きつねのはなし (新潮文庫)

  • 7592人登録
  • 3.41評価
    • (331)
    • (775)
    • (1221)
    • (275)
    • (43)
  • 800レビュー
著者 : 森見登美彦
  • 新潮社 (2009年6月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (323ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101290522

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
森見 登美彦
森見 登美彦
伊坂 幸太郎
有効な右矢印 無効な右矢印

きつねのはなし (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 年度がわりで忙しく、なかなか本を読む機会がなかった。3月4月の歓送迎会、5月のゴールデンウィーク、そして6月の運動会。6月半ばを過ぎてようやく、落ちついて小説に手を出せるようになった。さて何を読もうかと、ひさびさに本棚の「積読本」を漁ってみた。

    梅雨のため曇天がつづき、低気圧の影響か頭が重く、心もどんよりしがちな時期だ。しぜん、選ぶ本もロー・テンションで湿気の高いものになる。結局えらんだのは森見登美彦『きつねのはなし』だ。4つの短編からなる怪奇小説集である。

    一、骨董屋の女主人と、狐の面に執着する男の話(きつねのはなし)。
    二、物語を語ることに長けた、ある青年の話(果実の中の龍)。
    三、ケモノに魅入られた少女と、幼なじみの少年の話(魔)。
    四、ある老人の死と、残された「宝」をめぐる話(水神)。

    それぞれ独立した話だが、互いの話が微妙に交錯して、おぼろげな一枚の絵を織りなしている。そんな印象の作品集である。ただしどれほど熟読しても、何が描かれているのかは判然としない。あとに残るのは「狐面」「ケモノ」などいくつかの断片的なイメージと、取り残されたような読後感、そして「水」の気配だけである。

    4つの作品の中で、『果実の中の龍』だけがやや異色かもしれない。この作品だけは超自然的な怪異ではなく、人間の狂気を描いているからだ。京大生とおぼしき青年が、自分のプロフィールがすべて嘘であることを告白する場面があるのだが、そこで作者は青年にこんな科白を言わせている。

    「でもねえ、今でも思うんだけど、嘘だからなんだというんだろうな。僕はつまらない、空っぽの男だ。語られた話以外、いったい、僕そのものに何の価値があるんだろう」

    虚構を極めようとする者には常に、「自分が作りあげた虚構に自分が溺れてゆく」というリスクがつきまとうのかもしれない。誰よりもそのリスクを承知しているのは作家自身だろう。そのためか、自身の分身のようなこの青年に対し、作者はささやかな救いも与えている。青年の後輩である語り手の〈私〉は、青年について最後にこう評するのだ。

    「先輩は自分が空っぽのつまらない人間だと語った。しかし先輩が姿を消してこの方、私は彼ほど語るにあたいする人間に一人も出会わない」

    この短編集のなかでは若干浮いた感じのするこの作品が、私は一番好きだ。私自身もまた「手の込んだ虚構を愛する者」だから。虚構の作り手にはなれないけれども…

    …読み終えたら、いつの間にか雨がやんでいた。5日ぶりの青空だ。不安定な天気はまだ続きそうだけれど、少しずつ晴れ間が長くなってきているような気がする。もうすぐ夏がくる。

  • 読んでいて終始湿度の高いジメッとした雰囲気を感じれる作品。
    いつもの森見登美彦さんの作品と同じなようで、毎度おなじみ京都物語からポップさと阿保な大学生を排して、不気味さとヌメッとさと無表情の何かをプラスした。そんなイメージ。
    あとはいつもの幻想的な京都。そこはいつも通り。と思いつつ、話の雰囲気が違うだけで同じ場所でもガラッと恐ろしい不気味な夜道を想像してしまう。そこは言葉で表現しにくいので読んで体感じて欲しい…!
    ホラー作品と呼べる今作だけど、呪いや人の悪や殺意など一般的なホラー描写はなく、闇に潜んで本能に訴えかけてくる不気味さのようなモノを感じる作品。恐怖というより不気味。
    4つの短編からなる今作だがそれぞれ全く別の作品というわけでもなく、同じ京都が舞台であるが故に同様の店、物が登場したり、恐らく同様の獣が姿を見せる。しかし、今作品全てに共通して最後まで読んでもハッキリとせずよくわからないまま終わるため何故なのか?という疑問は解決しない。まぁそこが不気味さをさらに際立てているのかも!
    また、特に最後の「水神」に見て取れたが、段落が変わるごとになんの脈絡もなく話が変わる、もしくわ途切れるため、??となることがしばしばあり、少々読みづらいところがある。
    しかし全体を通して何故か引き込まれて、スルッと読み終わってしまう。そんな本でした。

