- Amazon.co.jp ・本 (361ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101288079
感想・レビュー・書評
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映画化を機に再読、映画は見てませんが。
深刻な話なんだろうけれども、良い意味でも悪い意味でも軽いタッチにまとめている作品かと。
重宗さえも最期は温かい目で見つめているような気がして、それはそれで感ずるものありでした。
しかしどうも時代設定が読んでいてしっくりこなかった、当方の気のせいかな?どことなく時間軸というか時間設定がでたらめなような気がして★を少しばかり下げてます。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
初めは とっつきにくい内容だと思っていたけれどチュウさんや秀丸さんの人間味が滲みる…秀丸さんは罪を犯したせれど、その事によって救われた人々が今度は秀丸さんの力になろうと前を向く…救われたような最後だった。
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精神疾患患者と健常者の境界は連続しているにもかかわらず、私たちはひとたび病名というレッテルを貼ると閉鎖病棟に隔離して視界の外に置いて安心してしまう。身の回りを振り返ってもいろいろ考えさせられる一冊。
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昔の精神病棟の話。
登場人物の1人ひとりに、それぞれドラマがあり、胸が苦しくなる。
カッコーの巣の上で?だったかな...昔の映画を思い出した。 -
はじらいの乙女の頬【ほお】に並び咲き白梅ほのかに打ちふるえおり
塚本中弥(作中人物)
1995年に山本周五郎賞を受賞した「閉鎖病棟」が、この秋映画化され、話題を集めている。脚本も兼任した平山秀幸監督は、原作に圧倒されて以来、10年近くも構想をあたためてきたという。
物語は、精神科病院で起きた殺人事件を巡る群像劇。読み応えがあるのは、作者の帚木蓬生【ははきぎほうせい】が現役の精神科医であり、登場人物個々人の背景も綿密に描写されているからだろう。
中心人物は3人で、1人は秀丸さん。調理師であったが、意識が不鮮明な折に家族4人を殺【あや】めた過去を持つ。映画では笑福亭鶴瓶が熱演し、車椅子姿の感動的なラストも飾っていた。2人目は、幻聴に苦しみ、妹夫婦との確執から退院に踏み出せないチュウさん。3人目は、家族に疎外され、自分の居場所を模索する女子学生の島崎さんである。
掲出歌は、チュウさんの作として登場する。チュウさんの短歌や俳句を秀丸さんが達者な筆で清書するなど、その友情と信頼関係は物語の核にもなっている。
映画では割愛されたが、チュウさんが院内の演芸会用に書いた、入院患者全員が登場する寸劇の脚本も読みどころである。
入院すると、過去の職歴も無視され「患者という別次元の人間」になってしまう。だが、自分たちは「骸骨」ではなく、「患者以外のものになれる」ことを知らしめようと練った脚本で、劇は大成功に終わった。長期入院生活には、また、人間の尊厳には、文化の力が真に大切なものなのだろう。
(2019年11月24日掲載) -
何年か前に初めて読んだ時は中々読み進められず途中で挫折したこともあり、暫く放置してしまっていた。
映画化ということもあり、久しぶりに手に取ってみた。
すると、面白い。
すらすら頁を捲る手が止まらないというような類の作品ではないが、しみじみと物語をじわじわ味わえる。
非常によか。 -
2019/8/31 再読
患者はもう、どんな人間にもなれない。病院に入れられたとたん、患者という別次元の人間になってしまう。そこではもう以前の職業も人柄も好みも、一切合財が問われない、
骸骨と同じだ。
チュウさんは、自分たちが骸骨ではないことをみんなに知ってもらいたかった。(145ページ)
ここは開放病棟であっても、その実、社会からは拒絶された閉鎖病棟なのだ。(259ページ)
これから先、どんなこま切れの日がやってこようと、そこにその思い出を張りつけ、私は幸せに生きていけるのです。(293ページ) -
様々な理由で精神病院に入っている患者たち。
通常の病とは違い、何十年も家に帰れない人が多い。
どこで退院とみなすのか、難しい病でもある。
そこで長く生活していると、殆んど見舞いにも来ない家族よりも、患者仲間の方が身近に感じる。
互いの心の傷をわかりあえるというのも大きい。
ある事件が起こったことも、そういう理由によることが大きかった。
最後は涙なしでは読みきれず…
2019.5.15 -
ずっと気になっていた作家さん。
精神科病棟の話で、登場する入院患者さんはほとんどが重くてつらい過去があり、思わず読むことをためらう箇所もあったけど、全体的に優しさに満ちた話だった。
ラストの法廷のシーンは泣けた。前向きな姿に鼻の先がツーンとして胸が熱くなった。