決壊〈上〉 (新潮文庫)

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著者 : 平野啓一郎
  • 新潮社 (2011年5月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101290416

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決壊〈上〉 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 引き込まれる感じもあるんだけど、あんまりにもくどくて飛ばしたところもあり・・・。
    上巻ラストあたりでやっと大きく物語が動き出す。

  • 圧倒的な知識量で描かれる渾身の現代ミステリ。

    まだ事件の起きない上巻では家族、友人、恋人に対して抱く微かな「不信感」や、自分以外が他者であるがゆえの「心のズレ」を感じる違和感を巧みに書いている。

    人間関係を上辺では体裁良く保っていても、日常的に心の奥底に感じている上記のような空虚感は誰でも抱いた事があるのでは無いだろうか。

    序盤のシーンで韓国語教室のCDを義母が流した時に、佳枝が「夫が在日韓国人なのではないか」と不意に疑ってしまう部分から、様々な人間が抱く不信感の連鎖はまるで自分を見ているかのよう。

    ただ上巻は地の文が三人称なのだが、二次的な一人称が一つの章の中でコロコロと変わってしまって分かりづらいシーンが多かった。

  • 実際は星など1つたりとも付けたくありません。マイナス5つ星と言ってもいいくらい。
    難解も難解、とにもかくにも非常に難解な文章が特徴。と言うよりは“書き手の独りよがり”による読み難い文章と言った方が正確かも知れない。そんな読み進めづらい文章が、序盤からこれでもかと全開で、それが頁を繰る毎に益々酷くなっていく。
    表紙だけを観て上下巻をまとめて購入してしまったのですが、正直言って、本好きな人にもそれ以外の人にも決してオススメ出来ません(ムリ!)。作者はインテリを自負していらっしゃるようですが、とてもじゃないけどこの作者が評価される理由が皆目判らない。小ムズかしい文章を羅列すればアタマがいい、とでも思っているのだとしたら… ため息しか出ない。
    途中からは完全に斜め読みした挙句、古本屋に持っていくのも面倒になってコンビニのゴミ箱へ放り捨ててきました。金返せ、と言ってみても詮無いので諦めです
    (;T T)=3

  • 表4のあらすじからサスペンスを期待したのに、事件が起こるのが上巻のラストって遅過ぎだろ。最初の300Pはホントに必要なのかな? 読み終われば感想変わるのかもだけど、ちょっとフラストレーションが溜まった。

  • 取り返しのつかない凄惨な現実一点に向かって、人の強い思考をなぞってヒビが走っていく。ヒビは「悪魔」の一打で決壊へ。
    「あなたは殺人者である。たとえ世界が、卑劣にも捏造した事実であったとしても、それは結局、不可避の運命だ。それ以外の何でもない。世界はあなたを選んだ。なぜか?あなたに、殺人以外の『幸福』がないことを知っているからだよ。」

    相変わらず「プロットの時から文章削ること一切考えてないのでは」と言いたくなる思考のボリューム。著者は中二病なの?と途中うんざりしそうでしたが、それでも下巻まで手にとる気になったのは、「中二病」という言葉で把握した「つもりにしている」現実の一部があることに気付くから。

    アイデンティティーの複数性、という考え方は「ドーン」に引き継がれているんですね(「決壊」は「ドーン」より以前の作品)。
    「この著者はこういう哲学を持っている」と、明確な印象を持ってその著書をとれる作家、最近(比較的若い作家では)まれな気がしますが、平野さんはそんな一人だと思います。それでいてどの話も同じような雰囲気、というマンネリには陥らないから飽きない。
    「頭がいい」かどうかとかよくわからないけれど、読んでいると、言葉を通して著者が「ぶつかってくる速度」がとても速く、また意志をもって敢えて乱暴なぶつかり方をしてきているよう感じる。その度胸に敬服はします。
    凄惨な描写をすればいい、ということではなく、えぐい現実を突きつければいいということでもないし、自分哲学を書きなぐればいいということでも勿論なくて・・・
    押し付けがましくないのに、明確な意思を感じる。そのバランス感覚が、嫌味がなくて好きなのです。突きつけている現実は「現代」だけれど、とてもクラシックな感じがする。

