天と地の守り人〈第3部〉新ヨゴ皇国編 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (403ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101302829

感想・レビュー・書評

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  • ファンタジーとしても児童文学としても、私が今まで読んだ中で、もっとも面白かったと言える本だと思う。
    日本語でこの本を読めて、本当に幸せだ、確かに!!

    ストーリーや世界観の壮大さは言うまでもないけど、こういう長いお話になるとありがちな、くどくどしたしつこい言い回しがない。
    スッキリしていて、読んでいてイライラしなかった文章力、構成にも感動。

    震災のあとにこの物語を読んだ人は、新ヨゴ皇国を襲ったものを、自分の国のことのように受け止めたんじゃないだろうか。
    私は少なくともそうだった。

    時間を置いて、また読み返したい。

  • ついに完結。素晴らしい終結でした。帝を誤解してました。彼は誰よりも新ヨゴの帝として役目を果たして来たのですね。父子の別れは潔かった。そしてバルサとタンダも…良かった…。本当に良かった…。興奮と感動をありがとうございました。

  •  物語の終わり。

     チャグムは、兵を率いて故国へ。
     バルサは、タンダを探して戦場へ。

     それぞれが大事な人のために、命をかけて動く。
     タンダとバルサの関係が、思ってた以上に大人でちょっと驚きました。でも、タンダは<嫁>だなww

     そして、チャグムは父と相対する。
     どこまでも、相容れることができない親子。でも、それを受け入れることができるだけチャグムは大人になったってことなんだろう。が、それはそれでなんかさびしい。

     物語は終わったけれど、チャグムがつくる国や、バルサとタンダ、その後の二人の姿を読んでみたいと思うけれど、多分ここで終わることが一番美しいんだろう。

     そうこれは、美しい人たちの美しい物語だった。

  • 【ネタばれあり】
    ロタとカンバルがうごいた!北の諸国のうねりを背に、瀕死の故国へ帰還するチャグムに父との対決の時が迫る。緒戦の犠牲となったタンダの行方を必死に探し求めるバルサ。大地が揺れ、天変地異が起こるとき、金の鳥が空を舞い、地を這う人々の群れは、ひたすらに生きのびようとする。――十年余りの時をかけて紡ぎだされた大河物語の最終章『天と地の守り人』三部作、ついに完結。
    (BOOKデータベースより)

    ***

    一番印象的なのは、帝とチャグム、再会と分かれの場面。
    何代も前(建国時)から信じ続けられ、己も信じていたことを否定し、心を変えるのはとても難しい。
    帝の考えも決して間違ってはいなくて、ただ必要とされる時期でなかったというだけなのではと思う。

    最後、バルサたちの日常を描いて物語は終わる。
    『天と地は、こうして、ただありつづけ、動きつづける。』
    人は歴史上何があっても、それぞれの場所で生き続けるだけなんだと思いました。

    しかし、サンガル王国の面々が思った以上に出なかったな…。
    タルサンとか、もっと関わってくると思ってたけど。

  • 人の世と異界が重なりあった世界で生きる人々のハイファンタジー。完結編。

    完結編三部作。
    拡大政策を続ける大帝国。支配された属国を見て、自国が支配から免れる道を探る皇子チャグム。
    槍使いの用心棒バルサは、チャグムが生きていることを知り、力になるために彼を探し始める。

    個人の思惑、国の思惑があって、さらに自然現象による大異変があって、ギリギリの中で国を救う細い糸を拾っていく描写が、話の都合を感じさせないのがすばらしい。
    これぐらい複雑にからんだ話で、ギリギリの成功を物語が辿ると、作者の意図が見えてしまう陥穽や失策が目につくのだが、よくできた異世界で、皆が全力で臨んだ上で有るべきように道が開かれる。
    悲しい事も多かったけれど、それぞれが精一杯に生きる、素晴らしい物語でした。
    そのまま後日譚のためにガイドブックも買ってしまったけれど、タンダとバルサのこれからには、タンダのために穏やかな幸せを。欠けてしまった腕の分も、呪いの腕は上がりますように。
    王となるチャグムは、重みを感じつつも、多くの人々に影響を与える座にやりがいを感じられますように。シュガたちや、好を通じた各国の人々がそれを支えてくれますように。
    ヒュウゴも大帝国で生きる甲斐のある国づくりができるようになりますように。
    確かに生きていた彼らそれぞれの幸せを、祈りたくなるお話でした。

