閉鎖病棟 (新潮文庫)

著者 :
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感想 : 645
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  • Amazon.co.jp ・本 (361ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101288079

感想・レビュー・書評

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  • p.427
    ギターは弾き手が心臓にもっとも近い位置で弾き、しかも自分の指で直接はじいて音を出す、きわめて人間的な楽器である。

    解説の方が印象に残ってしまいました。

  • 前半部分は読んでいて沢山の人が出てくるから分からなかったけど、後半のある事をきっかけに読み応えがあり、面白かったです。特に昭八ちゃんのキャラクターが面白かったです笑

  • さすが山本周五郎受賞作✌️
    そして現役精神科医だけあって、
    心を病んだ人には、優しい眼差し、
    私は、辛い体験をしても、そこでとどまらず、未来に目を向けるヒロイン由紀を応援

  • 映画の予告編を観て先に原作を読むことにした。TBSを退職し精神科医となった作者が書く「閉鎖病棟」とはどのようなものか興味がわいた。その結果、海堂尊のチームバチスタシリーズ、吉田修一の「怒り」を超えるお気に入りの本になった。
    主な登場人物は戦後の日本を生きていたり、何かしら戦争の影響を受けた人々。戦時中の体験だけではなく、戦争が終わってからも心に傷を負わせる戦争は禍々しいものだと感じた。
    そんな中、戦後からずいぶん現代寄りの時代背景で、中絶のため産院を訪れる女子学生は誰だろうと考えていたが島崎さんだった。父親にレイプされ妊娠し、援助交際的な方法で中絶のお金を集めるなんて、悲しすぎる。チュウさん、昭八ちゃん、敬吾さん、秀丸さんと島崎さんとの描写は本物の家族にはない家族のような温かさ。しかし島崎さんがヤクザ上がりの薬中患者にまたレイプされる。絶望で胸が痛い。チュウさん、昭八ちゃんが絶望する様も島崎さんの悲しみを浮き上がらせるよう。
    そして秀丸さんによる殺人。復讐というべきか、天罰を下したと言うべきか。足が不自由でてんかんもあり高齢の秀丸さんは投獄される。儚い美少女である島崎さんも来院せず所在が分からなくなる。生きていてほしい。でもそれは薄い氷の上に生きるような危うさ。島崎さんの心は何度も死んでいるのだから。(島崎さんはCoccoのRainingの少女のようなイメージ)
    秀丸さんの裁判でチュウさんと秀丸さん、島崎さんが再会できたシーンはとても嬉しかった。涙が止まらない。昭八ちゃん、敬吾さんが退院後も生き生きと暮らしていることも嬉しかった。誰かの存在や行動が誰かを支えている。心の傷を負いながらも生きる意味を見つけられたのだと思う。素晴らしい作品。そして原作が良すぎるので映画を観るか悩む。

  • 少し昔の、精神科の閉鎖病棟のお話。今よりも「精神の病気」というものへの偏見が強かったと思われる。登場人物チュウさんが院内の劇の脚本を書き、入院患者みんなで芝居をする場面がよかった。脚本がよくできていて、感動した。
    最後はちょっとやるせない結末のような気がした。

  • 精神病院・・・っていういい方は今も残っているのか判らないけど、精神病院に長期入院せざるを得なかった人たちの話。と言っても、入院に至る問題行動があったのは事実として、極めてまともな感じがする。精神分裂症と診断される人たちは、時として何か抑えきれない衝動が起こるのかもしれないけど、平時はいたって普通の人。入院せざるを得ない事情を抱えているだけに、社会に対して負い目があるのかもしれないけど、その分、同様の立場の人に対する優しさも持ち合わせている。だからこそ、分かり合えたり、助けてあげたい気持ちになったり、そういう気持ちが強くなるのかもしれないということを感じた。淡々とした病院生活はそれほど面白いものではないけれど、ある日起こった事件をキッカケに新たな事件が起こる。そこに至る背景と、そこにある思いやりが患者だからこその部分もあるだろうし、だからこそ分かり合えることもあったのだろうなと、そんなことを感じました。

