帰りたくない―少女沖縄連れ去り事件 (新潮文庫)

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著者 : 河合香織
  • 新潮社 (2010年5月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101297521

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帰りたくない―少女沖縄連れ去り事件 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • わたしはこの事件をよくおぼえている。つたえられたあらましがあまりに奇妙だったからだ。行方がわからなくなった、というのがたぶん第一報で、つれさられた、との続報がながれたのは、それからすこしあとだとおもう。報道された断片によれば、被害者は小学5年生、祖父母と叔父と暮らす10歳の女児で、加害者はその近所にすむ40代の中年男。女児がかえってこないので、家族が警察に相談し、逃亡、いや誘拐か、があかるみにでたのだけれど、といっても、どうやら交流は以前からのようで、かれらの小旅行は、今回がはじめてでもないらしい。しかも、おとずれた沖縄で、ふたりは親子だといつわり、男がはたらく運転代行業者の寮に住み込んでいた。それまでの逗留先では、少女がみずから宿帳になまえを記していたという。金銭を管理していたのも男ではなく、女児で、那覇行きのチケットを買ったのも彼女だそうだ。男にたいする少女のふるまいは、傍目にかなり傲慢だったともきく。そして一週間の滞在の後、保護された彼女は(家に)「帰りたくない」と訴えた。そのため一時的に少女を児童相談所が預かっているとのこと。一方、男は捕まって、関東の拘置所に移送された。「未成年者略取誘拐」それがかれにかけられた容疑だ。しかし、これは果たしてそんな仰々しい事件なのだろうか__________「帰りたくない 少女沖縄連れ去り事件」は、この風変わりな「誘拐」にやはり疑念をいだいた著者が、拘留中の容疑者、山田敏明と文通をかさね、面会に赴き、公判に通い、また、沖縄にとび、ふたりの足取りをたどって、かれらがそこで邂逅した人々をたずね、謎を解き明かそうとするルポルタージュだ。

    鯉のぼりがゆらめく初夏の住宅街で、著者が老女に声をかける場面から本書ははじまる。彼女は沖縄滞在中、かれらが接触をもったひとりだ。「おばちゃん、わたしのお父さんと寝たいんでしょう」2年まえ、間借りしていた運転代行業者のコンテナで、ふたりと出会った老女は、唐突にそんな言葉をなげつられたという。面食らう彼女に少女は尚も迫った。「おばちゃん、うちのお父さんとセックスしたいんでしょう」さらには女性器の俗称さえ口にしたそうだ。たった10歳なのに、50歳のおばさんみたいになんでもしっているようだった、と老女は述懐する。なかなか衝撃的な序章だ。著者はそれから、かれらがあそびにいったプールや温泉施設、買いものをしたデパートやコンビニ、宿泊先のホテルやゲストハウスにも足をはこび、関係者から事情をきいていく。第4章まではその軌跡と、手紙のやりとりや拘置所への面会でつまびらかにされた山田の半生、被害者の女児、石井めぐ(仮名)とのふしぎな関係が、順をおって記されている。第5章は公判の記録、第6章はめぐの生い立ち、第7章はめぐを棄てて逃げた母、紗恵へのインタビュー、そして第8章が判決、最後に文庫版の追記として「それからのふたり」と題された後日談。解説の角田光代も書いているが、この構成はたいへん巧みで、読者の興味を常にひくよう、好奇心だけを満たしておわり、とはならないよう、かんがえつくされている。親に棄てられ、祖父母と叔父から虐待を受け、沖縄へ逃げた少女と、彼女をすくおうとした独り身の中年男。著者は当初そんな構図をえがいていたのらしい。わたしもまた、そうだった。なにもしらなかったから、うつくしいはなしだとすらおもっていた。

    でも現実はちがう。とてもグロテスクだ。第5章をひらき、よみすすめるうちに、わたしはおもわず「あー」と声をあげてしまう。まだかすかにのこっていた、山田へのちいさな信頼が、がらがらと音をたててくずれていく。やたら饒舌なかれの独白によって、少女とのゆがんだ関係は、とうに露となっていたのだけれど、この期に及んでも、わたしは山田の、一片の良心をしんじたかったのだ。「かわいそうなめぐ... 続きを読む

  • 事件に関わる人たちの正論は、再びこのような事を発生させない歯止めとなったのだろうか。読者は完全に否と答えるであろう。誰も悪くないなら、環境のせいか?運が悪かったからなのか。そう結論づけるのもますます解決には程遠い。他人への思いやり、その拡がり。なんとなくそれが第一歩のような。2017.7.1

  • 寂しい半生をすごしてきた男が、虐待を受けたのか家を離れがちな少女と偶然知り合い、一緒にすごすようになる。男が定期的に子どもに会えていれば、こうしたヘンな関係にならなかったのではないか。そう思えてならなかった。著者の粘り強い取材程度には頭が下がる。しかし少女性愛に対しての絶対的な嫌悪感というのは、生理的なものだから仕方がないのかも知れないが、なぜ男性がそう思うようになったのかについては嫌悪感ですませるのではなく突き詰めて欲しかった。よく書けてるしよく取材できてはいるが、その点が残念。

  • 当時10才の少女と47才の男性の起こした誘拐事件。
    誘拐とは言っても、主導権は少女が持っていたという証言もある。
    一体二人に何があり、どういう関係だったのか…
    ただの誘拐事件ではない、もっと別の大きな問題も抱えているのではないかと思わずにはいられない。
    家族とは何か、親子とは何かを深く考えさせられる。

