悪人正機 (新潮文庫)

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  • 新潮社 (2004年11月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101289229

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悪人正機 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 読み終わったと言ってしまってよいのかとても悩む本。

     「生きる」ってなんだ?
     「友だち」ってなんだ?
     「挫折」ってなんだ?
     「殺意」ってなんだ?

    …等々。
    いろんなテーマについて吉本隆明さんの考えが語られている。
    きっとずっと考えてきた経緯があって語られているだろう言葉達は、とてもやさしい言葉のように見える。
    なんとなく分かる気がする。
    それがちょっと危ないように思う。

    内容をどの程度理解出来ているかは横に置いてもすごいなと思うのは、
    「…、というのが僕の立場です。」
    と言い切っていること。
    自分の考えをこんなにズバッと、力まず、難しい言葉や表現を使わずに言い切っている吉本さんはむちゃくちゃカッコイイ。
    私もこうなりたい!と心から思う。

    吉本さんの言葉を読んでいると、考えることがすごく大事なことだということに気付く。
    いつもは自分がうだうだと悩んでいることを忘れたいとか、考えても仕方ないとか、なるようになるとか思っているのだけど、やっぱり考えることをやめちゃいけないな。

    1番心に残ったのは、「10年間やれば、とにかく一丁前だって、もうこれは保証してもいい。」という言葉。
    もう、この言葉を信じることに決めてしまった。
    10年間、毎日、意識的にやる。
    そう決意した。
    一丁前になるかどうか分かるのは10年後。はてさて…

  • 個人的に面白いと感じたところは、職業人としての一人前の基準を10年とおく根拠に自己評価の正確さを挙げていたところ。自己評価よりも高いことに手を出すなというのは妙に納得です。また、震災やフランステロ以前の対談でありながら、未来を予感させるような社会情勢の推察は見事でした。

    あとがきでは中学生に読んでもらいたいと綴ってありますが、20代後半~30歳くらいの働き始めて数年したところで出会っておきたかった本。もう少し力の抜けたものの考え方や批判的な見方もできたのかなと。

  • 自分がいかに凝り固まった考えの持ち主かということを痛感した一冊。

    知の巨人、吉本隆明の深い洞察と幅の広い知識、そして新しい知識を追い求める姿勢は是非とも見習わなければ!

    「オウムを排除すべきかどうか?」から始まる「宗教ってなんだ?」の項目が一番引き込まれた。
    宗教と科学の接点というのは、オイラも時々考えていたことなのだ。
    その昔、出張先のビジネスホテルでお化けと出くわした体験を持つオイラは、
    「やっぱりそれは幻なのではないか?」と「いやあれは実際に見たのだ」を行きつ戻りつしていて。
    その葛藤はやっぱり端から見て、単なるオカルトマニアだもんね。

    糸井重里というキャッチャーがいたからこその、わかりやすくそれでいて深遠な一冊。

  • 良かったなぁ。吉本さんの言葉には人間への鋭い目線があって、甘えや不必要な優しさはない。それが人への公平さというか、真面目さを感じさせる。世の中の本は現実に則さないほど厳しすぎたり、優しすぎたりするから。なんでもない毎日に一本の串をさすような本。

  • それほどためになった感じはしないが、「ユーモアなんて必要ねえ」と言い切る吉本隆明の考えに、ユーモアは善なるものと信じ切っていた私は「そういう考えもあるのか」と思わせられた。私はユーモアはあったほうが絶対いいなあという考えだ。

  • 「子どもの「書く力」は家庭で伸ばせるby高濱正伸&竹谷和」の中で、著者が小6の頃からずっと悩みだったことへの答えをくれた本として紹介。

  • 吉本さんは、自分自身や自分の暮らしに足を置き、自分の考えに基づいてぽつりぽつりと話をしている。自分があるからどんなことでも多く、少なく語ることができる。

    この本では、生きる、ということや、人助けをする、など広くいろいろなことが語らいのテーマとなっているけれど、自分というものを高めつつも、怪しげな風潮に左右されず、人には自由に動いてもらえるような、そんな人を目指しているように思われた。