  • 「夜は短し歩けよ乙女」とおんなじ作者なのにねー。 …やっぱ、すごいわ。このヒト。

    貞子さんの映画がメガヒットしてた頃、「これこそが”日本の怪談”の怖さだ」みたいなこと言う人がいて「えー? そうかなぁ?」と思ったりしてたんだけど。
    これだよね。”日本の怪談”の怖さ は。
    内田百閒先生が気合を込めて書いたらこうなるであろう、怪談連作短編。

    日本の「怖さ」はスプラッターからは最も遠い。
    迫ってこない。
    こっちが”気になる”。
    なんか引っかかって、「あれ?もしかして…」とか考えがぐるぐる巡って…。

    …あれ? 

    …これはあれだ。  …恋だ。 ^^

  • 「夜は短し~」の極彩色のイメージとは対照的な、モノクロームの世界。
    その中で「カッと口を開いたケモノ」の白い歯と紅蓮の口中(私のイメージ)が、
    鮮やかに印象に残る。
    まるですぐそこにいるかのように、その息遣いや匂いまでも漂ってきそうだ。
    初夏のうららかな太陽の下、まだ梅雨入りもしていないのに、
    じっとりと肌に纏わり付くような、京都の不思議な空気感を思い出した。

  • おー。ホラー。
    京都が舞台なんだけど、今までの阿呆なエネルギーが爆発する内容とは打って変わって、ほんとうに普通のホラー。

    短篇集なんだけど、最後の「水神」以外は全部ケモノが出てくるし、話毎に出てくる芳蓮堂の店主が違ったり、これは裏の話で、本当は芳蓮堂とか天城さんとか辺りがメインな気がする。

    全話を通して、話が事項順なのは殆ど無くて、現在と過去回想が交互になってて、それが京都の細々した道とか閉鎖感とかと相まって、薄暗い迷路を進んでくような気持ちで読み進められた。

    阿呆な小説しか読んでなかったから気づかなかったけど、雰囲気描写がめっちゃうまいと思いました。森見氏。

  • 私こう言ったらなんだけど
    森見さんて
    「京都を舞台としたうだつのあがらない男子大学生が恋をしながらもへたれながらだらだら過ごす」みたいな小説専門の人みたいな印象があったから
    これは少し見直した うん、結構見直した

    ジャンル分けがすごく微妙なんだけど
    ちょっとホラーに足つっこんでるかなあ
    背筋の辺りがぞわぞわしてきた、あ、怖いかも と思うあたりで筆を止めてしまうんだよね
    恐怖の予感だけで終わらせてしまうというか
    そこが勿体無いかなあ

    骨董屋のナツメさんとか
    シルクロードを旅してきた先輩とか
    死んだはずの祖父が起こす水の怪とか

    すとんと腑に落ちない短編集。
    夏にはぴったりかなあ。でも「面白い!!」とはおすすめできない。

  • 個人的に馴染み深い京都市左京区界隈を舞台に、日常と非日常が混濁する幻想的な世界が繰り広げられており、ヌルリと呑み込まれるように読み耽ってしまった。
    文体、展開はもちろんのこと、各小編が何某かの部品で緩くリンクしているところや、天満屋まで登場させて有機的に仕上げられている点は、いかにも森見登美彦氏らしい。
    すべての縦糸と横糸がほぐれてカタルシスが得られる、という類の物語ではないが、醸し出される空気も含めて、まさしく耽溺するにふさわしい作品だ。

  • まるで暗闇の中で万華鏡を覗いているような一冊。
    美しいカケラが近づいては歪み、離れていく幻想が味わえるが、振り返るのが怖くなるかもしれない。

  • この手のホラーで薄気味悪い小説は初めて読んだけれど一気にハマった。
    京都が舞台だけあって日本特有のホラーな感じがいい。

  • 短編四作品

    話というかキーワードが微妙にリンクする京都を舞台とした幻想的な話。全ての話にハッキリしない不気味さが残り、このシックリ来ない感じを良いと言う人たちは少なくないと思う。

