キャンセルされた街の案内 (新潮文庫)

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著者 : 吉田修一
  • 新潮社 (2012年5月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101287553

キャンセルされた街の案内 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 過ぎ去ってもなお、心の片隅にひっそりと刻み込まれているような事柄が、色濃く鮮やかに描かれていた。
    読み終わってから、妙に心に響いてくるものがあって、何とも不思議な感じがした。

  • タイトルが目を惹いた。

    即買い、表題作の一編を一気に読んだ。読めてしまった。読んだけれども何故『キャンセルされた街の案内』なのか皆目わからなかった。

    回想のなかで主人公は、無人島のインチキガイドで小遣いを稼いだりする。その無人島はかつてはひとつの炭鉱街を形成していた軍艦島と呼ばれる有名な島というか「街」だ。だから「街の案内」はわかるのだか「キャンセルされた」場面はない、どうしてキャンセルされた、なのだろうか。

    物語はどうにも煮え切らなくて不甲斐ない小説家志望の若者が主人公で、彼の回想や書いてる小説のなかの物語が現実と全然脈絡なしに交錯する。表面的には意味を成さないかのようなタイトルと、このエピソードとエピソードの間の脈絡のなさが、なぜだかいいと思った。なぜだかはわからないがそれがいいのだ。

    元彼女が不倫にのめり込むのを目の当たりにしても何も言えない。長崎の郷里から生来のニートである兄がでてきて部屋に居座るが、追い出すどころか邪魔にもできない。小説を書くのもトイレに篭ったり、公園に逃げ出して膝の上でやる有様だ。そんな読んでいる方が腹が立ってくるというか、まったく盛り上がりには欠けるはずの主人公を巡るストーリーが、脈絡なく割り混んでくる話に引っ掻き回され俄然面白くなる。

    話は飛ぶが、吉田修一が早朝のスタバでノートPCを叩いているのを目撃したことがある。正確には吉田修一らしき人と言うべきかもしれないが、その人は、『横道世之介』やこの『キャンセルされた街の案内』の主人公のような長崎出身のもっさい男とはまったく違うイメージだった。その直前にアエラの表紙で見たのと同じ極めてクールできりりとした風貌で、しかも黒ずくめの服装だった。ちょうど作家が原稿を書く時は縦書きかな横書きなのかな、原稿用紙フォーマットはつかうのかな、とか興味のあった私は、彼の席の傍を通りしなにディスプレイを覗き込もうとした。だが、きっ、と鋭い目で睨まれて見ることができなかった。
    あれは、ホンモノだったのだろうか。
    のほほんとストーリーを追っていて、突然緊迫感を強いる挿話に出くわしたときの驚きは、あのホンモノらしき吉田修一と目があってはっとしたときのドキドキと同じだった。
    闖入してくる回想シーンでは、軍艦島の廃墟でヌードモデルと変態カメラマンの真具合を見てしまったり、インチキがばれて客に激しく殴られたりする。
    それらが自分の不甲斐なさに忸怩と悶えているはずの主人公の隠された激情に脈絡なしにシンクロして読むものの心を掻きむしる。
    インチキガイドは、島から泳いで逃げて来た男の聞いた話を、「私の父は」と脚色してインチキ案内をドラマチックに語る術を身につけていく。これって、もっさい長崎の少年が長崎出身のクールな作家にやがてなっていったプロセスの引き写しであろうか。そんな風に勘ぐりながら読み進むとぞくぞく感がどんどん増していく。
    凶暴な台風に向かって幼かった兄と主人公は突堤の上でわけもなく叫ぶ。このシーンも唐突に割り込んでいる。
    いよいよ物語の最終盤、主人公は試作中の小説の最後に決定的な「嘘」を書き加えることを決心する。それは、決断することから逃げ続けて来た男の生まれ変りに等しい一大決心だ。それこそ、作家吉田修一誕生の瞬間の告白ではないのか。
    最後の最後、またしてもなんの脈絡もなく、台風のシーンがまた回想される。
    兄が叫ぶ。わー。幼い吉田修一が叫ぶ。わー。わけもなく叫び続ける。わー。わー。
    読んでいる私も叫ぶ。わー。わー。わー。

