- Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101287546
感想・レビュー・書評
-
ミステリー小説を装った純文学。スゴいものを読ませてもらった。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
一気に読み終えました。
吉田氏の作品、個人的にとても好きなんだと思います。
この方は、人に説明することができず、自分でも何なのか分からない人間の心の奥底の「何か」を衝くのがとても上手い。
その「何か」はどろりとした黒いものだったり、驚くほど無垢で純粋な衝動だったり、周囲への優しさだったり、社会の常識だったり、そんな色々が混ざり合って生まれた、何だかよく分からないモノ。
それは誰の中にもあると思うのだけど、何となく見せたくないし、見たくない、知らずにいたい。。
そこを衝くから、読んでいて、ズシンと心に響きます。
とある渓谷で起きた、幼児殺害事件。実母が容疑者として浮かぶという、実際に起きた事件を思い出させる始まりですが、物語はその隣家に住む夫婦を中心に進みます。
償うことが償い以外の何かに変わるとき、こんなにも切なく、やるせない感情が生まれるのかと、終盤には涙しました。 -
汗がとめどなく流れる夏、隣に住む立花里美は4才になる息子が失踪したと届けを出した。風光明媚な渓谷に打ち捨てられた萌君の遺体。マスコミはセンセーショナルに子殺しの犯人として美里を追った。逮捕された美里は赤いワンピースを着、豊かな乳房を誇示しパトカーに乗せられていった。
隣室に住む尾崎俊介は、契約社員として工場で働く傍ら少年野球の雇われコーチをし生計を立てている。化粧っ気は無いが色気のある妻、かなこと2人暮らしている。
そんな中、逮捕された美里は俊介との肉体関係を供述し、かなこはそれを裏付けるような証言をする。
俊介は大学野球で将来を嘱望される野球選手だったが、大学時代にチームメイトと共謀し女子高生を集団レイプした過去を持っていた。その後大学を退学し、伝手を頼り就職するが過去に犯した犯罪から逃れる事は出来なかった。
たまたま今回の萌君殺害事件の取材で運転手として雇われていた須田は、俊介のチームメイトでレイプ事件の首謀者の一人であった。須田からその情報を得た雑誌記者の渡辺は、俊介の犯罪への関与への確信を深めて行く。
渡辺は記事にすべくレイプ被害者の女性の足取りを追うが、その後の彼女の人生は幸せなものでは無く、渡辺はのうのうと生きて隣人と情事にふけっていた俊介への怒りを深めて行く。
被害者の女性はその後失踪し足取りがつかめていない。
俊介は殺害に関与しているのか?俊介の被害者女性は一体どこへ消えてしまったのだろうか?
読み始めから超ブルーで、「ああ、後味悪そうな話じゃのう・・・」と意気消沈して読んでいました。電車に乗る前に本が読み終わってしまったので、古本屋で時間ぎりぎりで手に取ったこの本、さよなら渓谷という爽やか目な題名だったので安心して買ったのにですよ、なんですかこのどんよりした雰囲気は。超憤慨!!と、思っていましたらばそんな事有りませんでした。
最後まで読んだ時の悲しみと爽やかさと希望が同居する心内には渓谷の風が吹き抜けます。
ちなみに僕が一番嫌いな犯罪の一つに強姦がございます。どういう言い訳をしても絶対に許してやらないと心に誓っております。もしも死刑でないのであればちょん切ってしまえと心から思っております。やり過ぎ?イヤイヤそれぐらいやらんと分からんでしょう -
良い意味でも悪い意味でも(悪い意味若干強めだけど)男性にしか描けない展開な気がしちゃうね、
-
読むよりずっと先に映画を見ていた。
その頃、同じ作者で評判がいい「悪人」を読んでいたけれど、さほど目新しくもなく、この映画は俳優の熱演だけででよく出来上がっているのかなと思っていた。
比べるわけではないけれど、「悪人」の方が何かテーマがありきたりで今の風潮をうけたものに過ぎないようで余り入り込めなかった。
ただ、買ってあった、この「さよなら渓谷」は、勝手に名作だと思っている「赤目四十八瀧心中未遂」と同じような濃密な人生の一編を見せられるようで面白かった。
生活圏の最下層に属する人たちが織り成す過去と現在、読書の世界は、現在の自分と距離がありそうでどこか重なる、そいった生きる重みがずっしりと感じ取れた。
映画は、真木よう子と大西信満の過激な絡みが話題になったが、夏のむんむんする暑さや、隣りの主婦のわが子殺しや、その主婦と大西信満の浮気疑惑が、これは夏に読まないでよかったと思うほど、汗臭く泥臭い物語だった。
既にこの作品は話題作だったので(映画書籍ともに)書きつくされた感がある、
レイプ犯と被害者の同居関係。人生を狂わしてしまった一夜の悪ふざけの事件が、生涯の不幸の根となって生き残り根をはり、周の好奇な面白半分の目に晒される。
それがこともあろうに事件の中でも大学生野球部と女子高校生の悪質なレイプ事件。
その当事者たちは時間がたってしまったが、お互い生きづらい中で出逢ってしまう。
二人の過去は、深い悲しみと、周囲の好奇な冷たい目に晒されて生きてきた。
他人ごとのように考え忘れることが、救いであったのかもかもしれない。だが周囲がそうさせなかった。
いつか寄り添いながら常に距離があるふたりを、周りの人々の生活を絡めて読ませる一冊だった。
交互に語られる二人の過去も、いい構成だった。
同じ作者の「横道世の介」が明るい中にもの悲しさを秘めているのに比べて、これは終始、重く暗い人生と、人はそんな中でも空気を求めるようにささやかな安らぎがあれば生きていけるのかということ、しかし開放されるために何をしたのだろう。
こういった特殊な世界でなくても、人は重い何かを背負っていることを、感じた。
しかし根源的な愛や性に関わるのニュースや事件となると、それを見聞きする人の品性があらわになる、最近報道される日ごろの出来事を思い出した。 -
集団強姦の加害者と被害者が一緒に暮らす、というあらすじから興味を持った作品。
幸せになりそうだったから出て行ったかなこの心情をもう少し知りたいと思った。
-
むむーん・・・幼児殺害事件がメインかと思いきや・・・。
なかなか複雑なお話であったな。。。