悪人正機 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101289229

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  • 「吉本隆明(話し手)」と「糸井重里(聞き手)」の対談集『悪人正機』を読みました。

    「吉本隆明」に関する作品は初めて読みますね。

    -----story-------------
    「ほとんどの人が本当は友達ゼロ」 「役に立たない旅でいいじゃないか」こんな先生が欲しかった!
    ──絶妙の掛け合いから生まれた逆説的人生論。

    例えば、「生きる」ってなんだ?という問いにいわく「泥棒して食ったっていいんだぜ」―。
    ほかにも「働くのがいいなんてウソだよ」 「円満な家庭なんてねえんだよ」 「有名になるっておっかないことだ」…。
    「糸井重里」が、「吉本隆明」から引き出すコトバの数々。
    驚きに充ちた逆説的人生論だ。
    「今、中学と大学が危ない」と考える「吉本さん」が、若者から大人まで元気づけてくれる一冊である。
    -----------------------

    「糸井重里」の質問に「吉本隆明」が自由奔放に答える形式の対談です。

     ■ほんとのことを言う人との時間――まえがき 糸井重里
     ■「生きる」ってなんだ?
      「泥棒して食ったっていいんだぜ」と言われたことがある
      たどりついたのは、「死」は自分に属さないという考え方
      頭だけじゃダメ。手を使わなきゃ何もできない
      鈍刀のほうが、実はよく切れるんだぜ
      今の時代、「これがいい」という生き方なんてない
     ■「友だち」ってなんだ?
      「人助け」なんて誰もできないって親鸞は言ってる
      ケンカはしたほうがいい
      自分の記憶の中にのみ、友だち関係は残るんだ
      「純粋ごっこ」の時期を除けば、この世は全部ひとりひとり
      結局、人生というのは孤独との闘いなんだ
     ■「挫折」ってなんだ?
      終戦の日、捉えどころのない挫折感を味わった
      六〇年安保の時も、実は、もみ合いながら醒めていた
      挫折なんて、しようと思ったってできないんだ
     ■「殺意」ってなんだ?
      「殺意」は今の社会の象徴的な感情かもしれない
      専門家の言う「正常」の範囲は、もう現実には通用しない
      「殺意」は持つだけなら異常でもないし、法的にも問題なし
     ■「仕事」ってなんだ?
      なんで仕事ってするんだろう
      働くのがいいなんて、それはウソだよ
      さしあたり自分の機能を高めていくのが問題だ
      仕事がほんとうにイヤになったらどうする
     ■「物書き」ってなんだ?
      僕が詩を書き始めたのは、自己慰安からだった
      日本語の極限まで行っちゃうのがプロの詩人だ
      とにかく、あんまり焦らないほうがいいぜ
     ■「理想の上司」ってなんだ?
      仕事ができて、自由な雰囲気をつくってくれる人なんだろうな
      上司以上に大切なのは、実は「建物」なんだ
      いいリーダーにはなれないけど、いい親になら……
     ■「正義」ってなんだ?
      善悪の基準はどこにある?
      アメリカの正義は主観的なおせっかいだ
      そんなに「正義」はすばらしいか
     ■「国際化」ってなんだ?
      都会には慣れておいたほうがいい
      欧米から学ぶものは、もう何もない
      フランスの国際化は、今スゴイところまで行っている
      近代国家を超えるときは、過去も超えなきゃいけない
     ■「宗教」ってなんだ?
      オウムは排除すべきか
      実は唯物論より宗教のほうに、はるかに興味がある
      「信ずること」と「科学的に明瞭なこと」をつなげたい
     ■「戦争」ってなんだ?
      戦争の現実は、イメージとは全然違う
      これからの日本に、果たして革命は起こるか
      現在は日本の「第二の敗戦」だと思ってる
     ■「日本国憲法」ってなんだ?
      どの国と比べても、日本の憲法は圧倒的にいい
      核戦争が起こったら、という考え方がダメ!
      これから日本がとるべき積極的な国防とは?
     ■「教育」ってなんだ?
      大学に行くのは、失恋の経験に似ている
      今、中学と大学が危ない!
