戦場の軍法会議: 日本兵はなぜ処刑されたのか (新潮文庫)

  • 新潮社
3.92
  • (4)
  • (3)
  • (5)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 63
感想 : 6
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101283784

作品紹介・あらすじ

太平洋戦争中、敵前逃亡罪などを犯した兵士を裁くため設けられた「軍法会議」。戦争末期、ここで多くの日本兵が銃殺刑に処されたが、中には「不当に」死刑判決を受けたケースも含まれていた。裁判記録が焼却されて実態は謎のままだったが、元「法務官」が残した証言テープ、未公開資料、遺族・軍関係者への徹底取材から、タブーとされてきた旧軍の闇の部分が明らかになる。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 軍法務官:馬場東作
    戦争への強い嫌悪感を持ち、軍の暴走防ぐことを自らの責務と自負し、海軍法務官となった秀才。
    しかし、戦争末期のフィリピンの戦場において、軍規維持を最優先とする軍の圧力に屈し、法の正義を守ることができなくなり、日本人軍人の処刑、フィリピン人の虐殺など大量の不当な処刑に自ら加担していくことになる。

    276
    複数の元法務官が戦争被害を受けた一般市民による損害請求を国が退ける根拠になってきた受忍論の形成に関わっていた。
    「戦争犠牲、戦争被害は国の非常事態の下では国民の等しく受忍しなければならないところであって、これに対する補償は憲法の全く予想しないところである」

    元軍人が補償を受けているにもかかわらず、この受忍論によって、基本的に一般人の戦争被災者には保証がなされていないという矛盾。
    同じく敗戦国となったドイツでは一般人の戦災者にも軍人同様に補償がなされている。

  • 法の正義、司法権の独立を守ろうとした法務官が、結局は統帥権に飲み込まれてゆき、それは現代まで、終わらざる軍法会議により処刑された兵士の遺族の苦しみとして、影を落としている。
    旧軍の法務官制度の変遷や軍事司法の概要もわかる。
    運用上というか、統帥の要求とのバランスに苦悩する法務というのは今も昔もある種変わらない面があるのだなぁ。

  • 戦場という非日常の中で行われた軍法会議のリアルな描写が心苦しい。法秩序と統帥の間で苦悩する法務官。苦闘の中、軍の論理が優先されのちに軍隊秩序がなくなる中で不法に処刑された兵士たちの悲劇もさることながら、その軍律違反記録により、後ろ指を指され続けた遺族たちの戦後。冤罪の可能性が高くとも、証明する書類の消失や証言者たちがほとんど残っていないことによる無常感。

  • 軍法会議という法廷の存在は前から知っていたけど、やはり理不尽な処刑があったと知って愕然。

  • 軍隊の秩序を守るべき、法律の専門家で運営していた軍法会議制度が崩壊していったノンフィクション。
    読者を取材者の一員になったと錯覚させるぐらい取材過程の著述が、傑作。

    無罪の罪で裁かれた人に、非がないのは当然である。無罪を有罪として裁いた側の言い分には、組織の板挟みになった状況を見て、過去の不幸な誤審だったと素直に思えない。
    高齢化、触れられたくない遺族など、真実が明らかになりづらい取材過程に負の遺産が、ここまで引きずるなかと思わせ、複雑な感情を抱く。

    唯一、戦後間もない逆境の中、無罪の戦争遺族を保護しようとした厚生労働省の立派な役人がいた事には、少しだけ心が洗われる。

    自分だったらできたのか?と自省してしまう。皆さんは、困窮した戦地(職場)で、正義を保持できますか?と世に問いたくなる。

    結果だけでなく、取材過程までを描いており、長ったらしい文章と思う人もいると思いますが、私には、モレなく伝えようとするNHKらしくて、好感が持てた。

  • 単行本で既読。

全6件中 1 - 6件を表示

北博昭の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×