- Amazon.co.jp ・本 (374ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101285719
感想・レビュー・書評
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哀しい遊女の生き様。安達祐実さんがそれまでのイメージを一新した、って言われてるけど原作通りならそれにも納得。大奥で公家のお姫様演じてたときも和装似合ってたもんなぁ。男を信じては馬鹿を見る、そんな世界でも恋した方が幸せか…。映画、見てみたい。
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花宵道中(はなよいどうちゅう)
朝霧の草履の鼻緒は半次郎が染めたもの。
薄羽蜉蝣(うすばかげろう)
八津の妹女郎である茜の初見世。好いた男に抱かれたい。
青花牡丹(ぼたん)
朝霧の姉女郎の霧里とその弟である半次郎(東雲)の話。
十六夜時雨(いざよいしぐれ)
朝霧の妹女郎の八津が髪結いの三弥吉へ想いを馳せる。
雪紐観音(ゆきひも)
桂山の妹女郎の緑は話せない。でも三津姉さんとなら…。
大門切手(おおもん)
吉原の山田屋である女将、勝野の人生。
それぞれの話がリンクしていて、おもしろかった。
十六夜時雨では、八津の同郷である妹分の三津が
いい味を出していて、彼女が亡くなるのが寂しかった。
それが、雪紐観音にも繋がっていて、
良かったなーと思いましたー。
花宵道中は、それだけで話がキレイに簡潔してると
思っていたら、青花牡丹との繋がりがあり、
とても複雑な話だったー!?
綿密に練られてるなーって感じたよー!!
遊廓のエロさと、せつなさを混ぜ合わせた話でした!! -
江戸吉原の山田屋で起こるお話6編
連作的な感じでした
何人もの女郎が登場し彼女たちのそれぞれに
それぞれの人生がありそれらが語られた
エッチシーンもありますがそれ以上に彼女たちの
物語を知ることができました -
おもしろかった、ただの短編かなと思ったら人物たちが関連していて、少しずつそれぞれの背景や恋愛が明らかになっていくのがよかった。
みんな登場人物の女性が可愛らしく、どのキャラクターも好き。山田屋のお店の、庶民じみた感じにほっとする。境遇だって待遇だってひどいんだけど夢を売り続けた女性たちの華やかさが救いであり、山田屋には読んでいて愛着がわいた。
もちろん、そんな生活から抜けだせない女たち、惚れた男と一緒に生きながら好きでもない男に抱かれる女たちは辛いんだろうけど、
男の方だって、好きな女がいつも他の男に抱かれているというのは耐えられない葛藤があるんだろうなあと思う。女からしてみれば、仕事なだけだし、男のためにしてる仕事なんだと割りきってると思うけど。
一人の遊女が言っていたように、男だって女だって、誰もが惚れた人ばかりとうまくいくわけじゃない。実は好きな人がいるのにそれを心に抱えて夢を買いにくる男もいる、なんかそれって、別に遊郭の世界に限ったことじゃないよなと思う。
でも、好きな人とはうまくいかなくてもその後につながる。なんだろう、ほんとうに好きだった人、好かれていた人から向けられた表情を知ってるというのは、その人とうまくいかなくて終わりじゃなくて、
別の人と関係を深めるときでも、本当にこの人を好いてるんだろうか、好かれているんだろうか、というのがわかるのは、かつて好きだった人の顔を思い浮かべることができるからだ。
だから一時の感情でも好きだと思ったらその気持ちは大事にしたい。川を越えるかどうかは別として。 -
以前から気になっていたのですが、映画化される前にどうしても読んでおきたいと思い今回手に取りました。予想以上に面白く、また想像していたよりとても読み易かったためすぐに読了。
吉原遊廓や花魁がモチーフの作品は元々好んでいましたが、この花宵道中は他の作品に負けず劣らず素晴らしいです。涙脆い私は読書中、何度も泣いてしまいました。
特に好きなのは『十六夜時雨』『雪紐観音』『大門切手』で、私が一番好きな遊女は八津。しかし緑の直向きさや勝野の凛とした快活さも好ましい。
見ず知らずの男や好きでもない男に抱かれ続ける日々の中で、愛する人への想いに幾ばくかの夢を見て強く儚く生き、散っていった遊女たち。実際に同じ様に懸命に生きた女達が確かに実在していたのだと思うと、本書でその生き様を垣間見た様な気がして、同じ女としては複雑ながらも潔く美しく感じるのでした。
