墨攻 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 147
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  • Amazon.co.jp ・本 (170ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101281124

作品紹介・あらすじ

戦国時代の中国、特異な非攻の哲学を説き、まさに侵略されんとする国々を救援、その城を難攻不落と化す謎の墨子教団。その教団の俊英、革離が小国・梁の防衛に派遣された。迫り来る敵・趙の軍勢は2万。梁の手勢は数千しかなく、城主は色欲に耽り、守備は杜撰であった。果たして革離はたった一人で城を守り通せるのか-史実を踏まえながら奔放な想像力で描く中島敦記念賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 中国を舞台にした小説は、ほとんど読んだ記憶がありません。古本屋で見つけて、ちょうど時間潰しに良さそうな厚さの文庫本でしたので、全く期待しないで読みましたが、面白かったです。英雄的な主人公の戦略に魅せられます。墨子の思想というものを少し掘り下げて知りたくなりました。

  • たしか、漫画に掲載されたものを見て、文庫を手に取る。春秋戦国の世に、このような技術集団が本当にいたのだろうか、始皇帝の焚書坑儒が惜しまれる

  • 最高に面白い

  • 同映画の予告から気になって購入。
    墨子家の思想、軍略が分かりやすく纏められている。
    短いながら濃い内容で、個人的に手元に置いて読み返したい良作。
    結局映画も観たけど、ラストに納得がいかず本の方が好き。

  • 酒見賢一さんの墨攻。

    どこで見聞きし興味を持ち読んでみたいと思ったのか忘れたが古本屋で発見し購入した。
    すごく薄い文庫本で表紙もなんかユルいので不安はあったが気になったら読まずにはいられず読んでみたのですが、凄く面白かった。

    前もって知っておく必要のある事もなくシンプルに楽しめます。

    強いて言えば、戦国期などの攻城戦や籠城戦に興味があれば楽しめると思います。

    本当にこんな事が出来る人達、思想を持った人達がかなり昔に存在したのかと疑いたくなるほどよく出来ていて爽快でした。

    2022/7

  • 中国の秦の時代の前の戦国時代を舞台にした小説である。墨守と言う言葉の元になった墨子という人物または集団があったそうで、詳しく知られていない彼らを物語の主人公においたものである。守りの傭兵という設定で、地方の小城に依頼されて大軍に対する、という内容である。戦闘場面が多いものの、一気に読ませる筆力がある。中島敦記念賞受賞作品だそうだが、確かに大作ではないが、独特で実力のある一級品という感じは中島敦の作品に似ているようにも思う。

  • 「任侠」に重きをおく墨子は、非攻を掲げながら、一方では戦争のプロ集団を組織する一見矛盾したような思想家です。墨子の教えを代々守って、この教団は細々と続いてきたのですが、大国秦の台頭とともに消失しまったそうです。この小説はその不思議な教団の職業軍人、革離が主人公。戦闘のプロが徹底した守城戦をくりひろげます。

    延々守城戦の話ですが、革離の指揮の見事さにあっという間にページ数が残り少なくなり、勢いで読める本です。非戦・非攻を唱える集団が、ここまで見事な守城戦を繰り広げるとは・・・。緻密に研究、練り上げられた作戦と兵器。革離の肝の据わりっぷり。すごいです。集団をまとめあげるのもまた驚き。恐怖と規律で民衆の心をつかみ、造反者を出しません。兵器がどれだけ優れていても、扱う人の心が一番重要なんだもんね。ああ難しきは人心掌握かな。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「一見矛盾したような」
      人間の存在自体矛盾していますが、、、
      此れを読む前に、知人から絶対好きになるからと、コミックを薦められて読みました(...
      「一見矛盾したような」
      人間の存在自体矛盾していますが、、、
      此れを読む前に、知人から絶対好きになるからと、コミックを薦められて読みました(原作と異なる部分については書きません)、それに感動したので原作を読んだら、結構淡々としているなぁと思いました。いつかはDVD借りて映画も観たいです。
      2012/11/02
    • moji茶さん
      >nyancomaruさん
      映画のCMはとても格好良かったですね。コミックは、絵柄が好みじゃなくて手をだしませんでした(笑)。私も映画は観て...
      >nyancomaruさん
      映画のCMはとても格好良かったですね。コミックは、絵柄が好みじゃなくて手をだしませんでした(笑)。私も映画は観てないのですが、主人公役がイケメンだったので今でも気になってます。
      2012/11/03
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「映画のCMはとても格好良かった」
      そうなんだ、と言う訳でYouTubeで見ました。
      なかなか派手っぽい!これなら面白そうです。
      「映画のCMはとても格好良かった」
      そうなんだ、と言う訳でYouTubeで見ました。
      なかなか派手っぽい!これなら面白そうです。
      2012/11/09
  • 酒見さんの作品で一番読みやすい。ので是非。

