下山事件(シモヤマ・ケース) (新潮文庫)

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著者 : 森達也
  • 新潮社 (2006年10月30日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (411ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101300719

下山事件(シモヤマ・ケース) (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 1949年7月5日、初代国鉄総裁・下山定則が出勤途中に行方不明となり、翌6日未明常磐線五反野ガード下の線路上で轢死体となって発見された。
    通称「下山事件」である。
    戦後のこの時代のことを、ほとんど何も知らない。
    自分が生まれていないどころか、親たちですらこの世に存在していない。
    日本国でありながら、国旗である「日の丸」の掲揚が許されない時代があったことなど、まったく知らなかった。
    同様に、当時の政治事情やアメリカとの微妙な関係についても何も知らない。
    松本清張さんがこの時代のことを「日本の黒い霧」に書いているらしいが、残念ながら読んだことはない。
    政治犯の釈放に合わせた共産主義容認の流れ。
    組織化し強大な力を持ちつつあった組合への対策。
    相次ぐ鉄道関連事故の発生により、メディアを含む世論は一斉に共産主義=怖ろしいという考えに傾いていく。
    作品の中に登場する多くの固有名詞。
    私ですら知っている有名な名前をあれば、たぶん知る人ぞ知るといった名前も登場しているようだ。
    事件の背景にある見えない力を恐れ、文字通り墓場まで秘密を抱えて逝った人も多いのだろう。
    何が真実なのか。結論は出ないまま作品は終わっている。
    丁寧な取材で掴んだ多くの証言。
    個々に見えていたものの後ろに隠されていた意外な繋がり。
    戦後とは想像もつかないほど混沌とした時代だったのだろう。
    その裏で誰が何のためにどんなことをしていたのか。
    確かなことは、その時代があったからこそ今の日本があるということだけだ。
    「下山事件」は「三鷹事件」「松川事件」と共に語られることが多いらしい。
    三つを総称して「国鉄三大ミステリー事件」と呼ばれている。

  • 1949年7月6日、初代国鉄総裁の下山定則は、国鉄常磐線の北千住-綾瀬間の線路上で轢断死体となつて発見されました。下山事件を説明すれば、たつたこれだけでありますが、現在に至るまで謎に包まれ、多くの捜査関係者やジャアナリストたちがその真相を突き止めんと、血眼になつた事件であります。
    さらに続く7月15日には三鷹事件、8月17日に松川事件が相次いで発生しましたが、いづれも未解決のまま現在に至つてをります。これら三事件を、国鉄三大事件などと称し、戦後間もない不安定な世相の中、人々を不安に陥れたさうです。

    さて下山事件。本書『下山事件(シモヤマ・ケース)』の著者・森達也氏は、映画監督の井筒和幸氏に「彼」を紹介されたところから、この事件に関つてゆくことになります。その後の森氏の苦難を思へば、井筒監督も罪なことをしました。「彼」とは、親戚が下山事件に関つたといふジャアナリストらしい(最後に正体は明らかにしてゐます)。森氏のほかに、その「彼」、斎藤茂男氏、週刊朝日の諸永裕司氏らが共同でこの事件を追ふ形になりました。しかし、「彼」も諸永氏も「下山病に感染(斎藤氏)」してしまひ、森氏を取り巻く雰囲気は俄かにきな臭くなつて参りました......これが、後に捏造騒ぎなどの問題の遠因になるのでせう。

    森氏は映像(ドキュメンタリー)が本職のせいか、その著書も一般のノンフィクションと違ひ、時系列で事件を再現する形式ではありません。取材対象を詳しく描写し、その息遣ひまで伝へんとするかのやうです。インタヴューする森氏自身の葛藤、逡巡、焦燥といつたものまで隠しません。
    読者は、新事実からどのやうな真相究明がなされたかを期待すると、当てが外れるかも知れません。しかし著者は「客観的な事実ではなく、主観的な真実を掴んだという自信がある」さうです。そして下山病のワクチンは見つけたつもりだけれど治すつもりはない、とも。それどころかこのウィルスを撒き散らして、多くの人に感染させたいらしい。迷走する取材活動の中で、最終的に辿り着いた本書の「目的」なのでせう。

    今さらながら、発表メディアの影響力いかんで、「ノンフィクション」の内容が如何様にも変化することを、森達也氏から教はつた気分です。

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-675.html

  • なんだかごたごたしたいきさつがあったみたいですね。そのごたごた自体は、一方の言い分だけを聞いてどうこう言うことはできないので、なんとも言えません。
    ただ、この本についてだけを純粋に言うなら、下山事件に関する本ではなく、下山事件を調べようとして結局ごたごたしてしまったということを書いた本としか思えませんでした。

  • 下山事件の真相そのものではなく、真相に迫る過程を描いたドキュメント。新たな事実、真相が描かれている訳ではないのに著者の高揚感だけが伝わり、読み手からすると興醒めする作品だった。下山事件の真相を描いた作品は松本清張の『日本の黒い霧』、矢田喜美雄の『謀殺 下山事件』、柴田哲孝『下山事件 最後の証言』と面白い作品が多数あるのだが、この作品は余り面白いとは思えなかった。

