土の中の子供 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101289526

感想・レビュー・書評

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  • とある人のおすすめ

  • 苛立ちの共感。
    メディアへ訴えかけているようにも感じ取れる作品だった。いくつか読んだあとに読んだせいか、洗練されているように感じた。ここから何作もの作品が展開されていきぶれてないところが好印象だった。メディアに向けた「土の中の子供」のラスト、振り切ったところがかっこよかった。

    「あるいは、」の使いが特有の雰囲気を出していた。

  • 暗いと思ったけど途中から一気にさわやかになってよかった

  • 虐待された経験が、無意識に自己を消そうとする衝動となっていつまでも自分を支配する。それは長い時間をかけて人から愛されることでしか解消できないのだろう。

  • 2023/1

  • 作者の中村さん特有の、登場人物の心理の表現がすごい。
    少しの時間しか経ってないのに、ものすごい心理描写の量。
    ただ、文章量がその分多いので、少し読みにくいかも。

  • タクシードライバーの「私」には、両親から捨てられたのち、養父母から虐待を受けて、施設で育ったという過去があった。物語は、実父が生きていたことを知った「私」が、自らの意思で暴走族からリンチされるところから始まる。「私」は、痛みを受け続けながら「この先にあるもの」を求めて、信号無視をした車の前に飛び出たり、マンションから飛び降りたりといった、自らを危険にする行為を繰り返していた。

    「私」に転機が訪れるのは、物語の後半、タクシー強盗の被害にあったことだった。強盗にまさに殺されそうになったとき、「私」は、強盗の太ももにペンを突き立て、逃げおおせたものの、やはり自らの意思で崖から転落する。しかし、退院後、彼は、かつて施設でお世話になった「ヤマネさん」に、実父に会うため呼び出されるが、「僕は、土の中から生まれたんですよ」と言って、実父と会うことを拒む。そして、彼は、同棲する彼女「白湯子」が死産した「何かの決断も、要求することもできなかった、彼女の子供の墓参り」をしようと思うところで物語は終わる。

    印象的なのは、養父母によって、ベランダから突き落とされ、死んだと思われて埋められた土の中から、「私」が這い出るところだった。「土の中から生まれたんですよ」の言葉の通り、彼にとって、それが自分の人生の始まりだった。自分の体が埋められていく、その生々しい描写は、何とも言い難い

  • 中盤まで繰り返し描写される、自己同一性をつかむための破滅願望は生々しく生き生きとしていて、読んでいてとても辛かった。が、後半にいくに従って説明的なセリフが多くなり、読んでいればわかるようなことまで説明されて興ざめしてしまった。前向きに生きようとする転機も弱く、ドラマ性に欠けると思う。

  • 土の中の子供 3
    蜘蛛の声   2

  • 中村文則は、1977年生まれの小説家。2002年に『銃』でデビュー。2004年、『遮光』で野間文芸新人賞。2005年、本作で芥川賞を受賞している。

    彼を知ったのは、彼が最新作の『掏摸(スリ)』で大江健三郎賞を受賞し、そのことを紹介した新聞記事でだった。彼はそこで、「小説を書くことで生きることができた」という趣旨のことを語っていた。書くことと生きることとの不可分を語る作家に久しぶりに出会った気がして、早速彼の著作を紐解いた。

    この小説は、若いタクシー運転手が、虐待を受けた過去と自らの内部に巣食う暴力性を見つめる中で、生の意味に迫る作品。ドストエフスキーやカミュなどの影響があると言われるその文体と表現は、現代の作家としては古風であり、そのため、自己の内面に遡行し凝視してきた過去の作家たちの作品を模倣しているような「既視感」も感じてしまう。

    しかし、それでもなお、この作家の作品を読む意義は大きい。なぜなら、まず、現代の中高生が、初期の読書体験としてこの作家を読むならば、それがむしろ将来の「古典」への入り口になり得るからだ。

    そして、彼の小説には、読み手に「既視感」を乗り越えさせる「必然性」がある。書かずにおれない必然性が書き手の側にある時、読み手は何よりもそれに感応し、それによって小説を読み進める。中村文則を読むことは、書き手の必然性という推進力を受け取りながら、私たちの中に小説を読む時間を創出する体験である。(K)
    紫雲国語塾通信〈紫のゆかり〉2010年6月掲載

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著者プロフィール

一九七七年愛知県生まれ。福島大学卒。二〇〇二年『銃』で新潮新人賞を受賞しデビュー。〇四年『遮光』で野間文芸新人賞、〇五年『土の中の子供』で芥川賞、一〇年『掏ス摸リ』で大江健三郎賞受賞など。作品は各国で翻訳され、一四年に米文学賞デイビッド・グディス賞を受賞。他の著書に『去年の冬、きみと別れ』『教団X』などがある。

「2022年 『逃亡者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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