    下巻に続く。
    上巻の最後の時点で、もう、取り返しつかない事態になっていて・・・このあとこなごなに散っていくだけであろう物事を思うと、その後味を回避したい気持ちから、読む意義を自分自身に問いたくなるんだけど・・・
    なんで読むのか。
    こういうことを書く作家がいるからです。昔からいたけれど、最近あまりいないからです。

  • 私はこの、佳枝がうざくてうざくて…

  • 平野啓一郎 ミステリー

  • 9・11後の2002年10月、国内で犯行声明付きのバラバラ殺人が起きる。遺棄された遺体の部分が全国に散って発見され、その第一発見時の異様な写真と複数の犯行声明文がインターネットを通じて瞬く間に広がった。「悪魔」を名乗る犯人の主張「人間社会からの離脱」に同調する者たちによる予測できない無差別殺人の波紋が広がる。これは形を変えたテロでは無いのか。犯人は一体誰なのか?

    誰もが生きにくさを感じている社会の中で、「幸福」を目標に生きることを当然と思う。それは一つのファシズムではないのか?格差社会の中で、持たぬ者、最底辺にいる者の孤独とルサンチマンを煽る「悪魔」とは、一人の誰かでは無く、誰の中にもある憎悪と殺意なのか…。

    最初にバラバラ死体となって発見された野沢良介の死は、その妻子、両親、とりわけ優秀だった兄の崇を巻き込んで、微妙なバランスを保っていた家族を完全に崩壊させて行く。

    重く、陰鬱な話ではあるが、べとつく感じでは無く、現代社会における人間の存在、一人の人間の外から見るイメージと実体、上部構造に属するインテリの分析癖と、自分の人生を生き切れない虚無感、この社会に居場所がなく、遺伝と環境によって人生を奪われたと感じている者の虚しさ、善が信頼性を持つためには、捏造してでも外側に悪を作り出さなければならない、など、多岐にわたるテーマが多少衒学的に盛り込まれていてとても語りつくせない。再読必至の傑作だと思う。

  • 大きな事件(しかも表紙に書いてある)が起きるのが上巻の最後という。
    途中、崇が語る言葉が長かったり回りくどかったりで、かなり読み飛ばした感じ。目が滑るーそして分からなくても今のところまったく困らないー。

    登場人物の不器用さとか、他人との距離の取り方とか、かなりリアル。よく分かる。
    人間関係、いろいろあるよね…

  • エンタメ小説として面白く読めた。
    酒鬼薔薇事件と闇サイトを下敷きにしたような劇場型犯罪を通して、人間世界(生活)というシステムの矛盾をテーマにした話。

    ミステリ出身の作家が社会問題に興味を持って書いたら、きっと同じような作品になるだろう。
    ただし、その作品の評価は、芥川賞作家をとった純文学出身の作家が書いた場合(本作)と違った評価になるだろうと予測する。

  • ストーリーは面白いけど、文章が難解…

  • はじめて読む作家さん。

    この作品は上下巻と大作であるが、上巻では正直言って冗長と感じた。
    とにかく知識を披露したくて仕方がないと感じられる。
    物語と絡め、時にはこの会話必要なのかと思える程強引に知識を織り込んでくる。
    三島を語りキリスト教を語り。あれを語りこれを語り。
    もうお腹いっぱいです。
    はいはい、わかりました。
    平野さんは物知り。知識が豊富。
    でも、辟易する。
    これがなければ、もっと短く纏められた作品だと思う。

    下巻をつづいて読みます。
    作品自体の感想は下巻読了後。

  • 主人公のイメージが平野啓一郎にそのままあてはまるので、そのつもりで読み進めてみる。

    実際に主人公の行動や考えには、たぶんに著者の思想も含まれているんだと思われる。

    知的で冷静な主人公が、事件に巻き込まれ、壊れていくまで。
    人身事故で電車が止まることに慣れすぎているように、他者の深い闇を想像することや、社会のなかでの排除性や他者への攻撃に対する実感まで薄れているのはないかという気がしてくる。

