悪人正機 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101289229

作品紹介・あらすじ

例えば、「生きる」ってなんだ?という問いにいわく「泥棒して食ったっていいんだぜ」-。ほかにも「働くのがいいなんてウソだよ」「円満な家庭なんてねえんだよ」「有名になるっておっかないことだ」…。糸井重里が、吉本隆明から引き出すコトバの数々。驚きに充ちた逆説的人生論だ。「今、中学と大学が危ない」と考える吉本さんが、若者から大人まで元気づけてくれる一冊である。

感想・レビュー・書評

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  • 読み終わったと言ってしまってよいのかとても悩む本。

     「生きる」ってなんだ?
     「友だち」ってなんだ?
     「挫折」ってなんだ?
     「殺意」ってなんだ?

    …等々。
    いろんなテーマについて吉本隆明さんの考えが語られている。
    きっとずっと考えてきた経緯があって語られているだろう言葉達は、とてもやさしい言葉のように見える。
    なんとなく分かる気がする。
    それがちょっと危ないように思う。

    内容をどの程度理解出来ているかは横に置いてもすごいなと思うのは、
    「…、というのが僕の立場です。」
    と言い切っていること。
    自分の考えをこんなにズバッと、力まず、難しい言葉や表現を使わずに言い切っている吉本さんはむちゃくちゃカッコイイ。
    私もこうなりたい!と心から思う。

    吉本さんの言葉を読んでいると、考えることがすごく大事なことだということに気付く。
    いつもは自分がうだうだと悩んでいることを忘れたいとか、考えても仕方ないとか、なるようになるとか思っているのだけど、やっぱり考えることをやめちゃいけないな。

    1番心に残ったのは、「10年間やれば、とにかく一丁前だって、もうこれは保証してもいい。」という言葉。
    もう、この言葉を信じることに決めてしまった。
    10年間、毎日、意識的にやる。
    そう決意した。
    一丁前になるかどうか分かるのは10年後。はてさて…

  • 理想的な上司とは…
    自由な雰囲気、あんまり文句言わない
    よくできる 何でも知ってやがんなっていうくらい仕事がよくできる

    「仕事が良くできる人で、細かく干渉しない。
    自由な空間をつくれるっていう人が理想の上司なんだと思いますね」

    それができればいいよなあ。

  • 私の好きなユーチューバー(vlog)の方が、
    糸井重里さんを大好きだったのが手に取るきっかけでした。
    20代に糸井さんの本を読んだこともありましたが、
    すっかり離れており、どんな書籍が発刊されているかわからず、
    amazonで糸井重里を検索した際に、本作に出会いました。
    タイトルと装丁がとにかくインパクト大です。

    本作は、吉本隆明氏へのインタビューを取りまとめおり、
    各項目ごとに糸井さんのコメントが差し込まれてます。

    出だしのテーマは「生きる」ってなんだ?から始まります。他には、「友だち」「挫折」「殺意」「仕事」「家族」「宗教」「文化」「言葉」など。
    世代というか、性格というか、
    全く違う感じの言葉に見えるんです。
    内側に糸井さんとのツーショットも掲載されていて、
    親戚のおじいちゃんの話を聞いているような気持になりました。笑

    最初はただただ新鮮で、
    へー、そうなのかあ、こんな考え方もある、と
    面白く読んでいました。

    特に、「挫折」について書かれており、
    その中に第二次世界大戦の敗戦が印象的でした。
    これは当時を生きていた人にしか感じえない感覚なんだろうな、と。
    多くの人の心に何某かの影響を与えたんだろうな、というのがとても伝わってきます。

    とても好感や親しみを覚えるページもある一方、
    ん?これは…?と言葉にしにくい違和感や、
    私とは違うな、この考え方は共感できないかも、
    という部分もあります。
    最後の方は、特にそれが強かったです。

    ただ、どんな世代にも共通しているなと思ったのは、
    ・さしあたり自分の機能を高めていくのが問題だ
    ・素質が問題になるのは、一丁前になってから
    という項目でした。