  • インタビューものだが、糸井さんが会話に入る形式じゃないのがいい。糸井さんが章ごとにまとめを書いていて、その大衆的な視点に安心するし、学ぶこともある

  • 親鸞とは全く関係ありませんでした。
    「生きる」「友だち」「挫折」「殺意」「仕事」「物書き」「理想の上司」「正義」「国際化」「宗教」「戦争」「日本国憲法」「教育」「家族」「素質」「名前」「性」「スポーツ」「旅」「ユーモア」「テレビ」「ネット社会」「情報」「言葉」「声」「文化」「株」「お金」
    について吉本隆明が語ったことを、糸井重里がまとめたもの。

    “僕ら日本人っていうのは、過剰に気を使いすぎる。だから、こう言っちゃ悪いんだ、みたいになっちゃうんですね。人それぞれ違う考えがあるっていう、相容れない者同士のルールってのが、できてないんじゃないかな。”
    「殺意」について。
    一見殺意とは無関係な事を言っているようではあるが、過剰に気を使うということはストレスになる。こんなに気を使っているのに報いられなかったとき、殺意が生まれることもある…のかな。
    ただし殺意を持つことと殺害することは全然別のこと。

    「正義」ってなんだ?
    “自分だけがストイックな方向に突き進んでいくぶんにはかまわないんですけど、突き詰めていけばいくほど、他人がそうじゃないことが気にくわねえってのが拡大していきましてね。そのうち、こりゃかなわねえってことになるわけですよ。”
    そうね。
    正義が大義名分になったあかつきには、ろくなことが起こりゃしないわね。

    「ネット社会」ってなんだ?
    “情報科学系の人たちっていうのはマルチメディア関係のいろいろなことが発達してきたら、要するに人間の精神もそれにあわせて発達するって言ってるんですね。(中略)そりゃおかしいんじゃねえかって僕は思うわけです。そういうものが発達すると、感覚も発達するっていうだけのことで、精神が発達することとは違うよねって。”
    感覚は脳の働き、精神は心の働きだからだそうです。

    でもってマルチメディアの基本にあるのは「利益」と「損害」だそうです。
    言われてみれば確かにそうかも。
    以前からちょっと気になっていたのですが、最近本当に「損得勘定」で行動する人が多い。
    確かに損はしたくないけど、そんなに得したいですか?って言うくらい細かなところも「損得」を計算する。
    このアプリをこう使うと「得」
    これを知らないのは「損」
    世知辛い世の中になったもんじゃのぅ。

    吉本隆明の思想の全てに賛同するわけではないけれど、何事にも捉われたくないという強い意志、風通し良く生きたいという思いはよく解る。
    そしてなるべく多くの視点で物事を見つめたいと私も思っている。

  • 死ぬほど深く思考をこねくり回さないとたどり着かないような結論が、とても簡単な言葉と、わかりやすい説明で書いてある。
    目からウロコなところもたくさんあって、なんども心が軽くなるように感じたけど、自分で同じように思考を辿ってそこに行き着くまで、本当の意味ではきっと理解できないんだろうな。

  • 2016/10/22:読了
    -----
     P240ページ 『「ネット社会」ってなんだ』での糸井さんによる”吉本さんの発言要旨”ページ。
     「ITが発達することと、人間の精神の発達にはなんの関係もないのだ」という考え。こりゃ、すげぇー。
     「感覚が発達することは、魂の発達を意味しない。」
     「ITの基本にあるのは”利益”と”損害”だ、という視点は理解できるが、なにか過大に人間が変化すると思おうとしているのは遊びの範疇なんだ」と。
    -----
     P250ページ『「情報」ってなんだ』での糸井さんによる”吉本さんの発言要旨”ページ。
     「情報は、基本的には新聞でだいたい間に合います」
     「酸素と水素を見つけられれば、水ができる」
     「分析したい問題を水としたら、酸素にあたる情報はどれで、水素に当たる情報はどれか、ということをうまく見つけることができれば、どこの国のどんな問題だって、だいたい当たるものだ」と。 