    吉田修一恐るべし。
    私はスタバでみた男の悪魔の様な尖ったまなじりの目を思い出していた。

  • なんかなぁ。好きなんだよなぁ。
    ストーリーのひとつずつにものすごく
    面白いオチがあるわけじゃない。
    ものすごく面白い設定でもない。

    けど不思議と引き込まれて
    その後とか勝手に考えちゃうし
    周りと重ねちゃったりして。

    初めて吉田修一さんの作品を読むときに
    1冊目がこの作品だったら他作品を読もうとは
    思わないだろうけど、もっともっと
    読みたくなっちゃうんだよなぁ。

  • 短く読みやすいけれど読み手に投げっぱなしの話が多い。

  • 前に読んだレイプ犯と被害者の話でもすんごい思ったけど、この人性被害者のその後の精神状態に対する認識が偏ってるんだよね。もちろんそういう風に感じる人が絶対いないとは言わないけど、流石にこう続くと不愉快。

  • 短編集。なにか起こりそう、始まりそう・・・というところで話が終わる。
    もしかしたら何も起こらず、それまでのたらたらした日常が続くだけなのかもしれないけれど、日々のどこかの一瞬に、ものごとが進むキッカケはひそんでいる。
    ただそれは、後から考えるとあぁあれが・・・と気づくような些細なこと。
    考えなければ、気づかなければ、流れて止まらない日々の中で「なにか、なにか」と思っているうちにぜんぶ通り過ぎてしまう。
    勿体ないようだけれど、じつは自分も含め大体の人がそうやって過ごしているんじゃないだろうか。などと考えてしまった。。。

  • 吉田修一が女性の文体で書く話を初めて読んだので新鮮だった。どの短編にもハッとさせられる文章があってよい。

  • 10つの短編集。「空の冒険」に続き、短編の面白さと吉田さんの情景の表現がすごい綺麗なことにハマってすぐ読了。

    タイトルの「キャンセルされた街の案内」は最後の短編のタイトル。表題作は、話が長い割にあまり印象を受けなかったのが残念である笑

    どの短編も、町の中でどこにでもありそうな、どこかで展開されているような現実の一瞬を描いている。空の冒険と違う点は、景色の描画よりも、人の感情の在り方と変化について重点を置いている。このどこにでもありそうな一瞬の内容からか、"あーわかるなこれは"というような共感を得ることが多かった(「灯台」は例外とも言えるが)。ただ、扱う内容が秀逸であるのは間違いない。普段見落としがちな一瞬であるが、想いの変化や強さが存分に現れている。また、例えば話の全体を10とするなら、1/3程度のところまでしか書かれていないという印象を受けた。これからどうなるの?!といったところで終わるので、今後の展開を想像しつつモヤモヤするようなこちらになにかを持ちかけてるようななにかを感じる。

  • えっ,これで終わり,続きはないの?といった話もある。
    気楽に読める短篇集ではあるが,なんだか物足りない。

  • 短篇集。
    表題作以外は掌編という短さ。

    吉田修一は何冊か読んであまり合わないなと思っているのだが、
    適齢期の独身OLが新入社員の男の子にちょっと惹かれていく巻頭作の『日々の春』はわかりやすくて、いけるかと思ったけどだんだんつまらないというかよくわからない話ばかりになってしまった。
    起承転結がなかったり尻切れトンボだったり。

    特に表題作は兄弟の生活と弟が書く小説が交互に出てくるため何がなんやらわからなくなってしまった。
    そして理解したいと思わせられるほどに惹き込まれるお話ではなかった。
    合わなかったね。

  • 可もなく不可もなし。
    …というより疲れている時に読んでしまった為かいまいち内容に入って行けなかった。

    いつか読み返したら「これは…‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」とかなりそうな気もする。

