決壊(上) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 86
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101290416

作品紹介・あらすじ

地方都市で妻子と平凡な暮らしを送るサラリーマン沢野良介は、東京に住むエリート公務員の兄・崇と、自分の人生への違和感をネットの匿名日記に残していた。一方、いじめに苦しむ中学生・北崎友哉は、殺人の夢想を孤独に膨らませていた。ある日、良介は忽然と姿を消した。無関係だった二つの人生に、何かが起こっている。許されぬ罪を巡り息づまる物語が幕を開く。衝撃の長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 感想
    内面的に複雑な心情描写が多いので、登場人物の心情を容易に理解するのは難しいな。

    兄の崇の話が文学的過ぎて難しい。自分なんかもっと単純に物事を考えて生きてるって思ってしまう。

    上巻の最後になってようやく事件。殺人事件ものの小説で誰かが殺されるまでたどり着くのにここまで長かった小説は記憶にない。兄怪しすぎる。

    あらすじ
    良介は、母の兄弟が亡くなったことを機に家族3人で実家に帰る。兄も久しぶりの帰省となった。母親が兄に昔から不気味な怖さをかんじていたことを聞く。また、父親がずっと伏せっていることから、兄は鬱病ではないかと懸念を持ち、病院に行くことを進める。

    北崎友哉は中学生。いじめられて仕返しをしたことで学校で問題になる。好きな女の子がバスケ部の先輩といかがわしいことをしていたことをネット上に晒す。自分がその女の子を助けようとするも拒否され、苛立ちを募らせる。自分のことを虐げるものを殺したいとネット上の日記で吐露し、ある人からそれを実現する方法があるとコンタクトされる。

    良介の妻の佳枝は旦那がネット日記で本音を挙げていることを悩んでいた。自分に直接相談して欲しいと思っており、兄の崇に相談していた。良介が大阪に出張に行くにあたって兄と会い、そのことについて話すと思っていた。大阪出張時に良介と連絡が取れなくなる。

    京都でバラバラ死体が発見された。人体の部位は全国で見つかり、話題を呼ぶ事件となった。殺されたのは良介であることが判明した。

    • bmakiさん
      クソ難しく物事を考える兄に、めっちゃ惹かれました(^_^;)

      この当時の平野啓一郎先生の話って、難しいですよね(-。-;
      頭の悪い私...
      クソ難しく物事を考える兄に、めっちゃ惹かれました(^_^;)

      この当時の平野啓一郎先生の話って、難しいですよね(-。-;
      頭の悪い私には読むのが大変でした。
      しかしこの本から大ファンになりました(*^▽^*)
      2024/03/03
  •  単なるバラバラ殺人を扱ったミステリーにはしたくないというような作者の強い拘りがあって、主人公のエリート、崇に小難しい事を語らせているのだろうが、崇の頭の中の描写とそれ以外のレベルの高低差が大きく、こちらの、先を読み進めたい気持ちと、崇の言わんとする事をキャッチしたい気持ちが噛み合わず、せっかくの面白さが減ってしまったように思った。

     赦し、死刑、ネット社会、今にも決壊しそうな人間関係、マスコミのあり方、捜査の仕方など、扱っているテーマはよくあるものだった。となると、やはり崇の存在が、同じようなテーマを扱う小説と一線を画しており、彼の考察は必要となるのだろうか。

     最も印象に残り、共感できたのが、現代の人間の幸福に対する姿勢だった。

     「幸福とは、絶対に断つことのできない麻薬だ。それに比べれば、快楽などは、せいぜい、その門番程度の意味しかない。人間は、快楽を否定することはできる。しかし、幸福を否定する事は絶対に許されない。このたったひとつの残酷極まりない、凶悪な価値が、この社会の全てを支配しているのだ。どんな人間でも、絶対に幸福を目指さなければならない。幸福を愛する心、それは、現代の最も洗練され、先鋭化したファシズムだ。」

