ニシノユキヒコの恋と冒険 (新潮文庫)

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著者 : 川上弘美
  • 新潮社 (2006年7月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (279ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101292342

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ニシノユキヒコの恋と冒険 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • ニシノさん、
    西野君、
    ユキヒコ、
    幸彦、
    西野くん、
    ニシノ、

    などなど、
    呼ばれ方は違うけど、
    様々な時代の
    様々な歳の女性たちの
    恋愛話の中から

    ニシノユキヒコという
    ひとりの男が見えてくる構成。

    いやぁ〜
    面白かったです(^_^)


    どこか
    「100万回生きたねこ」を連想したし、
    (様々な女性たちのもとに現れては、結局誰も愛せない様は
    真実の愛に気付く前の絵本の中のねこそのもの)

    女性たちから見れば、
    興味を惹かずにはいられない
    野良猫のような人だと思いました。



    甘い顔と清潔さと几帳面さと
    全天候型の抑揚のない声

    そして少しの冷気を併せ持った
    ニシノユキヒコ。


    クールに振る舞いながらも努力家で、

    褒めたり甘えたり
    叱ったり、
    女性が望む様々なことを
    いとも簡単に
    またとないタイミングで
    見事に叶えてあげられる技術を持つ。


    誰かに愛されたいと願いながらも
    いつも上の空という
    掴みどころのない男。


    いや、実際どうなんでしょう(笑)

    世の女性たちは
    ニシノユキヒコのような男性を
    どう思ってるんやろ?

    ちょっと聞いてみたい気がします(笑)



    コレはニシノユキヒコの辿ってきた
    中学時代から
    50歳を過ぎ亡くなってしまうまでの恋愛遍歴を、
    年代をシャッフルした
    構成で並べた連作短編集です。



    それにしても
    過不足なく行き届いた
    心地いい言葉、

    それでいて高ぶらず品のある
    川上弘美さんの文体は
    この作品でも健在で、

    上手いなぁ〜っと
    思わずにはいられませんでした。
    (ただ、川上作品の特徴であり、柔らかさを印象づけていた
    心地よい食事の場面がほとんどなかったのは少し寂く感じたなぁ〜)


    どうしようもないダメな男性の
    恋と冒険を描きながらも

    裏を返せば
    実は凛とした
    カッコいい女性の生き様を描いた
    小説でもあるんですよね。



    恋って
    いい人だから好きになる、
    大事にしてくれそうだから好きになるというものでもない。


    どうしようもない人で
    周りは反対するけど、


    「でも好きやねんっ!!!」


    って胸を張って言える瞬間は
    誰にでもあるだろうし、


    男でも女でも
    誰の中にも
    ニシノユキヒコ的なものは必ずあるのです。



    しかし、歴代彼女が
    俺のことを語った話を
    もしまとめたらと思うと、

    ああ〜っ怖〜っ!!!

    です(≧∇≦)

  • 稀代のモテ男・ニシノユキヒコの爛れた女性遍歴を、相手方の女性10人がそれぞれの視点で語り下ろすという連作。
    「稀代のモテ男の生涯」という意味では、源氏物語みたいなものなのだろうか。読んだことないからわかんないけど。

    非モテな私としては、恥ずかしげも文脈もなくさらりと中二みたいなことを言ってしまう感じとか、なんやかんや言って結局彼とそういうことになってしまう展開とか、いきなり始まる観念的かつ感応的なハルキスト的な問答に随分イラッとさせられました。
    非モテな私にはあまりはまらなかったわけですが、女性が読んだらどう思うんだろう。

    作中に登場する10人の女性にぜひ集まってもらって、ニシノユキヒコについて語りあってみてほしいと思った。
    はたしてそれが、「ニシノユキヒコファンの集い」になるのか。
    それとも「ニシノユキヒコ被害者の会」になるのか。
    私はそれを、ぜひ覗いてみたい。

  • ニシノユキヒコは、女の子の理想。
    見た目は、それなり、キスもさりげなく、セックスも心を癒す。そして優しい。
    10人の女性との恋物語。
    淋しく切ない恋。
    川上弘美のゆったりとしたすてきな時間を堪能できる作品。

