末裔 (新潮文庫)

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著者 : 絲山秋子
  • 新潮社 (2014年3月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101304557

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末裔 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 鍵穴がないなんてもしやファンタジー?と思ったけどそうでもないみたい。乙も不思議な人。ちょこちょこ出てくる犬がなんだかおかしいのに妙にほっこり。

  • 「鍵穴はどこにもなかった」。勤め先の役所から帰ってきた富井省三が一人暮らしの家から閉め出された。。。という??なシチュエーションから始まるこの作品。
    妻を亡くし、母は理屈や辻褄の消えた世界にいる。省三は定年を前に人生に退屈をし、家はさながらゴミ屋敷の様相を呈している。
    行き場のない省三は、街で出会った不思議な占い師から東京を離れるように言われ、鎌倉の伯父宅へ向かう。
    不思議な男、喋る犬、口達者のオキナインコ。日常と隣り合わせのありえない世界そして、富井家の系譜をたどる旅。

    省三が鎌倉で出会った幻想世界の人たち、それによって想起される過去の記憶は、同時に私自身にも郷愁を感じさせ、亡き父を、祖父母を、幼少時を思い出させる。

    水が絶えず流れ続けるように、時も流れ続けていく。
    はるか遠くにたどる源流の、「末裔」として自分が存在する、その大きな流れの連なり。
    先立った者は時間を経て「突出した死者」であることをやめ、ほかの人々と同じように時間と調和するようになることは哀しいことではなく、そこに自分も必ず連なるという妙な安心感?に包まれる。
    末裔として生まれてきた意味、死ぬということ、死んだ後のこと。。。色々なことを考えた作品だった。

  • 現実なのか夢なのか、はっきりしない話。最初、くたびれた中年男性に惹かれるか不安だったが、気づけば周りの景色も忘れるくらいこの本の世界に入り込んだ。言葉少なだった父のこと、自分はどれだけ理解してきただろうか、と読みながら思う。過去と死者が膨大にあり、今の自分がいる、のだと思うと、流れの中の小さな存在だということに安心する。
    暗いようで前向き。今この本を読んでよかった。

  • 突然自宅の鍵穴がなくなった高齢男性が幻想世界の登場人物たちにめぐりあいながらファミリーヒストリーを思い出していく話。まあ面白かったけど、何だかなあ。
    空気感が伝わってくるようなところがあり、空想?の登場人物たちも良かったし、物語を私の心だけの問題からその周囲環境・歴史の問題へと開き、そこでの調和の再獲得というスケールに広げようとしている、云々。確かに良いのだけど、うーん。

  • 読み進めていく中で、生きている人と死んでいる人が交流している?交錯している?
    ちょっと不思議な内容でしたが、静かに死と対面するような、そしてこの世だけどあの世の次元とつながっているのかな?っていうような感じがすごく素敵に描かれていて、良かったです。
    かといってホラーでもファンシーでもない。
    そういうところがとても良かったです。
    何より、文章や表現力がすばらしいので読み進めていくのが楽しくて、絲山さんの作品は大好きです^^

  • 絲山秋子の小説は、通底するフレイバーの微醺に酔う心地が素敵だと思っていた。
    それは多くの作品が連作短編だったからだ。
    本作はずいぶん背骨の太い長編。
    重層的な話に仕上がっていて、生と死が横溢する。
    鈍重で軽快な幻想を見終えたあとのように、残る。

  • 鍵穴がないという奇想天外な一文からスタートする本作は、死んでしまった身内を弔うロードムービーのように展開をしていく。
    絲山作品に触れたのは5冊目だが、普通これだけ読むとパターンというものがつかめてくる。
    私がおバカなだけかもしれないが、まったくつかめない。
    解説の永岡杜人氏によると、根底は死とあり、そうかもと思った。けれども、末裔というタイトルから考えると、個人はどこから来たかルーツを巡る旅のような気がした。
    後半へ入り、前半の重苦しさが消え、頬がゆるゆるしてしまう展開もよく、すっきりした気分で本を閉じた。