      知識も、細部のところでずいぶん余計なことをしている
     ■「家族」ってなんだ?
      円満な家庭なんて、そんなものはねえんだよ
      家庭の数だけ、実験は繰り返される
      子供のために、一年だけは我慢せえ!
      浮浪者的「自由」への憧れは、誰にもある
     ■「素質」ってなんだ?
      素質が問題になるのは、一丁前になってから
      才能や素質が、じゃまになるってこともある
      自分の領域を知るって難しい
      モテる、モテないは距離の問題なんだ
     ■「名前」ってなんだ?
      そもそも「名前」ってのは、いったいなんなんだ
      名前には人間をおかしくさせる何かがある
      有名になりたい気持ちは、宝くじを買うときの気持ちと同じ
     ■「性」ってなんだ?
      性に関する表現の見方? よくわかりません
      性的な表現への制約は、「昔返り」に対する危機感から?
      性の規制は、賛成・反対のレベルでは考えようがない
      ゲイは「純粋ごっこ」のひとつのカタチだと思う
     ■「スポーツ」ってなんだ?
      野球は、選手の心理状態を見るのがおもしろい
      典型的なスポーツマンは、ちょっと苦手だな
     ■「旅」ってなんだ?
      「役に立たない旅」でいいじゃないか
      無人島に持っていく一冊は『国歌大観』
     ■「ユーモア」ってなんだ?
      ユーモア? 僕自身にとっては必要ないな
      「ユーモア」は、生きる力そのものに関わっている
      「ユーモア」ってのは、小さい頃からの修練によるのかも
     ■「テレビ」ってなんだ?
      テレビを見るのは、たださみしいから
      テレビに出ないのは、なぜ?
     ■「ネット社会」ってなんだ?
      メディアの発達と人間の精神の発達は、無関係だ
      マルチメディアの基本にあるのは、「利益」と「損害」だ
      重要なのは、人間の魂に関わることだけ
     ■「情報」ってなんだ?
      「酸素」と「水素」を見つければ、「水」ができる
      目の当たりにしたほうが、見誤ることもある
     ■「言葉」ってなんだ?
      「J文学」はパートの文学。時間給でやってる感じ
      日本語のリズムと使われ方が、今、変わりつつある
      方言と外国語の違いは、地続きだと思っている
      言葉の成立には、全然根拠がないんだ
     ■「声」ってなんだ?
      綾戸智絵の声には、とにかくびっくりした
      折口信夫は、『源氏物語』に「声」を感じた
     ■「文化」ってなんだ?
      違う要素がうまくくっついているのが、「おしゃれ」かな
      これからの文化を支えるのは、第三次産業的な「週刊誌」だ
     ■「株」ってなんだ?
      株は社会における一種の呼吸作用だ
      本気でやらなきゃ、やっぱり儲かんねえぞ
     ■「お金」ってなんだ?
      借金も財産と思えなければ、お金のチャンピオンにはなれない
      お金に感じる「得体の知れなさ」ってなんだろう
     ■病院からもどってきて
      リハビリ訓練は、バカバカしいからしたくない
      意識的であるうちは、だめだ
      大まじめは、だめです
      自然体で続けるということ
      自己評価より下のことを
      「逸らさない」という魅力
      病院は、監獄と変わらないじゃないか
      管理されている者の利益を第一とする
      正直に、つまらないことを、言う
      わかったってどうってことない話は、もう結構
      数百万年前から数十万年前までのあいだ
      中でもって、中がわかるということ
     ■あとがき 吉本隆明


    「吉本隆明」の一般的な常識に囚われないざっくばらんで斬新な意見は面白かったし、そのひと言ひと言に惹きつけられましたね、、、

    読みながら、どんどん引き込まれる感じ… 直接、話を聞いてみたくなりました。


    勇気づけられ、元気をもらった言葉もありましたね、、、

    全ての意見に賛成ではないけれど、私とは全く違う新たな視点・価値観でモノゴトを観ることが刺激になりました。

  • 14年ぶりぐらいに読んだ気がするのと、再読してからも1ヵ月ぐらいに経ってるけど、久々に読んでも面白かった!吉本隆明が自分のことを正直に語ってる感じが好きだなぁ・・・なかなか自分じゃできないんだよなぁこれが。それと、まず語る場面が無いか(笑)

