菊亭八百善の人びと (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (669ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101293073

感想・レビュー・書評

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  • 宮尾さんが描く女性には、いつも心が締め付けられるような悲しさを感じるのですが、今回の作品では一味違った女性が描かれていて新鮮な感じがした。
    こういうのも嫌いではないです。

    「八百善」という店が実在する事に驚き、ネットで調べてみたら今はお店自体は営業していないそうで、ガッカリしました。江戸料理って言われても何も思い描けず、文化がすたれてしまうのは勿体ないと思い、それならば食してお店の雰囲気を味わってみたいと思ったのですが。

    そんな風に思わせてくれる、なかなか読みごたえのある良い作品だと思います。

  • 最近は江戸、明治、大正、昭和など、少し時代が過ぎた頃を舞台にした話に興味がある。
    宮尾さんの作品に描かれる女性たちの強さ、悲しさ、はかなさ、とても魅かれる。魅かれながらも自分の知識の少なさから優美さを感じながらも想像ができない着物やお茶やこの物語であれば江戸前料理やら。

    汀子はこれからどんな人生を送るんだろうか。小鈴は?

  • 他の作品と比べると、ちょっと物足りなかった。人物描写がさみしかったような…。

  • 実在する料亭八百善の衰退の物語かと思いながら読んでいたけど、これは八百善の再生の物語だ。

  • 昭和26年、しばらく休業していた
    江戸高級料亭八百善が再び、開業することになり、
    料亭家業にはド素人の主人公・若おかみの汀子が、
    四苦八苦しながらも、
    料亭のおかみとして成長していく姿を描いた長編小説です。

    現在ではあまり触れることのできなくなった本格的な江戸料理が、
    この本ではたびたび登場し、その歴史や内容がよくわかりました。
    京都の懐石料理とはまた違った料理の数々・・・。
    描写を読みながら、思わず生唾をのむこともしばしばでした。

    古いしきたりと新しい時代との板挟み。
    守るべき伝統を守ろうとする人々の姿がよく捉えられていました。
    高級料亭につきものの、
    従業員の板前や仲居と主人たちとの葛藤、
    従業員の裏切り、引き抜き、そして夫の浮気。
    赤字続きの高級料亭をしっかりと支え、
    どろどろした人間関係の中で一番成長していったのは、
    世間知らずの若おかみ汀子だったのです。
    やはり女性はいざという時は強くなれるのですね。

    あとがきを読んで初めて知りましたが、
    この作品にはモデルがいらしたそうです。
    本物の高級料亭八百善があったということで、
    それがわかっただけでも、
    いつか、行ってみたくなりました。

    モデルの実在人物もそうであったでしょうが、
    作品中の汀子が、なんとしても守りぬこうとしていた江戸料理。
    現在もあるのなら、実際に食べたいものです。

  • 戦時中に閉めた繁盛老舗料亭。
    戦後、サラリーマンの家庭から嫁いだ嫁。ある日、義父が料亭再開に向けての土地を確保してくる。
    そこからトントン拍子にことが運び料亭再開へ。時代が変わり中々客足が戻らず悪戦苦闘する若嫁を中心に描く。

  • 戦後の物のない時代に、棔家の八代続いた料亭再建に尽力した女性のお話です。
    読み終えて、読みがいのあるお話だな~とつくづく思いました。
    以前読んだ本ですが、内容を全然覚えてなかったのが不思議です。

    主人公の女性に好感をもちました。
    歴史のある料亭を立て直すのに尽力したとなると、自分が前に出てバリバリに働くやり手の女将というのを想像しますが、この主人公の汀子はそんな風でなく、あくまで自分はこの家に嫁いだ立場と一歩引いている。
    しっかり者だけど、どこかおっとりしていて、サッパリした性格。
    そして優しい。
    そんな汀子が頼りない坊ちゃん気質の夫を支え、料亭の経営に気をもみながら成長していく様子と菊亭八百善で働く人々が生き生きと描かれています。
    読んでいると、まるで自分がその中にいるような気持ちになりました。
    料理についていの詳しい記載はないのですが、見たこともないお料理が見えてくるような-。
    そして板場のようすや、料亭の周囲も見えてくるような-。
    こういうお話なら普通、どんどん商売が気流に乗って繁盛していく様を想像しますが、このお話はその反対で、立ち上げた時が一番良くて、その後どんどん経営は苦しくなるばかり。
    しかも公私にわたり、次から次へと問題が起こる。
    そのひとつひとつに悩みながらぶつかりながらまっすぐに生きていく汀子に共感を覚えます。

    作者のあとがきを見て、この汀子さんは実在の人物をモデルにしているのだと知って驚きました。
    それにしては、とても踏み込んだ内容になっている。
    全てが実際の出来事ではないのでしょうが、読み物として、とても読みがいのある本だと思います。

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著者プロフィール

1926年高知県生まれ。『櫂』で太宰治賞、『寒椿』で女流文学賞、『一絃の琴』で直木賞、『序の舞』で吉川英治文学賞受賞。おもな著作に『陽暉楼』『錦』など。2014年没。

「2016年 『まるまる、フルーツ おいしい文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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