茜さす〈上〉 (新潮文庫)

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著者 : 永井路子
  • 新潮社 (1991年10月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (426ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101292090

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茜さす〈上〉 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 奈良にまつわる小説が読みたくて、本書に出会った。

    読み始めるうちに、歴史上の人物にまつわるいろいろなことを思い出した。

    大友皇子。中大兄皇子(天智天皇)の息子。以前友人の家系図を見せてもらったら、彼女の先祖は大友皇子と知り、古代飛鳥時代から脈々と続く血筋にたいへん驚いた。

    持統天皇の幼名は、鸕野讚良皇女(うののさららのひめみこ)。そういえば、神田うのさんの名前の由来はこの人だったか。

    そんなミーハー的な感動は最初だけ。
    途中から、歴史にまつわる話と現代女性の生き方が折り重なって表現されて、とても読み応えがあった。
    1988年に書かれたという本書は、今読んでもとても新鮮で、女性の精神的な自立について深く描かれている。

    主人公のなつみが考える、個族という生き方。孤独だと悲壮がるのではなく、個人として自立して生きていく。そんな立派な決意があったわけでなく、結果的にいま、個族になってしまった私がいるが、本書を読むと、少し勇気がもらえる。

    本書を読み終えた今日、帰宅すると友人から結婚式の招待状が届いていた。一緒に結婚式に参列する他の友人は皆既婚者で、これでこの仲良しグループの中で結婚していないのは、私だけになる。よりによって、今日招待状が届くなんて、動揺するかどうか、試されているのか。それとも、読み終えるタイミングを待っていてくれたのか。

    どちらでも構いやしない。
    胸のざわつきは否定できないが、友人の晴れの日に、個族の一人として、堂々と参列いたしましょう。

  • 「茜さす 紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る」
    飛鳥時代の愛憎劇を女子大生が追いかける。バブル時代の話



    茜草指 武良前野逝 標野行 野守者不見哉 君之袖布流


     現代から古代へ思いをはせる歴史小説。現代の友田なつみの思考の中身が多くて、歴史的内容を読みたいと思った人には冗長に感じる。しかし、これでいいのだろう。

     飛鳥時代は日本史ではもう古代である。だから謎が多い。現代人は想像するしかない。だから創造する自由もあるのだろう。
     現代人のなつみが「イマ」を生きながら過去の人間関係を創造していく過程はユニークである。そして、創造する過程があまりに無駄のない最短距離に近いものだと、それはうさん臭くなる。だから主人公なつみが遠回りをしながら、ゆっくり古代の恋物語を想像して古代の女性の恋心に思いをはせて魅了されていく冗長さは、深みを出している。

     蘇我氏や藤原氏のうさん臭さが見え隠れする飛鳥時代の、特に天智天皇から天武天皇、持統天皇くらいの時代はドラマがいっぱい詰まっていそうである。

     持統天皇の怨念を感じられる、女性の歴史小説。

     一度5年前くらいに読み始めて飽きてしまったが、この辺の時代に少し詳しくなってから再び読み始めたら面白く読めた。

  • E女子大学4年の友田なつみは、夏休みに訪れた吉野で会社社長・泉と出会った。卒論、就職活動と忙しい日々のなか、なつみの脳裏にはなぜか時折泉の姿が浮かぶ。妊娠を苦にした友人の自殺にあい、女性に厳しい就職の現状を経験したなつみは、万葉の時代を風のように駆けぬけたひとりの女帝に目を向け始めた…。歴史と現代が交差する地点で女性の生き方を見つめる、著者初の長編現代小説。

  • <上下巻読了>
     珍しく現代が舞台の本作は、刊行年に関わらず、内容が色褪せていない。
     焦点は、女性の生き方の模索。
     飛鳥の地と歴史を今の世から眺めること自体を、作中の視点とした試みは面白いとはいえ、現代と古代の融合に微妙な違和感が残ったのも否めない。
     愛と性と自立に関する談義も刺激的かつ興味深いものの、登場人物たちに託された道筋が乱立するに留まる印象はあるし、端々の提言も抽象的な理論を抜け切っていない気がする。
     それでも尚夢中で読破したのは、己自身の迷いや悔いが物語の主体に投影されるからなのだろう。
     主人公・なつみが持統天皇の生涯を追う必然性は見定められなくとも、生きる道と信念に惑い、密かに古代に惹かれる女の一人として追従せずにはいられない。
     孤独ではない、独立した個人である、『個族』を選択する彼女らの姿が心強かった。
     現代小説のパターンの類に陥らず、安易な起承転結には収まらない本書は、年齢を重ねる毎に異なる感慨をもって読み返す日が来るのだろう。

  • 子供の頃 この作品を読んで 進路を決めました(笑)
    女子大生って すごぃ研究をするんだなぁと思って・・。
    今でも初心を思い返したいときは 必ず開く本です。
    初めて読んだ永井作品であり ここからたくさんの作品に
    魅かれて行きました。

  • 今となるとちょっと古い印象もあるけれど、素直に読めて、流れを楽しめる小説。主人公が万葉の時代に興味を抱き、ゆかりの地を歩き回ったりなど、歴史の話としても面白い部分がある。

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