  •  およそ有り得ない理由で自宅に戻れなくなった定年間近の公務員,省三。いくつかの縁や神託――のようなもの――に導かれるまま,忘れていた自分を形成する過去の事象,自らのルーツに触れることになる。
     初期の幻想的な作品を髣髴とさせる作り。偏屈な壮年期男性像とそうならしめた背景の描き方は納得させられるしいつも通り読まされたなぁ…という一方で,ちょっと定型的な頑固おやじ過ぎてうーん…とも感じました。かつ丼食いながら「これ…天丼だったらなぁ」て言ってるのと同じなので書評でも何でもないですね,すいません(+_+)

  • 家に帰ったらドアに鍵穴がなかった。というシーンから始まるように、現実感に乏しい作品です。
    妻を亡くして子供は家を出て、定年前という寂しい公務員が祖先や親戚との思い出を咀嚼しながら現実と向き合う。ヘンテコな展開やエピソードが添えられて、最後までよくわからないけど何となく面白い作品でした。

  • 読み込みが足りないのか、よく理解できない物語でした。
    断片的には引き込まれる場面があるのですが、全体の流れと言うか、繋がりが読み切れませんでした。
    いつか再読したいと思います。

  • 玄関のドアから鍵穴がなくなる、というよくわからない状況からスタートする本作。主人公が現実のような夢と虚構のような現実を行き来しながら話は進んでいく。その中で、主人公は自らのルーツを辿り、自分が何者なのかを考えていく。今まで読んできた本の中で、一番不思議な家族ドラマでした。

  • 2015/5/14購入
    2015/7/20読了

  • 数日前に読了。

    端正かつ力強い文体は相変わらず。
    最も筆力の高い現代作家の一人だと思う。

    幻想譚でありながら
    この生々しい胸苦しさはなんだろう。
    悪夢が見せる不安のビジョンに
    現実より強いリアリティを覚える、
    そんな感覚に近い。

    妻と死別し、
    子ども達も皆出て行き、
    ごみ屋敷化した自宅からも「閉め出された」中年男性。
    かつてあったはずの幸せな家族の記憶と、
    自分のルーツを辿った末にたどり着いた、
    孤独を神格化する「祈り」の時代の終焉。
    そして、弟との再会、娘との和解。
    しかしそれは、喪失からの再生を意味しない。

    孤独は、
    感傷や神秘から引き剥がされた時点で
    絶対的な「孤独」となる。
    誰もがそのことを本能的に知っている。
    だから孤独に物語を重ねようとする。

    祈りと物語の終焉がもたらすものはなんだろう。
    新しい「人生」か、「死」か。

    絲山作品全てに通底する、
    作者の孤独の先にあるものへの深い思い。
    そして「死」への親和。

    好きだなー。

  • 何かがくるくると規則的に目の前で回っているように、反復されるイメージ。チャイムの音が小さく残響を響かせているような、読後の余韻。何かよくわからないものが、脈々とこれからも続いていくような予感。末裔というタイトルが妙にしっくりくる。。。

  • 祖先を辿る物語り。私は実家の末裔なので祖先を辿ってみたいと読後感じた。

  • 久々の絲山、ちょっとファンタジー。

  • 迫りくる描写の恐ろしさに頭半分に割って半目で読む。
    砂漠に落としたばらばらの破片を少しずつ集めるように生きる始末をつける。
    ちゃんと片をつけないと蓄積した塵に埋もれていくんだろう。
    考える時間も片をつける時間もまだ残されている。
    ただ、わたしはわたしでおしまい。

  • ある日突然、家の玄関から「鍵穴」が失くなってしまい、自宅から締め出されてしまった58才ヤモメの公務員・省三。そこから彼の彷徨が始まります。

    親切にしてくれた謎の若者、忽然と消えてしまったホテル、喋る犬たち、それらの不思議なことと、現実的なことが違和感なく混在する奇妙な日常は、省三の内的彷徨であると同時に、定年間際の彼の「モラトリアム」期間のようでもあり、不条理ものにしては珍しく、ラストで主人公が成長、ポジティブに変化するラストシーンはとても感動的でした。

