めぐらし屋 (新潮文庫)

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著者 : 堀江敏幸
  • 新潮社 (2010年6月29日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (194ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101294759

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めぐらし屋 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 前にも言った気がするが、「天津甘栗」と「天使の蛤」では前半のイントネーションに、少なくとも東京弁では違和感がある。「肌の弱い子のためにへちま水くらい用意しとくべきでしょ」の母と合わせて、カマトト親子にちょっとイラッとする。

  • 堀江は自分自身の文学の技法をめぐらし屋という言葉に仮託しているのだろう。率直で少し暖かいそんな物語であるが、技法が中心なのでドラマにはなりきらない。もう少し読み足りない読者はいるだろうが、堀江としては十分満足しただろう。過不足なく書いたはずだ。

  • はっきりと何かがわかるわけではない。でも、ぼんやりと、蕗子さんのお父さんの姿が見えてきて、そして、蕗子さんの姿も見えてくる。お父さんの抱えていた思いがどんなものなのかは、分からなかったけれど、いろんなものを抱えて、ゆるく細く誰かとつながっていたことが、なんとはなしに、ほっとさせられる。

  •  蕗子さん…、この後どうなっていくのかな…なんとなく今後があやふやに終わってしまった感じが否めなく。最近、続きが気になってもやっとしてしまう小説ばかりに当たる気がします。そういう小説が増えたのかな。

  • 「物」に託して「心情」を語るのがうまい。
    最近いろんな小説を読んでいて思うのだけれど、ハッとさせられる小説には何かしら過剰さがある。もう少しで狂気に触れる瞬間というか。堀江敏幸の場合は、心理でも風景でも言葉そのものへの執着でもなく、「物」の執拗な描写に尽きると思う。

  • 蕗子さんの亡くなった父の遺品の中からでてきたのは“めぐらし屋”と書かれたノート。

    蕗子さんが父を思い出すとき、それは自然と自分の日々の何気ないことを想起すること。
    そうやって物語は綴られる。
    日々の何気ないことの積み重ねで。

    堀江さんのお話はそういう物語。
    ただただ優しく愛おしい。

  • 人物とそれに付随するさまざまな描写に惚れ惚れ。なにげにいろいろなことをしらないとこういう描写はできないなではないか?とおもった。それが小説家というものか。

    あいかわらずのやわらかい語り口。人物は「さん」付け。短編と違って長編なのでストーリーを引っ張るというか進めるというか、そういう意味での謎仕立てにもなっているけれど、とはいえストーリーを描くのではなく、人物の細部を積み重ねていくことでストーリーとなっていくスタイルは変わらない。

    あそこで終わるとは。ちょっと唐突というか、でもそういうの好きだしな。また時間を置いて読み返そう。そういう小説な気がする。

    解説で高野文子に触れてて、おお!と思った。るきさんなんだよな、俺のイメージだと。なんとなく飄々としているところなんか。

  • およそベストセラーになどなりそうもないタイトル。そもそも「めぐらし屋」というのが、例えば八百屋、あるいは魚屋などといったように、そのものの属性を現しているのか、それとも屋号なのかも読んでみるまではわからない。本書はおそらく、堀江敏幸の小説を読みたいと思って手にする読者だけを想定しているのだろう。関心のない人は読んでもらわなくていいのだという「いさぎよさ」に立脚しているのだ。しばしの間、蕗子さんとともに、たゆたうような、それでいて確かな実在感のある物語の世界に時を過ごすのは、まさしく小説を読む楽しみなのだ。

  • 疎遠だった父の遺品の整理をしているうちに、
    父が「めぐらし屋」と呼ばれていたことを知る主人公。
    生前、父と関わりがあった人の話を聞きながら、
    めぐらし屋としての父に近づいていく。

    ぼくは「めぐらし屋」という呼称に惹かれました。
    他人のために、至らぬ点がないか、十分に、そして慎重に考える、
    というのが「思いを巡らす」ということだと思います。

    この場合はどうなるか、
    不利益を及ぼさないか、
    本当にこの人のためになるか、など
    考えだすと限りが無くなることもあります。

    それでも人と人との関係のなかで、
    他人のために思いを巡らすことは大切なことだと思います。
    少なくとも身近な人間関係は「思いやり」で成立しているからです。

    自分はお客さんや周囲の人のために思いを巡らせているか、
    そんなことをあらためて考えさせられました。

  • …あまり印象に残らない…この人の輪郭がはっきりしない系の話は俺には合わない。

  • 単行本で読んだ時よりもしっくりきたかな、という、そういう感触はあった。しかし、終わり方といい、何と言うか腑に落ちない部分、もっと楽しませてくれよ、という我儘なのかもしれないけれど、そういう欲求不満的な部分は若干残ってしまう。そんな作品。て、どんな作品だよ、おい。。。(10/10/23)

  • きのう買って、きょう読了。二冊目の堀江さん。
    この間読んだ「河岸忘日抄」の感覚が気になって読んでみたもの。求めていた感覚の部分は、こちらの作品の方がよりすっきりと出ていた気がして好きかな、と思う。でも一方で、そのすっきりさのせいなのか、話の筋やオチもややはっきりな感じがし、それは先に読んだものの方が好きだったかなぁとも思う。あとピンポイントな話だけれど、喘息と低気圧の話、わかる!と思わず思った。わたしにはそこまでの精度はないけども。
    堀江さん、もう少し読んでみたい。今度は短篇にしてみようかしら。