  • そうね。とても心に響く作品。作家のプロフィールから今まで食指が動かなかったのだけど、思いがけず柔らかな文章に驚く。でもなぁ、こうあってほしいけどそうはいかないという現実は確かにあるんだよなぁ。そういう意味ではファンタジーよね。それも病気の外にいる人たちのための。「こちら」にいる人たちはもっと違う景色が見えてるよ、きっと。いや、ファンタジーとしてはこの結末でいいんだけどね。

  • ひとりひとりの人生を思うと、つらい。人によっては、過ぎるくらい優しい。それがまたつらい。温かさが、悲しみと背中合わせになっています。読み終えて、全員に声をかけたくなりました。
    小説としては「脇役」であるひとりひとりまで、もれなくつらい。みんな、いろんなものを背負って生きている。
    この一冊に人生が詰まりすぎていて、ページを捲るたび気持ちがへたってしまいました。状況を、気持ちを、想像しては心がえぐられるような気持ちになります。

    主な舞台はタイトルのとおり、精神科病院の病棟。
    「病気」のラベルを貼られて生きている登場人物たち。またはその家族。職員。特性が、人生が、それぞれに違ってもラベルは同じ。偏見があったり、忌み嫌われたり、引け目があったり、もどかしさがあったり。達観する人、もがいている人、苦しんでいる人。

    そこでも社会があり、笑ったり喧嘩したり、楽しんだりつらかったりしながら、施設の規約のほかにそれぞれの拘りや本人なりの規律があって、毎日を生きている。
    恐怖や不安で近づけなかったり、理解しようとさえ思えなかったり、ひどいなどという言葉では言い尽くせない思いや痛み。

    「病気ではない」人との違いはどこにあるのか?
    ほんの少しの、ボタンの掛け違いではないのか?
    道をひとつ、違っただけではないのか?

    病気でなければ善人である、とも限らない。
    もちろん、病気であればそれ以外はすべて問題にならない、ということでもない。
    何かのせいにして逃げ出したくなるものを、それでも向き合い、考え、進んでいく強さ。それがたとえ死をもたらすものであっても、尊い魂があふれているような気持ちになりました。たとえ強さがない人だって、その人の精一杯を繰り返して生きているものだと思います。そりゃ、「元気」なほうがいいもの。しあわせでいたいもの。笑っていたいもの。

    明日を、どう生きていこうか。
    向き合い、許し、愛しながら、希望をもって歩めたらと思いながらも、迷い悩む日々です。

  • 映画化されると聞き、十数年ぶりに再読。淡々とした描写がかえって胸をうつ。「生きなくてはならない」と思わされる。

  • はじめは間違えて短編集を選んでしまったのかと思いましたが、序章だったのですね。筆者の的確で暖かい視点が垣間見える作品。

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著者プロフィール

1947年、福岡県小郡市生まれ。東京大学文学部仏文科卒業後、TBSに勤務。退職後、九州大学医学部に学び、精神科医に。’93年に『三たびの海峡』(新潮社)で第14回吉川英治文学新人賞、’95年『閉鎖病棟』(新潮社)で第8回山本周五郎賞、’97年『逃亡』(新潮社)で第10回柴田錬三郎賞、’10年『水神』(新潮社)で第29回新田次郎文学賞、’11年『ソルハ』(あかね書房)で第60回小学館児童出版文化賞、12年『蠅の帝国』『蛍の航跡』(ともに新潮社)で第1回日本医療小説大賞、13年『日御子』(講談社)で第2回歴史時代作家クラブ賞作品賞、2018年『守教』(新潮社)で第52回吉川英治文学賞および第24回中山義秀文学賞を受賞。近著に『天に星 地に花』(集英社)、『悲素』(新潮社)、『受難』(KADOKAWA)など。

「2020年 『襲来 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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