集中講義織田信長 (新潮文庫 お 70-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101288512

感想・レビュー・書評

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  • 新書文庫

  • 織田信長を17の項目で解説。
    改革者というより改良者としての面が論じられている。それにしても浅井長政の裏切りでの即撤退の決断は本書にあるように当時の価値観や見栄、プライドから考えてもなかなかできない事ではなかろうか。天才かどうかはさておき決断力と判断力が優れていると思われる。

  • (2014.03.07読了)(2007.07.22購入)
    【黒田官兵衛の周辺】
    大河ドラマ「軍師官兵衛」を見ていると信長、秀吉が時々登場します。官兵衛の生きた時代を大きく動かしていたのは、この二人だったのでしょうから、当然なわけですが。
    そこで、積読の中から信長を探したら、この本が出てきたので、読んでしまうことにしました。
    歴史家の書いた本ですので、新しく発掘された遺跡からわかってきたこと、以前からあった史料を見直してみて見えてきたこと、発掘されて分かったことと以前からあった史料を較べてみて分かったこと、などが記してあります。
    17の視点から書いてありますので、小説などを読んで、イメージされていたこととだいぶ違う信長の像が見えてくるかもしれません。
    僕は、美術展をよく見るのですが、個人に焦点を当てた展覧会を見ると、なんとすごい人なんだろうと、驚き・感嘆しながら見るのですが、同時代の潮流を見せてくれる展覧会を見ると、特定の個人のみが突出しているわけではなく、その時代に共通するものがあって、その中に個人もいるというのがわかります。
    信長も、突然、突出した人物として現れたわけではなく、歴史の潮流の中の一人であることが分かるようです。(そういうふうに思わせるのが、歴史家のたくらみなのかもしれないのですが)
    歴史家の書いた本としては、読みやすく、わかりやすい本ではないでしょうか。

    【目次】
    はじめに
    第一講 時代を先取りした信長
    第二講 信長を生み出した尾張国とは
    第三講 武功から情報の時代へ
    第四講 「一所懸命」観の転換
    第五講 発想力抜群の信長
    第六講 能力本位の人材登用
    第七講 武士道観念を変えた信長
    第八講 乱世を治める峻厳さ
    第九講 思考の柔軟性と合理主義
    第十講 安土を天下の府とした意味
    第十一講 信長の演出力と美学
    第十二講 言行から信長の性格を読む
    第十三講 信長が求めた政教分離
    第十四講 ねらいは太政大臣か将軍か
    第十五講 信長は天皇をどうしようとしたのか
    第十六講 自ら神になろうとした信長
    第十七講 謀反を招いた信長側の問題点
    おわりに
    文庫版あとがき

    ●兵農分離(63頁)
    信長は、安土城下に住む家臣たちに、家族と別居暮らしをし、「単身赴任」の者がいることにおどろき、早速調査させたところ、弓衆に六十人、馬廻衆にも六十人、合せて百二十人もの家臣が「単身赴任」であることが判明した。
    信長は、すぐ岐阜城の信忠に連絡をとり、本領にも屋敷をもち、農業経営を続けていた百二十人の家臣の屋敷をすべて焼くように命じている。
    ●大うつけ(70頁)
    一言でいえば、信長が異相だったということになる。世間一般の行儀風俗とは異なる行動をしていたことを、ここでは異相と表現しているわけで、要するに、殻を破った行動、既成の秩序からはみ出した行動が「大うつけ」とよばれるもとだったというのだ。
    ●家中統制(173頁)
    足利義昭のための二条城の普請現場において、女性にたわむれた兵を一刀のもとに斬り殺したり、果物のかすを捨てなかったというだけの理由で少女が斬り殺されたりしたという例がよく知られている。また、きわめつけは、安土城の女中が、信長の留守をよいことに桑実寺に遊山に出かけ、それをかばった桑の実寺の長老とともに成敗された一件である。
    ●几帳面(176頁)
    信長が道路を拡幅し、松並木と柳並木を植えさせたとき、もう一つの命令を出していた。
    「所々に箒を懸け、近隣の村から人々は常に来て道路を清掃するように定めた」というのがそれである。