  • 吉本ばななさんのお父さんであることは知っていたが、この対談の中で語られたオカルト的なことへの関心については、親子の繋がりを感じた。
    「信じること」と「科学的に明らかなこと」をつなげようとすること、そのあやふやなところを考えていくことに共感する。

  • 「ほとんど全部の人が本当は友だちがゼロだと思うんです」

    「挫折を知らないからダメだって言われても,…「わかりました。これから挫折してみます」ってことを言えるわけじゃないし…」

    「大学は,まあ,国立公園みたいなところなんですよ」

    「10年やれば誰でも一丁前になるんです。…毎日やるのが大事なんですね。要するに,この場合は掛け算になるんです。例えば,昨日より今日は2倍巧くなったとしましょうか。で,明日もやると。そうすると2×2の4倍で,その次の日もやったら,また×2で8倍になる。だけど毎日やらずに間を空けると,足し算になっちゃうんです。…「2+2+2…」と「2×2×2…」と長くやればやるほど,全然違ってきちゃうんですよ。」

    「なるほどなぁ」っていうところはもちろんたくさんあるし,「えっ!そんな考え方ありなんですか?」っていう発言も山のようにあって,目からウロコとはまさにこのことだなぁと思った。
    大秀才といわれた夏目漱石だって,ろくに勉強せずにやんちゃばっかりしていて,一度落第しているんだという話もおもしろかった。
    要するに,「鈍な刃のほうが,実はよく切れるんだぜ」っていうこと。

    高校の音楽の先生が「糸井のアホが…」みたいなことを言っていて,僕もずっとそういう認識でいたけれど,この本に関してはGood Job!だな。

    吉本さんの意表を突く言葉の数々は肩の力を抜いてくれます。

  • いろいろイヤんなっちゃったら、読むといい。
    哲学とかきれいごとがないから、面白い。生き方をさらっと。吉本孝明リズムが心地よい。
    「生きるのに本当に困ったら、盗んだっていい」
    いろいろ語弊があるかもしれないが、ユーモラスな人生の教科書です。

  • 吉本隆明という人が考えたことの帰結は、人によって意見が合ったり違ったりするかもしれないですが、それよりも、感じること考えることに素直でいるそのあり方に、なんか元気をもらいました。

  • この2人に共通していることは、自分が思っていることを正直に言葉にすることに、ものすごく自覚的なこと。当たり前のようで実は難しい。それらしい結論というファーマットに自分の本当に思っていることをあてはめてしまう、そのために自分の本音を少し歪めてしまってることのほうが多いと思う。糸井重里の用意したお題に対し、時に「よくわかんねぇです」「考えたってしょうがない」という結論を出す吉本隆明が面白い。個人的に印象に残ったのは、どんなことでも、きちんとでなくても10年毎日続けていれば、その仕事で一人前になれる、という話。その根拠は10年続けている人の自己評価は正確だっていうこと。なるほど一人前っていうことは、正しく自己評価できるっていうことと言い換えてもいいってことなのだな。自己評価より高く評価される仕事をやってはいけない、自己評価より低く評価されることは何をやってもいい、っていう話も面白かった。



  • mmsn01-

    【要約】


    【ノート】

  • 考えが偏らないようにするには読んでおいたほうがいい。最近、考えることをおろそかにしてるなー・・

  • 雰囲気かな…
    わかるものもある

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著者プロフィール

1924年、東京・月島生まれ。詩人、文芸批評家、思想家。東京工業大学工学部電気化学科卒業後、工場に勤務しながら詩作や評論活動をつづける。日本の戦後思想に大きな影響を与え「戦後思想界の巨人」と呼ばれる。著書多数。2012年3月16日逝去。

「2023年 『吉本隆明全集33 1999-2001』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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