     自分(もしくは近しいものを含む自分達)の幸せのために、貪欲に、楽しい、美味しい、心地良いを貪る傾向の強い現代の人々。コロナ禍ではよりそれが悪目立ちする。個人的には、そういった姿を見苦しいと感じる。必要なものだけを大切に作り消費することに回帰する方に向くべき時なのではないかと感じ、最近の傾向に対する違和感が、心の底から湧いてくる。

     「人間の生の長さは、生物としての寿命か、それより短いかのどっちかだよ。その2つしかない。死刑は要するに、犯罪者に寿命を許さないっていうことだろうね。殺された人間が、寿命よりも短い生しか生きられなかったことの報いとして。」

     死刑に関するこの意見に、納得した。死刑には特に賛成でも反対でもないが、死刑を行う意味とはこういうことなのではないかと思った。

     かなりの長編だったが、先が気になって一気に読み進められた。

  • 感想は下巻で。さらに重厚に、面白くなっていく予感。

  • ⚫︎受け取ったメッセージ
    平野啓一郎さんの提唱する「分人主義」前期の作品。相手の、全く知らない相手の部分を知る怖さを、ミステリー、サスペンスの形で見せてくれる。


    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)
    地方都市で妻子と平凡な暮らしを送るサラリーマン沢野良介は、東京に住むエリート公務員の兄・崇と、自分の人生への違和感をネットの匿名日記に残していた。一方、いじめに苦しむ中学生・北崎友哉は、殺人の夢想を孤独に膨らませていた。ある日、良介は忽然と姿を消した。無関係だった二つの人生に、何かが起こっている。許されぬ罪を巡り息づまる物語が幕を開く。衝撃の長編小説。


    ⚫︎感想
    一気に引き込まれる設定。すぐに下巻を読みたくなる。

  • 再読

  • 冗長に感じる部分も多々あったけどそこがおもしろいしこの小説の良さだと思えた

  • 「ある男」以来の平野啓一郎san。同一作家sanで3冊以上の読了となり、ひさしぶりに「カテゴリー」を追加しました。

    犯行声明付きのバラバラ遺体、沢野良介、エリート公務員の兄、幸福と哀しみ、<悪魔>とは誰か?、<離脱者>とは?、止まらない殺人の連鎖など。

    ”赦し”というテーマは好きなのですが、崇やKATSUZO達の語り、思想が私には難しすぎました。。

  • 崇が犯人でほしい気持ち7割とほしくないような気持ち3割で読み進めた。
    つまり、実弟をメッタ裂きにするくらいの屈折した心の闇がある英才を生んだ背景を主軸にした展開を望むか、途中から出てくる少年を絡めたネットの闇を主軸にした展開か。
    結果としては後者で、サスペンスという観点では特段目新しさを感じなかったが、およそ20年前の発刊当時読んだら、全くの第三者同士をつなげて殺人にまで至らしめるネットって恐っ!って思ったのかもしれない。

    他の方もおっしゃってる通り崇=作者なんでしょう。私は嫌いなタイプではない。
    崇に発言させている内容で共感した部分を自分の備忘録の為に書き留める・・・

    「功利主義的に考えれば、どんな献身だって、殉死だって、みんな自分に利益のためだよ。誰も決定的には、このシニシジムからは逃れられないと思う。そうした利己的な欲望の中で、人間は他人と交わりながら生きている。」

    「他者を承認せよ、多様性を認めよと我々は言うわけです。しかし、他者の他者性が、自分自身に取って何ら深刻なものでない時、他者の承認というのは、結局のところ、単なる無関心の意味でしょう」

    それにしても全体を通して傍点が多すぎて、その各傍点の打たれた意味や何を強調しているのかが分からなかった。頭のいい作者のことだからこの超大量の傍点にも何かしら意図があるんでしょうが・・・

  • 独特の平野さんの文章であったが、ところどころ難しい話があり、読むペースが遅くなったり、読みやすくなったりを繰り返しながら読み進めた。


    生と死、人からの見られ方、殺人・罪などについてが大方のテーマかな。
    ページ数も内容もなかなかヘビーな印象。
    下巻も気合を入れて読まないといけない。

  • 下巻でまとめて評価。

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著者プロフィール

作家

「2017年 『現代作家アーカイヴ1』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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