  • オッと思う言葉もあるが、集中して読まないと忘れてしまう。あと、いまの人の感覚では分からないなーという内容もある。分かったふりをせずに何回か読んだ方が良さそう。

    以下、気になった言葉。
    親鸞曰く、人助けなんて誰にもできない
    自分の記憶の中にのみ、友達関係は残る
    終戦の日、捉えどころのない挫折感を味わった
    自己評価よりも下のことなら何でもやっていい
    借金も財産と思えなければ、金持ちにはなれない

  • p.21 たどりついたのは、「死」は自分に属さないという考え方
    老いたり体が不自由になったりした次に死が訪れるんだという考え方は、本当は間違いじゃないかっておもったんですよ。
    これは形而上的には考えていたはずなんですけどね、肉体としての死というものは、どうやら自分には属してないらしいぞということが実感的にわかったんで、それまでの考えを修正したわけです。
    …死が自分のものじゃないってことが言えるだけでね。でもそれは十分、生きるための「抜け道」にはなったんですね。

    p.26 鈍刀のほうが、実はよく切れるんだぜ
    鋭いというか、鋭敏であるということを、僕はあんまり高い評価はしていないんですよ。
    小林秀雄っていう批評家が、よく切れる刀っていうのは刃が鈍なんだっていうことを言ってます。……鈍刀のほうがよく切れるんだってことを本当によく知ってる、それが、小林秀雄の批評家としてのすごさなんで、すごいっていうのは、別に、鋭さでも学識でもないってことになってきちゃうんですね。

    p.33 「人助け」なんて誰もできないって親鸞は言ってる
    親鸞は、いかに人間が善意を持って目の前の人を助けようとしても、助けおおせるもんじゃない、と言ってるんです。……もちろん、その時に気が向いたっていうか、その気になったら、まあ助ければいいし、気が向かなかったら助けなけりゃいい。それだけのことなんだっていうんです。善い悪いの問題じゃない、と。
    ……助けおおせられない——と。仏教のことでも、修行なんかするな、お経なんか読むな、仏像もいらねえ、お寺なんかもってのほかだ…ってわけですからね。

    p.77 日本語の極限まで行っちゃうのがプロの詩人だ
    これから詩をやるんだってことで言えば、参考になるのは先に言ったプロの三人、谷川俊太郎さんと、田村隆一さん、吉増剛造さんですね。吉増さんは、ものすごいですよ。この人にかかると、何の意味もない「、」や「。」という句読点が、もう、何か別の意味を持っちゃうんですから。

  • 糸井重里が、吉本隆明に人生や社会の関する様々なテーマを投げかけ、その回答をまとめたもの。
    書名の「悪人正機」とは、『歎異抄』第三条に「善人なほもつて往生をとぐ、いはんや悪人をや」と語られ、「阿弥陀仏の本願は悪人を救うためのものであり、悪人こそが、救済の対象だ」とする、浄土真宗の親鸞の念仏思想の神髄とされるものであるが、逆説にこそ真理があるという本書のアプローチを示しているのであろう。
    本書では、現代社会は、一見正しそうに見えたり利口そうに見えたりするが、どこかウソ臭い言葉や考え方が充満しているという糸井氏が、「生きる」、「友だち」などの28のテーマについて、吉本氏の考えを聞いていく。そして、吉本氏の “ザラザラしていたり意表を突くような逆説に見える”言葉は、ごまかしたりウソをついていないからこそ、聞いていて気持ちがいいという。
    例えば、吉本氏は以下のように語るのである。
    「生きる」~今の時代、「これがいい」という生き方なんてない。
    「友だち」~「純粋ごっこ」の時期を除けば、この世は全部ひとりひとり。結局、人生というのは孤独との闘いなんだ。
    「正義」~アメリカの正義は主観的なおせっかいだ。
    「宗教」~「信ずること」と「科学的に明瞭なこと」をつなげたい。 等
    辺見庸は、『瓦礫の中から言葉を』の中で、東日本大震災直後に民法テレビ各局が繰り返し流した、ACジャパン(旧公共広告機構)による「あいさつ」、「楽しいなかま」、「ごめんね」、「思いやり」などの単語だけのCMの不気味さを指摘しているが、表面上誰もが否定しない単純な言葉や考え方を、敢えて自分に引き寄せて考え直してみることの大切さを再認識させてくれる、吉本節満載の一冊である。
    (2006年5月了)

