中原中也詩集 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (341ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101290218

作品紹介・あらすじ

愛する者よ、無垢なる日々よ-。生と死のあわいを漂いながら、失われて二度とかえらぬものへの、あふれる惜別の想いを、ノスタルジックにうたい続けた、夭折の天才詩人、中也。哀切で甘美なことばが、胸をうつ調べとなって響きあい、はかない余韻が心に沁みる2冊の詩集『山羊の歌』『在りし日の歌』に、詩集として編まれなかった作品も併せた140篇の詩篇を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 中原中也の詩は平易な言葉でなんとはなしに書かれているのですが、ちょっと一筋縄ではいかない魅力に溢れています。素直で朴訥としていながら、ふと人間の邪悪なものが顔を出して、どぎまぎしてしまう、しかもその言葉の彼岸には汲むことのできない闇が広がっていて呆然とするのです。

    ***
    「ホラホラ、これが僕の骨だ
     生きていた時の苦労にみちた
     あのけがらわしい肉を破って
     しらじらと雨に洗われ、
     ヌックと出た、骨の尖(さき)。

    ……生きていた時に
    これが食堂の雑踏の中に、
    座っていたこともある、
    みつばのおしたしを食っていたこともある、
    と思えばなんとも可笑しい。

    ホラホラ、これが僕の骨――
    見ているのは僕? 可笑しなことだ。
    霊魂はあとに残って、
    また骨の処にやってきて、
    見ているのかしら?」 (「骨」――『ありし日の歌』)

    「……僕は人間が笑ふということは、
     人間が憎悪を貯めているからだと知った。
     人間が口を開(あ)くと、
     蝦茶色の憎悪がわあッと跳び出して来る。

    みんな貯まっている憎悪のために、
    色々な喜劇を演ずるのだ。
    ただその喜劇を喜劇と感ずる人と、
    極く当然の事と感ずる馬鹿者との差異があるだけだ」 (「悲しい歌」――未刊)

    彼の作品のここかしこに死(と生)が横たわっていて、まるで親しい友人のようにしっくり馴染んでいます。彼が8歳のころに夭逝した弟や失った愛児への尽きない喪失感が影響しているのかもしれません。悲しみはある一線を越えてしまうと、人は治ゆしがたいなにものかを損なってしまう。でもだからといって暗いだけの作品ではないところが素晴らしい。
    あちらの世界とこちらの世界を行きつ戻りつしている詩人に、必然的にそなわる諦念や可笑しみのようなものを秘めているところが最大の魅力です。

    ゆあーん ゆよーん 行きつ戻りつするサーカスの空中ブランコのように、彼の魂が、けだるく揺れているよう。ときには詩人ランボーのように躍り上がる感情やこの世の不条理を秘めながら、それでもどこか幻想的で不気味な静寂が広がっています。

    とても不思議な詩人です。これからも繰り返し読んでみたい♪

  • 私が読んだものとは違うけれど一番内容が似ていたので登録させてもらった。やはり「サーカス」はいい。「ゆよーんゆやーんゆよゆやん」がとてもいい。空中ブランコの揺れている感じがとても良く伝わる。あと「臨終」の「この魂はいかにとなるか?うすらぎて空となるか?」を読んだときの感動がすごかった。そこまでこの詩は有名でない(あまり「サーカス」とかよりメジャーではない?)けれど、これを読んだとき泣きそうになった。頭の中に魂が煙草の煙の様に空に消えていく様子が浮かんできた。その他にも亡き子文也を歎く詩に感動した。たくさんあるけれどどれも子を亡くした親の気持ちがよく伝わってくると思う。「詩」というものは昔から意味がわからないから嫌いだった。でもこれらの詩を読んで、詩の素晴らしさに気づくことができた。私は、私なりに詩を解釈していける様にしたい。好きな作品「サーカス」「臨終」「骨」「汚れつちまつた悲しみに」

  • 自分のこと、身近にある風景、季節の移り変わり、世の中のことなどを、すごく繊細に感じ取って、嘆いたり、お道化たり、嘲笑したり…
    いたるところに郷愁が漂っていて、その独特な言い回しに、共感してしまった。
    悩み多き若者の詩なんだなぁと思う。
    書いても書いても書ききれないというもどかしさを感じます。

  • 一夜分の歴史
    夏が来た
    断片昏睡
    冷酷の歌
    蜻蛉に寄す
    春宵感懐
    幸福
    盲目の秋

    当たり前の事に気がつくのにどれ程の歳月を要するのかと思う。

  • 郷里の詩人中原中也、抒情豊かな多くの詩は荒地派の詩人達にも負けない。

  • 私はその日人生に、
    椅子を失くした。

    港市の秋の一節。

    なんて重たく、拠り所を失ったような言葉なんだ。



  • 音を通して歌詞を通して体験することが多かったが、言葉のみで世界観を感じるのは新鮮だった。
    詩を声に出して読む時に独特のリズム、語感を感じれたとは思う。情景がありありとは浮かばないが、中原中也の世界観(孤独、悲しみ)はひしひしと伝わってきた。
    もう少し詩を勉強したい。

  • 一篇の詩、一つの言葉に
    心打たれるものがある

    こんなに優しくて、愛情深い人がいるのか

  • 冬の夜に薄っぺらな毛布を引っ掛けてほの暗い部屋の隅で読む。

  • 詩というものは私にとって、どこか高尚で
    きちんと捉えて理解するのは難しいけど、
    中原中也だけは選ぶ言葉やリズム、心に思い浮かぶ情景が好きで、
    たまに読みたくなってしまう。

    孤独で儚いんだけど、そこはかとなくロックを感じます。

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著者プロフィール

山口県生まれ。東京外語専修科修了。若くして詩才を顕わし、15歳で友人との共同歌集『末黒野』を出す。1925(大正14)年上京、小林秀雄、永井龍男、河上徹太郎、大岡昇平らと交遊し、1934(昭和9)年に第一詩集『山羊の歌』を自費出版する。1933年の結婚後、長男文也を2歳で失ってから心身が衰弱し、1937年、鎌倉で急逝。小林秀雄に託されていた詩稿が、翌年に『在りし日の歌』として出版された。

「2024年 『女声合唱とピアノのための 盲目の秋』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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