此処彼処 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101292397

作品紹介・あらすじ

玉川上水の一隅にある、「すわりどころ」と名付けた古びたベンチ。自分と同じ「弘美」という名をもつ浅草の喫茶店。アメリカ西海岸のいろんな街へ四歳のわたしを運んだワーゲンビートルの後部座席…。記憶の底に置き忘れた風景や、流れる時のなかで姿を変えた土地に慈しみの光をあて、人生と思わぬ縁を結んだいくつもの「わたしの場所」をのびやかに綴る自伝的連作エッセイ。

感想・レビュー・書評

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  • 川上さんの文章にはいつもどこか浮遊感があって不思議な気持ちになる。
    具体的な地名が出ていても「それ本当にここのお話?」って尋ねたくなるような…
    お茶の水女子出の才媛なのに気取らなくて、透明感ある優しげな美人なのに辛辣さを隠さないところもいい。息子にうまい棒とか、豆コードとか、このセンスがいい。若かりし頃の川上さんの恋愛も垣間見えてワクワク。

  • 流れる空気が好きなエッセイです。
    川上さんの、自分に属すると決めた場所の数々。
    それぞれのエピソードもちょっと寂しくて素敵です。
    わたしに属する場所はどこかな…と考えて、あまり思い当たらない。ぼんやり生きすぎた気がします。
    今からでも、少しずつわたしの此処彼処を見つけていきたいです。
    気持ちがふくふくとなるエッセイでした。

  • 「場所」をテーマに書かれたエッセイ。ちょっと不思議な異界に迷い込んだような空気と思い出。読みながら「あ、これはあの作品に出てきた場所のモデル、シーンの元ネタだ」と分かる話も多く楽しい

  • 川上弘美先生の”場所”に関するエッセイ
    それにしても、意外と紆余曲折というか…波乱万丈な人生をお送りになっているのだな…川上先生…

  • 年齢も近いから共感できるところが多い。小説もいいけどエッセイもとてもいい。もっと読みたい。

  • 半分は東京に住んでいる人でないと、通じないかもしれない、街々のエピソード。まず町を知っているか知っていないかで感じること、受け取り方が変わってすくる点でニッチなエッセイのかもしれない。

    時折挟まれる地方や海外の話によって、背景をしっているか知っていないかの差が浮き彫りにされる。
    川上弘美が丁寧に切り取る各地域の日常が新鮮である。

  • ホッコリという表現はどこか人を煙に巻くような気がして好きではないのだが、川上弘美の文体には、ホッコリという言葉がしっくりくる。だから、頭の中が難しい事ばかり考えてガチガチな時とか、疲れている時、ふと彼女の文章を読みたくなる。中身は日常を綴ったエッセイ。抑揚なく、そんな所も彼女らしくて好きだ。

    子供の事、幼少期にアメリカにいた事、実はドライブが好きだという事。男友達の事。天真爛漫な彼女がそこにはいて、何と魅力的なんだと思う。著者近影も美人ですが、そこそこの齢。そんな所もまるごと、良いと思う。

  • 今回今一つ好みに非ず。P19「出雲」より<blockquote>海岸に出て、うみねこを見た。うみねこはうじゃうじゃいて、近くに寄ると、じゅうたんが少しずつはがれるように、何羽かがまとまって飛び立つ。波が荒い。日が差している海面と、まっくらな海面とがくっきりと分かれている。神様、とつぶやきたくなるような光景だ。でも、つぶやかない。町に戻ってまた歩く。かじかんでいる。でも歩く。大社の町が好きになってしまったみたいだ。</blockquote>でも、やっぱりよい文章。

  • 家事の合間に休み休み読むのにとてもよかった本。川上弘美さんの「此処 彼処」。



    このとりとめなく、流れていく、どうでもいいのだけど、なんだか大事にしたい、小さなお話が季節ごとに綴られている。

    優しくなれる一冊で、とてもよかった。

    最近のもう一つの傾向に、やったら本が読みたいというのもある。朝一冊、本棚から選んで、夜になるまで読めるとこまで読んで、次の朝にはまた違う本を選んでる。

    その中で、この本はきちんと一冊、他のに浮気しながらでもはじめから終わりまで読み切れた本。

    また川上弘美さんを明日選ぶかな。それとも、アリスモンローに戻るかな。

  • 駆け足で過ぎ去った、あの3年間の終わりに、
    布団の中で読んでいた本。

    はらはらどきどきしている心を鎮めるために。

    読み終わらないように、わざと1話ずつ読んで。

    読み終わる頃、やっと一つの決断ができました。

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著者プロフィール

作家。
1958年東京生まれ。1994年「神様」で第1回パスカル短編文学新人賞を受賞しデビュー。この文学賞に応募したパソコン通信仲間に誘われ俳句をつくり始める。句集に『機嫌のいい犬』。小説「蛇を踏む」(芥川賞)『神様』(紫式部文学賞、Bunkamuraドゥマゴ文学賞)『溺レる』(伊藤整文学賞、女流文学賞)『センセイの鞄』(谷崎潤一郎賞)『真鶴』(芸術選奨文部科学大臣賞)『水声』(読売文学賞)『大きな鳥にさらわれないよう』(泉鏡花賞)などのほか著書多数。2019年紫綬褒章を受章。

「2020年 『わたしの好きな季語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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