土の中の子供 (新潮文庫)

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著者 : 中村文則
  • 新潮社 (2007年12月21日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101289526

土の中の子供 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 幼少期に他者からの受けた悪意は
    その後の人格形成にどう影響するのか
    最後の命や、コインロッカーベイビーズに似た内容だと思った。
    目を背けたくなるような人間の闇に向き合い
    その中に人間の本質を見出そうとする、彼の小説をいいなと思う。
    トラウマである対象をあえて追いかけ、克服しようとする主人公の心が、痛いほど共感できた。
    短いけどずっしりくる。
    でもこれが芥川賞か…とは思った。賞は価値観の基準ではないけど。
    「蜘蛛の声」もまた良かった。

  • 『土の中の子供』
    子供の頃虐待され、土の中に埋められたことのある“私”が大人になってからの物語です。

    私は、公園で男達に全身を蹴られながら何であるのかはっきりしない何かを待っていたり、マンションの階段の踊り場で上半身を外へ乗り出させ、落下したら不安と恐怖の向こう側に何かを見るだろうと考えたりします。何かとは、何なのでしょうか。死を求めているようにも見える奇行です。でも、“似ているように思うが、”“違う(p64)”と私は思います。

    この恐怖を求める奇行について、施設長のヤマネさんと話している途中で“恐怖が身体の一部になるほど侵食し、それに捉えられ、依存の状態にあるんです(p82)”という声が私の脳に直接響きます。しかしその後、“自分に根づいていた恐怖を克服するために、(中略)恐怖をつくり出してそれを乗り越えようとした、私なりの、抵抗だったのではないだろうか(p105)”と思います。

    私はタクシー強盗に襲われた後、車の速度を上げ続け、落下し続け、カーブのガードレールにぶつかります。その時、“私は、柔らかなものが自分を満たすように感じ(p106)”、“すごく自分に自分が合わさっていくような気が(p109)”します。

    読んでみて、“これ以上ないほど、やられちゃえばさ、それ以上何もされることはないだろう?世界は、その時には優しいんだ。驚くくらいに(p109)”という私の言葉に、共感しました。
    私は過去の体験を克服したのかそうでないのか、どちらとも読めるよう思いますが、克服していってほしいと、希望をこめて願います。世界が優しくなくても生きていかなければならないのだと、力をもらえるような作品でした。

    『蜘蛛の声』
    “私”はある日、橋の下の、それを支えるコンクリートの窪みに体を潜らせます。そして、“今まで私が求めていたものは、きっとこれ(「隠れている」こと)だったのだろう(p126)”と思います。
    「隠れている」ことの、“安堵感”、“自分だけが異なる世界にいるような奢りの感覚”、“喜び”、“懐かしさ”、理解できるような気がしました。

    しかし、一本の糸を使って空中に浮遊していた蜘蛛の声が聞こえたことで、何が真実で何が思い込みなのか、わからなくなってきました。

    人と関わらなくなることで得られるものもあるのかもしれませんが、その分人として失うものの方が多く、やはり人は人と関わっていなければならないと、読んでいて感じました。

  • 2017年3月23日読了。
    養父母からの虐待の記憶を引きずり、死の淵ぎりぎりまで近付こうと、わざと殴られる主人公。鬱々とした、暗い内省的な文章が続きますが、決して退屈ではなく先へ先へ読ませる魅力があります。幼少時のエピソードを読むと、これだけ厭世的になるのも仕方ないと納得。最後は救いがあり、良かった。
    短編の「蜘蛛の声」は面白かった。ある日突然すべてを捨てて橋の下で暮らすようになる男の物語。

  • 恐怖を克服する子どもの話。
    同著者の銃を読んだ後なので、話に救いが見えたことになんだか安堵してしまった。
    蜘蛛の声は、その状況わかる…わかるぞ…っていう。何かから隠れるのはとても落ち着く。

  • 非常に重苦しい2編の短編である。重苦しさを感じるのは、著者が小説という手法を使って登場人物の心の中に抱える闇の全てを明らかにしようとしているからだろう。

    表題作の『土の中の子供』では親に捨てられ、孤児として虐待された過去を持つ主人公が暴力をきっかけに死を切望し、それに向かっていくという物語である。虐待され、疎外され続けた精神の崩壊と、生と隣り合わせの死を描き、最後には微かな光を見せてくれる。

    表題作とは対極にあるような『蜘蛛の声』を併録。

  • 不運な青年の過去との決裂
    人間の精神面を具現化するとこうも気持ち悪く暗くなってしまうのかと思う

  • きっと読後は暗い気分になる、あるいは読んでる途中でムカつく、と思いながら読んだけど、やっぱりムカムカした。抵抗しても無駄なのがわかってる時の諦念。というのを自分もどこかで経験したから。自分の負の記憶を追体験するような物語だった。苦しかった。でも主人公は強くて賢いから、自分の人生を捕まえる。
    根が強ければどんな環境でも伸びるし花も咲かせられる。そう信じられるような物語だった。

  • 芥川賞受賞ということで読んでみたが、、ある人の内面を言語化した小説でした。
    怖いという気持ちもありましたが、実在しそうな雰囲気もあり、面白くよみました。

  •  『世界は、最後には、自分に対して優しかったのだと思った』。すごく印象深い文章だった。

     自分が土の中に埋められて、息もできず苦しい状況なのに、それ以上に苦しい経験をしてきたがために、安らかな終りに対して優しさを感じてしまうほどの辛さ・・・想像できない。

     主人公が恐怖というものを求めてしまう感覚。それは私には理解できないけど、虚無感に浸ることは私にもあるし、ある一定の虚無感は常に抱えていようと思っている。日々を生きていくのに、そうした負の要素を抱えていないと壊れそうになるから。

     白湯子にとっての主人公は救いで、主人公にとっての白湯子もまた救いなんだと思う。傍から見ればダメな二人だけど、そんな二人だから理解できることがあるんだと思う。

     私にはこの話は救いがある話だと思った。ここに出てきた二人はもう大丈夫だと思う。

  • 死の欲動について。

    とにかく暗い。途中読むの辞めようか本気で悩んだ。しかし、ここが中村文則さんの本のいいところだと思うが、絶望的で抑鬱的な気持ちになるがきちんと救いがある(捉え方次第だとは思うが)。

    決して精神衛生上いい本だとは思えないので読むタイミングは重要かもしれない(笑)

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土の中の子供 (新潮文庫)の作品紹介

27歳のタクシードライバーをいまも脅かすのは、親に捨てられ、孤児として日常的に虐待された日々の記憶。理不尽に引きこまれる被虐体験に、生との健全な距離を見失った「私」は、自身の半生を呪い持てあましながらも、暴力に乱された精神の暗部にかすかな生の核心をさぐる。人間の業と希望を正面から追求し、賞賛を集めた新世代の芥川賞受賞作。著者初の短篇「蜘蛛の声」を併録。

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