  • 怒涛
    草兵に取られたタンダが投じられた戦場
    ナユグの春の影響
    自分に出来る事を積み重ねていくバルサ
    (まさかタラノにまっすぐタンダを探しにいきたいのを押さえて山越を手伝うとは…)

    タンダの腕を切り落とすのが最高の愛情表現という部分に納得
    相手の生命をあずかるということだ

    そしてあらゆる決着

    見事な決着だった
    みんな生きている


    器が人を育てるというけど、チャグムも父も、価値観を器に作られた部分が大きいんだろうな

    チャグムは平民も見たから、それが理想を目指した(三の妃の言葉が、あくまでも母親だ)
    父は魂たる自分以外を持てない純粋


    チャグムの相手は父でなく歴史、国体、思想

    人は安心を求めて責任を嫌がるから理想は遠いだろうな



    この三冊、鼎談が非常によい
    佐藤さんて知らないが空色勾玉の荻原さんがいますよ!
    この人達の、話の作り方や世界観て貴重


    アスランの復活がキリスト教的って気づかなかったな。

  • バラバラだったパズルが綺麗に完成した感じのまとまり方でした。
    相容れない親子、悲しい運命は精霊の守り人から連綿と続いてきたのだと思うと少し悲しくもあり。

  • こちらのほうにレビューが書かれています

    http://booklog.jp/users/ohsui/archives/4101302820

  • チャグムとバルサが紡いだ物語はタルシュの王子を巻き込みさらに複雑な模様を描きだす。

    チャグムたち「侵略される側」から見ればタルシュは大国で脅威で敵だけど、タルシュ側から見れば彼らが侵略する理由が(納得はできないけれど)あるわけで、そういう視点・視線のフェアさ加減が上橋さんは本当に上手だと思う。

    チャグムが最後まで分かりあえなかった帝は、帝としての矜持をもって帝で有り続けるというその姿勢がチャグムとは絶対相容れないのはわかるけど。「石頭!」と説教できるような人がいればよかったのになー。と、思ったり。

    終わりだけど、はじまりの物語。

  • 戦のシーンのあまりの凄惨さに、こんな描写をするのかとすこし意外に感じました。そして、タンダについても。あとがきにもありましたが、バルサとタンダは本当に地の守り人。天の守り人であるチャグムと好対照をなしていて、作品に深みを生み出しているなぁと思います。バルサとチャグムの活躍は今巻はもちろん、前巻までも目白押しですが、この最終巻ではむしろチャグムの父の帝と、トロガイ師を個人的に推します。帝の最後の選択は、そのキャラクターを損なわないものだったし、トロガイ師は鼎談にもあったように一種のブレの無さというか、どうあったって矍鑠としている雰囲気があって、鼎談の言葉には深く頷けました。堂々の完結、素晴らしい作品だと思います。正直、児童文学という括りがうっとうしく感じます。子どものときに読んだ感想と、大人になってから読んだときの感想はきっと異なるものとなる作品だと思います。むしろ、大人になってから読みなおさないと、この作品の深さはわからないと思う。個人的にはこのシリーズでは『蒼路の旅人』が一番好きです。転換点となるこの巻は、ある意味ではこのシリーズの最高のクライマックスだと思うので。

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著者プロフィール

作家、川村学園女子大学特任教授。1989年『精霊の木』でデビュー。著書に野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を受賞した『精霊の守り人』をはじめとする「守り人」シリーズ、野間児童文芸賞を受賞した『狐笛のかなた』、「獣の奏者」シリーズなどがある。海外での評価も高く、2009年に英語版『精霊の守り人』で米国バチェルダー賞を受賞。14年には「小さなノーベル賞」ともいわれる国際アンデルセン賞〈作家賞〉を受賞。2015年『鹿の王』で本屋大賞、第四回日本医療小説大賞を受賞。

「2020年 『鹿の王 4』 で使われていた紹介文から引用しています。」

上橋菜穂子の作品

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