    才能や素質ではなく、やるかやらないかが大事だという部分には背中を押された気持ちでした。

    そしてこの方、本当に独特だなあと思っていましたが、
    よしもとばななさんのお父様なのですね。
    途中で知ってびっくりでした。

    この本を読んでいる今の私は36歳ですが、
    10年後に読んだらどう思うのかなあ、と思う一冊です。

  • 個人的に面白いと感じたところは、職業人としての一人前の基準を10年とおく根拠に自己評価の正確さを挙げていたところ。自己評価よりも高いことに手を出すなというのは妙に納得です。また、震災やフランステロ以前の対談でありながら、未来を予感させるような社会情勢の推察は見事でした。

    あとがきでは中学生に読んでもらいたいと綴ってありますが、20代後半~30歳くらいの働き始めて数年したところで出会っておきたかった本。もう少し力の抜けたものの考え方や批判的な見方もできたのかなと。

  • 自分がいかに凝り固まった考えの持ち主かということを痛感した一冊。

    知の巨人、吉本隆明の深い洞察と幅の広い知識、そして新しい知識を追い求める姿勢は是非とも見習わなければ!

    「オウムを排除すべきかどうか?」から始まる「宗教ってなんだ?」の項目が一番引き込まれた。
    宗教と科学の接点というのは、オイラも時々考えていたことなのだ。
    その昔、出張先のビジネスホテルでお化けと出くわした体験を持つオイラは、
    「やっぱりそれは幻なのではないか?」と「いやあれは実際に見たのだ」を行きつ戻りつしていて。
    その葛藤はやっぱり端から見て、単なるオカルトマニアだもんね。

    糸井重里というキャッチャーがいたからこその、わかりやすくそれでいて深遠な一冊。

  • 良かったなぁ。吉本さんの言葉には人間への鋭い目線があって、甘えや不必要な優しさはない。それが人への公平さというか、真面目さを感じさせる。世の中の本は現実に則さないほど厳しすぎたり、優しすぎたりするから。なんでもない毎日に一本の串をさすような本。

  • 面白かったところ
    ・24時間遊んで暮らすのが理想。そういう観点で言うと、仕事も遊びでないといけない。
    ・何でも10年間、毎日やればモノになる。たまにしかやらないと、能力は足し算でしか増えていかないが、毎日やれば掛け算で増えていく。
    ・平安までは母系社会だったが、武士の時代になって男系的な社会に傾いていく。筆者は、明治期にキリスト教的な男女平等の観念が入ってきて、完全に男系的な社会になったと言っている。これが今日まで続いているわけだが、最近になって性に対する規制が強まってきているのは、社会が母系的な方に戻りつつあるからではないかと話者は見ている。
    ・精神は内臓と繋がっており、感覚は大脳と繋がっている。
    だから、内臓の調子を整えることが精神の安定と繋がったりしているのかな?
    ・何でも意識しないとできないうちはダメで、無意識に出るようにならないといけない。言語とかまさにそうだなぁと思う。

  • 正しそうに見えるや情報が氾濫している現代。さまざまなテーマについて吉本隆明さんが本当のことを教えてくれる大人の教科書。
    「泥棒して食ったっていいんだぜ」という言葉に出会い生きるのが楽になった。
    「ほぼ日」スローガン、Only is Not lonely(たったひとりということは、孤独だっていうことじゃない) にもつながる一冊。

  • 3.8

    吉本隆明読んでみるか〜

  • 隆明(りゅうめい)というとわれわれの世代では神様のような存在だ。その日本思想界の巨人、吉本隆明が糸井重里との対談のなかで、「よく、『俺、友だちたくさんいるよ』なんて言うヤツいるけど、そんなの大部分はウソですよ。(笑)」と語っている。嬉しくなって本書をいっきに読んだ。

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著者プロフィール

1924年、東京・月島生まれ。詩人、文芸批評家、思想家。東京工業大学工学部電気化学科卒業後、工場に勤務しながら詩作や評論活動をつづける。日本の戦後思想に大きな影響を与え「戦後思想界の巨人」と呼ばれる。著書多数。2012年3月16日逝去。

「2023年 『吉本隆明全集33 1999-2001』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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