そして殺人者は野に放たれる (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101300511

作品紹介・あらすじ

「心神喪失」の名の下で、あの殺人者が戻ってくる!「テレビがうるさい」と二世帯五人を惨殺した学生や、お受験苦から我が子三人を絞殺した母親が、罪に問われない異常な日本。"人権"を唱えて精神障害者の犯罪報道をタブー視するメディア、その傍らで放置される障害者、そして、空虚な判例を重ねる司法の思考停止に正面から切り込む渾身のリポート。第三回新潮ドキュメント賞受賞作品。

感想・レビュー・書評

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  • 精神障害者による心神耗弱、心身喪失

    どんなことがあっても事件や事故特に事件は意思があって起こしたものだと思う

    だから障害や他の原因があったとしても不起訴になるってゆーのに不満を抱く作者の意見に同意

  • まあタイトルから推して知るべし、でしょうがちょっとこれをノンフィクションと捉えるのに躊躇してしまう位著者の「思い」が前面に立ってる。そもそも解説者ですらこれが”扇情的”であると言及してリーダビリティをその免罪符としているルポなんて初めて読んだ。その為、部分的には同意できなくもない点も、その根拠となる”事実”の部分がイマイチ信頼できない為、ノンフィクションとして機能しない。

  • 【要約】


    【ノート】

  • 刑法39条(精神疾患者は無罪または減刑)の問題点について、実際にあった犯罪事例および判決事例を元に考察している。

    基本的には、まずは被害と被害者をを考えることが第一であり、心神喪失の類については本当に分別が付かない人以外は減刑の対象外にすべきであるという主張であった。スウェーデンで取り入れられているような結果(被害)に基づいてのみ量刑を課す方法である。

    また、日本における犯罪への向き合い方への疑問も指摘されて気付いた。犯罪に対して動機(なぜ?)の追求ばかりに焦点があたり、なおかつ被害者よりも犯罪者をいかにすべきかばかりを考えているのは問題だ。

    面白かったエピソードは、川俣軍司の支援者が「川俣がやったのではない。病気がやらせたのだ」と主張していて、やっぱり精神病は怖いと民衆に錯覚させてしまったという話。

  • 気持ちはわかるが主観的感想が多すぎる。

  • 勘定が先走った記述が多く公平性に疑問がある。作者の品性を疑うような内容もある。
    ただ一部未知の事実が書かれていて勉強にはなった。

  • これも随分前に購入済だつたのですが、いざ読めば腹が立つてしようがないだらうなあと、中中手に取らなかつた一冊であります。
    恐らく多くの人は、日本の刑罰はおしなべて甘い、日本は犯罪者天国だと感じてゐるのではないでせうか。わたくしもその一人で、罪に応じた刑罰を与へていただきたいのですが、実態は精神状態だの、被告の置かれた立場や恵まれない生ひ立ちだの、本人は反省してゐるだの、様様なレトリックを駆使して、少しでも罪を軽くする傾向がございます。
    それならば不幸な境遇の人は罪を犯しても不思議ではないのか、反省すれば罪は軽減されるのか、いつも疑問に思つてゐました。そもそも反省したかどうかなんて、本人以外に分かる訳が無いぢやありませんか。

    そして容疑者の人権は120%考慮する癖に、被害者への配慮がまるで足りないといふ点も同意するところです。「心神喪失」のお墨付きを貰つた加害者は、報道でも仮名で発表され、一方で被害者はずばり実名が表に出ます。
    「序章」で取り上げられてゐる、兵庫県明石市で起きた通り魔殺人事件でも、被害者が救急車で運ばれた病院からの請求は、すべて被害者の母親が支払つたのに対し、この凶悪犯が自業自得で怪我をした治療費は、国が全額負担したさうです。


    この年、日本全体で加害者には総計約四六億円の国選弁護報酬と、食糧費+医療費+衣服費に三〇〇億円も国が支出した。対照的に、被害者には遺族給付金と障害給付金を合計しても五億七〇〇〇万円しか払われていない。(序章より)
    我が国はお金の使ひ方がまるで出鱈目であるなあと常日頃から思つてゐますが、やつぱりをかしいですね。

    それでも厳罰が待つてゐるならまだ救ひがありますが、現実には「心神喪失」の鑑定を受けて不起訴になつたり、減刑されたりします。この拠り所となるのは、本書にも度度出てきますが、刑法39条といふ条文であります。即ち。
    刑法39条 
    1 心神薄弱者ノ行為ハコレヲ罰セズ   
    2 心神耗弱者ノ行為ハソノ刑ヲ減刑ス
    といふもの。
    これにより理不尽に罪から逃れた人物がどれだけゐたことか。逮捕後、加害者は異常な言動を見せれば、「責任能力の有無」を判定するため、忽ち精神鑑定にかけられます。そして鑑定者は弁護士の主張を取り入れた判定を下す。仰仰しく精神鑑定などと言つても、要するに客観性の低い、感想文みたいなものです。
    無罪放免となつた加害者は、野に放たれた後、再犯を繰り返す。「俺は捕まつても、心神喪失で直ぐに出られる」と豪語する輩もゐるさうです。
    また、覚醒剤が原因の犯罪でも、飲酒運転による交通死亡事故(こんなのは殺人と変りませんね)、を起こしても、責任能力無しと判定され再び野放しにされる(通常の状態なら罰せられるのに、であります)。著者が繰り返し述べるやうに、この国は本当に法治国家かと疑ひたくなります。
    ハンムラビ法典の「目には目を」、江戸時代の「仇討」など一見前時代的と思はれる制度も、むしろ合理的とさへ思はれるほどです。お仕置集団「ハングマン」のドラマが大人気だつたのも頷けます。

    ああ、やつぱり腹が立つてきました。しかし「読まなきや良かつた」とは思ひません。無関心では、いつまで経つても変りませんからねえ......

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-557.html

  • 現行刑法が公布されたのは明治四〇年(一九〇七年)四月二四日であり、施行は明治四一年一〇月一日である。二一世紀に至るまで、ほとんど改正がなされておらず、今では使い物にならなくなってしまった。

    資料ID:C0027653
    配架場所:2F文庫書架

  • 10年以上も前に発行された本なので、情報がちょっと古いかな…って内容。
    過去にあった判例や不起訴処分など考えさせられる内容でした。

  • 殺人を犯しても精神がやんでると思わせることができれば、刑が軽くなるどころか無罪放免となり何もなかったように生活することができる。被害者遺族無視の法律。

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著者プロフィール

1958年、長野県に生まれる。東北大学法学部卒業後、販売、配送、書籍の編集、コピーライターを経て87年より作家・ジャーナリスト。著書には、『そして殺人者は野に放たれる』(新潮文庫、新潮ドキュメント賞受賞)、『世間のウソ』(新潮新書)、『ラクをしないと成果は出ない』(だいわ文庫)、『情報への作法』(講談社+α文庫)など多数。

「2011年 『つながる読書術』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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