- Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101283777
感想・レビュー・書評
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敢えて言おう、長崎原爆投下もしくは2発目の原爆の被害は防げた、と秀逸なノンフィクションである本作は語ってくれる。
情報を活用する方法や判断を間違えた。当時の大平洋戦争末期の日本と、そして、2011年の福島原発危機の日本においても。
未だ組織の空気を読めと言われがちな日本において、この作品の功績は計り知れない。
被爆者達の悲惨極まりない災難だけを追うのではなく、本当の犯人を執拗に追求する姿勢は、真のジャーナリズムだと思う。
そして、元外交官であり、加害者たる官僚の後輩たる佐藤優の解説も見逃せない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
衝撃なのは、陸海軍の諜報機関によって、特種任務を帯びた米軍部隊の存在はある程度察知されており、それが原爆に関するものだという予測は必ずしも不可能ではなかったと述べるところで、その結論が丹念な取材を根拠にして説得力を持って迫ってくる。特に長崎攻撃については、米軍パイロットが日本軍の迎撃を予想して不安に駆られたという証言からも窺えるように、軍が広島の前例を踏まえた対策を取り得た可能性を考えると、2度目の原爆投下を許した無策さに改めて気付かされるものがあった。情報を活かすも殺すもそれを扱う人次第というテーマが、先年の大震災時の対応とリンクして読者に突き付けられており、戦時の出来事に留まらない内容を含んでいる。本書のもう一つの意義は、原爆投下を知る様々な立場にあった人たちの肉声を遺した事で、最後の"機会"をとらえた貴重な史料ともなっている。
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原子爆弾の投下情報を日本軍はキャッチできていなかったのか・・・
こんな問いから取材を始めてゆくと、ある答えに辿り着いて・・・
ひとりの日本人として、その結論はあまりにも切ない。