遮光 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 3350
感想 : 308
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  • Amazon.co.jp ・本 (155ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101289533

作品紹介・あらすじ

恋人の美紀の事故死を周囲に隠しながら、彼女は今でも生きていると、その幸福を語り続ける男。彼の手元には、黒いビニールに包まれた謎の瓶があった-。それは純愛か、狂気か。喪失感と行き場のない怒りに覆われた青春を、悲しみに抵抗する「虚言癖」の青年のうちに描き、圧倒的な衝撃と賞賛を集めた野間文芸新人賞受賞作。若き芥川賞・大江健三郎賞受賞作家の初期決定的代表作。

感想・レビュー・書評

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  • 新年から暗い気持ちになることが、僕にとっては
    重要なんじゃないかと思い、読みました。 
    素晴らしい読後感でしたね、何かに導かれるように、陰鬱な気持ちになりました。 
    デビュー作の「銃」に通ずる、衝撃のラストですね。愛する人の死を受けいられずに、常に自分を
    偽り続けて、死んだはずの人が生きているかのように、周りに嘘を言い続ける、虚言癖のある男性が主人公で、狂気じみた言動が心に響きます。
    中村文則作品の原点でもあるような気がします。

  • 狂気の愛。主人公は狂っているが、常人では理解できない何かがあるのだろう。気持ち悪い作品だが薄い本だし、引き込まれてあっという間に読んでしまった。
    やはり、なんとなく大江健三郎さんの世界観に似せようとしている感覚があると思った。

    • ロカさん
      マサさん、おはようございます。
      中村さんは大江さんの大ファンですから、似た感じの作品が多いですよね。

      『教団X』なども読みながら、影響が大...
      マサさん、おはようございます。
      中村さんは大江さんの大ファンですから、似た感じの作品が多いですよね。

      『教団X』なども読みながら、影響が大きいなぁと思ってました。
      もちろん、中村さんの作品はそれだけはないから良いのですが。
      2024/02/14
    • マサさん
      ロカさん、おはようございます。
      コメントありがとうございます。
      そうですね、中村さんの作品は大江さんに影響受けてらっしゃいますね。好きな作家...
      ロカさん、おはようございます。
      コメントありがとうございます。
      そうですね、中村さんの作品は大江さんに影響受けてらっしゃいますね。好きな作家さんです。
      『教団X』や他の中村さんの作品もだいたい買ってしまい持っているのですが、まだ読めてなく積読がたまっています(笑)
      2024/02/14
  • ピース又吉が愛してやまない20冊に挙げている作品。人は誰しも心のうちに狂気を秘めているのか?主人公は恋人の死を境に、狂気が顕在化してしまう。但し、本作では主人公は幼少期から、かなりの異常気質を抱えていた事も窺える。恋人の死が無ければ、それなりに幸せな暮らしが出来ていたのかもしれないところがとても痛ましい。主人公の感情と行動にズレが生じている部分を、作者は巧みに表現しているが、読んでいて恐怖を感じる程惹き込まれる。恐ろし過ぎて普通の小説愛好家には決してお勧めできる代物ではない。挑戦する方は、覚悟して読んで欲しい。

  • 彼の作品に共通して出てくる水。そして
    虫 水は流れる先がないデッドエンドに溜まり濁り腐った水。そして、その汚水より自然発生的に生まれてくる虫。
    そんなイメージの薄暗く鬱屈とした世界に生きる希死念慮の強そうな破滅型な優男。
    漫画家古谷実の描くヒミズの主役住田を
    思い出した。ダークネスであるが、何故か惹かれてしまう。

  • 最近は後味のいい、軽い小説ばかり手に取っていたので、陰影の濃い、狂気を孕んだ小説に圧倒されました。
    今さらながら初読みの中村文則さんでしたが、読了後まだ心臓がばくばくいってます。

