聖灰の暗号〈上〉 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (362ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101288192

感想・レビュー・書評

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  • 現代の歴史学者須貝彰が、南フランスのトゥルーズ市立図書館でカタリ派弾圧に関する文書を発見し学会で発表するが、その文書が公になることを阻止しようとする陰謀に巻き込まれるというもの。カタリ派は10世紀のスペインに起源を持ち、南仏の諸侯に擁護され民衆にも広がったキリスト教の異端派である。形式や権威をごり押しするローマ教会に対抗する形で信者を増やすが、インノケンティウス3世は南仏の領土に色目を使うフランス王と手を結んで十字軍を差し向ける。モンセギュール城に籠ったカタリ派たちは殲滅されるが、その後100年に渡って審問官たちが野に散った信者たちを草の根を分けて探し出し火あぶりにしていく。著者のカトリックの教条主義への怒りがはっきり感じられる。これを訴えたいがために現代の物語を創り上げた感じ。妻にこの小説のことを話すと、「イエス・キリストがこのことを知ったら、絶望するよね。キリスト教なんて創らなかった方がよかったなんて思うよ」と言うのだがさもありなん。しかし、異端者を痛めつけたいという欲望は人間本来のものではないかと話し合った。最近の中野信子・ヤマザキマリの本も話題に出た。下巻はどうなっていくか。

  • 歴史学者・須貝彰は、南仏の図書館で世紀の発見をした。異端としてカトリックに憎悪され、十字軍の総攻撃を受けたカタリ派についての古文書を探りあてたのだ。運命的に出会った精神科医クリスチーヌ・サンドルとともに、須貝は、後世に密かに伝えられた“人間の大罪”を追い始める。構想三十年、時代に翻弄された市井の男女を描き続ける作家が全身全霊をこめた、歴史ミステリ。

  • 現代の謎解き部分よりも、カタリ派が弾圧されている時代の話の箇所のほうが引き込まれた。
    最後の犯人は、トカゲの尻尾切りだろうが、あまりに呆気ない感じがして、少し物足りなかった。もう少しひねりが欲しかった。
    総じて、宗教のあり方を私たちに問いかけている作品としては、すごく考えさせられるのではないかと思う。
    現在のテロ問題も、宗教問題と考えれば、相手を排除することでは絶対に解決できないことであり、相互理解は重要なテーマだと考えさせられた。

  • ものすごくダ・ヴィンチ・コードですが、この辺の歴史とか全然知らないのですごく興味深い。事実関係はそれなりに正確なのかな? 

    意外と食事のシーンがどれも美味しそうだった。エスカルゴとか全然好きじゃなくても食べたくなっちゃう。 

  • フランスの地名もわからないし、キリスト教やカタリ派もよくわからないので、冒頭部分は読むのがしんどかったが、パリを出る頃から加速して面白くなった。読んでいるうちに、フランスの情景や、カタリ派の苦しみが見えてくるようだ。
    まだ、敵?の気配しか見えていないので、ここからどうなっていくのかが楽しみ。

  • 評価は読了後。
    やたらと法曹界に身を置く友人が勧めるので読み始めたのだが、今のところなかなか面白いエンターテイメント。
    かなりバチカンに楯突いているが、それがダークサイドも併せ持つバチカンの宿命か。
    たまたまコンクラーべと読書時期が重なるとはなんたる偶然。下巻への期待が余計に高まる、反動が出なければ良いのだが。

  • キリスト教の異端とされたカタリ派について、長い間秘匿されてきた古文書をフランスで発見した日本人歴史学者、彼とその古文書をめぐるミステリー。
    宗教にも、フランスの地理にもなじみがないけれど、ローマ教会とカタリ派との攻防が、現在の歴史学者や教会にも生きていて、まるで自分がこの古文書を発見したかのようにスリリング。人名や地名を追いかけるのはずいぶん大変だったけれど。
    さらに「閉鎖病棟」のイメージの強い作家の作品であることにもびっくり。

  • オキシタン語、カタリ派、ローマ教会が派遣した十字軍の目的とは。
    キリスト教に関する知らなかった深く悲しい歴史。
    七百年越しに悲痛な思いを届けた修道師、それを受け止めた日本人歴史学者、数奇な運命のもとに彼と巡り会い支えるカタリ派ゆかりの人々。

    落ち着け、まだ上巻だ。先は長いぞ。

    やっぱ帚木センセ、最高だヨ。

  • 歴史学者が歴史の闇に葬られていた暗部に触れる、と同時にそれを防ごうとする組織が立ちふさがると、まあこんな類のお話でした。キリスト教カトリックの異端審問期に存在したカタリ派がメインになっており、その分野にまったく無知なので、単純に興味深かった。おそらく、カタリ派や中世のこの時期を研究した堅い書物はたくさんあれど、なかなか物語として読ませてくれるようなものは少ないだろう。小説の面白さと素晴らしいところは、物語にそった知識と興味をこんなド素人にでも湧きあがらせてくれることかもしれない。

  • フランスに留学中の主人公の研究発表を機に引き起こった殺人事件。
    南フランスにおけるカタリ派の弾圧を中心に読み解いていく、歴史ミステリーです。
    セリフの随所に聖書からの引用があり、その辺りがうっとおしい方もおられるかもしれませんが、話の展開はテンポよく、ダレたところは感じませんでした。。
    フランスの郷土料理のレシピや景色の描写など、あまりメジャーでない南フランスの情景に筆者のフランスへの思い入れが伺え、その辺りも楽しく読めました。

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著者プロフィール

1947年、福岡県小郡市生まれ。東京大学文学部仏文科卒業後、TBSに勤務。退職後、九州大学医学部に学び、精神科医に。’93年に『三たびの海峡』(新潮社)で第14回吉川英治文学新人賞、’95年『閉鎖病棟』(新潮社)で第8回山本周五郎賞、’97年『逃亡』(新潮社)で第10回柴田錬三郎賞、’10年『水神』(新潮社)で第29回新田次郎文学賞、’11年『ソルハ』(あかね書房)で第60回小学館児童出版文化賞、12年『蠅の帝国』『蛍の航跡』(ともに新潮社)で第1回日本医療小説大賞、13年『日御子』(講談社)で第2回歴史時代作家クラブ賞作品賞、2018年『守教』(新潮社)で第52回吉川英治文学賞および第24回中山義秀文学賞を受賞。近著に『天に星 地に花』(集英社)、『悲素』(新潮社)、『受難』(KADOKAWA)など。

「2020年 『襲来 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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