    ☆関連図書(既読)
    「国盗り物語 一」司馬遼太郎著、新潮文庫、1971.11.30
    「国盗り物語 二」司馬遼太郎著、新潮文庫、1971.11.30
    「国盗り物語 三」司馬遼太郎著、新潮文庫、1971.12.20
    「国盗り物語 四」司馬遼太郎著、新潮文庫、1971.12.20
    「安土往還記」辻邦生著、新潮文庫、1972.04.25
    「流星 お市の方(上)」永井路子著、文春文庫、1982.09.25
    「流星 お市の方(下)」永井路子著、文春文庫、1982.10.25
    「図説 織田信長」小和田哲男著、河出書房新社、1991.12.20
    「下天は夢か 一」津本陽著、講談社文庫、1992.06.15
    「下天は夢か 二」津本陽著、講談社文庫、1992.06.15
    「下天は夢か 三」津本陽著、講談社文庫、1992.07.15
    「下天は夢か 四」津本陽著、講談社文庫、1992.07.15
    「下天は夢か 信長私記」津本陽著、新潮文庫、1994.09.01
    「信長」秋山駿著、新潮文庫、1999.12.01
    「信長燃ゆ〈上〉」安部龍太郎著、日本経済新聞社、2001.06
    「信長燃ゆ〈下〉」安部龍太郎著、日本経済新聞社、2001.06
    (2014年3月12日・記)
    【表紙から】
    織田信長は「いきなり降臨した天才」ではない。時代の必然から生まれたのだ―。桶狭間の合戦、楽市楽座、抜擢人事、兵農分離、天皇対策、比叡山焼き討ち、宗教観、本能寺の変……信長に特徴的な数々の戦略・政策・事績を、最新の学界の成果を取り入れながら、戦国期歴史学の第一人者が検証する。天才を必要とする閉塞状況の現代にこそ読まれるべき名著。『信長徹底分析十七章』改題。

  • 織田信長と言う人物は本当に、時代の寵児とか怪物とか言われ、その短い生涯もあいまって非常にこういった分析本がでているし、もっとも日本人に愛されている歴史上の人物だと思う。

    かくいうあたしも大好きで、横にいたら3分くらいで切り殺されるんだろうなと思いつつ、この人にまつわる小説なども多く読んでいる。例えばマンガで言えば信長交響曲、小説であれば信長―あるいは戴冠せるアンドロギュヌス などなど。

    この本は最初に分析角度を17とし、分析を加えてゆくというので面白いと思って読み始めたのだが、結果として通常の分析と特に差異のないものでがっかりだった。最初は丁寧に読んでいたが後半めっきりナナメ読み。ふーむ。

    たまに思うのだけど、世の中にこれだけ血液型による分析とか性格判断だとかあまたの本があり、かつネットを見れば有象無象の通称・専門家たちがことあるごとに事象を語っているのに、どうして歴史上の分析だけはこうも、事実(いや史実か)をずらっと机に並べて、あとは言い方悪いけど「こうだと思う」的な推測がまかり通っちゃっているんだろう。本当に不思議。

    例えば血液型分析だってあってもいいと思うし、あるいは持病や死亡時の症例などから精神分析や心理分析が加えられたっていいと思う。色の好みや戦闘の方法などから、戦術以上に性格や嗜好がわかってりしないのかしら?と、思うのだけど。

    いつだってプラクティカルに分析が叫ばれるのに、歴史だけはなんか、あて勘みたいなのがアタリマエってのがあたしにはひどくフシギだ。もちろん歴史だから真実がすべて描かれているとも限らないし事実のほどは定かではないというのはあると思うけど、でも、史実もあいまい、分析もあいまい、よりは片方(後者)にそこそこ裏づけがあるほうが少しでも精度があがる、なんてことないんだろうか。

    脳科学者による、とか、臨床心理学から紐解く、とか、そういった分析の加味された歴史本、ないのかな?あたしが不勉強で、知らないだけなんだろうか。

  • 織田信長は「いきなり降臨した天才」ではない。
    時代の必然から生まれたのだ。
    最新の学界の成果を取り入れながら、戦国期歴史学
    の第一人者が検証する。

    最新の学界の成果を取り入れたとあるが、参考文献
    一覧が無いため、何を参考にしているのかがわから
    ない。(史料には本文中で言及がある)
    学者先生の著作ゆえに残念なところである。
    天才ではないといいながら、信長を絶賛している事
    に変わりはない。
    まあ、たしかに信長はすごいのかもしれないが、
    本書を読んだからといって、従来型の信長像が一新
    される訳ではない。