  • 「三島由紀夫の再来」といわれた平野啓一郎氏の「決壊」読了しました。以前にも読んだんですけど改めて読みたくなって。
    肉厚な文体とロジカルな構成、物語としての完成度とどんでん返しのすごさ、すんばらしいです。
    三島由紀夫同様に「肉体」に固執し「肉体」を超越しようと試みるも「肉体」に呪縛されている感があります。
    京都の旅館で不倫相手との交尾の場面では「なんとかお互いの肉体をはめ込もうと努力する」という表現は白眉だなぁとおもいました。
    新潮社の書評まんま引用ですが下記のごとき深みのある書でした。
    https://www.shinchosha.co.jp/wadainohon/426007/04_shohyo.html
    「「悪」の存在をどのように解釈し、それにどう対処すればよいのかという問いである。問いの中核を理解するには、これを宗教的な言葉に置き換えるとよい。もし神が全能であるとすれば、なぜ、神は、悪がはびこる不完全な世界を創ったのだろうか? 神が創った有意味な世界という像と極端な悪の存在という真理とは、どのように両立できるというのか? これは、神学上の古典的な問いだが、特定の信仰など前提にしなくても、現代的に言い換えることができる。もし普遍的な説得力を有する「善」が存在するとすれば、「人を殺してはならない」という規範に代表されるような普遍的な「善」が存在するとすれば、要するに神の命令に匹敵する普遍的な「善」が存在するとすれば、連続無差別殺人や無差別テロのような極端な悪が、どうして可能なのか? ひどく異常ではないように見える(ほんのわずかしか変わっていないように見える)普通の人が、どうしてこれほどに極端な悪を犯すことができるのだろうか?
     どうにも解釈しがたいほどのひどい悪を目の当たりにしたときの、最も直截な神学的解答は、神の全能性を、ひいては神の存在そのものを疑ってしまうことである。同様に、われわれは、普遍的で基底的な善への信頼を放棄すべきなのか? このときには、もはや、善だけではなく、倫理的に罰したり、救済したりする対象としての悪すら存在せず、ただ、「悪」と名づけられたシステムの意図せざる機能障害だけが残ることになる。『決壊』で、〈悪魔〉は、こうした結論を暗示しているが、われわれは、これに抗することができるのか? (おおさわ・まさち 社会学者/京都大学大学院人間・環境学研究科教授)

    (「波」2008年7月号より)」
    作中の「『遺伝』と『環境』が人間を選り分ける『現代社会の幸福のファシズム』を、根底から破壊する」という警告は目をみはるものがあります。
    長文の引用になりますが下記についてはよっちん自身のことではないかと思いました。
    「誰がどうみても、お前は<幸福>となるべき資格を欠いている。にも拘らずだ!お前は否応なく、その<幸福>の帝国に生きることを余儀なくされている。ー違うか?それはお前自身が、誰よりも一番よく知っているはずだ!お前は、人から愛されない人間だ!(略)その二人からさえ、お前はまったく愛されていない!友情と言えるほどの出来事を経験する機会もなく、特に楽しい何かがあるというわけでもない毎日だ。生まれつきの無能のせいで、思い出というのはお前にとって、いつでもさぞつまらんものだったろう!仕事はまったくうまくいかない。社会的な評価はゼロだ。転職しようなどと考えているようだが、内心、どこに行っても、こんな自分なら使いものにならないんじゃないかと疑っている!何かになりたいと心の底から願い、せっかくの、たった一回の人生なのだから、もっと充実した、自分だけの生き甲斐が欲しいと、身悶えするほど望んでいながら、それが成就しないことは、誰よりも一番よく知っているのだ!そうしてお前は、この<幸福>のファシズムの最下層で、完全な劣等人種として一生を終える」
    こ... 続きを読む

  • 実際におきた少年凶悪犯罪、連続犯罪、カルト集団犯罪などをベースに、被害者家族・加害者家族、兄弟や家族のあり方などを深く掘り下げ、社会に巣くう問題をあぶり出す感動の大作。スリリングな物語展開にぐいぐいと物語に引き込まれるだけではなく、それぞれの登場人物の心の機微から、単なる情景描写までが美しい文体で描写されている。
    アメリカのイラク爆撃に対する批判に関する箇所などは、現在、毎日新聞朝刊に連載中の「マチネの終わり」に通ずるテーマ(中東問題)として、著者の関心事であることが伺える。

  • 『その苦しみを優しい寛大さと喜びもを以て耐えている姿にはね、生まれてくるこの子にとってだけじゃなくて、僕らすべての生を生きられるに値すると感じさせるような慰めがあると僕は思う。』

