- Amazon.co.jp ・本 (267ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101290430
作品紹介・あらすじ
深夜のブタペストで監禁された初対面の男女。見世物として「愛し合う」ことを強いられた彼らは、その後、悲劇の記憶を「真の愛」で上書きしようと懸命に互いを求め合う。その意外な顛末は……。表題作「透明な迷宮」のほか、事故で恋人を失い、九死に一生を得た劇作家の奇妙な時間体験を描いた「Re:依田氏からの依頼」など、孤独な現代人の悲喜劇を官能的な筆致で結晶化した傑作短編集。
感想・レビュー・書評
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久しぶりに本屋(蔦屋書店)でジャケ買いした
本です。
平野啓一郎さんという作家も初めてだったので
予備知識もなく、ちょっとワクワクしながら
読み始めました。
「透明な迷宮」は短編小説で、どの話も少し奇妙で妖しい世界観が感じられて自分的に大好きな作品でした。
表題にもなっている「透明な迷宮」はまさに妖しい世界観とエロス、サスペンス的な要素が入り混じっていてとても面白かったです!
ブダペストっていう場所もなんか、こういう事が起こりそうっていう漠然としたイメージがあって
すごくしっくりきました。
「ホステル」ていう映画を少し思い起こさせる
雰囲気もあって、ちょっと興奮しました。
「火色の琥珀」という話も好きな作品でした。
村上春樹の「納屋を焼く」を思い起こさせる感じで
でも、こちらの方がより変態性を感じられて
江戸川乱歩と村上春樹のハイブリッド的な感じで
大好きです!
平野啓一郎さん!
初めて読みましたが、この世界観は大好きなので
是非とも他の作品も読みたいと思いました。
この猛暑の中、涼しいカフェで読むのにオススメな
読みやすい短編小説なので、ぜひおすすめです!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
愛の形を思考する過程を,6篇の短編で紡ぐ.どのようにしてその思考過程に至ったのか,が語られないため,表層的にしか捉えることができないが,その考え自体,愛に画一的な答えがあることを前提にしているのか,と思い至る.自然と考えに耽させる本書のような作品を,文学的と表現するのかも知れない.
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記憶の連続
寝て起きたときの自分は、昨日の自分の続きである。疑いもなく信じている。その人が、その人であることを支えるものとは何なのか。記憶なのか、記録なのか。
日常のすぐそばに紛れている非日常を描くことで生み出されるリアリティ。人にはどこか思い当たることがあるのではないかなぁ。短編6話。
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著者の試み通り、「ページを捲らずにいつまでも留まっていたくなる」小説。
依田氏からの依頼は中盤からスローモーションの情景が頭に浮かんでくる。そんな情景を文体で表せるのは凄い。
個人的には「消えた蜜蜂」が好き。 -
久しぶりに、同時代の作家で、文学らしい作品を読んだ。という印象。
わたしの言う「文学らしい」とは、ストーリーを追うのではなく、じっくり細部を読み込みたくなる、という意味。あらすじに還元してしまったら、もったいない感じ。 -
この人の、独特の世界観を堪能できる。平野啓一郎の短編集。一連の作品は、どこか引っかかりを持ったまま終わる。カタルシスはない。それがいい。問題提起をされ、あとは考察を深めてください、といったところ。それゆえ、好き嫌い分かれそうな作者なわけだけど、自分は時折こうしたタイプの小説も堪能したくなり手にとっている。いずれの作品も心に残ったけど、特に気に入ったのは「消えた蜜蜂」。田舎町を舞台にした、不思議で少しミステリアスな話です。
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最初から最後まで、徹底して「すっきりしない」(^ ^;
それぞれの短編が興味深い題材を取り上げ、
情景描写も人物像もとても魅力的で...
でも、メインのストーリーとなっているモヤモヤは
どこまで行っても一つも解決しない(^ ^;
解決どころか「オチが無い」というか(^ ^;
作中にも登場するカフカのように、
もちろん「狙って」モヤモヤさせてるのでしょうが...
私はスカッと解決する話が好きだなぁ...(^ ^; -
筆者の唱える「分人主義」が私の考え方に合うのではないかと人に勧められて、初めて読んだ平野作品。
短編集で、どの作品も、日常と非日常の絶妙な按配で、日常という安定の中に潜む隙間にふっと落ち込んでしまうような、何とも言えない漠然とした不安定さを感じさせる。
日常的に読むにはきついけれど、思わず自分の存在を見直したくなるようなこういう哲学的な作品は、嫌いではない。
「Re:依田氏からの依頼」
時間という一つの感覚をモチーフとして、自分が見ている世界の不確かさ―同じものを見ていても、決して他者と「同じ」ようにはとらえられない、絶対的な孤独のようなものを感じて、そういう意味ではとても共感した。
歩行者や車の動きやエスプレッソマシンから滴る雫の描写からは、目に見えない時間の感覚を鮮やかに思い浮かべることができて、とても面白かった。
数年前、「第六感」をテーマにしたあるテレビ番組で、人とは違う色覚をもつ人のことを取りあげていた。その人たちは通常の人よりも色を「細かく」知覚することができる。私たちには全く同じ色にしか見えないいくつもの「赤い」トマトを、「黄色っぽい」ものや「暗い赤」のもの…と区別していた。印象派の画家には、そういった繊細な色覚を持つ人が何人もいたのかも知れないのだという。そんなことを、ふと思い出した。
レビュー全文
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