寺内貫太郎一家 (新潮文庫)

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  • / ISBN・EAN: 9784101294018

感想・レビュー・書評

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  • 「向田邦子」の処女長篇小説『寺内貫太郎一家』を読みました。

    「小林竜雄」が「向田邦子」の奇跡を辿った作品『向田邦子ワールドの進化 ― 没後20年を迎え、今初めて明かされるドラマと小説の謎』を読んで、久しぶりに「向田邦子」作品を読みたくなったんですよね。

    -----story-------------
    「貫太郎」のモデルは、私の父「向田敏雄」である。
    よくどなり、よく殴り、5年前に亡くなった。
    お線香代りに、ちょっぴり「立派な男」に仕立て直してお目にかけた……。
    口下手で怒りっぽいくせに涙もろい、日本の愛すべき“お父さん"とその家族をユーモアとペーソスで捉え、きめ細かな筆致で下町の人情を刻み、東京・谷中に暮す庶民の真情溢れる生活を描いた幻の処女長編小説。
    -----------------------

    『寺内貫太郎一家』は1974年にTBS系列の水曜劇場枠で放送された人気テレビドラマ(平均視聴率31.3%を記録)だったので、子どもの頃に何気なく見ていたことを断片的に記憶しています。

    本書は、そのノベライズ版で「向田邦子」の処女長篇小説として発表された作品で、以下の12篇で構成されています。

     ■1=身上調査
     ■2=石頭
     ■3=びっこの犬
     ■4=EGG(エッグ)
     ■5=ネズミの一日
     ■6=蛍の光
     ■7=ビー玉
     ■8=親知らず
     ■9=いたずら
     ■10=祭りばやし
     ■11=梅雨の客
     ■12=初恋

    昨年読んだ『せい子・宙太郎』と同じく、笑いあり、涙ありの、心温まる下町人情ドラマで、特に『EGG(エッグ)』と『祭りばやし』は、読んでいて思わずウルッ… となっちゃいましたね。


    『EGG(エッグ)』は、「石貫」の職人「タメさん」が風邪をひき「寺内」家で看病してもらうことになり、ひとつ屋根の下で暮らすことで、家族の温かさを再認識する物語、、、

    熱が下がったのに、まだ熱があるように見せかけて長居しようとしたり、

    「周平」の我侭が許せず親子喧嘩に飛入りしたり、

    そして、アパートに戻ってから、同居しているベテラン職人「岩さん」に居心地はどうだったかと問われ「いや、うるせいのなんの。ああ箸の上げ下ろしに文句いわれちゃとてもいられねえな。ハハ。みんなよく我慢してるよ」と強がりを言ったり、

    その気持ち、よくわかるなぁ… と思いました。


    『祭りばやし』は、お手伝いの「ミヨ子」が夏祭りの手伝いを頼まれるが、その日は母親の命日だったので素直に手伝うことができない、、、

    事情を知っている読者は、拗ねた「ミヨ子」の態度に共感できるのですが、登場人物たちは「ミヨ子」の我侭な行動と思い込み、「ミヨ子」を責める… その理由がわかったあとの「貫太郎」の行動は素早かったですね。

    巧く感情移入できるような構成になっていますねぇ… 良い作品でした。


    登場人物の一人ひとりが個性的でキチンと性格付けされており、とても魅力的に描かれていますね… 読んでいると気付かないうちに感情移入してしまっていました。

    心の機微が巧く描かれている物語… 大好きですねぇ。

    タイトルの付け方も秀逸… 見習いたいものです。

    「向田邦子」は、こんな良い作品を、もっともっとたくさん書いて欲しかったですねぇ。




    以下、テレビドラマの主な出演者です。

    「寺内貫太郎:小林亜星」
     主人公。
     50歳。
     寺内家の主人・頑固親父。

    「寺内里子:加藤治子」
     貫太郎の妻。
     48歳。
     和服姿でいつもてきぱき働いている。

    「寺内周平:西城秀樹」
     寺内家の長男。
     19歳。
     浪人中で父と激しく喧嘩する。
     原作では西城秀樹に似ていると書かれている。

    「寺内きん:悠木千帆(樹木希林)」
     貫太郎の実母。
     70歳。
     沢田研二の大ファン。

    「相馬ミヨコ、相馬美代子:浅田美代子」
     寺内家のお手伝い。
     17歳。
     新潟からやってきた。
     高校3年の5月に母を亡くして親戚に引き取られたが、その親戚の家の金銭事情を察して高校を中退している。

    「倉島岩次郎(岩さん):伴淳三郎」
     「石貫」の職人で、職人暦50年のベテラン。
     山形出身で大阪に息子夫婦がいる。
     若い頃、きんに想いを寄せて求婚したこともあった。

    「榊原為光(タメさん):左とん平」
     「石貫」の職人。
     29歳。
     貫太郎に啖呵を切っては、毎回必ず痛い目に遭う。
     独身でアパートに一人暮らしをしており、家族の温かさに憧れたこともあった。