  • 淡々とした日常/人生のなかに折り重なっている時間の層を、一枚ずつ手に取っていくようにして物語は進む。「蕗子さん」は、亡き父の足跡をたどるなかで子ども時代の記憶を接続し、父(そして母)との関係性を再構築して、さらには現在の関係性のなかに展開しながら、今これからの自分の行動が定めていく。

    ほんとは、誰の人生もそのように進んでいると思うのだけれど、どうかするとうっかり過去と現在を切り離してしまうことがある。堀江さんの書く物語を読んでいると、過去と現在がひとつの時のなかに紡ぎあわされていくような感覚を取り戻せる気がする。

  • 薄曇りの日がずっと続いていくようなお話。
    晴れそう。でも影も落とす。
    体調の良くない時と寒い時は読まない方がいいかも。

    家族ってたいてい身近な存在で、たくさんのものを与えてくれるけど、
    疎遠になった家族でも、思いもよらない方角から贈り物をくれる。
    それもいいなと思った。
    やっぱり切っても切り離せない、切り離したくないつながりなんだな。

  • 本日読了。ある一つの俯瞰的視点から見れば、日常のありふれた一場面は、小説的偶然がつながり、重なりあったその結果に生まれる。だから、なんの面白みも無いたった一つのエピソードこそが、誰かの最良の思い出として残される。本当はみんな知っているはずなのに意識する事無いそんな真実を、静かな筆致で、控えめに教えてくれる。

  • 消化不良気味。

    疎遠だった父を亡くし、その生前の面影を追いかける女性を描いたお話。


    登場人物の心理的な描写を読むのは好きだけど、この作品はストーリー的な内容に比べて、心理的な描写が多くて、ちょっと自分には合わなかった。

    もう一回読んでみると、もうちょっと消化できるかなぁ。

  • 「ほんとうに、少年配達夫の空だった 」。小説を読むのは得意じゃないが、こういう、小さな想像力を掻き立てられるフレーズとたびたび出会えるのがうれしくて、堀江敏幸の書くものだけはほぼ欠かさず読んでいるような気がする。

    花壇の隅に人知れず植えられた枝豆の花のように、ふだんは気にせず通り過ぎてしまうような日常の欠片。そんな欠片にふと心をとめるとき、穏やかな心に小さなさざ波が起こり、いつしか現実の位相を変えてしまうのだ。それはまるで穏やかな革命のように。

    ぼくはこの短編を、「堀江流ミステリー」として堪能した。

  • 堀江作品はしずかでおだやかだ。
    人の気配が薄すぎてあまり好きではなかったが、この作品は人が中心だ。
    「天使の蛤」な蕗子さん。

    このまま一人なのかな? 朝飯は食ってけ! って、よけいな心配はやめとこう。

  • 二回目読み終わった。
    うん、堀江さんの良さが分かりつつある。
    ストーリーというか。文のさらりを楽しむ。

    ただ体調がすぐに崩れる主人公なので、気分良くないときには読まないでおこう。

  • 物語が終わった途端「終わってしまったー!」と声に出さず身悶えてしまった。身勝手に永遠に続くような気がしていて…もっと本の中の世界に浸っていたかった…。想像できる人も音も風景も、全て好きだった。
    血の通う物語だった。おかげで胸のあたりがポッと温かくなる。
    文体が、行間が、字間が、級数が、全部ピッタリ合い、読むのにも心地いい。
    この本はいずれ、必ず、再読すると思う。

  • ご両親が離婚したので、別々にくらしていたお父さんが
    亡くなった後、アパートを片付けていて見つけたノート
    「めぐらし屋」
    どうも、そういう仕事というか、頼まれ事をしていたらしいお父さん
    そのノートの表紙が、主人公蕗子さんが子供の頃書いた絵だったことから
    蕗子さんの回想とお父様への思いと今の生活と
    重なり、離れ、ふわ〜っとページがめくれていく感じ
    始まりも終わりも、不思議な感じ
    ちょっと経験したことのない読後感

  • 二度読んだ。二度目も新鮮だった。物語の設定も、話の続きも、気になる内容でサクサク読み進める。堀江さんの魅力満載。

  • 高校の国語教師が生徒に薦めたという一冊というこの純文学は、主人公の蕗子さんの微妙な感情表現や揺れ動く心やら内面を丁寧に記述していくもの。あとがきにはこの文章を読むと気持ちが落ち着くというが、どうにも展開していかないストーリーに引っ張られることなくこの文章を味わえるかどうかだろう。

  • ささいな描写が繊細に書かれている静かな小説だった。傘の絵から小学生のころのことを思い出す部分は印象的で、誰かが思い出を語るときのようなとりとめのなさを感じた。
    主人公の蕗子さんは、お父さんの遺物を持って染み渡るようにその秘密をめくっていく。物語の半分をすぎるころにやっと「めぐらし屋」がなんなのかわかる。遅い。非常に遅い。
    このあたりで期待していた(タイトルから勝手に連想してた)物語の展開は早々に蹴り飛ばし、この蕗子さんのとろんとした足取りについていくことにした。
    そうすると、進展のなさや蕗子さんに対するいらだちがなくなる。ページ数を考えるのをやめて読んでいく。そして終わる。
    驚いた。
    個人的にこういう小説を読んだは初めてで、正直面白くないと言ってしまえばそれまでだ。ただこんな風に起承転結を考えないのもいいかなと思う。(一応起承転結はあるにはあるが、あんまり納得行かないのでまた今度)

    この小説のみんなのレビューが長い理由がなんとなくわかった。

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