    ひっそりと這い蹲りながら迫ってくる爬虫類のような気持ち悪さが漂う奇譚集・・・


    読み終わった後に読書仲間と話し合える小説でもある。

  • 多分、これ読むの4度目(笑。
    たまに、図書館で借りて読んでます。

  • ねっとり、じめじめした雰囲気漂う四編。怪しさ満載。しかし答え合わせはされず、読了としてはもやもやしたものが残る。なので余計にねっとりとした読了感が味わえる一冊。ちゃんと時系列とかを考えて読んだらいいのかもしれない。読んでいるうちに、部屋が生臭く感じたり、水の音が聞こえるかもしれない。

  • 怪しく不気味なケモノに関する短編連作集。

    それぞれの編で、3/4くらいまでは淡々と情景描写や一見すると関連のない独立した叙述が続いてラストにかけて一気に意味がわかってくるしくみ。これを書く森見登美彦さんは我慢強い人だなあと思う。
    それに最後まで読んでも結局スッキリするような落ち方ではなくて、この煙に巻かれる感じがまた森見登美彦さんらしい。
    ミステリアスな歳上の痩身な女性が好きなんだろうなという印象があるけれど、森見登美彦さん自身も相当ミステリアスだ。

  • 再読。

    コミカルでユーモアたっぷりな長編とは対照的に、ダークで薄気味悪い雰囲気漂う短編集。
    4作品はゆるく繋がっているものの、どの話も独立しており、はっきりとこれがこう繋がっているとは明記されていない。どの作品も謎はすべて解かれることはなく、謎は謎のまま奇妙な余韻を残して終わる。恐らくこの謎はこうです、と綺麗さっぱり解明されたら艶消しで、煙に巻かれたようなそれこそ狐につままれたような不思議な気分に陥いるのがちょうどいいのかもしれない。
    京都という実在する街を舞台に、複雑に入り組んだ路地や薄暗い森の影、怪奇感たっぷりな夜祭り、長い歴史の中に埋もれた品々など、不気味な世界を非常に上手く作り出している。「ケモノ」や「きつねのめん」など京都だからこそ似合う小道具があり、そこかしこに漂う闇の色を一段と濃くしている(ラストの『水神』だけきつねに関係ない気がするが)。京都の地形に詳しいとなお、そのダークな世界観に浸れるだろう。

    このダークさで、ぜひ長編が読んでみたい。

  • 某書物お知らせサイトのあらすじをよんでから。
    久々に(´◉◇◉)‼‼‼となりました。

    一話短編のようにみえてねっとり絡み合っている単話。もう一度読み返そうかな、とにやにやぞくぞくできる一冊。

    ++++ *** ++++

    【水神】…はなんだか切なさが残る様な話だったな。
    もうすこしだけ「ほうれんどう」を見て居たかったなと思いました。

  • 京都を舞台とした、怪異が絡む不思議な短編集。4つの作品は、登場する小道具、怪異にかなり共通点がある。文体が高校の教科書に出てくる昔の小説を思い起こさせる。この文体と京都の地名、行事名が色々出てくるところが相まって、正確に情景をイメージして進むには、かなりの読む力が必要かも知れない。僕が京都に詳しくないだけか?表題作が一番好き。最後の水神は完全にホラーだと思う。

  • ど、どうした登美彦氏。むしろ自分が間違えて買ってしまったのか?と思って著者名を確認してしまった。
    詭弁論部も猫ラーメンも腐れ大学生も出てこない、登美彦氏のなかにあるもうひとつの京都。
    ひたひたと忍び寄る。細い路地を少し入ったところから、何かがこちらを見ている気がする。そんな京都らしいしっとり濡れた恐怖を味わえる短編集。  

    森見作品随一の傑作だとおもうけど、読み終わったあと四畳半神話大系に手を伸ばしたくなる。

  • 森見登美彦はほとんど読んでいるけれど、実は極度の怖がりなので、この本は避けてたんですが、冷静に考えたら多少怖くても森見登美彦なんだから、いくらなんでも夜眠れないほど怖いということはないだろうとふと思い直して、結局読みました。結果、眠れなくなるほど怖くはなかったですが、予想以上にじわじわ不気味でした。今は出ないけど、子供の頃は京都の実家界隈ではちょいちょい鼬が出たので、その頃読んでたら怖くて町内歩けなくなったかもしれません。

    微妙にリンクしあっている短編集なのですが、要になっているのは「果実の中の龍」かな。他の3作の要素が少しずつ入っているし、この作品をどう解釈するかで、全体のニュアンスが変わってくる巧い構成。しかし「大学で変人扱いされているホラ吹きの先輩」というと、森見作品では定番キャラですが、切り口が違うとこうもおどろおどろしくなるものなんですね。