    「おやすみ」
    わたしたちは愛しあいかけていた。けれども愛しあうことはできずに、愛しあう直前の場所に、いつまでも佇んでいた。

    「ドキドキしちゃう」
    夜の海が満ちて、あたしたちを沈めて、そうしたらあたしたちは小さな蟹になればいい。
    波がときおり大きな音をたてて、寄せてくる。海が大きく満ちてくる。夜の中で、あたしはいつまでも、ドキドキしている。

  • 川上弘美さんが描く純リアリズムの恋愛小説。年齢も様々な10人の女性たちが語るニシノユキヒコの物語。恋の相手に恵まれるニシノだけれど、それらはけっして長続きしない。それはそうだろう。「2人は末永く幸せに暮らしました」では恋愛文学にはならない。忍ぶ恋、禁断の恋、破滅的な恋こそが恋愛小説の王道だ。だから、この物語にはいつも別れが待っている。女たちは本質的な孤独がニシノに内在することに気づいてしまうから。その上に彼は絶対に叶うことのない、姉への恋愛感情までを秘めているのだから。寂しい、そして寂しさが似合う小説だ。

  • 実はこの本を読むのはこれが3回目です。一度読んで面白くてすぐ2回目を読み、公開中の同名の映画を近々観るためのおさらいで今回また読んでみました。

    優しくほのかに暖かい物腰で女性に近づくニシノユキヒコ。付きあっている女性の前で、悪びれもせず「二股をかけたいけど、女の子がたいがい許してくれない。」と言ってしまうニシノユキヒコ。ニシノユキヒコが心の底から女性を愛せないように、物語の中でニシノと関わった女性たちもまた心からニシノを愛せた人はいなかったのではないかと私は思いました。

    それは虚しい物語のようにも思えますが、けっしてそうではなく、女性の目線で語られる優しいだけではないニシノの捉えどころのない魅力、その内に秘められた過去のつらい記憶が浮き彫りになって私の心を捕まえて離しませんでした。

    ニシノユキヒコ。現実にはなかなかいない男性だとは思いますが、もし自分の前にニシノユキヒコが現れたら、私はニシノに関わることを拒むことができるだろうか?そんなことが頭に浮かびました。

  • つるつると、掴み所のない完璧さ、低く甘い声。イヌのような眼差し。「愛し方がわからない」死ぬまで迷走を続けたニシノユキヒコ。彼が愛した10人の、いろんな意味でかっこいい女性たちが語る彼についての物語。人間の色気と暖かさとをじっくり味わえる良作。竹野内豊主演で映画化だとか。かなり彼のイメージに近く、映画も楽しみだ。きっとダメな男とわかっていてもみんな彼にやられてしまうんだろうなぁ…。

  • 「ニシノユキヒコ」氏は女にもてる。
    ろくでなしである。
    こんな男が傍にいたら全力で逃げるべきである。
    誰かを愛したくてたまらないのに、自分に恋をする女なんて興味ないのだ。
    友人がこんな男と恋愛していたら、さっさと別れた方がいいと助言するだろう。
    そんなことを言いながら、ニシノ氏が傍にいたら、私はたぶん恋に落ちてしまう気がする。

  • ニシノユキヒコを愛した10人の女性の話。
    中学生のニシノユキヒコから幽霊のニシノユキヒコまで。


    ニシノユキヒコみたいな男って…稀にいるよね。
    ダメ男って言葉で済ましたらそれまでだけどw
    自分のことを棚にあげてるって言ったらそれまでだけどw
    人を深く愛せない、愛してるつもりでも伝わらない、平気で浮気するくせに、相手の愛は全て自分に向けていてほしい。
    都合がいいヤツなんだけど、そういう人に惹かれちゃう女性が多いのも事実。
    なんでこんな人がもてるんだろう?って思うけど、自分も惹かれちゃってたり。


    でも結局、
    そういう男性と付き合っても、自分も一歩ひいちゃうんだよね。客観的に醒めて付き合っちゃう。
    熱をあげても無駄だなって気づいちゃう。
    年齢を重ねると余計に。



    ニシノユキヒコに苛つきながら読了しました。
    川上弘美最高!

