そして殺人者は野に放たれる (新潮文庫)

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著者 : 日垣隆
  • 新潮社 (2006年10月30日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101300511

そして殺人者は野に放たれる (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 刑法39条(精神疾患者は無罪または減刑)の問題点について、実際にあった犯罪事例および判決事例を元に考察している。

    基本的には、まずは被害と被害者をを考えることが第一であり、心神喪失の類については本当に分別が付かない人以外は減刑の対象外にすべきであるという主張であった。スウェーデンで取り入れられているような結果(被害)に基づいてのみ量刑を課す方法である。

    また、日本における犯罪への向き合い方への疑問も指摘されて気付いた。犯罪に対して動機(なぜ?)の追求ばかりに焦点があたり、なおかつ被害者よりも犯罪者をいかにすべきかばかりを考えているのは問題だ。

    面白かったエピソードは、川俣軍司の支援者が「川俣がやったのではない。病気がやらせたのだ」と主張していて、やっぱり精神病は怖いと民衆に錯覚させてしまったという話。

  •  日本の裁判制度とは、事件の結果に対して刑を行うのではなく、事件を起す動機に焦点を当てるものである。なので事件当日、精神疾患がみとめられた場合はたとえ殺人者であったとしても不起訴となる可能性があるのだ。しかし、精神疾患だと認定されるための偽装を装う行為や、過剰に加害者を養護しようとする団体などにより、殺人者は野に放たれることになる。この現実を著者は世に問う。

  • 古本で購入。

    「1.心神喪失者の行為は、罰しない。2.心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する」(刑法39条)
    「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは3年以上の懲役に処する」(同199条)

    この2つの法、特に前者の39条をもって著者が指摘するのは、
    「日本は真の意味での近代的法治国家ではない」
    という、恐るべき実態である。

    精神鑑定という茶番により「責任能力なし」と見なされ起訴すらされない、つまり無罪放免となる凶悪事件が後を絶たない。
    「事件当時にいかなる精神状態であったか」というフィクション、しかも犯人の「わけがわからなくなった」「殺せという声が聞こえた」などという戯言により、「精神障害」の免罪符を与えるのである。

    仮に起訴されたところで、「心神喪失=責任能力なし=無罪」を訴える弁護側と、「正常=責任能力あり=有罪」を訴える検察側の折衷案として、「心神耗弱=減軽」の判決が下される。もちろん、弁護側の主張が通って無罪になることも頻繁に起きる。
    精神鑑定を行う精神医学者も検察も弁護士も裁判官も、39条という時代錯誤の法令の前に思考停止し、ヒューマニズムの欠片もない、流れ作業の如き処理がなされる。そこには被害者とその遺族に対する配慮など毛ほどもない。
    「犯人は事件当時、心神喪失であったため無罪」と結論付けられ、事件そのものが「なかったこと」にされる。結果、犯人に殺された者は“勝手に”死んだことにされるのだ。
    そんな馬鹿げたことがあるだろうか。

    世界一犯罪者に優しく量刑が最も軽い国、日本。
    犯罪者人格の殺人者が何の治療処遇も受けぬまま、今日も野に放たれる。

    これほど胸糞の悪くなる本は読んだことがない。
    「国民感情」という(良くも悪くも)「常識」から著しく乖離した、司法関係者の感性に怒りを覚える。引用される精神鑑定人の文章など、そのあまりの愚かさに吐き気すら感じる。
    理不尽極まりなく人の命を奪った者がのうのうと生きているとはどういうことだ。本当に死ぬべき人間はそいつらじゃないのか。

    この著者の本は初めて読んだが、信頼できるルポライターだと感じた。
    日本の抱えるひとつの問題点を知る上で、読んでおくべき本。

  • 日垣隆の『そして殺人者は野に放たれる』、読了。数年前に映画『39-刑法第三十九条』を見た際に、心神喪失者の犯罪を罰しないことを規定した刑法第39条に反駁するには、この法律が心神喪失者を守っているのではなく、むしろ「異常」という概念を持って逆に差別しているのではないかという論点を持ってしかあり得ないのかという思い(と個人的には諦念)を持ったのだが、この本を持ってもやはりそういう印象。人権派(というものが実在すると仮定して)に対してこの法律の廃止を求めて戦っていくには否応なしに相手側のフィールドに乗らないといけないのかと思うとなんか違う気がするんだよな。被害者感情とか、別のフィールドで勝負しないとなかなか苦しいのではないかという気がする。うまく言えないのがもどかしいが、そんな印象。いずれにせよ、この本は一読の甲斐はあります。

