つやのよる (新潮文庫)

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著者 : 井上荒野
  • 新潮社 (2012年11月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (330ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101302560

つやのよる (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 荒野さんの作品は、直木賞受賞の「切羽へ」以来。
    「切羽へ」が、な〜〜んだか、じょわじょわとわいてくるものの、どう感じたらいいかよくわからず、手出しできない感じで。。
    ほんとに気まぐれに読んでみた本書。
    男ぐるいの艶という女に関わった男たちを、主に彼らの傍らにいる女性の視点で描いて行くという小説。
    艶はなんというか、シニフィアンのような?
    結局、最後までどういう人物なんだかよくわからないまんまに終わる。

    でも、どこがどうとか言葉にできないながら、男女の愛のウソやまこと、濃密さや儚さ、誰しもが日常生活を送る上では心に底にしまっておくような感覚・感情が濃く漂っているようで味わい深く。
    絶対に読書感想文の材料に選んではいけない類のお話でした。
    よかったよ。

  •  単行本が出たときから気になっていた作品。この著者の作品は、雑誌に載ったエッセイくらいしか読んだことがなかった。文庫になっているのを知りつつ、なかなか読めなかったのだが、やっと読了した。
     ひとりの女について、複数人の語りというスタイルは、有吉佐和子の『悪女について』等にも見られる型ではあるが、主人公「艶」の最後の夫の視点から描かれた最終章とその前の看取った看護師以外は、「艶」と「関わった男」と関わった女の視点となっているところがこの作品の特徴だと思う。看護師にしても、その関わりは職業上でのことで、ワンクッション置いたかたちである。
     それぞれの女たちが「艶」との関わりの中で、内なる「艶」的なものを意識的に無意識的に照らし出している。多視点から投影された像が、「艶」を形づくる。求められることを至上とするのか、自らなりふり構わず求めていくのか、そこには「男」は木材のようにごろりと横たわっていて、それに乗るか、斧を振るうか、背を向けるか、それぞれの女の行動がある。
     作中、敢えて「語られていない」部分について思いを巡らせられる作品だ。わかっていても触れない、触れられない、もしくはわからない、わかりたくない、そういう部分が実際の男女間にはある。多くの視点から語られることによって、その「語られていない」事柄が浮き彫りになってくる。
     最終章で「艶」の夫の視点で描かれ、ラストの少年とのいきさつが、「語られていない」男女間のわからなさを、少年の科白「何言ってんのか意味わかんね」と投げだすさまで表現されていると感じた。
     文庫版での解説は、この作品の映画化にあたった監督なのだが、あくまで男性視点である。映画は見てはいないのだが、いわゆる「恋愛物語」として描かれてしまうことによって、作中での男から女への「わからなさ」がそのまま作品への「わからなさ」になってしまっていて、気が遠くなる思いである。
     恋愛だけに留まるものではない、人のもつ「渇き」とそのきりのなさ、異性との解りえない「壁」を描いた作品だと思った。「結論」なんてものはないし、希望の「道」もどこにもない。

  • 次から次に男を翻弄する女、艶。彼女が死の淵に立たされたとき、夫は艶と関わった男たちにそれを知らせようとする。男たち目線ではなく、男の周りの女たちの目線で物語がすすんでいったのが印象的。艶目線では一言も物語は語られてないのに、艶にすごい存在感を感じたのは筆者の文章力なのかも。夫、松生の章ではどんな情念が語られるのかと思ったけど本人は至って淡々と忙しい日々に流されるように生きていて、はたから見れば波乱万丈な人生も本人たちからすると意外と淡々と日々が流れていってるのかもと思わされた。

  • 行間を読むことに慣れてない自分には、はじめは女性がただただ怖い生き物にしか感じない小説だった。
    ただ最後まで読むと印象が一変する。涙が出てきさえする、そんな人間味溢れる一冊だ。
    こんなに息が詰まる本は初めて読んだ。ただ、また数年後に読んでみたいと思う本だ。

  • 島の病院で死んでいきつつある「男ぐるい」の女、艶。彼女とかつて関係をもっていた男たち、ではなく、彼らの妻や恋人たちの視点から、死にゆく女の存在が引き起こす、ほんの微かな波紋を描いているのが、この小説の味噌だ。
    艶のために自分の人生を放り出し、自分を見ようとしない女で自分の時間のすべてを埋めつくし、今また彼女のかつての男たちにわざわざ連絡をとって波紋を引き起こそうとしている松生の真意は、本人にとってすらよくわからないし、小説の中で分析めいたものも示唆されない。
    かつて艶と関係をもった男たちは、このわけのわからない松生の狂おしさからは、もはや地理的にも心理的にも遠い場所にいるはずなのに、さらに安全な場所にいるはずの語り手の女たちは、彼女たちの男たちの身体から発される微かな波紋を、感受してしまう。そのことが、安全な場所の中にある不穏なものの存在を明らかにしてしまうのだ。
    まったく井上荒野らしい、穏やかでありながら不穏な小説だ。
    で、行定勲監督はこの映画を撮ったのかしら?

  • 難しい人間模様。

    29歳の愛人の話がいちばん読みやすかったのは
    年齢が近かったからなのかなんなのか。

  • おもしろかった。映画化されてます。それも見たいな。

  • おもしろかったんやけどなにがおもしろかったのかよくわからん。

  • 女性の名前「艶」と通夜が掛詞になっていて、なかなか、リアリスティックな情景が立ち上がって来る、ちょっと怖い小説。

  • 「艶」という女性と関係した男たちと、現在関係している女たちの物語。艶のことは直接書かれないのに、匂い立つように浮き出て来る。面白かった。

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つやのよる (新潮文庫)の作品紹介

男ぐるいの女がひとり、死の床についている。その名は艶。夫・松生は、かつて妻子を捨て艶と出奔したのだった。艶の危篤を、彼女が関係した男たちへ告げずにはいられない松生。だがその報せは、彼らの妻、娘、恋人、愛人たちに予期せぬ波紋を広げてゆく。平穏な人生に突然割り込んできた女の存在によって、見知った男が別の顔を見せはじめる。一筋縄ではいかない男女の関係を描く恋愛長編。

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