    そもそも読んだきっかけは、又吉さん。
    どこかでとてもお勧めされていたのを目にしたのですが、帯にも又吉さんのコメントで、「もし、世界に明るい物語しか存在しなかったら、僕の人生は今よりも悲惨なものになっていたでしょう。自分の暗い部分と並走してくれる何かが必要な夜があります」と、書かれています。

    絶望的な、取り返しのつかない出来事に対して、器用に蓋をして一定の距離を取れる人ばかりではないんですよね。
    ギリギリ正気の淵で生きていた彼が、絶望に背中を押されて狂気の海で溺れてしまうのが、この作品。
    息継ぎをするように正気を吸い込むけど、海の底から足を引っ張られるように狂気の海に飲まれていくのは、読んでいて恐怖を感じました。その恐怖は、彼自身を怖いと思う恐怖ではなく、理解ができてしまう気がすることへの恐怖な気がします。自分もまたぎりぎりの淵に立っているのかも。

    あとがきでも書かれていますが、印象的なのは太陽を背にした男性の映像。脳内に焼き付くほどくっきりと残っています。彼が彼として見た映像だからでしょうか。それとも男性の助言が、彼の人生を左右するほど大きかったからでしょうか。全体的に暗い中で、とても眩しく、また濃い陰影を作っていて、印象的でした。

    レッテルを張られることは著者の本位ではないかもしれませんが、解離性障害、境界性パーソナリティ障害という単語が頭に浮かびます。
    きっと、美紀がいたら、なんだかんだで平凡で、幸せな人生を歩んでいただろうし、彼が、彼らしく生きていくことができたんでしょうね。人生は、ままならない。寂しいですね。

  • あとがきにある“苦しみから一定の距離を置くのではなく、その中に入り込んで何かを掴み描き出そうとすること”これがこの本の全てだと思う。強い執着でもなく、他人の存在がどれほど自分に影響齎して事態を招いたかという内容とは異なり自分の中に収めていたあらゆるものが衝突し暴発するような、そんな小説だった。

  • 中村文則の2作目、野間文芸新人賞受賞作品。作者自身も認めているように、暗いし癖もある。生きながら此岸と彼岸のボーダーに立っている男の話。

  • 正直、主人公の気持ちを理解できるとは言えない。
    最後の殺人についても正直分からないし、指を持ち歩くということもわからない。
    しかし、死んだ人を忘れられずにいる姿だけは少し理解できる。
    しかし、所々で描かれている演技をしているという表現から本当に本人が望んでいたものは何だったのか、本当に彼女さえ生きていればよかったのか……
    確かに私達は少し演じているところはある。本音と建前を使い分けこの人に対してはこういう態度を試みよう、この言葉や表現をしてみようなどと半ば調整とも取れるようなものをすることもあるだろう。
    もしかしたら、それの延長線上には自分を見失う主人公のような結果が待ち受けているのではと少し怖くなる。


  • 暗い…ちっと難しい恋愛小説。男の心理としては理解できる。ただこの主人公は幼稚で大人として成り立ってなく彼女を喪失して、認められなく絶望感が満ちてしまった…本当に愛していかわからないが死という己がどうしようもできない事にあらいで行く様は痛い…なかなか考えさせられる本でした。

  • 没入感がすごい。
    主人公の嘘や周囲の人々の言動との矛盾に最初は違和感を覚えるが、段々と世界観に飲み込まれ、何が本当だったのか分からなくなる。
    自分が同じ立場になったとき、どうするか考えさせられた。

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著者プロフィール

一九七七年愛知県生まれ。福島大学卒。二〇〇二年『銃』で新潮新人賞を受賞しデビュー。〇四年『遮光』で野間文芸新人賞、〇五年『土の中の子供』で芥川賞、一〇年『掏ス摸リ』で大江健三郎賞受賞など。作品は各国で翻訳され、一四年に米文学賞デイビッド・グディス賞を受賞。他の著書に『去年の冬、きみと別れ』『教団X』などがある。

「2022年 『逃亡者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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