- Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101283784
作品紹介・あらすじ
太平洋戦争中、敵前逃亡罪などを犯した兵士を裁くため設けられた「軍法会議」。戦争末期、ここで多くの日本兵が銃殺刑に処されたが、中には「不当に」死刑判決を受けたケースも含まれていた。裁判記録が焼却されて実態は謎のままだったが、元「法務官」が残した証言テープ、未公開資料、遺族・軍関係者への徹底取材から、タブーとされてきた旧軍の闇の部分が明らかになる。
感想・レビュー・書評
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軍法務官:馬場東作
戦争への強い嫌悪感を持ち、軍の暴走防ぐことを自らの責務と自負し、海軍法務官となった秀才。
しかし、戦争末期のフィリピンの戦場において、軍規維持を最優先とする軍の圧力に屈し、法の正義を守ることができなくなり、日本人軍人の処刑、フィリピン人の虐殺など大量の不当な処刑に自ら加担していくことになる。
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複数の元法務官が戦争被害を受けた一般市民による損害請求を国が退ける根拠になってきた受忍論の形成に関わっていた。
「戦争犠牲、戦争被害は国の非常事態の下では国民の等しく受忍しなければならないところであって、これに対する補償は憲法の全く予想しないところである」
元軍人が補償を受けているにもかかわらず、この受忍論によって、基本的に一般人の戦争被災者には保証がなされていないという矛盾。
同じく敗戦国となったドイツでは一般人の戦災者にも軍人同様に補償がなされている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
法の正義、司法権の独立を守ろうとした法務官が、結局は統帥権に飲み込まれてゆき、それは現代まで、終わらざる軍法会議により処刑された兵士の遺族の苦しみとして、影を落としている。
旧軍の法務官制度の変遷や軍事司法の概要もわかる。
運用上というか、統帥の要求とのバランスに苦悩する法務というのは今も昔もある種変わらない面があるのだなぁ。 -
戦場という非日常の中で行われた軍法会議のリアルな描写が心苦しい。法秩序と統帥の間で苦悩する法務官。苦闘の中、軍の論理が優先されのちに軍隊秩序がなくなる中で不法に処刑された兵士たちの悲劇もさることながら、その軍律違反記録により、後ろ指を指され続けた遺族たちの戦後。冤罪の可能性が高くとも、証明する書類の消失や証言者たちがほとんど残っていないことによる無常感。
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軍法会議という法廷の存在は前から知っていたけど、やはり理不尽な処刑があったと知って愕然。
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単行本で既読。