  • ストイックすぎるお話し

  • 面白かったです。 スラスラ読めます(読了タイム2時間くらいだったか)。作者の文体は良いからでしょうね。
    話も良く出来ていて、これを映像化したいと思いながら読んでました。映画になるのも分かる

  • 墨子の弟子、革離一人で城郭を守る。裏切りで横死する点が、漫画と違う。マンガはその後まで続いていく。墨子軍団の思想を抑え、息詰まる文章力である。

  • 中国戦国時代に兼愛(博愛)・非戦などの思想を説いた墨子が築いた墨家集団という集団があった。
    三代目の指導者・田襄子ともなると当初の思想が徐々に変化し権力と結びつく事を模索していた。
    そんな中、、趙の大軍に攻め込まれようとしている小国の城主からの援軍の依頼が入るが、指導者は動こうとしない。
    墨子本来の非戦思想を貫こうとする主人公・革離は指導者の命に背いて単身小城を守りに入る。
    非戦と言っても戦わないのではなく卓越した軍事技術で攻撃を撃退し城を守り抜く事が目的。
    墨家の協力が得られないまま、革離はたった一人で村人をまとめあげ、百戦錬磨の将軍率いる趙軍を相手に獅子奮迅の働きで徹底的に城を守る。
    小説と言うより短編と言う感じの150頁程のお話。
    大変面白かったです。
    このお話自体はもちろんフィクションですが、実在した墨家集団はどういう組織だったのか大変興味深い。
    墨子の書物は一部が散逸してしまっているとの事ですが、現存する資料の分析も未だ十分では無いとの事です。

  • 守るに徹する戦い…
    こんな戦い方もあるんだ!というのと、やはり戦は残酷だな…というのと…

    スピード感あって、あっという間に読めました。

  • 墨子教団については色々不明な点が多いらしいが、強きを挫き弱きを助ける「任(任侠)」を尊ぶ思想らしく、開祖・墨子の平等性を重んじる次の言葉が象徴的に引用されている。
    「一人の人間を殺せばこれは不義であり、必ず一死罪にあたる。(中略)しかし、それがこと戦争となるとそうではない。他国を攻めて大いに人を殺しても、不義であると言わないばかりか、かえってこれを賞賛して義であるとする。(実に不合理で不可解なことである)」
    まるで子供の疑問のようだけどまったく正当な話で、墨子の頃から2千年の間、ほとんどの人間が蓋をして避けてきた素朴で重大な疑問に対し、はっきり立場を示している言葉で、しかも教団まで作り守りの戦を研究・実践していたことをはじめて知り、熱い気持ちになった。

    史実的な話が序盤に少しあり、その後は墨者の革離という人の田舎の城郭を守るための奮闘が描かれる。

    上層部の指示を突っぱねてまで、覚悟をもって臨んだはよいが、守るべき城の城主親子はバカだし、やるべきことは山ほどあるし、規律を守るため、結果的に守るべき農民達を非情に処罰もしなきゃいけないしで、革離には同情しっぱなし。自分ならすぐ辞めている。

    革離はなんのために一生懸命になっていたかというと、墨者としての誇り、尊敬する先達や自分のこれまでを肯定するための戦いだったのだろうけど、剛直さと余裕のなさが仇となり小さなところで歪みと無理が生じ、志半ばで倒れてしまう。
    最後の際で、兵法について一つ学んだことでニヤリと笑い死んでいくのは、あとがきで作者が書いている「職人のプライド」であり、墨者としての使命に殉じた的な描写なんだろうけど、これ系の心理はいまいちぐっとこない。

    これまで、三国志や古代中国もののマンガ等でたびたび読んできたが、城郭攻めは面白い。
    本書でも圧倒的な物量かつあの手この手で攻める敵を、近代的な知恵と技術で対抗する様子は単純に楽しい。

    戦闘準備からラストまでは革離の忙しさの高まりとともに怒涛の展開だが、革離は常に冷静だし文体もたんたんとしていて、時折入る南伸坊氏のイラストに和まされ、ドライブ感はあってもこちらも冷静に読める。

    墨子教団の思想と実践についてはものすごく興味が湧いた。

  • たまたま書店で見つけて購入。茶化した感じの軽いノリの小説かと、言わば“半信半疑”で読み始めた。しかし、良い意味で予想を大きく裏切り、大変よくできており面白くてならなかった。お勧めの1冊。

  • 発想がいい。思想家集団の中の、戦闘特化のスペシャリストという設定だけでもう面白い。

  • 自分としてはハマれず。後宮小説の方が好きだったかな
    世間的には高評価な様子でしたね

  • 戦国時代の墨家を現代からの解釈で描いた作品
    ひととき隆盛しながらなぜ突然断絶したのか
    教理と実践が結びついていないのになぜ一定の支持を集めたのかといった
    魅力的な謎が描かれる
    当時の諸子百家にあって
    そもそも現在との前提の違いがその鍵でありミステリであり歴史ファンタジー
    前半導入は良いけど
    後半冗長過ぎかも
    あとがきも相俟って

