精神科医が狂気をつくる: 臨床現場からの緊急警告 (新潮文庫 い 84-4)
- 新潮社 (2013年12月24日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101305745
作品紹介・あらすじ
「うつ病には○○の摂取が有効」「脳トレで認知症は治る」……精神疾患の治療と称してまかり通る妄説の数々。しかしそのまやかしが、取り返しのつかない重篤な患者を生み出す。食事療法は健康食品やサプリを売りつける方便だ。うつ病を「心のかぜ」と呼ぶのは製薬会社と医療行政の欺瞞だ。薬物やカウンセリングの罠から診断基準の陥穽まで、精神医学の世界に蔓延する不実と虚偽を暴く。
感想・レビュー・書評
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食事療法、フロイトなどを大上段から斬りまくる爽快感のある論旨。ケースの紹介も交えながら説得力のある展開に頁を捲る手が止まらない...。ただ、残念なのは反論のデータの詳細が記載されていないこと。他の著作にはあるのかな...。他作品も読んでみたい。
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些細なことでもウソはウソかもしれないけれど、方便までも取り上げられたら医療は立ち行かなくなるだろう。逆にその方便に便乗する者が後を絶たないのは、何とも嘆かわしい。
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タイトルはちょっと衝撃的だけど中身は精神医療を軸にした医療に関する問題提議。誠実な立場から、代替医療の危うさ確信犯といえる悪質な医療的行為さして害悪はないけれど根拠薄弱な話医療の裾野を広げたがる業界の思惑と結果生み出される、実質病人ではない病人。ひとことでいうと「難しい」大切な人をあきらめないことはできても医者として多くの人をあきらめることなく救うというのは大変だと思った。
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S.シンの「代替医療解剖」やロルフ・デーゲンの「フロイトの先生のウソ」が著作の動機だったのかと疑うほど、虚偽、不正への憤懣と読者への注意喚起が延々と続く。しかし、シンと違って現役の臨床医なのだ。表現が医療への反省にはなっても批判は後味が悪い。前作「心に狂いが生じるとき」が良かっただけに期待外れ。器質性障害だけでない診断を要する精神科ほど、医師により診断がまちまちになり易い分野はないだろう。それだけにすがる思いで受診する患者が期待外れの結果になることも多いだろうし、病状を悪化させうることを思うと誤診は大問題。本書でも触れていた評点法による標準化は必要だろう。14.5.6
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最近、精神科医療をバッシングする本が静かなブームのようで、新聞の書籍広告欄でも色々と載っています。
本書もそれに類するタイトルのため、それと同類の本かと思いました。
しかし著者は精神科医で、今までもオーソドックスな精神医学の啓蒙書を書かれています。
一体どんな心境の変化が起こったのだろうと読んでみたら、本のタイトルからイメージされるのと内容が一致していないような。
それでも1,2,3,8章は、精神科医療の問題点を指摘しています。
批判されているのはあくまでもコメディカルの人々や専門外のトンデモ医師で、著者を含む正当な精神科医は正しいという立場で書かれています。
他の章(4,5,6,7章)は、今まで著者が新潮文庫で書かれていた一連の症例紹介シリーズものでしょうか。
9ページにわたるあとがきも、精神科に限らず現代日本の医療制度の問題点を色々と指摘されて、密度が高く読み応えあります。
それにしてもこの本のタイトルは内容に合っていません。精神科医療バッシング本ブームに乗ってそれらしきタイトルをつけたら売れるだろう、ということなんでしょうか?
読書メーターで、そういった本を好んで読む人に間違って読ませるための戦略的なネーミング、と書いている方がいて、なるほどと思いました。
しかし私を含め一般の人は本のタイトルを情報として受け取りますが、読むのはごく一部です。
「精神科医が狂気をつくる」なんていうタイトルが独り歩きしていくのは、やはりまずいことではないでしょうか?
あとがきで、「サイエントロジー」という新興宗教について触れられています。
この宗教は、精神医学と精神科の薬物療法を否定しているといいます。
出版不況の折り、ネトウヨ系(愛国ポルノ)と並んで宗教系の本は、安易に確実に部数が確保できます。
最近の精神医学バッシング本も、宗教が絡んでいるとすれば怖いですね。
理性と良識ある我々は、カルト宗教やカルト愛国に惑わされない毅然とした姿勢が必要でしょう。
「2ちゃんねる脳が狂気をつくる」
だから本書も、内容に見合ったタイトルで正々堂々と訴えて欲しかったですね。
http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20140303/p1 -
精神医療に対する包括的な課題提起の書。
代替医療の不確実さ、医療産業の狙い、など気づきが多い新鮮な本であった。