- Amazon.co.jp ・本 (225ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101294025
感想・レビュー・書評
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昭和の雰囲気がとても心地よい。
現代においても昭和においても、人の悩み、葛藤、嫉妬、疑惑といった複雑な感情は変わらずにあって、そういった意味では古さを感じさせない。
日常生活のちょっとした出来事から様々な感情を描き出す物語に没頭してしまいました。
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過去一の短編集。ワードセンスレベチ。何だこれわ。
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書店で、綺麗な赤の装丁の『プレミアムカバー』として売っていた。他に並んでいたのは、梶井基次郎の『檸檬』ほか、錚々たる作品ばかりなのに、向田邦子作品の代表作であろう本作の名前も知らなかったので、思い立って読んだ。
各作品とも、二十頁にも満たないのに、切れ味鋭く、大人の作品という感じ。
13作(なのでトランプ)のうち、一番印象が強いのは、『かわうそ』。奥さんの「獺祭ぶり」が怖い。
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向田邦子さん(1929-1981)の直木賞受賞作3編『かわうそ』『犬小屋』『花の名前』を含む13編の連作短編集です。受賞作品の選考に関わった阿川弘之、水上勉、山口瞳の三氏が強く推奨されたという、 日常生活のなかでよぎる人間の心の奥の〝一瞬の闇〟が、何気ない仕草やふと出た言葉と絡み合って語られる人生模様の色とりどりは、読む者の心に突き刺さってきます。
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大根の月、はたまらない。いつまでも読み継がれる本だろう。
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人間というのは絶対に『清廉潔白』ということはないんだなあと思いました。そこがまた人間の良さであり、味であるのかな。
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初めて読む向田邦子作品。
まずタイトルが気に入りました。1つの話が短いのも読みやすい。
どの話も「人生の夕方」的な薄暗さがあるけど、
人間の生活のいじらしさが感じられました。
説明しすぎない文章も独特の余韻が残る。
この中では断トツで「かわうそ」が好き。
「写真機のシャッターがおりるように、庭が急に闇になった。」
という最後の一文がかっこいい。 -
中年にさしかかった男女の悲喜こもごも。
人生には永久に続く喜びも、悲しみも、ない。
あるのはそれらの繰り返しだ。繰り返して、幸せを手に入れたと思っては失って、そうしているうちになんとなく一生を終える。そのことに気づいて、失うとわかった上でつかの間の幸せを心から喜ぶことの尊さ。
こういう風に年をとっていくんだなと思うと、むなしくもあり、安心でもあり。 -
ある日宅次は、脳卒中で倒れた夫に黙って、妻は自宅の庭にマンションを建てようとしていたことを知る。その昔、自分の手落ちで3歳で娘が亡くなったのを新人看護師のせいにしていたことを知る。嘘のうまい妻の残忍さに対する怒りを感じつつ、その陽気さについ妻を許してしまう夫の複雑な心境をユーモラスに描いた短編作品
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どんなに優しくほがらかであっても、どんなに「出来た人」と呼ばれるエリートであっても、人は誰でも少なからず暗い部分をもっている。
女のずるがしこさをぞっと思う反面で、私にも同じような面があるのかもしれないと思ったり思わなかったり。