  • 気持ちはわかるが主観的感想が多すぎる。

  • 勘定が先走った記述が多く公平性に疑問がある。作者の品性を疑うような内容もある。
    ただ一部未知の事実が書かれていて勉強にはなった。

  • これも随分前に購入済だつたのですが、いざ読めば腹が立つてしようがないだらうなあと、中中手に取らなかつた一冊であります。
    恐らく多くの人は、日本の刑罰はおしなべて甘い、日本は犯罪者天国だと感じてゐるのではないでせうか。わたくしもその一人で、罪に応じた刑罰を与へていただきたいのですが、実態は精神状態だの、被告の置かれた立場や恵まれない生ひ立ちだの、本人は反省してゐるだの、様様なレトリックを駆使して、少しでも罪を軽くする傾向がございます。
    それならば不幸な境遇の人は罪を犯しても不思議ではないのか、反省すれば罪は軽減されるのか、いつも疑問に思つてゐました。そもそも反省したかどうかなんて、本人以外に分かる訳が無いぢやありませんか。

    そして容疑者の人権は120%考慮する癖に、被害者への配慮がまるで足りないといふ点も同意するところです。「心神喪失」のお墨付きを貰つた加害者は、報道でも仮名で発表され、一方で被害者はずばり実名が表に出ます。
    「序章」で取り上げられてゐる、兵庫県明石市で起きた通り魔殺人事件でも、被害者が救急車で運ばれた病院からの請求は、すべて被害者の母親が支払つたのに対し、この凶悪犯が自業自得で怪我をした治療費は、国が全額負担したさうです。


    この年、日本全体で加害者には総計約四六億円の国選弁護報酬と、食糧費+医療費+衣服費に三〇〇億円も国が支出した。対照的に、被害者には遺族給付金と障害給付金を合計しても五億七〇〇〇万円しか払われていない。(序章より)
    我が国はお金の使ひ方がまるで出鱈目であるなあと常日頃から思つてゐますが、やつぱりをかしいですね。

    それでも厳罰が待つてゐるならまだ救ひがありますが、現実には「心神喪失」の鑑定を受けて不起訴になつたり、減刑されたりします。この拠り所となるのは、本書にも度度出てきますが、刑法39条といふ条文であります。即ち。
    刑法39条 
    1 心神薄弱者ノ行為ハコレヲ罰セズ   
    2 心神耗弱者ノ行為ハソノ刑ヲ減刑ス
    といふもの。
    これにより理不尽に罪から逃れた人物がどれだけゐたことか。逮捕後、加害者は異常な言動を見せれば、「責任能力の有無」を判定するため、忽ち精神鑑定にかけられます。そして鑑定者は弁護士の主張を取り入れた判定を下す。仰仰しく精神鑑定などと言つても、要するに客観性の低い、感想文みたいなものです。
    無罪放免となつた加害者は、野に放たれた後、再犯を繰り返す。「俺は捕まつても、心神喪失で直ぐに出られる」と豪語する輩もゐるさうです。
    また、覚醒剤が原因の犯罪でも、飲酒運転による交通死亡事故(こんなのは殺人と変りませんね)、を起こしても、責任能力無しと判定され再び野放しにされる(通常の状態なら罰せられるのに、であります)。著者が繰り返し述べるやうに、この国は本当に法治国家かと疑ひたくなります。
    ハンムラビ法典の「目には目を」、江戸時代の「仇討」など一見前時代的と思はれる制度も、むしろ合理的とさへ思はれるほどです。お仕置集団「ハングマン」のドラマが大人気だつたのも頷けます。

    ああ、やつぱり腹が立つてきました。しかし「読まなきや良かつた」とは思ひません。無関心では、いつまで経つても変りませんからねえ......

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-557.html

  • 現行刑法が公布されたのは明治四〇年(一九〇七年)四月二四日であり、施行は明治四一年一〇月一日である。二一世紀に至るまで、ほとんど改正がなされておらず、今では使い物にならなくなってしまった。

    資料ID:C0027653
    配架場所:2F文庫書架

  • 10年以上も前に発行された本なので、情報がちょっと古いかな…って内容。
    過去にあった判例や不起訴処分など考えさせられる内容でした。

  • 殺人を犯しても精神がやんでると思わせることができれば、刑が軽くなるどころか無罪放免となり何もなかったように生活することができる。被害者遺族無視の法律。

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そして殺人者は野に放たれる (新潮文庫)の作品紹介

「心神喪失」の名の下で、あの殺人者が戻ってくる!「テレビがうるさい」と二世帯五人を惨殺した学生や、お受験苦から我が子三人を絞殺した母親が、罪に問われない異常な日本。"人権"を唱えて精神障害者の犯罪報道をタブー視するメディア、その傍らで放置される障害者、そして、空虚な判例を重ねる司法の思考停止に正面から切り込む渾身のリポート。第三回新潮ドキュメント賞受賞作品。

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