  • 「ニシノユキヒコ」という1人の男の姿を、彼と関わった10人の女が振り返る。
    愛し合っているはずなのに、決して距離が縮まらないもどかしさ。いつか離れてしまうと気付きながらも、止められない気持ち。そんな繊細で切ない描写が素晴らしかった。

    彼を語る10人の女性たちはみな、自立していて洞察力に長け、賢い。そんな女性たちでさえ太刀打ちできなかったニシノユキヒコという男。
    でもわたしは、彼はどの恋愛も本気だったし、目の前の女性を愛し抜こうと誰よりももがいていたように感じる。

    タイトルに「冒険」とあるように、彼はずっと、自分自身を探していたのではないかな。
    そしてそれを見つけ、愛してくれる女性を求めていた。
    だけど彼は生涯孤独だった。
    彼を心底理解できた女はいなかったし、彼自身も、最期まで自分を理解することができなかったんじゃないかと思う。

    でも「草の中で」の山片、「ぶどう」の愛、「水銀体温計」の御園に対しては、彼は弱くてもろい部分を出した。彼は自分に惚れない女に対しては、心を許すことができたのかな。彼女達にはどことなく、自分と似た部分があるから。

    そして他の女性たちにおいては、死んだ姉とその娘にダブらせて愛したのかもしれない。

    わたしはニシノユキヒコのことを「女たらし」だなんてちっとも思わなかった。
    苦しくて、情けなくて、ものすごくいとおしい。

  • 現代の源氏物語という感じがする
    ニシノさんのかっこよさに痺れるのもよいが、でてくる女性陣をこの人苦手だな〜とか素敵とか考えて読むのも面白い

    私は断トツでマナミが好き
    おやすみを読むと切なくて胸がぎゅっとなる
    マナミは源氏物語でいう六条御息所ポジションかな〜

  • どうせ色気でも振りまいてなんて罪な男だと思っていた序盤から、いつしかニシノユキヒコが愛おしくてたまらなくなっていた。
    まるで、彼の彼女、いや、母にでもなったような。

    そして、読み終えたときにこの装丁の良さもわかる。

  • 主人公ユキヒコはザ・女たらし。
    ユキヒコに振り回される女たちと、好き勝手するユキヒコの話が連続していて、少しつまらなかった。

    が、

    ラスト2つの話では少しハッとさせられた。
    この2つの話のために、その前の8つの話はあったのかも。
    これまでの女達とは違い、ユキヒコを全然愛していない愛。中年になったユキヒコをみっともなく狂わせている20歳そこそこの愛との物語「ぶどう」は、ユキヒコの死という衝撃的な出来事が含まれているせいもあるけれど、明らかに異質。
    そして最後の「水銀体温計」では、時がさかのぼってユキヒコの大学時代に。結局は姉のことがユキヒコの人生にずっと呪いみたいに付きまとって、哀れな一生を終えることになってしまったんだろうなと再確認させる話だった。

    主人公は一応ユキヒコということになるのだろうが、すべての話を読み終えた今、主人公は一人に決められないのではないかという気もしてきた。
    つまり、主人公はそれぞれの女たち。
    ユキヒコと出会い、惹かれ、思い悩む女たちは、彼にすっかり主導権を握られているようだ。だけど、彼女たちは自分から彼に別れを告げ歩み去る。彼はどんどん遠くなる。確かに一度は彼女たちの人生を彩ったユキヒコだけど、遠ざかるにつれてどんどん色を無くしていく。そして、彼女たちの引き出しの中にたくさん入っているガラクタの一つになる。

    そう考えると、ちょっとむなしくなる。
    少年のころに受けた傷を抱え、屈折してしまったユキヒコという男を、心から理解しようとした女もいないし、そんな境遇、彼女たちにとっては関係ないのだ。ユキヒコは自分主演のドラマの、単なる相手役だったのだ。

    大騒ぎする恋が、滑稽にも思えてくる。

  • 「僕は勉強ができない」の秀美くんから、なぜかふと思い出して「ニシノユキヒコ」に至った私。
    川上弘美の筆致は好きだし、女性の“感じ”も好きだし、更にいうとフォントの「ふ」の字にもクラクラくるぐらい好きだ。

    しかし、ニシノユキヒコ、困った人。
    あらゆる女性が、どこかでニシノユキヒコを「赦し」ていることを、彼自身は気付いているんだろうか。
    最後にのぞみが言う、突然自分の世界に入っていってしまう男。そんな、自己愛のお話に読めてしまう。

