小説ヤマト運輸 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101303321

作品紹介・あらすじ

今日送った荷物が、全国どこにでも、すぐに届く。宅急便。わたし達が享受する“当たり前のサービス”開発の裏には、壮絶な戦いがあった。運輸省、郵政省という国家権力による妨害。金で政治家を取り込んだ競合他社。配送革命と称賛された「クロネコヤマトの宅急便」は、いかにして生み出されたのか――。新インフラ誕生の全貌を描いた、圧巻の経済小説。『挑戦つきることなし』改題。

感想・レビュー・書評

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  • 小説ヤマト運輸 (新潮文庫) 文庫 – 2013/7/27

    小倉昌男氏がいなければ今日のヤマト運輸は無い
    2015年1月4日記述

    高杉良さんによる小説。
    1995年9月に徳間書店より単行本として出版。
    1997年12月に徳間文庫。
    2000年3月に講談社文庫。
    いずれも「挑戦つきることなし」という題名で刊行されている。

    2013年に出たこの新潮文庫版では小説ヤマト運輸となっている。
    副題となっていたものではあるけれどもこちらの方がわかりやすいだろう。

    本書はヤマト運輸創業者の小倉康臣(1889年11月29日 - 1979年1月15日)と
    息子で2代目社長の小倉昌男(1924年12月13日 - 2005年6月30日)を中心に据えて
    ヤマト運輸の歴史を描いている。
    ヤマト運輸、ヤマトグループに勤める方は会社、グループの歴史の勉強になって良いと思う。
    50年史、70年史等より読みやすいだろう。
    クロネコマーク誕生秘話など興味ふかい。

    小倉康臣も良い経営者だった。
    しかし2代目社長の小倉昌男がそれ以上の器の人物で
    あったが故にヤマト運輸は大きく成長したと感じた。

    特に脳梗塞の後遺症があったにも関わらず社長を続けていた父、小倉康臣に社長を辞めてもらったという箇所には驚いた。
    創業者社長を辞めさせるという話は聞いたことも無い。
    例えればユニクロの柳井正氏を社長を辞めさせるようなものだが想像出来るだろうか?

    大口便から撤退し宅急便創設。
    岡本茂社長の下の三越との取引停止。
    郵政省との信書事件。
    運輸省との闘い。
    クール便開発へのこだわり(冷凍温度)

    全てが納得いくというものだ。
    そして経営哲学として常に消費者視点であったことも見逃せない。

    著者である高杉良氏も指摘しているのだが

    「会社で情報をいちばん多く持っているのは誰かと言えば、決して社長ではない。
    なぜなら、悪い情報は絶対社長のもとにあげられてこないからだ。悪い情報は、えてして労働組合に集まる。だから私は、労働組合に『きみたちは私の大事な
    神経だ。会社が病気になったとき痛みを伝えてくれるのがきみたちだ。だから会社がうまくいってなかったら必ず伝えてくれ』というようになった」

    上記の小倉昌男氏の指摘は極めて重要である。
    バッドニュースが上に上がりにくい現実を良く知っていたことも会社運営のプラスになったに違い無い。
    これは4年7ヶ月に及ぶ結核からの回復。
    (康臣のGETしたストレプトマイシンのおかげでもある)
    静岡運輸への出向時代の会社再建の苦闘・・
    大きな試練と挫折を経たことも小倉昌男を大きな経営者として育てたのだと思った。

  • 宅急便を日本でスタートさせたヤマト運輸のノンフィクション小説。どん底から大口便から転換し、郵便局しかやっていなかった小口便をスタートし全国、そして世界転換したヤマト運輸。とても採算が取れないといわれ、大口かつ歴史のある三越との縁も切って、業界をあっと言わせて今日の成功に至る多難なる道のりが描かれている。社内の反対は勿論だが、組合の賛成を見方に付け社員一丸となってスタートさせた。他の配送会社との軋轢、小包の中の親書をめぐっての郵政省の嫌がらせ、路線の許可を巡っての運輸省や業界との戦い。許可を伸ばすことへの提訴するという前代未聞の手を打っても前進を続ける。佐川急便の政治家や官僚との癒着は大きなニュースとなったことがあるが、クロネコやまとは自力で突き進んでいく。その成功は2代目社長小倉 昌男氏そして次の社長鈴木氏(小説ではそうなっているが、実際は都築幹彦氏)の偉大なる二人の社長によるところが大きい。
    平成25年11月に都築幹彦氏による「どん底から生まれた宅急便クロネコヤマト」の講演会を聞きに行った。高齢ではあったがユーモアも交えて小倉社長と宅急便を立ち上げた苦労話を語ってくれた。印象に残ったのは、お客様と直接接しているドライバーの接遇教育を強調されていた点であった。都築氏も本を執筆されている。
    (講演会の後、職場の課長さんから借りて読んだ)

  • ヤマト運輸の創業からクール便の開発までを描いた企業小説。

    作者紹介にもあるとおりかなり細かく企業内で調査した感じがする。読み物としては面白いし、盛り上がりもある。ただ、時系列というか話の展開がややあっちゃこっちゃ行くので迷うことも少々。
    最近企業小説が面白く思えてきた。立派なサラリーマンだな笑

    新宿南口の紀伊國屋で購入。ヤマト運輸の本はやたら多い。ブランド力2位らしい。

  • ヤマト運輸の変遷をストーリー建てしてまとめてある。当時の時代背景と照らし合わせて何が革命だったのかをまとめてあるのが面白かった。

  • 仕事を作り出すということは、かくあるべきなのか!と目からウロコ。
    没頭して読んでしまいました。
    やっぱり自分で頼む時は、クロネコさんが一番信頼できます。

  • 小倉昌男の宅急便というビジネスを見出した慧眼と、それを成し遂げるという情熱のすごさ。そして、それを周りで支え、結果を出していく部下たちの存在もまたすごい。

  • 18/9/4読了。

  • ヤマト運輸の二代目経営者にして宅急便生みの親、小倉昌男氏の経営奮闘記。経済小説というよりノンフィクションぽい。

    周囲の反対を押しきって、宅配便事業やクール宅急便事業をトップダウンで進めた小倉氏の経営判断は見事。また、郵便事業を司る郵政省や、規制権限を振りかざす運輸省と正面から闘う姿は、読んでいて気持ちがいい。

  • クロネコ宅急便への信頼度は、他社と比べものにならない。当たり前に享受しているそれらのサービスがどのようにして出来たか。利潤追求だけではなく、時には度外視してもこだわり、人心を動かしていく経営者の姿を二代にわたり描く。

  • 一気読みした。サービス先行、スピード感が半端ない。昔の三越との決別劇に昨年のamazonからの撤退ニュースが重なる。

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著者プロフィール

1939年東京生まれ。専門誌記者や編集長を務める傍ら小説を書き、75年『虚構の城』でデビュー。83年、退職し作家に専念。緻密な取材に基づく企業・経済小説の問題作を次々に発表する。代表作は『小説日本興業銀行』『小説ザ・外資』の他『金融腐蝕列島』シリーズ全5部作など。

「2023年 『転職』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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