  • 再読。

    何度読んでも面白い。
    興味深い描写がてんこ盛り。
    職人気質な主人公や属する集団が魅力的。
    墨子対孫氏なんて物語を読んでみたいし他の墨子たちの物語も読んでみたい。

    これから何度も読み返したくなるほど毎回満足。

  • 中島敦記念賞受賞。

  • 支那の凄まじい“胃袋”を以てなほこの辺はアレなんぢゃねえかと思はれる異常な思想集団、墨子。
     それの技術や思想は、一応五斗米道とかで一応残ったが、「戒厳令下の平和主義」といふ異常な思想は粉砕され、子墨子さんが辛うじて仙人になってその名が残る。
     でその、ヴォランティアの傭兵がその思想をgdgdにする頃、革離といふ普通の墨者が、さういふわけで一人で、そのイデオロギーがそれこそ「作者の想像を絶する」関係で技術者として、どうでもいい城塞都市を当時としては最強最高の要塞へリフォームし、普通の軍隊をぼっこぼこにするが。
     冒頭はお約束で公輸般と子墨子のSLG対決。てふか墨子伝承と言ふとこれくらゐしか無い。でこれがきちんと消化されてゐる。

  • 面白いという意味では合格。でも、何か足りない、そんな感じのする小説です。
    わずか145ページ。並みの本の1/3の中篇というべきサイズ。あとがきと解説が25ページついても、薄っぺらです。一日で読了しました。
    話の殆どが戦闘シーン、それに墨子についての解説が少しついている。ただ、墨子の作戦の面白さだけで読ませている感じです。
    酒見さんは初めて。面白かったけど次に進むかと問われると疑問符がついてしまいます。

  • 戦国時代、兼愛・非攻を説くのに最強戦闘集団…という謎の思想家・墨子の籠城戦術をもとにした、架空の物語。虚実織り交ぜているからか、史実のような小説展開になってる!なるほどー!随所にある割注みたいな説明文が、歴史書っぽさを出してるのかなあ。

  • 大国が覇を競う古代の中国。平和を説き、戦争で助けを求められればあらゆる手段で依頼者を守るスペシャリストの集団、墨子教団がいた。いま小城が呑まれようとするなか、教団の俊英・革離はひとり救援に駆けつける。二万の軍勢に囲まれた町を彼は守り通せるか?映画化もされた中島敦記念賞受賞の傑作小説!

  • 墨守という言葉から転じて墨攻とは…なんともワクワクする題名である。

    著者も語っているように墨家はまだまだ謎の多い思想家集団であるが、兼愛思想と非攻説を解いたことは後の世にも伝わっている。

    しかし墨守するからには戦わなければならず、様様な戦闘能力を身につけた機械や戦術を編み出さなければならない。結局は非攻と言いつつも戦いを前提にした墨守にしかなりえないのである。

    これは今の世への大いなる矛盾も示唆しているように感じた。

  • すごく面白そうな集団なのに、資料があんまり残っていないのが残念。

  • 興味深くて面白い本だったけど、物語としては今一つ。

  • フィリピン出張で読んだ三冊目の小説が酒見賢一氏の作品『墨攻』だ。諸子百家が活躍したと言われる中国古代戦国時代を舞台にした小説で、諸子百家のなかですでに忘れ去れて歴史書にも多くは語られていない墨子が起こした教団の構成員が優秀であるが故に教えを純粋に信じて実行に映した故に出会う事になる主人公の悲劇が描かれている。
    墨子の教えは民を不幸にする戦を出来るだけ排除するというもので、しかたなく戦いをする際はあくまでも守りに徹するというもので政治色もすくなくかなりユニークな教えとして描かれている。わずかな情報の中から作者が作り出したものだが、この物語で描かれた墨子教団の様子通じで伝わってくる教えは本当にこの教団は存在したのではと思わせる位リアリティがあり魅力ももっている。ただこのお話で描かれているのは彼が教団で自らを鍛える事で得た技術を持ってして活躍する日のあたる部分が派手に描かれながらも、あまりに純粋に信じた事を多くの人と行動を起こそうとするときに人との関わりの中で全くの遊びのなさというかフレキシブルな付き合いが出来無いが為に物事の達成の前に内側から崩れてしまう悲劇に見舞われてしまうというちょっとこそばゆくなる教訓ののようなものだ。

  • 墨子は何処に。

  • 墨攻すごい!
    というか主人公である墨者の革離がすごい!
    この薄い本にものすごい人間ドラマがてんこ盛りな感じ。
    男も女も老いも若きもみんな守る為だけに、みんな戦う。
    謎は多いけれど、敵の将である淹中が最後に墨者用の葬りかたを知ってるのが
    またなんとも。
    賎民であるのかよく分からないミステリアスな墨者だけれど
    そんなことはいいのです。
    超人離れした戦わずして守る創意工夫みたいなのも
    またなんとも。
    なかなか普段読まない中国ものの小説だけども、これを機にもう少し掘り下げようかなーと思う。

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