十一月の扉 (新潮文庫 た 84-1)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (422ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101298719

感想・レビュー・書評

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  • 中学生の爽子が偶然見つけたのは「十一月荘」という名の洋館と、表紙に絶滅した鳥ドードーが型押しされた1冊のノート。
    十一月荘で過ごすことになった爽子が抱く憧れや葛藤に懐かしさを覚える一方で、そんな爽子に影響を与える十一月荘の住人たちの言葉が温かい紅茶のように大人になった私の心にも染みわたる気がした。
    気になった閑さんの言葉ー「いろんなことって、流動的だもの、その時その時、いいと思うことをやっていればいいんじゃないかしら。」
    そして、「十一月荘」という名の由来―。
    もうすぐ十一月。私も軽やかに丁寧に過ごしたい。

  • 季節が巡ると読みたくなる本の一つ。
    十一月なので読まなくてはと本棚を探した。

    中学生の主人公が素敵な洋館に下宿した2ヶ月の話……とまとめてしまうと、何だ少女趣味なお話か、と思われるかもしれない。
    実際少女趣味なのだ。この年代の、特に本好きの女の子が欲しいと思う日常の世界が、この本の中にはぎゅっと詰まっているのだから。
    だからこそ、懐かしく、ほんのりと甘いような幸せを感じ、そして少し切ない気持ちになるのだ。

    主人公が下宿した「十一月荘」には、様々な年代の女性が出てくる。それぞれの悩みや不安が描かれることもあるが、それ以上に活き活きと楽しそうに生きている姿が描かれているのは、「大変なことはあっても、生きていくって楽しいことなのよ」という筆者からの一つのメッセージなのだと思う。

    何度も読んだ大好きな本だけれども、本を開くたび読み終わるのがもったいなくて、一気には読まないのだ。けれども、もう十一月も終わる頃、ようやく読み終わってしまった。
    きっと私は「この上もなくすばらしいものをあじわったあとの、どこか悲しげな、そしてすてきに満ちたりた」顔をしているのだろう。

    次のお休みは少しだけおしゃれをして出掛けてみよう。鞄に本をいれ、素敵な文房具屋さんに行ったり喫茶店でお茶を飲んだりしよう。
    そんな風に十一月が楽しくなる本だった。

  • 大好きな本。毎年11月になったら読む本。

  • 大好きな一冊。
    タイトルにひかれて、11月になると読みたくなるのでした。

    私も爽子のような中学生だったら良かったけど、共通しているのは本が好きで、物語を書いていたことだけだったな…素敵な中学生活を送りたかった!(笑)

    今からでも遅くないか。爽子にはなれないけど、いつか閑さんのような女性にはなれるかもしれない。

  • 中学2年生の爽子が期間限定で「十一月荘」の住人になるストーリー。劇的な出来事が起きるわけではないけど、しみじみ味わい深くてあたたかみがあって何度も読み返したくなる本でした。

    十一月荘の住人が皆あたたかいのにベタベタとするのでもなく、ひょうひょうとしていて適度な距離感があって本当に素敵。
    ヒロインが中学2年生の女の子というところ、また爽子が描き出すストーリーなど、先日読んだ「ミーナの行進」とだぶる部分もあったけど、こちらの方が私にはしっくりきました。(「ミーナの行進」も素敵な本です)

    ドードー森の皆のお話だけで一冊の本にしてもいいくらい。
    解説がまたとびきり素敵なのです!(蛇足だという方もいるけれど 個人的には事実と創作の共演として完成度高いと思います)

  • 再読。十一月になるとつい読みたくなってしまう一冊。
    特に大きな事件は起きず、ただ淡々と十一月荘での毎日が綴られている。なのに、なぜか心がほっこりと温かくなる。
    十一月は何か新しいことを始めてみよう。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「十一月は何か新しいことを始めてみよう」
      年の始まりの1月でも、年度の始りの4月でもなく、冬の始り?の11月に、そんな風に思えるって不思議な...
      「十一月は何か新しいことを始めてみよう」
      年の始まりの1月でも、年度の始りの4月でもなく、冬の始り?の11月に、そんな風に思えるって不思議な感じ。。。
      高楼方子は読んだコトが無いのですが、この表紙絵の可愛さに惚れちゃいました、、、読んでみようかな。
      2012/09/04
  • 『わたしたちの帽子』が好きだったので。(2007/04/05)

    うわー、3年近く寝かせていたのか! ようやく読み終わりました。
    なぜもっと早く読まなかったのか・・・!と悔やむくらい。
    会社の行き帰りに電車の中で読んでたのですが、
    先が読みたくて会社に着いてからも読んでしまったりしました。