※以下ネタバレ有り↓
『花宵道中』『青花牡丹』を読むと、個人的には何人もの遊女達の中で一番不憫なのは霧里ではないかなと。おはぐろどぶへ身投げした朝霧は結果的に忌み嫌っていたであろう母親と同じ場所で最期を迎えたわけですが、その前に愛する男と花舞い散る中で念願の道中をし、僅かな時ではあったけれど結ばれる事が出来た。勿論、二人生き延びて結ばれる事が出来たならそれは最良ではあっただろうけれど、愛する男に想いも伝えられず一度も抱かれることなく死んでいった霧里を思うともう不憫で可哀想で。挙句、実父に気づかれもせずに再び抱かれるというのは気が狂っても可笑しく無いですよね。その辺りは東雲もまた辛い立場ではありますが。しかし霧里の弟である東雲が、まさか朝霧と想い合う半次郎であったとは…霧里が其れを知らずに死ねてよかったなと。知っていたらきっと最期にあれ程までに鮮やかで綺麗な夢をみる事は出来なかったんじゃなかろうか。
目次
花宵道中
薄羽蜉蝣
青花牡丹
十六夜時雨
雪紐観音
大門切手
儚く残酷な宿命の中で、自分の道に花咲かせ散っていった遊女たち。江戸末期の新吉原を舞台に綴られる、官能純愛絵巻。 -
官能小説を読もう第二弾。
遊女たちの生き様を描いた作品だった。
官能小説だけど、その表現はどこか上品に感じられた。 -
「女の人生」を描いた小説。吉原の遊女という、私とは共通点がなさそうな設定でありながら、悩み、苦しみに共感を覚え、彼女たちの強さや弱さに心が動く。女の生きづらさは、形を変えながら現代にも共通する。
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儚く残酷な宿命の中で、自分の道に花咲かせ散っていった遊女たちの物語。
本書が宮木さんのデビュー作。
非常に官能的で切なく、苦しく痛いけど淡い幸せもある、精神を随分と揺さぶられる作品でした。
遊女たちの連作小説ですが、この連作具合が非常におもしろくて、思わぬ視点で物語が解き明かされて、不思議な縁によって点と点が結ばれていく様が見事でした。
この時代、遊女たちは大抵貧しくて売られてきたか、人攫いにあってきたか、その生い立ちは壮絶です。
時に諦め、時に心を殺しながらも、恋に翻弄されたり、大事な何かを守りながら生き抜いていて、読み終わった後の余韻がなかなか消えません。
艶やかな衣装や髪型、美しく官能的な遊女に心奪われながらも、叶わぬ恋に、迫り来る死にいかに向き合っていくかという彼女たちの直向きさに何より気持ちを動かされました。
私なら一体、誰のように生きただろうか、と思いを馳せずにはいられません。
どんな業か、一番悲しかったのは朝霧の章。
とはいえ、他の章も引けをとらないくらい悲しくさせてくれますが、そんな中にある淡く小さな幸せが希望の光でした。
あとがきで嶽本野ばらさんが「全ての人間は尊いという揺るぎない思い込みがなくては、このブレのないストイックな文体は生まれてこない」と書かれていますが、まさにそのとおりだなと思いました。
安達ゆみさん主演で映画化もされているようで、そちらもいつか観てみたい。しばらく余韻が消えなさそうです。 -
切ないお話でした。
江戸吉原で、恋に泣いて、思いを遂げられないまま死んでいった若い遊女たち。
宮木あや子さんの美しい日本語が散りばめられていて、景色としても鮮やかです。
親が子どもを売るとか、年季明けとか身受けとか、そんな時代があったことは映画やドラマで知っていても、この小説を読んで(フィクションではあっても)、初めてかなりリアルに知らされた感じです。娘を持つ身としては切なすぎです。
特に冒頭の朝霧のストーリーが印象深かった。
映画になっているようですが、見ないと思いす -
男に足を広げ、自分の夢は見ず、夢を見させ、売ることを仕事とする吉原の遊女たちの悲恋を描いた連作短編集であり、様々な遊女たちのつながりも多い。
女たちのR-18文学賞受賞作なので、性的描写は多いけれど、拒否するぐらいのイヤらしさは感じられない。様々な事情があり、吉原に売られてきた遊女たち。その遊女たちの置かれている立場や気持ちがすごくあふれていて、良かったです。表題作の『花宵道中』とその背景にあたる『青花牡丹』は、読み終わった後、奥深さを感じた。『十六夜時雨』もよかった。
この作品は、吉原の雰囲気や着物や小物の雰囲気など、コミックでも読んでみたくなりました。