    『この世界に3キロほどの重みを持って、最早、否定出来ないような事実として放り出される前にはね、やっぱり、母親という一個の人間の内部に、最初の場所を許されていた。これは、人間の生が始原に於いて抱えている根源的な条件だよ。』

    『今もまだ、「優しい」理由は何だろうか? 別れてからも、いつまでもよく思われていたいという、男のあの見苦しい、単純な願望のせいだろうか?』

    『なぜそうしたいんだろう? 俺が今、生きようとしている理由は何だろう? ここから落下するための数秒では足りなくて、更に数十年が必要な理由とは、一体何だろう!』

    『…俺はただ、捏造された自殺の苦痛を、新鮮に保ち続けることでしか、生き続けることが出来ない!』

    『俺は名声には興味がない。しかし、その考えを突き詰めれば、たった一人から蒙る評価だって、捨てなきゃならないだろう。他方で、名誉はどうか? 名声は量的な評価で、名誉は質的な評価だと言う。しかし、俺にはその違いが分からない。誰に褒められるかに拘ってみせることは、実は軽薄なんじゃないかと思う。』

    『人に喜ばれると、実際は当たり前に嬉しいと感じるからね。だけどね、自分という人間が、そういう他人からの承認の束を支えにして存在しているという考えには、救われないんだよ。』

    「シャワーじゃ物足りなくてお風呂に入りたいっていうのは、一種の退行的な儀礼なんだと思うよ。合理的に考えれば、ヘンな習慣だから。夜になる度に、こういう狭い場所に全裸で身を屈めて入って、体温くらいの液体に浸るっていうのは。浴槽が母親の子宮の象徴で、お湯が羊水でって考えると、ちょっと分かりやすすぎるかもしれないけど。…」

    「眠りが死の象徴っていうのは世界中で共通してるのかもしれないけど、その前に必ず入浴があるっていうのは、そんなに一般的にじゃないよ。日本人は、そういうところで、手が込んでいるだね。母親のお腹に回帰したような余韻に浸って、布団に入るなら、死ぬっていうより、自分がこの世界に出現する前のゼロの状態に戻るみたいな感じがするかもしれない。ーー沙希ちゃんが言うみたいに、リセットっていう感じなのかな、それは。…」

    『そうして彼が今、苦しい胸の裡を明かすのが、自分でなく見ず知らずの誰かであるということが、彼女には理解できなかった。それも、浮気をしているだとか、おかしな趣味があるだとかいったことではない。誰よりも家族が支えとなるべき仕事のことで、彼は妻を相談相手として選ばなかったのだった。』

    『彼女は、再び自問した。なぜ、自分ではないのだろう? 愛していればこそ、相手に知られなくないというのだろうか? しかし、そうまでして守る愛とは、一体何なのだろう? そんな、こわれものを扱うようにして大事にするのが夫婦の愛なのだろうか?…』

    「知性というものが、蛇に似ていると気がついた古代人は偉大だね。そう思わないか? 柔軟で、艶々しくて、掴み所がなく、何でも一呑みで消化して、頭から尻尾へという単純な一本の線にしてしまう。おまけに不気味で、凶暴だ。咬まれれば全身に毒が回る。ーーあなたを留まらせたのは、あなたの蛇だよ。」