    本書は信長に学ぶ的なビジネス書によくあるような、
    匂いを醸し出している。訴える説の良しあしは別とし
    て、脇田本のような重みに欠けるのは残念なところで
    ある。

    気になった点がいくつかある。著者は荒木村重の謀反
    の原因として、荒木が摂津守護であり、本来なら信長
    より上で、格下の信長家臣の軍事指揮下に入ることを
    快く思っていなかった事が伏線であったと推定してい
    る。しかし、元は池田家家臣だったのが信長に取り立
    てられ、摂津の有力大名となった事を考えると、成り
    立つ話ではない。

  • 08.11.2

  • 平成21年5月7日読了。

  • 好きな戦国武将ランキングのベスト3に必ず入る織田信長。
    その信長をいろいろな分析視角と「最新のデータ」から解きほぐしているのが本書である。
    テレビで特集とか歴史の新事実のようなことをやっているが、そのネタ本になっているのではないだろうか。
    非常に面白い内容であった。

    著者の小和田氏は稀有な存在──例えば「いきなり降臨した天才」と表現される──である信長を、歴史の必然性の流れの中で捉えなおす。
    (以下は「文庫版あとがき」より)
    尾張の歴史的地理的環境、すなわち農業ではなく、商業を基盤としているということ、と
    商人パワーに目覚めていた「二人の父」の存在(織田信秀と斎藤道三)…
    この2つの因子でうまく説明がつくわけで、さすがは歴史学者、理に適っている。

    蛇足になるが、信長も和歌・連歌をたしなんでいた…こんな研究成果もあるらしい。
    能を舞うイメージはあるが、和歌をたしなむとは…
    よくよく考えてみると、当時の「教養」であるから、教育は受けているわけで、当たり前といえば当たり前なのだが。
    まさに研究は日進月歩。
    ボブも負けてはいられない…

  • 小和田の著作を読むのは初めての経験。しかし、この経験が中々いい読後感で、満足できるものであった。もっと早く読んでみるべきだったなぁ。
     手堅い論証があるので、信長の楽市楽座、関所の撤廃、堺市に対する商業の許可を天皇方から得たことなどが、彼独自の政策ではなく、それを全国化しようという意図があったこと、これが、商業政策として秀吉、家康へと受け継がれることになっていくのだそうである。
     土豪・地侍グループは、在郷家臣といって、それぞれの郷村に住み農業経営を行っている。「兵農未分離」の状態であるが、彼らは支配する土地から上がる年貢を「知行」として御恩という形であたえられ、それに対する奉公として軍役を務める形が撮られたのが当時の状況である。が、それに対して、信長には「親衛隊」いたとされる。農村を離れ、信長の馬廻り衆として働くものたちが、桶狭間以前から700人は居たとされる。これらを雇うには資金が必要だが、この資金は、信長の父信秀の津島湊からの収入、信長自信の伊勢湾舟運からの収入でもあった、土地からの年貢などの収入、と湊からの収入によって支えられたのである。

     信長の運のよさを強調していることである。今川義元との「桶狭間」は、信長の厳しい軍律を持つ軍略と「合理性」が生きたが、甲斐の武田信玄が死亡、勝頼を長篠で破る。1570浅井長政が、信長との同盟関係を破り「謀反」を起こす、前方に朝倉義景、後方に浅井長政、の危機である。信長は遁走する、しんがりの残るは、秀吉「金ケ崎の退き口」である。信長の遁走は、これを「武士道」の「負けて生き恥を晒すぐらいなら、潔く切腹」という「武士道」の観念の放擲であるとする。

    また、上杉謙信とも手取川の戦いで敗れる。 
     そして姉川の合戦に至る。織田軍と徳川軍が、連合で浅井長政と朝倉義景を破る。

  • 信長とその時代背景を解説した本。意外と思われる行動の理由がわかるのがいいですね。図書館予約数は0(07/01/10現在)です。

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著者プロフィール

1944 年、静岡市に生まれる。1972 年、早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了。2009 年3 月、静岡大学を定年退職。静岡大学名誉教授。著書本、監修本、多数。NHK大河ドラマ「麒麟がくる」の時代考証も務める。

「2021年 『東京の城めぐり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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