閉鎖病棟 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (361ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101288079

感想・レビュー・書評

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  • 精神を病んでいるとされている人々が生活する場である精神科病院。
    外界からは隔絶された建物のように思われているが、その中にも開放病棟があり、閉鎖病棟もある。
    外来患者だっている。
    それでも、やはり精神を病んでいるとされれば一般的な暮らしをすることはできない。
    身内からも厄介もの扱いされ、病気が一番重度だった時のことをずっと蒸し返され、回復を認めてはもらえない。
    頭がおかしいやつは、病院に一生入っていろ、と言わんばかりの扱いを受ける。
    チュウさんの退院の際の、妹夫婦がまさにそれだ。
    病気が良くなったことは喜ぶべきことじゃないのかな。
    それが、精神を病んでいると違う。
    本当に社会生活ができない人もいるだろうけど、薬の力を借りて、最低限の生活を営める人だってちゃんといるんだ、と言う事を改めて思った。
    そして、そこにいる人達が、生まれながらにして狂ってるわけじゃないということも。
    いい本だった。

  • 読んでよかった。時代が変わり病気の呼び名は変わったけれど今も精神科の病院の中には何十年もそこに入院し続けている、またはそこで一生を終える患者もいるだろう。少し不自由な人たち。差別を受けたり、偏見を持たれたり…。それぞれの登場人物が抱えた過去は読んでいて辛くなるものばかり。病院の中で関わり合い支え合ったことで、それぞれの未来の光になるという展開が作者の押し付けがましくない正義なんじゃないかな?違う作品も読みたくなりました。

  • 様々な理由で心を痛めてきた人々の、
    静かだが深いつながりを綴った作品だと思っている。

    本当に心の深いところで繋がれたと感じられる他者が、
    たったひとりでも存在するならば、
    優しくも、強くも、
    そして残酷にもなれる。

  • このタイトル見て読んで、そんで暗いとか重いとか
    言う人達が多い事がすごく不思議な今日この頃。
    最後まで読んだらそうでもなしおもそろかったです。

  • 何年か前、本屋さんで平積みされているのを見かけて読みたいなーと思っていた作品。
    先日図書館で偶然見つけたので借りてみました。
    山本周五郎賞をとっているのかぁ、と簡単な気持ちで。


    そしたら……予想以上によかったです。
    精神病院内で殺人事件が起こる! とかいうから、もっとサスペンス調のモノを想像していたらすっげぇ純文学。でもすっごい優しくて読みやすい。
    冒頭、何人かの細切れ場面が出てきて、戦時中だったり戦後だったりで時代背景がわかりづらいのが難点だけど、チュウさんが出てきてからその細切れ場面の人たちがすべてつながるのは「おお」って感じ。
    そして、それぞれに悲しい過去があって、心が弱ってしまって、でも当時はそういう人は問答無用で病院に押し込められる……時代だなぁって思いました。

    チュウさん脚本の劇もよかった。
    でも、その劇のおかげで穏やかに緩やかに過ごしていた毎日が少しだけ変化する。
    作品紹介であおっていた殺人はかなり後半にならないと出てこないけど、それもなんだか仕方ないのかなぁって思ったり。

    最後、チュウさんを中心とした五人がそれぞれの場所に帰っていく場面はすごくいいなぁって思いました。
    秀丸さんだけは、娑婆に出て欲しいなぁって思うけど。


    なんか、全然設定違うけど「ショーシャンクの空に」をふと思い出した。
    チュウさんがモーガンフリーマンに見えてきたよ(笑)

  • 読み終わって、胸がいっぱいになった。
    いろんな理由で、心を病んだ人たちがいる閉鎖病棟の話。
    心の優しい人ほど、過酷な場所に立たされることがある。
    病棟の中で生まれた友情と絆。
    命に対する想い。自分の罪。
    誰かを想い気持ちは、きっとその人を救うことができる。
    それを信じられる未来には光がある。

  • しっかしこの作者さんは“殺人を絡めずに書かずとも読ませられる”事に自信を持ったほうがいいんじゃないだろうか?
    それとも殺人入ってないと読まない読者層が本当に多いのか。

    個人的には劇的なものが何も入ってこずに終わった方がよほど心に染みるような気がした。

    他の本では「医者としての目線」の傲慢さなり冷徹さなりの片鱗を感じる事があったけど、この本にはそれが一番少なかった。

  • 読んだことを忘れて、また買ってしまいました。
    2回目だったけど、結構忘れてる部分もあり(途中まで2回目読んでると気付かなかったし)、今また新たな気持ちで読めました。

    切ないです。
    全く自分とは関係がないと思っている精神病院での患者の人たち・・・この人たちは、なんら変わらないのだなあと思います。むしろ、色々なことが見えているのでしょうね。縛られているのは、普通だと思っている私たちかもしれないと思います。

  • 私が帚木先生にハマるきっかけになった、忘れられない作品。

    とある精神病院での話。
    登場人物が愛おしく、そして切なく何度も涙した。
    最後の最後に光が見えた。

  • 精神病院を描きながら、本当の人間性に触れたような作品。この小説の中だけでなく、健常者が打算的、世俗的で、どこか計算された存在なのに対し、遥かにピュアな患者を描く。出だしは何か重いものを読みはじめてしまったかな、と感じていたが、途中から同化し、最後は爽やかな読後感。

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著者プロフィール

1947年、福岡県小郡市生まれ。東京大学文学部仏文科卒業後、TBSに勤務。退職後、九州大学医学部に学び、精神科医に。’93年に『三たびの海峡』(新潮社)で第14回吉川英治文学新人賞、’95年『閉鎖病棟』(新潮社)で第8回山本周五郎賞、’97年『逃亡』(新潮社)で第10回柴田錬三郎賞、’10年『水神』(新潮社)で第29回新田次郎文学賞、’11年『ソルハ』(あかね書房)で第60回小学館児童出版文化賞、12年『蠅の帝国』『蛍の航跡』(ともに新潮社)で第1回日本医療小説大賞、13年『日御子』(講談社)で第2回歴史時代作家クラブ賞作品賞、2018年『守教』(新潮社)で第52回吉川英治文学賞および第24回中山義秀文学賞を受賞。近著に『天に星 地に花』(集英社)、『悲素』(新潮社)、『受難』(KADOKAWA)など。

「2020年 『襲来 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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