  • 古本で購入。
    ノンフィクションが読みたかったので。

    昭和24年(1949)7月6日、常磐線五反野ガード下で初代国鉄総裁下山定則が轢死体で発見された下山事件。
    この戦後最大のミステリーとも言える事件について読むのは、松本清張『日本の黒い霧』を読んで以来2度目。
    かつて大学に向かう常磐線の中、しかもちょうど轢断現場の辺りで下山事件のくだりを読んでいた、というしょうもない理由で興味を持ち続けていた。

    本書の話は、祖父が下山事件実行犯かもしれないという男(作中では『彼』)に、著者の森が出会うところから始まります。

    ただまぁ、結論から言えばガッカリ本ですよコレは。

    まず内容自体が他人の著書や報告書のコピペのよう。
    森による新見地ってのはあまりない。取材で得られた新たな材料の組み立てを試みていないところに不満が残る。

    それから、取材を進める中で森が周囲とゴタゴタを起こして、一々その経過なり状況なりが描写されるのが不快。
    何がしたい作品なのかいまいちよくわからなくなってる気がするんだな。

    これは僕の求める「ノンフィクション」でも「ルポルタージュ」でもなかった。
    もっと骨太の本だと思ったんだけど。

    読んでいて森の迷走ぶりばかりが目に付く。
    何より
    「要するに事実を暴くことは、僕にとっての最終的な目的ではない。知った事実を素材にして、そこから何を自分が感知するのかが重要なのだ」
    というスタンスが僕に合わなかった。

    つまり森は、いわゆる「アーティスト」なんだと思う。
    この人はジャーナリストではない。
    雑誌連載の文章の一人称を「僕」にすることに拘るところからも、それはわかる。
    事件に対して主観で臨んでるわけだ。
    そのフィルターはノンフィクションには要らんよ。

    「文庫版のための付記」にもあったしネットで少し調べたりもしたが、森は重大な過ちを犯している。
    証言の捏造だ。
    この付記でいろいろ書いているが、正直言い訳にすらなってない。
    「読者に謝罪しなければならなかったがその機会がなかった」
    と言うけど、ホームページ持ってんだよね。
    全体に自己正当化、自分は被害者であり加害者でもある的な逃げのにおいがする。

    下山事件に興味がある人は、松本清張『日本の黒い霧』か、矢田喜美雄『謀殺 下山事件』(僕も未読だけど)を読むのがいいのかも知れない。

  • 実際にあった事件。予備知識なしで読んだので何もかも新鮮で最後までひといきに読んだ。
    昭和の大事件。こんなにも他殺につながる状況でも自殺と処理される。謎めいていて面白い。

  • 柴田氏が「彼」として出てきていて、彼から話を聞いたところからはじまり、どのように発表するかの紆余曲折が書かれていた。
    色んな人が出していたんだなぁ…と。
    これから柴田さんの本を読むので(下山事件 最後の証言)、その前に読んでみてよかったと思う。

  • ぐちゃぐちゃダラダラはっきりしねええええええ!つまりなんなんだよ。裏切られたー先に出版されたー罵られたー、じゃねえよ。日記かこれは。かなり興味深い新要素とか出てきてるのに、構成がクソすぎるうううう!他の2冊読んだ方が良さそうかな。

  • 100621

  • 東京駅から上野へ、常磐線に乗り換え北千住まで。東武線に乗り換えるところで、そういえば今より通過するであろう、この先のJR線と交差するあたりの線路上が事件現場であることに思い至る。

    読み始めて気がついたのだが、著者は彼のオウムのドキュメンタリー映画を撮った人だと、ならばたかじんの番組にでてたのを見たことがある。ここから、新たに判明する事実の断片をつむぎ、真相に迫ろうと模索する一人称の「僕」は顔を持ち、テレビで知り得たその容豹とキャラクターを思い浮かべながら読み進めることとなった。

    著者自らの日常と共同で取材を行う面々との衝突、軋轢をも詳述する様は、同じ題材をあつかう清張さんの「日本の黒い霧」中の一編とはそのアプローチが大きく異なるものの、今日の視点を交えることで、遠い過去の事象が、しっくりと受け入れられたりもする。

    面白かった。本書の取材に派生する先の一冊、後の一冊についても是非とも目を通したいと思う。
    (2006年11月東京出張時記)

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下山事件(シモヤマ・ケース) (新潮文庫)の作品紹介

下山事件。昭和24年7月5日、日本橋三越から忽然と姿を消した初代国鉄総裁下山定則が、翌日未明常磐線の線路上で轢断死体となって発見された。自殺か?他殺か?戦後最大の怪事件の謎は、50年後のいまも解かれぬまま、関係者は鬼籍に入っていく-ある人物から得た重大な新情報。著者の迷宮への彷徨が始まった。生き残った関係者を探し、その記憶を辿る。真実はどこにあるのか。

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