    2016.5.3

  • 以前に読んだ。
    私がノンフィクションに引き込まれるきっかけとなった本だ。

    現実にこんな世界があるんだという思いが、
    大きい恐怖として感じられて、しばらく本書の表紙を見るのも怖くなってしまった。

    しかし、あの時の衝撃は忘れられない。
    また買い直そうかなぁーって今思っている。

    死人は出ないし、残虐性も低い事件だ。
    ・・しかし、殺人事件を扱ったようなノンフィクションよりも、
    恐怖感が強かった。

    なんでかなぁ。

  • なにこれ気持ちわるー…

  • 二人の間にピュアな愛情があって欲しい
    どんな形であれ愛があって欲しい
    愛がなくてもこれからの二人が幸せになって欲しい
    せめて、誰か一人でも救われれば……
    と思い読み続けていました
    取材中の河合さんもそのような気持ちだったのでしょう
    これがノンフィクションの醍醐味と言ってしまうと不謹慎ですか
    事実というものは残酷です

  • そんなに衝撃の事実というほどではない。
    だいたい想像できるような話。
    いろいろ納得することはあった。
    少女とおっさんの逃避行。

  • 単なる事件。

    ではなく、その裏側に隠れた環境の問題。

    複雑な気持ちになりました。

  • 著者の辛抱強い取材に感心した。犯人の行動には、やっぱり結局そうなのかと思った。

  •  女の子の育った環境が悪いのか?この誘拐した男が悪いのか?でも、男が95%悪い!!
     最週につれて胸がムカムカしました!!

  • 単行本(「誘拐逃避行」)の後味の悪さに、こちらで解説の角田光代さんはなんと書いているのかな?と確認。
    そうそう、と思うところと、でもね、と思うところ。

    とにかく「心の闇」なんて言葉に逃げ込んだら、何もわからないのだから。

  • 角田光代の解説はたしかに良い。けれど、ブラックボックスは何なのか、自分のこととして「考え続ける」という結論が凡庸。この手の感想は聞き飽きた。本当に考え続けているなら、何か成果が出たっていいころだろうよ。と。

  • 世の中には色々な関係があるようで

  • この少女しかり、連れ去った男(正確には少女がついていった男)しかり、こういう社会常識的にみて?と思うような事件を起こす人は、大抵育った環境にゆがみを持っている。

    もちろん、そんな環境にある人が皆、事件を起こすわけではない。だが、その環境を作った親も、同様に恵まれない幼少期を過ごしていることがほとんど。つまり、連鎖するのだ。

    昨今、大きな問題になっている児童虐待(この少女の場合もこれに当たる)も同様で、この悲惨な連鎖を断ち切ること、これがそのまま不幸な子どもを減らすことにつながる。

    この少女も今は17歳くらいになっているはず。
    生き延びるために逃げるしかなかった、自分を正面から受け止めてくれる愛情に飢えた今までの時間を取り戻し、連鎖を断ち切れる環境にいてくれることを切に願う。
    (2010年読了100冊目)

  • 本の雑誌の2010年8月号で紹介されており、つらつらと気になっておりましたが手に取るまでに若干時間がかかりました。
    好きな人には悪いですが、私はノンフィクション作家の佐野 眞一が全く好きではないので。どうしてもノンフィクションを読む気があまりしませんでした。

    うーん、一気に読んでしまいました。仕事の休憩時間→帰宅電車→自宅で夜なべして次の日若干の寝不足?というくらい続きが気になる。
    けれど、小説みたいにすぱっと終わらず、なんとも後味が悪い内容です。

    著者の有名作『セックス・ボランティア』を未読だったので(これから読もうと思います)、なんとも著者のスタンスは分からないけれど、昨今はやりのトラウマに内容がのらなくて、そこが結構ぐっときました。甘えてられないなぁと。

    あまり関連はなさそうですが、本書読了後に『重力ピエロ』と『心臓をつらぬかれて』を再読しました。

  • 例えばゴールデンウィークやクリスマス、お盆やお正月になると、家族や親しい人たちと幸せな時間を過ごしている人々の映像がテレビからあふれる。確かにそれは幸せな風景だけど、そんな時間を共に過ごす人のいない人にとっては、こんな映像を次から次へと見せられてどんなにか孤独が身にしみることだろうと思う。47歳の男が10歳の少女を連れ去ったとされているこの事件に対する嫌悪感はすごくある。二人の行動が理解できないし、特に男の行動のなかには絶対に許すことのできないものがある。けど、じゃあ孤独な世界に身をおくことになってしまったこの二人に他の選択肢はあったのか。それぞれの孤独から抜け出すために、他にどんな方法があったのか。考えても答えはでないけど、考えずにはいられない。

  • 2010年57冊目。
    ダウナーな内容で、気分が一気に落ち込みました。読む際には、自分の健康状態、精神状態を確認してから読んだ方が良いと思います。
    でも、言い換えればそれだけ作者の取材や描写が良かったということです。

  • 2010.06.09 読了、一気に読みました。

  • 6/7 ドキュメントとしては本人の手紙から→取材を進めて→裁判→その後という流れで印象が変わって行くのがおもしろかった。もうちょっと中に入ってもいいような気も。こういうのが俯瞰過ぎると印象が薄くなるので。

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帰りたくない―少女沖縄連れ去り事件 (新潮文庫)の作品紹介

家には帰りたくない-47歳の男に連れ回され、沖縄で保護された10歳の少女はそう言った。親子のように振る舞い、時に少女が主導権を握っているかのように見えた二人の間に、一体何があったのか。取材を重ねるにつれ、少女の奔放な言動、男が抱える欺瞞、そして歪んだ真相が明らかになる。孤独に怯え、欲望に翻弄される人間の姿を浮き彫りにするノンフィクション。

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