    彼が最後に出会うのが、愛。
    彼女だけはニシノユキヒコを愛さない。
    どこか『パイロットフィッシュ』の七海を彷彿とさせる、少女の聖性を匂わせた女の子である。
    愛されないことに依存心を強め、聖性がある存在に崇高な感情を抱く。

    結局のところ、彼は冒険の中で自分自身を見出すことが出来たのだろうか。

  • 絶対に好きになっちゃいけないタイプ。ニシノユキヒコと、横道世之介。
    でもね、やっぱりこういう男魅力的。というか、こういう男を書く筆をもたせたら、川上弘美は秀逸なのだ。
    どうしてもてんの?(怒) どうして執着しちゃう?(寂) 理性、理屈と本能のあいだは何なのか? そういうことを、解りやすく書いたらきっととても単純でつまらなくなってしまう。だってある種の世の女は皆そういう男に惹かれる法則だから。
    その「間」をまるで説明臭くなく、のんびりと描く腕に楽しませてもらったよ。

  • ニシノ君は可哀想だなぁ。女の子たちはニシノ君と別れた後は絶対に誰かを愛して、ほどほどに幸せになってるはずなのに、ニシノ君は生涯愛されつづけることを知らず気づかず生きたんだから。なんつったら、女の人に怒られるんだろうなぁ。てことをあとがきまで読んで考えた。
    こいつは悪い男なのかなぁ。少年時代のトラウマで「愛しい」という感情がわからなくなって、当然愛し方もわからなくて、愛されなくなって、それが普通になってきて、愛さず人と付き合いつづけて。こんな寂しすぎる負の連鎖を止めてくれる強い女性を望むこと自体あまちゃんなのかなぁ。
    なんつって無条件の承認という甘美な妄念に逃げようとしちゃってるな。でも物語なんだから少しくらいいいよね。
    玉のような言葉とか、感覚的な比喩がすごく好きだった。

  • ニシノユキヒコという男の中学から死ぬまでの恋愛模様を、
    彼に関わった10人の女性の視点で描かれた短編長編。
    時系列順ではないところが、スリリングでおもしろい。
    ニシノくんは天性の女たらしで、女が喜ぶようなセリフを
    サラリと言う。礼儀正しく外見も清潔感がある、らしい。
    サッとキスしたり、サッと家にあがりこんだり。
    でもニシノくんは人を愛することができないから、
    ほんとに愛されることもない。
    かわいそうな男の子。(おっさんになっても少年風。)
    そんな彼のトラウマが最後にポツリ。
    最後の2編に描かれたニシノくんの恋愛のクライマックスと
    恋愛遍歴の初期を読んで、少し彼の謎が解ける感じ。
    ちょっと光源氏みたいな男性。
    (私の知ってる光源氏は『あさきゆめみし』での彼だが。)
    おもしろいんだけど、一気読みはできない。
    朝起きて1つ読んで、夜2、3コ読んで寝て…みたいなのに
    ぴったりの本です。
    英文学風のタイトルも愉快。

    なんとなく江國香織っぽさもあった。
    今まで似てるなんて思わなかったけど、似てるのかな。

    愛って…かんたん? 私のは愛かな?

  • 西野幸彦に関わった女性達が語るニシノユキヒコという人は天然の女タラシ、しかも本気で人を好きになることがないというところが性質が悪い。
    自分がもし、こんな男性と出会ってしまったら……やはり惹かれてしまうかな?
    そして、虚しくなって距離を置くかな?
    人を好きになったことのない西野君が最後に電話をかけた相手が、これまた人を本気で好きになったことのない女の子というのが皮肉だと思った。

  • ニシノくん、幸彦、西野君、ユキヒコ・・・・。姿よしセックスよし。女には一も二もなく優しく、懲りることを知らない。だけど最後には必ず去られてしまう。とめどないこの世に真実の愛を探してさまよった、男一匹ニシノユキヒコの恋とかなしみの道行きを、交情のあった十人の女が思い語る。はてしなくしょうもないニシノの生きようが、切なく胸にせまる、傑作連作選。(背表紙より)

    やられた・・という感じ。読み始めてしばらく、あーこんな男、やだなぁと思っていたにもかかわらず、読み終わる頃にはどっぷり大好きになっていた・・。こういう人、好きだなぁ、きっと惚れるなぁと思ったとたん、自分が「ダメンズ」にはまるタイプだと確信しました・・。それでもすてき。タイプです。映画観たい(笑)。

