わたしたちに許された特別な時間の終わり (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2009年12月24日発売)
3.60
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本棚登録 : 566
感想 : 70
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  • Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101296715

感想・レビュー・書評

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  • 久々に文学っぽいものを読んだなあという感じ。
    同名の映画に興味があって、小説を読んだ。

    出てくる固有名詞にも、六本木のスーパーデラックスとか、なじみがあってというか、むかしをおもいだして、あーきもちわかるよというか、わかりたくないというか、閉塞感への親近感はもてた
    物語ではなくて、ある雰囲気の切り取りを読んだようなきもち。

    骨組みとしては?時間軸と語り手の視点がねじれていって、それが絶妙なうまさというか、気持ち悪さを醸し出してるのだと思った

  • 2023/3/9読了
    不思議な本だった。読んでる間はなんだか憂鬱で、これ以上読みたくないような、でも何故かスルスル読んでしまうような。読み終わった後は、すごく良い作品だったと思った。

  • トヨザキ社長オススメから。中編2作品からなる小品。でも会話も地の文で繰り広げられつつ、改行も最小限で語り進められるから、読み応えはかなり大。思ったことをそのまま文章にしてるみたいなとりとめなさを感じさせつつ、でも読み進めるのに難儀しないっていう難解な業を、矢継ぎ早に繰り出されている感じ。いつの間にか語り手が変わってたりするけど、それを込みでもリーダビリティは意外に高い。前半の、どことなく村上春樹な雰囲気も感じる作品の方が、個人的にはより好み。でも後半の退廃的夫婦の物語も味わい深し。

  • 収録された二編とも起伏のないストーリーで、人称や視点がころころ変わり、決して読み易くはないはずなのに、不思議と引き込まれた。大江健三郎による巻末の解説も、濃密で読み応えがあった。

  • これは素晴らしい読後感。
    僕、彼、男、
    私、彼女、女。

  • チェルフィッチュ主宰の劇作家岡田利規による大江健三郎賞受賞作品。少し前から本谷有希子、前田司郎という劇作家の作品を読むようになって、普通の小説とはどこか違う口語表現が結構好きになった。
     そんな中、チェルフィッチュの舞台出世作「三月の5日間」。だらだらと続く文章のなかで、語り手の主体がズレていくのに、それが全然読みにくくなくて、人と人が関わる中での感情の揺れがうまく掬い取られているようで、なんか不思議な気分になる。そして、やっぱり劇作家の書くものだけあって、空間舞台や人の動きが見えてくるようで、クセになる。
     もう一篇の「わたしの場所の複数」は、主体のモノローグ語りのうちに、時間や空間を自由に行き来していくように事実がズレていく。

     演劇の世界の人は、その作品のライブ性をどうしたって意識するだろうから、小説という形態を取ろうとも、その作品の中に多面的で多様な読み方を可能にするような「生っぽい」文章が現れてくるのだろう。現代演劇、素晴らしい世界に思える。今年はチェルフィッチュに行くぞ、と決めた。

  • この本は新聞の書評か何かでふと見かけてずっと気になってたのだけど、さいきん著者(岡田利規)の演劇(「現在地」)を見る機会があってこの本とも再会出来たので読んでみたのであった。

    一つ目の「三月の5日間」が素晴らしかった。直接的な強いメッセージがあるということではは全くないので、そうした形で語る必要はないかもしれないけれど、しかし優れた「政治小説」なのだと思う。
    「現在地」もそうだったが、政治的なものへの関わり方を直截に、スローガン的に語るのではなく、むしろそうしたものでは解消できない(回収されない)違和感や微妙な感情に忠実な、あるいは敏感な人なのではないかと思う。そして、それが良かった。

  • 読む側の場所も解んなくなった。会話文のだらだら感が程良い。生活している時に無意識に思っていることを文字で見てみると意外に選択していることがわかる。動的な文章。SF感

  • 巻末の大江健三郎の書評はピンとこなかったが、岡田のこの2作品には何かある感じはする。物語の展開もそうだが、一文一文の言葉のころがしかたも、今までにあるようで無い。本谷有希子に似ている気もするが、もうちょっと繊細というか、悪い意味でなく小さいというか、細かい感じ。

  • 以前、彼の問題の解決という短編をおもしろく読んだのでその実感を期待して読んだのだが、こちらの印象はその短編とはまったく違った。

    書くのにすごく技術が要る、なのにそれが書かれたからといってたいした見返りのない、そんな実感の描写が連綿と続く『わたしの場所の複数』。たくらみもなく視点が遍在していて、この語り手は「書けるから書ける」という感じだけで、自分の身の回りのシーツの皺だったり、(そこに彼女はいないから見えないはずの)ベッカーズにいる夫の仮眠の様子だったりを書いてみせる。
    イベント後に二人の間で起こる「日本ではない場所にいるような感覚」をそれから五日間ラブホテルにこもって持続させる(要するにセックスし続ける)という内容からしたらたわいもない『三月の五日間』。
    特に『わたしの場所の複数』はいろんな「ふつうの人には書けない(書こうと思えない)」ものを書けてしまっているし、しかし「それで?」という反応もきそうな描写ばかりなのだけど俺は参考にできるところが多数あった。

著者プロフィール

1973年、神奈川県生まれ、熊本県在住。演劇作家、小説家、チェルフィッチュ主宰。2005年『三月の5日間』で第49回岸田國士戯曲賞を受賞。主宰する演劇カンパニー、チェルフィッチュでは2007年に同作で海外進出を果たして以降、世界90都市以上で上演。海外での評価も高く、2016年よりドイツを始め欧州の劇場レパートリー作品の作・ 演出を複数回務める。近年は能の現代語訳、歌舞伎演目の脚本・演出など活動の幅を広げ、歌劇『夕鶴』(2021)で初めてオペラの演出を手がけた。2023年には作曲家藤倉大とのコラボレーションによる音楽劇、チェルフィッチュ×藤倉大withクラングフォルム・ウィーン『リビングルームのメタモルフォーシス』をウィーンにて初演。小説家としては2007年にはデビュー小説集『わたしたちに許された特別な時間の終わり』(新潮社)を発表し、2022年『ブロッコリーレボリューション』(新潮社)で第35回三島由紀夫賞、第64回熊日文学賞を受賞。

「2023年 『軽やかな耳の冒険』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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