銃 (新潮文庫 な 56-1)

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  • 新潮社
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感想 : 41
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  • Amazon.co.jp ・本 (196ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101289519

感想・レビュー・書評

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  •  この人の書かれる陰鬱、心の闇、憂鬱、絶望、無機質、虚無感……こんな雰囲気が個人的に非常に好きです。
     偶然銃を手に入れた主人公が徐々に銃に支配されていく描写は凄い。
     そして読んでるこっちまで主人公の狂気じみた好奇心に引きずられ、「何だよ、さっさと人間を撃ってみろよ、このチキン野郎め」と思ってしまったのが、怖い。

  • なるほど、たしかに最後え!?………ってなりますね。

  • 銃を持ったことでなんでもできるなんて、自然と洗脳されるその物の威力がストレートに伝わる.
    撃ったらどうなるんだろうってもやもや、破裂しそうな一歩前をもっと読みたい.

  • 初めて読む作家さん。
    図書館で見かけて、急に読みたくなって手に取った。

    「普通の」青年が、或る日ふとしたことで拳銃を手に入れる。
    本当に普通に。
    それで何かしようという下心など無く。

    彼はただ、そのフォルムの美しさに惚れぼれした。
    それを「お守り」のように持っているだけで、毎日が楽しくなり、前向きな気持ちになった。
    家に愛する女が待っているように、いそいそと帰って銃を磨く。
    眺める。
    撫でる。
    そう、彼の銃に対する気持ちは、得難いレベルの愛する女を自分の物にしたような…

    しかし、彼の心はだんだんと銃に支配されてくる。
    銃は自分を主張し始めるのだ。
    自分は磨かれるために存在するのではない。
    観賞されるために存在するのではない。
    早く本来の働きをさせて。
    …物がそんな事を考えるはずはないのだけれど…
    青年の心はどんどんと囚われて行く。

    なるほど芥川賞作家、と思った。
    この作品で取ったわけではないけれど、明治~昭和の文豪のような雰囲気を持った文章だ。
    内面に深く染み込むような心理描写が、淡々と書かれているようで、無駄が無くすごい。
    なんとなく現実感が無い感じがする中、聞きこみに来た警察の男だけが、生きている人間のような気がする。
    あとは、夢が醒めた瞬間と言った感じのラスト。
    この終わり方も、出来事としては予想の範囲内だけれど、描写がすごい。

  • 2015 4/28

  • 2014/07/06
    不安や動揺の描写が鮮明。泥酔した時のような気分になる。
    銃という機械が持つ目的に心が乗っ取られていく。携帯電話が無いと外に出られない僕らも同じかもしれない。

  • この人の小説を読むと、胸が苦しくなって息苦しくなり、または悪夢も見たりと眠れなくなるのが苦痛だ(笑)。遮光に続いて2作目だが、文体はもちろん、あらゆる面で主人公が似ている。「私」を客観的に見ている「私」も興味深い。やはり、幼い時の生活環境からの影響か、どこか冷めていて、自分を演じているような主人公。誰にもある人間性。そして、平凡でつまらない日常に非日常的な銃を拾うことにより、それに依存することで感性に化学変化を起こす。最後は救われそうで救われず、やはり、そうなるのも人間性、不安定さがあると思う。

  • 銃を手に入れた事で自由を手に入れたつもりが、逆に捉えられていく様子が面白いと言うか怖いと言うか。バッドエンドだけど。

  • 最後がこれかー!って感じ。すごい。ジェットコースターの最後の下りを思い出す意外な結論が新鮮やった。

  • 読みにくい文章とは、そこに作者の何らかの意図が絡んでいるものである。
    解説に書かれていた人称の使い分けには気付かなかったが読み返せばなるほどと思う。
    一見古びた小説かと思いきや舞台はかなり現代風で少し混乱した。


    銃が何のメタファーであるのか、作者後書きと合わせて考えると興味深い。
    一般的に見て眉をしかめるようなオチかもしれないが、すとんと落ち着く。銃と私の行き着く先はこうでならなくてはならなかったような気もする。

著者プロフィール

一九七七年愛知県生まれ。福島大学卒。二〇〇二年『銃』で新潮新人賞を受賞しデビュー。〇四年『遮光』で野間文芸新人賞、〇五年『土の中の子供』で芥川賞、一〇年『掏ス摸リ』で大江健三郎賞受賞など。作品は各国で翻訳され、一四年に米文学賞デイビッド・グディス賞を受賞。他の著書に『去年の冬、きみと別れ』『教団X』などがある。

「2022年 『逃亡者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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