  • 女性たちの視点から「ニシノユキヒコ」あるいは「西野幸彦」という男性を描いた連作集です。彼は何人もの女性と同時進行で付き合っていて、しかも誰にも本気になることがなく、それゆえに誰からも愛想をつかされ、ひとりぼっちになってしまうけれど、すぐに別の女性が現れる。そうして延々と女性たちとの交際を続けていくのですが、ついに彼にも死が訪れます。
    にしのゆきひこという男性の少年期から壮年期(そして死)までを見て、女性を本気で愛さないのは姉のことが好きだったからではないかと思いました。姉以外の人を愛せないのではありません。彼は本気で愛さないようにしていると、努めてそうしていることを明らかにするのです。その理由はおそらく、本気で愛した人を失ったから。そう思って、ひとつだけ視点が欠けていることに気づきました。十二歳上の姉から見た「西野幸彦」です。
    この視点があれば、にしのゆきひこの生き方に納得のいく説明がつけられるはずですが、残念ながらそれを読むことはできません。読者はそれぞれ、姉が死ぬ間際に言ったであろうことを想像し、それにしたがって彼が生きてきたのだろうと、これも想像するしかありません。でもそれこそが、小説の読み方なのかもしれないと感じました。

  • 様々なタイプの女性にモテまくる主人公の生涯についての話でした。
    全10篇あり、それぞれで登場してくる女性が違うのですが、どの話も出てくる女性も個性的で魅力があり、とても面白かったです。
    また、モテるのになぜか恋がうまくいかず、最後にはいつも振られてしまうニシノユキヒコの残念さが壺にはまってしまいましたね。
    男と女って、幸せになるのって、なんか難しいなと思いました。
    しかし、なぜかほっこ温かい気持ちになるような恋したいなと思えるような作品でした。

  • 予想通りのダメ男だけど、私も絶対惚れてまう。寂しがりやで、色っぽくって、霞食ってて、優男で、愛に無責任で、悔しいけど愛おしい。ごうきを思い出し、切なくなってしまった。

    でも、私は彼には思い出してもらえない存在感のない彼女だったんだろうな。この本の女性たちのような思い出を残せたら幸せだったのに。死に際に思い出してもらえるって羨ましくってしょうがなかった。

  • 浮気男というのはこうやって作られるんだなあ(笑)

    女には「本当にろくでもない男で最低だったけど、でも、楽しかった」みたいな思い出が残る。結局嫌われることはない。
    お姉さんの記憶で、ニシノくんってかわいそう、仕方ないねって思わせて終わるところも女たらしのお話として完璧。

    それぞれの女たちが、そこでどうしようもない男にのめり込んでしまえばいいのに!というところでサッと去ってしまうのがどうして?と思いつつ、いざそうなるとそういうもんなんだろうか、と思ったり。

    竹内豊さんで映画化になるそうなので楽しみ。


    本を開けばすぐ、ああ、川上さんの小説だなあってスッと入れる感じがすごく好きでした。
    言葉づかいとか、並列で書かれることが並列じゃなさそうなところとか、その言葉をその言葉で形容しちゃう?っていうところとか。

    以下引用。

    ---「草の中で」--------------------------------------------

     あたしはぞくぞくした。西野君の下のくらやみの中にある、朽ちかけた黄楊のくし。こわい、ともちがう、うれしい、ともちがう、いやだ、ともちがう、かなしい、ともちがう。いろいろなものが混じった、ぞくぞく。

    ---「おやすみ」--------------------------------------------

     マナミ、とユキヒコはわたしの名を呼んだ。会議室の暗闇の中で。ブラインドのおりた暗がりの中で。わたしは何も答えなかった。榎本副主任、と名字でしか呼んだことのないわたしの名前を、ユキヒコが知っていることに、衝撃をおぼえた。自分に名前があったことを思い出して、衝撃をおぼえた。ユキヒコにはじめて呼ばれたわたしの名前がすでにして甘く溶けだしていることに、衝撃をおぼえた。