  • 新人社員くんの何気ない仕草が不思議に気になる、先輩女子今井さんの心の揺れ動き(「日々の春」)。同棲女性に軽んじられながら、連れ子の子守りを惰性で続ける工員青年に降った小さな出来事(「乳歯」)。故郷の長崎から転がり込んだ無職の兄が、弟の心に蘇らせたうち捨てられた離島の光景(表題作)など――、流れては消える人生の一瞬を鮮やかに刻む10の忘れられない物語。

    何気ない日常を切り取った感じ。
    起承転結の起伏が感じられない。読んでいて内容は面白い。面白いだけにもっと続きを書いてほしかった。
    にしても吉田さんが書く文体は惹きつけられる。

  • なんか吉田さんの本が難しくて、よく分からなくなってきた。
    日常の中を興味深く描くだけじゃなくて、そこに不思議すぎて不思議とは思えないぐらいの不思議が浮かんでいる。
    僕にはまだ難しすぎたのだろうか。

  • まぁ・・・難しい。

  • 特に何か起こってきっちりオチがつくというのではなく、読み終わった時に「それで?」と呟きたくなるような短編集。特にそれが悪いというわけでもなく、雰囲気としてはサイレント映画みたいな感じ。

  • あんまりよくわからん…。くずぶってるなあって感じ。全く面白くないわけじゃないけど、なんかもやもやする。いっそもっとドロッとしてるかはっきりしてる方がこの人は面白い気がする。曖昧なのはいまいち。

  • 2013/08/21
    移動中

  • 吉田さんの短編。表題の作品がよかった

  • 短編集。

    一番良かったのは「日々の春」

    個人的には長編作品の方がより好き。

  • 短編集。いまいち。

  • この作者としては冒険的?と思いたいくらい一筋縄ではいかない短編ばかりだった。普通こちらが期待している短編というのは、大なり小なりなんらかの事件が起こってその収束の過程がすっきり見事なことなのだがこの短編集はひとつひとつの短編がそれぞれの世界を作り上げていてまるで長編小説でも読んだような気にさせられる。そして短編らしくストンストンと毎回落ちない。微妙な位置づけだ。

  • 印象に残らない短編集。短編毎にストーリーに一貫性があるわけでもなく少し読みづらかった。

  • 吉田修一の短篇集。

    かなり色んなタイプの作品が入ってます。
    帯に「著者10年のエッセンスがつまった短篇集」と書いてあるんだけど、
    書かれた時期もまちまちなのかな。

    色んな吉田修一が楽しめるんだけど、印象がちぐはぐになっちゃう感じもあって、
    初心者には薦められない。
    ファンにはなかなか楽しい作品だと思うけど。

    視点や体験をぐるぐると回してつなげていく文体が、
    自分は割りと好きでこの短篇集でもいくつか使われてたので楽しかった。

    「人生の一瞬を鮮やかに刻む10の物語」というキャッチがついてるんだけど、
    確かに吉田修一のすごいとこはそこだなって思う。
    きれいな文章と一緒にできごとも意味もなく日常を進ませていくんだけど、
    その瞬間の切り取り方が良いのです。

    瞬間瞬間の積み重ねで時間は進んでいくわけで、
    つまりは生きることは瞬間の連続なんだけど、
    そこにあるのは同じ一つの瞬間なのかもしれないけど、
    切り取り方は同じには成り得ないと思う。
    でもやっぱり共通して見てる瞬間があるのかなぁ。
    という、そんなことを考えます。この人の文章を読むと。

  • イマイチ。吉田修一の短編は好きなのが多いけど、これはちょっと実験的だったのか。

  • 「乳歯」は生々しかった。他はあまり印象に残らない短編集だったかも。吉田修一は当たり外れが激しい。

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キャンセルされた街の案内 (新潮文庫)の作品紹介

あの頃、僕は誰もいない街の観光ガイドだった……。「パレード」から「悪人」まで、著者10年のエッセンスがつまった短篇集が文庫化。

収録作:
「日々の春」「零下五度」「台風一過」「深夜二時の男」「乳歯」「奴ら」「大阪ほのか」「24Pieces」「灯台」「キャンセルされた街の案内」

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