    日常生活を描いているんだけど、
    本当の“普通の生活”とは0.5段階くらい違うような感じ。
    『わたしたちの帽子』でも『緑の模様画』でも
    そしてこの『11月の扉』でも感じた、ありそうでなさそうな、
    でも読み終えたあと幸せな気持ちが残る、濃密な作品世界。
    それが、私が高楼作品に惹きこまれる理由なんだと思います。

    物語を書きたいと思ってる子って意外といるし、
    ちょっと親をうっとうしく思ったり、ほのかな恋心を抱いたり、
    あと、大人になるって悪くない、って思えるあたり、
    あー子どもたちにもたくさん読んでほしいなー。

  • ☆4.7

    六階の家の窓から覗いた双眼鏡から見えた赤茶色の屋根の白い家。
    爽子は素敵なその家を探しに行ってみた。
    そこには"十一月荘"という名前の洋館があった。
    中学二年の二学期の終わりまであと二ヶ月、転校するまでの僅かな時間をその十一月荘で下宿することに。

    十一月荘では個性的な住人たちと触れあいながら、爽子の心のなかには住人たちを映した動物たちが住む"ドードーの森"が広がり始めた。
    家族と離れたことや引っ越しのあとの東京の暮らしなど、現実への不安な思いも抱えながらかけがえのない時間を過ごしてゆく。

    もう好き。とにかく好き。
    胸がぎゅっとなる。
    切なくて愛しくて泣きたくなる。
    悲しいのではなく、あまりにも愛おしくて思いがあふれてしまうのだ。
    進むにつれてドードーの森の物語も現実とリンクするようなことが起こったりと、爽子の世界自体が大きく広くなって関わりが増えていく様子が嬉しい。
    耿介くんがなんだか気になる人から淡い淡い恋を向ける相手に変わって、戸惑うような胸の痛みに、自らも覚えのある初恋を思い出してみたり。
    もうきゅんきゅんする。
    きっと今日寝るときにまた思い出してきゅんきゅんする。
    純粋成分をたくさん摂取した。
    ありがとう、ありがとう。

  • 初めて読んだのは大学生の頃で、それから何度も読み返しているとても好きな本。
    中学生の女の子が一時親元を離れて素敵な洋館に下宿する、下宿の大人たちや小さな女の子と交流する、特別なノートに物語を書く、背伸びをしてちょっと高級な喫茶店で紅茶を飲む……歳だけはいい大人になってしまった今でも憧れの気持ちがあふれてくる。
    そんな物語のような生活の中で、少しずつ近づいてくる引っ越しや転校の日。新しい生活への不安や、十一月荘を離れることのさびしさ。自分のことのように感情移入してしまい、最後の方は涙をこらえながら読んだ。ラストの「だいじょうぶ。きっときっと、未来もすてきだ。」というモノローグが本当にまぶしい。
    11月〜クリスマスあたりまでの時期設定もよくて、背筋が伸びるような寒さと、なおさらしみるような温かさが両方味わえる。来年もまた読みたい。

  • この本をこの季節に読めた事、とても幸せに思います。両親の転勤と引越しをきっかけに爽子は憧れの下宿、十一月荘で暮らす事になります。その十一月荘の人々が個性的でみんな大好きです。爽子を取り巻く人々が大人の視点ではなくて、もっと対等な関係として爽子を受け入れてくれていて、その空間が心地よいです。るみちゃんとの年の離れた従姉妹のような関係も私自身、そんな風に遊んだ親戚の女の子がいたので共感していました。うまく感想にはならないけど、お気に入りの一冊が増えました。

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著者プロフィール

高楼方子 函館市生まれ。絵本に『まあちゃんのながいかみ』(福音館書店)「つんつくせんせい」シリーズ(フレーベル館)など。幼年童話に『みどりいろのたね』(福音館書店)、低・中学年向きの作品に、『ねこが見た話』『おーばあちゃんはきらきら』(以上福音館書店)『紳士とオバケ氏』(フレーベル館)『ルゥルゥおはなしして』(岩波書店)「へんてこもり」シリーズ(偕成社)など。高学年向きの作品に『時計坂の家』『十一月の扉』『ココの詩』『緑の模様画』(以上福音館書店)『リリコは眠れない』(あかね書房)『街角には物語が.....』(偕成社)など。翻訳に『小公女』(福音館書店)、エッセイに『記憶の小瓶』(クレヨンハウス)『老嬢物語』(偕成社)がある。『いたずらおばあさん』(フレーベル館)で路傍の石幼少年文学賞、『キロコちゃんとみどりのくつ』(あかね書房)で児童福祉文化賞、『十一月の扉』『おともださにナリマ小』(フレーベル館)で産経児童出版文化賞、『わたしたちの帽子』(フレーベル館)で赤い鳥文学賞・小学館児童出版文化賞を受賞。札幌市在住。

「2021年 『黄色い夏の日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

高楼方子の作品

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