  • 新聞にあった詩を読んで気になった人。よしもとばななの父親だとは知らなかった。なかなか面白い持論の持ち主だな、と。

  • 【別に皮肉れものだなんていってませんよ 】

    カブキの世界で自分の常識をぶち破らねば。雛鳥は目玉焼きになる。たかがTwitter。

  • 面白い。こういう先人とお話する機会がもっとほしい。

  • 「例えば、「生きる」ってなんだ? という問いにいわく「泥棒して食ったっていいんだぜ」――。ほかにも「働くのがいいなんてウソだよ」「円満な家庭なんてねえんだよ」「有名になるっておっかないことだ」……。糸井重里が、吉本隆明から引き出すコトバの数々。驚きに充ちた逆説的人生論だ。「今、中学と大学が危ない」と考える吉本さんが、若者から大人まで元気づけてくれる一冊である」 文庫本裏表紙より。
     この連載が読みたくて、週刊プレーボーイ買ってたなぁ。本になって嬉しい。読めば、「え、こんな物の見かた、考えかたがあるの!」と感心したり、唸ったり、励まされたり。糸井さんが良い聞き手となって、吉本さんの本当の言葉を伝えてくれる一冊です。

  • 難解じゃなく読みやすくとても良かったです。
    自己評価以上の以下の〜ってところが印象であったり、未来がわかれば過去が明確になっていくとか…

    読み応えありました。

  • 2014/11/21
    今読んでる
    糸井重里ファンはだいたい吉本隆明ファンさ。

  • “「殺意」ってなんだ?” で語られた、正常・異常の基準は法律論ではない。と言う観点が、最近起きた合法ドラッグ事件と繋がって、深く考えさせられた。 『おかしいんじゃねえか。』吉本隆明氏のべらんめえ口調が本質を厳しく突き、そこを少し馴染みやすく、糸井氏が翻訳して成り立つバランスが絶妙。

  • 吉本隆明さんの物の見方が独創的でおもしろかったです。共感できる部分が多々ありました。

    真面目すぎて楽しみを失うような人生はよくない。
    一番大切なのは心とか魂の問題で、それ以外は枝葉にすぎない。
    情報科学が発達しても精神は発達しない。
    正しさは存在しないし、正しさを追求するあまり他の人に攻撃的になっていないか自省的でないもいけない。

    など。

  • 糸井重里氏による吉本隆明氏のインタビュー録。
    全てが腑に落ちているわけではないけど、情報の取り方やいろいろなものの見方など、なるほどなぁというものも多々ある。
    もう少し大人になったら、もう一度読み直してみたい。

  • 2年以上ほしい物リストに入ったまま放置で、今回残念なニュースをきっかけに読むことになってしまった。

    個人的には、同調できないところもあるけど、例え奇抜で反論されそうな意見でも、自分がそうと思ったら、堂々と言ってのけるところがかっこいい。

    反対意見を予測して前置きをしたりするあたしはかっこわるいなって思った。

    考えなんて変わったっていいんだから、たらたらと前置きなんかせずに今思うことだけをすぱっと言いきれる潔さがほしいなあ。


    自分の頭で考えて自分の言葉をしゃべる人には「人間」を実感する。人間でありたいし、人間と関わっていたい、とつくづく思いました。

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