    彼が追想する過去や場所、亡くなった人のディテール、その情報量の多さが、一見本筋とは無関係なようでいて、実は彼が答えを導き出すラストのカタルシスのためには必然になっているあたり、上手いなあと感心。「末裔」というタイトルも秀逸。

    それにしても、現代日本で「不条理」を設定する難しさというのもしみじみ感じました。携帯電話があって、インターネットが繋がれば、鍵穴が失くなったくらいで人はそんなに困らないというこの現実。それでも主人公を困らせるために、作者が丹念に外堀を埋めるエピソードや設定を積み重ねたのだろうなという苦労が、序盤は垣間見えてしまった気がしました。

  • ある日、家に帰ったら鍵穴が無くなっていた。
    子供は独立し、妻を3年前に亡くした定年間際の公務員の富井省三。家に入れず放浪する疲れの中で不意に陥る眠りで見る様々な夢。そして現実の世界も鍵穴が無くなったり前日に泊まったホテルが消えたり何とも不可思議。いずれも幻想的。
    省三はその中を漂いながら、次々に血族との関わりをトレースして行くことになる。
    『末裔』というタイトルが示すように血族の物語。子供たちとの関係の希薄さ、転がり込んだ鎌倉の叔父の家で思い出す昔の家族の姿。どこか「諦念」を感じさせる暗い筆調。
    しかし、最後半で少し流れが変わる。先祖を辿る小旅行。長く交流の無かった弟の結婚話。そして。。。「漂う」ことから少し能動的になった省三の姿を描きながら物語は終わる。
    作者の意図はついに掴めず。なにかモヤモヤした感じはあるものの、奇妙に印象に残る物語でした。

  • 末裔/絲山 秋子/2011.05.21(10/62)
     「いまや省三に欲しいものは何もなかった。頼まれたものもなければ、頼む人もいなかった。目的がなかった・。省三は長くほごされて野生に戻れない鳥のようだった。」=>なんとなくわかる。けどこうはなりたくないな。けど、そうならないように努力をしておかないと、いずれこうなるんだろうな、という点で共感した。
     「教養というのは理念さえあれば、気取ったものでもなんでもない」
     外国語はコミュニケーションをとるために使うものというよりも、その国で長い年月の間に培われた考え方、哲学を発見するためにもの。まして、外国旅行のためのツールや出世の道具ではない。=>なるほど。。。
     「俺はずっと、家族に恵まれていたんだな。一人暮らしで、この年になって初めてなんだ。俺は家族のために働いていると、ずっと思っていた。金銭的には確かにそうだが、それは自分のことをさぼるいいわけでしかなかったんだ。俺は自分のためのこと、趣味にせよ、教養にせよ、そういうのを面倒くさがって、ずっとやらなかったんだ。いつの間にか、家族は、誰一人俺のことを必要としなくなっていた。肉体的にも、精神的にも、経済的にもね。そのときになって、初めてきがついたってわけじゃない。うすうすは、わかっていたんだ。俺はとうとう一人になってしまった。今になって、俺がしたいことと言ったら、ほとんど何もないいんだ。」=>今の父を見ているよう。こうはなりたくない。結局、家族であっても人に依存していてはだめなんだ。

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末裔 (新潮文庫)の作品紹介

「鍵穴はどこにもなかった」。定年間際の公務員・富井省三は、突然家から閉め出されてしまう。妻に先立たれ、独立した息子・娘とも疎遠なオヤジは、やむなく町を彷徨するうち謎の占い師に出会う。不吉な予言、度重なる悪夢、しゃべる犬……やがて省三は、鎌倉の亡き伯父宅へ辿り着く。懐かしい遺品に溢れた空家は、彼の脳裏に在りし日の家族の記憶を蘇らせた。家族の系譜をめぐる長編。

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