    「ウス:三浦寛二」
     「石貫」の職人で、花くまの知り合い。
     第18話より登場。

    「花くま:由利徹」
     「石貫」の向かいにある花屋「花くま」の主人。
     独身。

    「寺内静江:梶芽衣子」
     寺内家の長女。
     24歳。
     4歳の頃の事故で左足が不自由。

    「上条裕也:藤竜也」
     静江の恋人。
     子持ちでバツイチ。

    「上条マモル:芦沢竜介」
     上条の連れ子。
     フィンガー5のメンバー・玉元妙子のファン。

    「秋本幸子:吉行和子」
     上条と別れた元妻。
     上条とは嫁姑問題のもつれから離婚、姑の希望から、マモルとは引き離された。
     その後姑が他界したこともあり、上条やマモルには未練を抱いている。
     しゃぶしゃぶ屋で働いている。
     ひと月に一度、マモルと会えることになっているが、我が子恋しさから上条の留守に約束を破ってさつき荘を訪れ、静江を困惑させたこともあった。

    「寺内貫次郎:谷啓」
     貫太郎の腹違いの弟。
     豆腐屋を営んでいる。
     第26話で豆腐屋が火事となり登場。

    「ふみ子:浅茅しのぶ」
     貫次郎の妻。
     第26話より登場。

    「京子:市地洋子」
     貫次郎の長女。
     第26話より登場。

    「和夫:白石浩司」
     貫次郎の長男。
     第26話より登場。

    「お涼:篠ヒロコ」
     居酒屋「霧雨」のおかみ。

    「倉田:横尾忠則」
     居酒屋「霧雨」の常連客。
     岩さん、タメなどからは「だんまり兄さん」と呼ばれている。

    「諏訪チエコ:加茂さくら」
     居酒屋「霧雨」の常連客。

    「毛利:毛利久」
     居酒屋「霧雨」の常連客。
     洋服屋を営む。

    「マユミ:いけだももこ」
     周平の恋人。

    「きみ子:藤園貴巳子」
     居酒屋「霧雨」の従業員。

    「雄さん:伊藤高」

    「金子みさ:野村昭子」
     さつき荘(上条の住むアパート)の管理人。
     上条と静江の仲を応援してはいるが、付き合いの長さから幸子との付き合いのほうに重点を置いている。
     甘いもの好きで、ポケットには常に菓子が入っている。



    もう一度、観てみたいなぁ… 

  • 再読。昭和49年に放送されたテレビドラマの小説。ドラマを見ていた記憶があるのだが、本当だろうか。あらためて読み返してみると子供が見て面白がるドラマではないと思うのだが。貫太郎の優しさが理解できたとは思えないのだが。でも読みながら不思議と役者の顔や舞台セットがきちんと浮かんでくるのだ。久世光彦さんのあとがきは泣かせてくれます。

  • 寺内貫太郎の言動は過激だが嫌じゃない。暴力的な作品は好まない私でも、カラッとした気持ちよささえ感じた。ドラマも観たい。

  • 個性的な家族を中心に話が進んでいく。一部を学校のテスト問題で出されて、内容が気になっていた。男気ある人間って今の時代減ってきたんだなとしみじみ感じてしまった。

  • 東京の下町の人たちはこんな風だ、と示したような話。口より手が早い親父。でも気持ちは素直であったかい。周りもいい人ばかりだ。皆が影響しあって高めていってる。テレビドラマでの小林亜星と西城秀樹のつかみ合いをふっと思い出した。13.10.14

  • 2012.9.16読了。

    なんていじらしい!ちょいちょい涙出た。いいなぁ。

  • テレビドラマの後発で出た本。らしいけどドラマ自体は見てない。
    典型的な昭和の人情ちゃぶ台ストーリーだけど、登場人物みんながいい人で魅力的でおもしろくって泣ける。
    お姉ちゃんの結婚のくだりが何回読んでも涙が出る。
    人情ものでほっこりしたい時に読む本。

  • 東京・下町(谷中)で三代続く石屋「寺内石材店(石貫)」の主人・寺内貫太郎を中心とし、家族や近隣の人との触れ合いを描いたホームドラマ。家族に手をあげ、何か気に入らないことがあるとすぐちゃぶ台をひっくりかえすような、頑固で短気で喧嘩っぱやいが、どことなく憎めずむしろ共感してしまう昔ながらの下町の親父。

    石工のイワさんと奥さんの里子がいい感じ。美人の姉静江とノッポの弟周平の仲のよさも微笑ましい。男の子が家の女の人を大切にしているといいなあと思う。

  • 向田邦子に挑戦。面白いなー。Ⅱ巻とかあれば良いのに。

  • 会社のおじさまから借りた本。昔ドラマでやってたのは知ってたけど、おとうさん熱いなぁw面白かった。

著者プロフィール

向田邦子(むこうだ・くにこ)
1929年、東京生まれ。脚本家、エッセイスト、小説家。実践女子専門学校国語科卒業後、記者を経て脚本の世界へ。代表作に「七人の孫」「寺内貫太郎一家」「阿修羅のごとく」。1980年、「花の名前」などで第83回直木賞受賞。おもな著書に『父の詫び状』『思い出トランプ』『あ・うん』。1981年、飛行機事故で急逝。

「2021年 『向田邦子シナリオ集 昭和の人間ドラマ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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