
    と言うことでも有るようです。

  • マグロの養殖と言えば、成魚を捕まえてきて生簀で育てる「蓄養」の事だと思っていたが、卵から育てる完全養殖が成功していたとは、恥ずかしながら本書で初めて知った。

    作品としてはテンポ良くとても読みやすいのだが、途中11年間もマグロが卵を産まない時期等もあり、挑戦開始から完全養殖の成功に至るまで、32年間もの歳月を費やしたそうだ。養殖した鯛を売って研究費を稼ぐなど、不可能を可能にした近大の「実学教育」には頭の下がる思いである。

    東京と大阪に近大マグロの直営店があるそうなので、出張の折にでもチャンスがあればぜひ行ってみたい。

  •  店の存在を知った直後に本書の存在を知り、即読み。32年の時間を凝縮した1冊。
     魚には興味なかったが(マグロもそれほど好きでなく・・・)始めての成書は今後類書を読むきっかけにもなった。その点でも読んでよかった。具体的にどこがどう沁みたか、というと漠然としてしまうのだが、トータルとして沁みている。最後の解説もしぶく面白かった。
     未だ食したことがないので是非とも経験したい。中々食べられないらしいが。

  • 副題にある通り近畿大学の水産研究所がクロマグロの完全養殖に成功するまでの32年間がコンパクトにまとまっている。だが本当に32年間の概観になってしまっていて、いまいちドラマ性に欠ける感があるので★1つマイナス。

    グランフロントの水産研究所は梅田に行くついでがある度に足を伸ばして見るけれど、まだ入ったことはない…。

  • 産卵のなかった11年間にくじけずに、32年かけてクロマグロの完全養殖を成し遂げた研究者にはただただ感動である。
    あきらめずに一生懸命やる。当たり前のようでいてなかなか続けられないこと。「不可能を可能にするのが研究だろ」という一言が重い。研究いいなあ。

  • 32年の年月を経て達成された、世界初のマグロの完全養殖。
    この快挙に世界は驚いた。

    漁獲量は激減し、生態も不明なクロマグロ。
    他の魚と違い、大型で繊細な鱗を持ち、常に泳ぎ続けていなければならないマグロは、絶対に養殖不可能と言われてきた。

    なぜ近畿大学はこの難事業に取り組んだのか。
    この本には、その事業に取り組んだ男達の熱い思いと、数多くの困難を乗り越えた苦闘の歴史が記されている。

    世界的にマグロの需要が増え、漁業規制が敷かれるのを見越して、早くも昭和45年にこの研究がスタート、との記述のまず驚く。
    稚魚を海から取ってきても多くが死んでしまう。
    大きく育ってもなかなか産卵せず、その期間は10年近くにも及んだ。

    その間このプロジェクトが打ち切られなかったのは、他の種類の養殖魚を売って資金を稼いだからだ、と書いてあるが、研究者という側面だけでなく商売にも精通していたのが成功の要因だったのが分かる。

    そしてようやく産卵した卵から稚魚が孵化する。
    しかしそれが成長しまた産卵するに至るまで、さらに多くの困難が襲いかかる・・・・

    リスクを恐れず忍耐強く努力し続けたその姿勢に驚くとともに、その諦めない姿勢に深く感動した。
    バブル崩壊後、リスクを回避し挑戦を避けた多くの企業はこの姿勢を見習うべきだろう。

    中国や欧米が魚や寿司の美味しさに目覚め、競ってマグロなどを獲り合う今、将来安定的に海で魚を獲り続けるのは難しいだろうと思われる。

    本書では陸上での最新技術を使った巨大な設備で、光や温度をコントロールしたマグロの養殖の様子を紹介している。
    地球の人口が増え続ける今、この技術を使った産業化が一刻も早く望まれる。

    将来、魚は海で獲るものでなく、陸上の設備で生産される工業製品となるだろう。
    そう予感させる本である。

  • 最近分厚い本ばかりだったので、久しぶりに薄い新書を読んでみました。
    近畿大学がクロマグロの完全養殖に成功したお話です。
    グランフロントに近畿大学が養殖したマグロを出しているお店があるようなのでそのうち行ってみたいと思います。

  • 最近(2013年12月)、銀座に「近畿大学水産研究所」というマグロを食べさせる店がオープンしたというニュースが。完全養殖したマグロを食べさせる店として話題に。この本は、そこに至るまでの32年、どのような思考錯誤が繰り返されてきたか、研究者達の人間性にも触れながら説く。銀座に食べに行ってみようと思う。

全16件中 1 - 16件を表示

近大マグロの奇跡: 完全養殖成功への32年 (新潮文庫)を本棚に「いま読んでる」で登録しているひと

近大マグロの奇跡: 完全養殖成功への32年 (新潮文庫)を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

近大マグロの奇跡: 完全養殖成功への32年 (新潮文庫)を本棚に「積読」で登録しているひと

近大マグロの奇跡: 完全養殖成功への32年 (新潮文庫)の作品紹介

「海のダイヤ」クロマグロが世界的乱獲で絶滅の危機にさらされるなか、2002年に近畿大学水産研究所が発表した、「クロマグロ完全養殖成功」の報は世界を驚かせた。長く不可能といわれた、マグロの生命サイクルの全てを人工的に管理する技術を確立するまでの、熊井英水所長(当時)率いる研究チームの苦闘の日々に迫る。「世界初! マグロ完全養殖 波乱に富んだ32年の軌跡」改題。

ツイートする