    「あなたには、殺したい人間がいる。ーー結構。殺すべきだ! あなたがそう思ったという事実こそが、あなたの殺人を全面的に肯定してくれる。」

    「殺人は、太古の昔から今日に至るまで、一日として例外なく行われてきたことだ。自然死と同じくらい自然にね。そして、未来永劫にこの事実は変わらない。」

    「人間というのは、そういう愚かな存在だ。ーーその愚かさこそを、むしろ人間は、人間性と呼んでいる。」

    ... 続きを読む

  • 重たい。何もかもが重たい。平野啓一郎の作品は「送葬」と本書の二作しか読んでいない。そして、どちらも重い。登場人物の一つ一つのセリフが重い。さらっと読み流すことができない。本書の中には犯罪被害者とその家族、また犯罪者とその家族が描かれている。少し悩みをかかえたふつうの家庭の、ふつうの男性・父親・サラリーマンが被害にあう。そして、その被害者の兄が犯人と疑われる。被害者の家族の中で、犯罪被害者の会などの取り組みで、なんとか前向きに生きていこうとするものがいる。逆に、精神的に追い込まれ、自ら死を選んでいくものがいる。その違いはいったいなんだろう。マスコミなどに登場するのはふつう前者が多く、後者のようなケースは多くても結局目立たないまま通り過ぎているのかもしれない。私個人的には、犯罪者の家族について描かれたシーンが印象に残っている。犯罪者の親。遠く離れた場所で新たに仕事を始めようとするが、そこに全くの第三者が登場し、それを阻止しようとする。その理不尽さ。どこまで、罪を背負っていかなければいけないのだろう。本書は全編通してネット社会がかかえる闇が関わっている。こういう時代を迎えて、何が変わり、変わらないものは何なんだろう。図書館でやっと借りられたので読みました。あっという間の1週間でした。

  •  作者は、現代を描いている

  • 所々飛ばし読み。いかにも平野さんっぽい哲学的なところを…そこが一番重要な気もするけど。。下巻読んでみて再読するか決めよ。

  • ネット社会の到来以前には感じることはなかったであろう違和感。よく知っているはずの人物が、自分以外の人と接するときに見せる意外な一面。他人の日記を盗み見るのとはまた違った感覚。
    我々は身近な人のことをどこまで知っているのか。あるいは本当に知っていると言えるのか。
    地の文の視点は目まぐるしく変わり、すべての登場人物が主観を語る。我々は登場人物のことを「よく知っている」ようなつもりになる。
    が、「悪魔」を名乗る謎の男の登場により、我々の偏見は打ち砕かれる。「悪魔」って誰?崇?良介?それとも?どちらでもないと言い切れない気持ち悪さ。

  • 「決壊(上巻)」
    きっかけは、日常にあり。


    ある日に見つかるバラバラの遺体が発見された。被害者は沢野良介。平凡な家庭を営む会社員だ。事件当夜、彼は兄・崇と大阪で会っていたはずだった。


    と言う文言が表紙に載ってしまっている。おかげで被害者は分かってしまうし、犯人も何と無く兄じゃないかと推測してしまう。


    上巻は、事件の背景や刑事の捜査が描かれると思いきや、良介と崇の生活が主に描かれる。良介は家族と仲良く実家に帰り、久々に兄と語る。崇は、海外から帰ってきて公務に職しながら、独身生活を楽しむ。一見、楽しい生活である。


    しかし、一見は一見。よく見ると葛藤が見えてくる。弟は、実家に帰る途中に不思議な現象に襲われ、語らう兄にはコンプレックスを抱えていた。一方、兄は人を愛せず、不倫を常習化している。どこか語り口調もヒステリックだ。


    インターネットに吐露する良介は、人には吐露出来ず、深みにはまっていくようで、熱くなると宗教臭くなる崇も心のどこかに小さなヒビが入れば、一気に決壊しそうな危うさがある。


    更に、父親の鬱病まで、2人は抱えることになるのだ。今後、彼らは決壊せずに居られるのかは疑わしい。尤も良介は既に死んでしまったが。


    この物語には、既に心が決壊している少年が登場する。この少年は、悪魔のような男に説き伏せられ、どんどん壊れていく。正直、初めからどこかおかしい為、さほど同情の気が沸かない。サイコパスでは無いのだが、十分に悪質な変態っ振りを見せ付けているのだ。そりゃ、悪魔も目をつけちゃうよなぁと。


    因みに、本作は「殺しと赦し」をモチーフにしている。人はなぜ人を殺すのか、人を赦すとはどういうことか、絶対に赦し得ない事が起きた時、人はどんな行動を取るのか。それを著者は追求したかったと言う。


    その追求も下巻で一気に進むに違いない。そして、願わくば納得出来る追求結果を見たい。

  • 資料ID:C0032363
    配架場所:本館2F文庫書架

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地方都市で妻子と平凡な暮らしを送るサラリーマン沢野良介は、東京に住むエリート公務員の兄・崇と、自分の人生への違和感をネットの匿名日記に残していた。一方、いじめに苦しむ中学生・北崎友哉は、殺人の夢想を孤独に膨らませていた。ある日、良介は忽然と姿を消した。無関係だった二つの人生に、何かが起こっている。許されぬ罪を巡り息づまる物語が幕を開く。衝撃の長編小説。

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