    ----------------------

    「ごめん」と、もう一度ユキヒコが言った。わたしはユキヒコにかじりついた。わたし可愛い女になってるな、今。そう思いながら、ユキヒコにかじりついた。可愛い女は嫌いだった。可愛い女になどなりたくなかった。これから先、自分からはユキヒコに電話をすまい。わたしは可愛い女になったまま、その時決心した。可愛い女などというものになってしまった以上、そのくらいの枷を自分に課さなければ、やっていられない。そう、ひそかに決意したのであった。

    ----------------------

     わたしたちは不安だった。わたしたちは恍惚としていた。わたしたちは絶望していた。わたしたちは軽かった。わたしたちは愛しあいかけていた。けれど愛しあうことはできずに、愛しあう直前の場所に、いつまでも佇んでいた。

    ----------------------

     ユキヒコはあおざめていた。わたしのことを、甘くみていたのだ。いつもいつも。わたしはユキヒコを甘くみていなかったのに。でも、甘くみあわないで、どうやってひとは愛しあえるだろう。許しあって、油断しあって、ほんのすこしばかり見くだしあって、ひとは初めて愛しあえるんじゃないだろうか。わたしは、一度もユキヒコを甘くみることができなかった。ユキヒコの方はわたしを甘く見ていたというのに。

    ---「夏の終りの王国」--------------------------------------------

     誰かを好きになることがわたしは好きで、でも誰かを好きになることはなかなか難しい。わたしは自分の欲望をよく知っているから。自分がほんとうのところ何を望んでいるか、正直に自分に問うてしまうから。
     西野くんのぜんぶを、欲しくなれるといいな。わたしはつぶやいた。

    -----------... 続きを読む

  • 川上さんの本はこれが初めて。言葉がさらさらと流れる感じで、すーっと心にしみる感じだった。

    ニシノさんを取り巻く10人の女性視点から描かれる。ニシノさんはとんでもなくモテて、とんでもなくどうしようもない人だ。
    愛するってどういうことだろう。一緒に居ることでも、一緒に寝ることでもない。ふと好きになってしまう瞬間があって、ふと好きじゃなくなってしまう瞬間がくる。

  • ニシノユキヒコはみんなが気づいていないことや、
    見ようとしていないことに、ただ気づいていただけなのかもしれない。

    誰かに愛されたり
    誰かを愛したりなんて
    本当は実体がなくて、
    好きとか嫌いとか本当は誰に対しても思うことができて。

    でも(最終的に)誰か一人を愛することになるとか、
    なんとなくどこかにそんな人がいるような気がして。
    それでずっとウロウロするのだ。

    愛というものを信じている人ほど、
    人を本当に愛するという感覚を知らないで一生を終わるのかもしれない。

    私は、それなら誤解していたい。
    これが愛だなって思って、誤解して、幸せな気持ちで生きていたい。

  • 映画化が決定し、ニシノくんを竹野内豊さんが演じるとか。
    えーーーーーーー!綾野剛だろー!
    って、思ったので、読み返してみました。

    たぶん、最初に読んだのは20代前半だったかな?
    その時には『こーゆー男にひっかかってはならぬ!』と強く念じました。
    なぜなら、強く願ったり、思ったりするレベルじゃなく念じないと、たいていの女の人はニシノユキヒコにひっかかってしまうからです。
    こいつは危険な男なんですよっ!

    女の人が、イイオンナであろうとすればするほど、深みにはまるタイプなんです。
    だから、ニシノくんを好きな自分が好きになれてしまうという、自己愛を満たしてしまうのです。
    危険です。

    小説だけでも、そんな男見てみたいわっ!

    って方、軽いタッチですので、一日でさらっと読めるのでオススメ。
    ただ、さらっとしている分、奥まで染み込む作品だと思います。


    ちなみに、男性のみなさまは、この本を読んでもモテはわかりませんよ(笑)

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ニシノユキヒコの恋と冒険 (新潮文庫)の作品紹介

ニシノくん、幸彦、西野君、ユキヒコ…。姿よしセックスよし。女には一も二もなく優しく、懲りることを知らない。だけど最後には必ず去られてしまう。とめどないこの世に真実の愛を探してさまよった、男一匹ニシノユキヒコの恋とかなしみの道行きを、交情あった十人の女が思い語る。はてしなくしょうもないニシノの生きようが、切なく胸にせまる、傑作連作集。

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