逃亡(下) (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (587ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101288123

感想・レビュー・書評

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  • 最後までドキドキさせた、マイフェイバリット小説。

  • 戦犯という立場、自らの罪意識は持ちつつも、それでもやりばのない国家から見放された理不尽さ、今まで考えたこともなかった戦争の側面を考えさせられた。そしてもうひとつ、下巻を通じて太く貫かれていたのが、嫁の気丈さ。はんぱない。嫁からの手紙は本当に泣けました。

  • 1945年8月15日、日本敗戦。国内外の日本人全ての運命が大きく変わろうとしていた―。香港で諜報活動に従事していた憲兵隊の守田軍曹は、戦後次第に反日感情を増す香港に身の危険を感じ、離隊を決意する。本名も身分も隠し、憲兵狩りに怯えつつ、命からがらの帰国。しかし彼を待っていたのは「戦犯」の烙印だった…。「国家と個人」を問う日本人必読の2000枚。柴田錬三郎賞受賞。

  • 下巻では、帰国し、妻子と再会し、そして戦犯として逃亡する姿が描かれる。上巻がある意味ハードボイルド的な部分もあったのに対し、下巻は情緒的なところが大きい。特に、妻とのさまざまなやり取りは涙を誘う。

    舞台は全然違うが加賀乙彦の「湿原」を思い起こさせた重厚な傑作。

  • 2011.4.15(金)。
    1997年 第10回柴田錬三郎賞

  •  解説を読んで、守田が作者の父だとわかり、上巻での疑問は吹っ飛んだ。だとすれば、作者は、父の顔も知らずに育つはずだった竜次。彼はその後、父から、何をどのように聞かされ、育ったのだろうか。全てを聞いたのではないだろう。だからこそ、作者は、小説という形で上梓しなければならなかったのではないか。父の語ったものの隙間を埋めていく作者の心中はいかばかりであっただろう。<br>
     結末は、やはり予想の範囲内ではあった。あの時期、逃げおおせた人や、逃げて捕まるのが遅かった人たちの多くが助かり、早々に捕まった人たちが生贄にされたのだ、という話はいくつか聞いていたから。逃亡期間が1年になったことで、確信は深まった。それでも、最後まで、それでもやっぱり香港送りにされるのではないか、という可能性を残し続けたのは、それがまさに、あの当時巣鴨プリズンに拘留された人々のリアルだったからなのだろう。<br>
     守田が、どの瞬間に何を思い浮かべるのか。その選択にも優れた感覚を示している。人間、こんなときにこんなことを思い浮かべるのか、という驚きと、そうだろうなという納得。扱われている内容に対して、ゆったりと読み込める一冊だった。

  • 第二次大戦中香港で憲兵隊員として活動していた主人公。
    しかし終戦と共に戦犯とされる事を受け入れられない彼は憲兵隊から逃亡し、中国そして日本、彼の過酷な逃亡生活が始まる。

    主人公は憲兵ですが、よくある鬼の憲兵の物語ではなく一人の戦犯とされた日本軍人が戦後の混乱期の中をどのように生き抜いてきたかがメインのテーマになっています。
    そしてその中で、戦犯として追われる主人公が家族と共に過酷な運命に対して立ち向かい、乗り越えていく姿はすばらしいドラマに仕上がっています。

    終戦後の混乱期に日本人が何を考え、どのように行動し、そして生き抜いてきたかが鮮やかに描かれていて戦後史という面でも面白い作品になっています。

  • やはり大泣きしてしまった。

著者プロフィール

1947年、福岡県小郡市生まれ。東京大学文学部仏文科卒業後、TBSに勤務。退職後、九州大学医学部に学び、精神科医に。’93年に『三たびの海峡』(新潮社)で第14回吉川英治文学新人賞、’95年『閉鎖病棟』(新潮社)で第8回山本周五郎賞、’97年『逃亡』(新潮社)で第10回柴田錬三郎賞、’10年『水神』(新潮社)で第29回新田次郎文学賞、’11年『ソルハ』(あかね書房)で第60回小学館児童出版文化賞、12年『蠅の帝国』『蛍の航跡』(ともに新潮社)で第1回日本医療小説大賞、13年『日御子』(講談社)で第2回歴史時代作家クラブ賞作品賞、2018年『守教』(新潮社)で第52回吉川英治文学賞および第24回中山義秀文学賞を受賞。近著に『天に星 地に花』(集英社)、『悲素』(新潮社)、『受難』(KADOKAWA)など。

「2020年 『襲来 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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