    ※収録作品
    「きつねのはなし」「果実の中の龍」「魔」「水神」

  • 無気味。夜中に読んで「ゾクッ」とした。
    話ごとに繋がりがある様で、気になるが、答えはない。
    変なケモノが出てくるが想像すると夢に出てきそう。
    コワイ。

  • 京都の同じエリアが舞台となっているようですが、
    梨木香歩さんの「家守綺譚」が陽に対して、こちらは陰。

    読んだあと、じっとりしたおぞましさが残る。
    ネオンカラーを被せた京都の路地に潜む妖かし。。。

  • すべての作品が緩やかにつながっている。
    全編通して静か。
    ホラーだと思わずに買って、じわじわと恐怖に突き落とされていく。
    「果実の中の龍」のように何かしらの救いがあるのかと思ったら、そんなものはまるでなく。
    深夜に読み終わるんじゃなかった。
    こういうのも書けるんだなぁ。

  • 森見さんの作品は今回で4冊目。
    今作はいつもの阿呆学生もいなければ、森見節もありません。
    それだけ言えば魅力半減のように思えるが、いえいえそこは流石森見さんと言いますか、普段とは違う顔を楽しめる作品となっております。

    ジャンルとしてはホラーなのかファンタジーなのか。
    始終表紙のような暗く重いイメージで、表面の薄気味悪さではなく腹の底に響くような気味悪さを感じます。
    4つのお話が収録されており、それぞれ独立しているようで、どこか繋がっている。そこもまた薄気味悪さに拍車をかけているのでしょうね。
    始めは影しか見せなかったモノが1つまた1つと話が進むにつれて、だんだんと見えてくるその姿。
    『胴体が長く人のような顔をしてカッと笑うイタチに似たケモノ』とは一体何なのか。尻尾が見えたかと思ったらするりと逃げていく。結局ナニかは分からず仕舞いで余計夜道が怖くなる。
    またこの不気味な雰囲気は京都を知り尽くしている著者だからこそ書けるお話なんだろうなと。
    そして読者もまた京都を知り尽くしていればいるほど入り込めるのではないだろうか。
    残念ながら私は京都についてや街並みを触り程度しか分からないため、想像が難しくなかなか入り込むことが出来なかったが、また京都へ訪れる際に実際の場所を目で見てからもう一度読んでみたいものです。

  • 京の骨董屋を舞台に緩やかにつながりあう四つの物語を収めた完成度の高い連作ホラーファンタジー。

    前作『四畳半神話大系』、デビュー作『太陽の塔』とは雰囲気をがらりと変えた異色作ということもあり最初は面食らったものの、その端正な語り口、古都の裏側に潜む闇をかいま見せる手つきの巧みさなど、あらためて作者のポテンシャルの高さを感じさせる傑作に仕上がっています。

    ぶっちゃけ『夜は短し歩けよ乙女』よりこちらの方が直木賞的には可能性あったんじゃないかと思うのはオレだけだろうかね。

  • 想像の余地をじゅうぶん残し、古都京都の艶やかな密やかな闇を空想させてくれるホラー。もりみとみひこのなかでいちばんすき。

  • 不思議な世界観だが、他の作品のようにぶっ飛んだ奇妙さ明るさはなく、なんとなくじめっとした短編集だった。

全800件中 1 - 25件を表示

きつねのはなし (新潮文庫)に関連するまとめ

きつねのはなし (新潮文庫)を本棚に登録しているひと

きつねのはなし (新潮文庫)を本棚に「いま読んでる」で登録しているひと

きつねのはなし (新潮文庫)を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

きつねのはなし (新潮文庫)を本棚に「積読」で登録しているひと

きつねのはなし (新潮文庫)の作品紹介

「知り合いから妙なケモノをもらってね」篭の中で何かが身じろぎする気配がした。古道具店の主から風呂敷包みを託された青年が訪れた、奇妙な屋敷。彼はそこで魔に魅入られたのか(表題作)。通夜の後、男たちの酒宴が始まった。やがて先代より預かったという"家宝"を持った女が現われて(「水神」)。闇に蟠るもの、おまえの名は?底知れぬ謎を秘めた古都を舞台に描く、漆黒の作品集。

きつねのはなし (新潮文庫)の単行本

きつねのはなし (新潮文庫)のKindle版

ツイートする