東京島 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (372ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101306360

感想・レビュー・書評

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  • 東京島は決して社会の縮図ではない。
    そんな小さな世界の中で生きていくために必要なのは狂うことなのか、支配することなのか、従属することなのか。
    夫の隆が生き残るだろうと言った、清子とワタナベが実際に外に出てこの小さな社会から抜けることの意味は何だろう。

  • 無人島に持っていく一冊は何か?という質問の気楽さなんてぶっ飛ぶ、無人島に漂着してしまった31人の男(若者たち)と1人の女(中年)の物語。ファンタジーとして捉えるにはきつすぎるおもしろさ。

     このちいさな島で起こることは、どれもこれも身近な事実のようで人間描写がおもしろい。極限状態状態をどう乗り切るか、働く人、働かない人、精神的に落ち込む人、高揚する人、格差あり、人種相違あり、あいかわらずの筆力ではある。

     特に若者と中年の女性のとりあわせは、現代社会の比喩としてなるほどと思わせられるうまい配置。

     でも、ファンとしては数々ある作品の中どころというのが一気読み後の印象。ああ、贅沢~。

  • 人間のドロドロが見られる。生死の生々しさも。読み終わった後も情景が思い浮かぶくらい強い印象を残した作品。無人島を題材にした番組いくつかあるけど、あんなお気楽じゃない。かなり黒い部分もあるので、ホラーとは別の怖さを味わいたいときに読むのがおすすめ。

  •  下品で卑猥なLOSTって感じだった。
     LOSTは途中で飽きちゃったけど、この本は、一冊の中でテンポよくいろんなことが起こるから(人が死んだり、ワタナベがこっそりと脱島したり、清子が妊娠したり)、退屈しないで読み終わった。
     あと、キャラクターのインパクトが強い。一番はマンタかな。二重人格の彼がしゃべっているときに、それを見てる人たちがあからさまに不気味に感じてる様の描き方が印象的。現実の世界では、そういう人を見てもあからさまな態度を取っちゃいけないって道徳的、倫理的になんとなく思ってるけど、そういうのが全部取っ払われた世界で清子たちは生きてるんだなぁ、って気付かせる。そういうとこだけ見れば、本能のままで生きるってのは楽そう。
     桐野夏生の文章は、なんか、「遠慮がない」って感じ。中村文則ほどじゃないけど、きれいな文章を描こうとかそういう気遣いがなくて、人間の汚さとか、自分勝手さとかを遠慮なく勢いよく赤裸々に描くから、えげつなくて、ヒヤヒヤする。この本の中に、誰か、もっと感情移入できるキャラクターがいたら、もっとヒヤヒヤしただろうし、不快な気分になったかも。清子と自分は重ならないし、他にも「わかる!」っていうキャラクターは特にいなくて、自分とは関係ない物語、って感じ。でもだからこそこのえげつなさもエンターテインメントとして読めたのかも。

  • 最初はあまり気乗りがしなかったが読み始めると面白かった。無人島で30人。女性は1人。そんな中で繰り広げられる人間模様。双子の男の子、チータは人質でみんなは清子が助けに来てくれると思ってるけど清子はチータを見捨ててる。しかもこれ「アナタハン」とかいう実話らしい!

  • 2019.10.09

    久々にがっつりした小説を読了。
    読みたかったからよかったが、まぁなんというか
    「人間」と言う生物の弱さと、生きるための執着
    それから、ファンタジー感が強いのもあるけれど
    サバイバルコメディーとして読みました。

    無人島にたどり着くまでのことがあらすじ程度なのが良かった。生き物として、そして人として
    島と文明とあいまいな世界での生活。
    大勢の男の中の1人の女というのがこの小説の目玉だというが
    清子ひとりでいるからもっとこう、乱交ばかりかと思った(書かれていないだけでワタナベ以外とは交わり放題だったらしいが)
    快楽と本能の交わりの違いが終盤にあったように「文明」がいかに、人を1たらしめているかがよくわかる。
    結局、チキチータは引き裂かれ島の正体がわからない限り
    2人が出会う事はないだろう…
    コメディー者として読んだが面白かったです。

  • 想像してた話とはだいぶ違ったけど、読みやすくてスラスラと読めた。無人島のサバイバル生活がなんだかロビンソンクルーソを読んでるみたいで面白かった。
    無人島のような閉鎖された空間で人がどんどん狂っていってしまったり自分本位になってしまったり、色んな人間の怖さが感じられた。

  • 残念!期待外れ!

    木村多江さんが主演の映画にもなった物語だったので、映画は見ていませんが、期待大で読みました。
    谷崎潤一郎賞受賞作ということですが、自分には合いませんでした(笑)

    ストーリとしては、暴風雨で無人島に流れ着いた清子とその夫の隆。
    同じ無人島に、その後、日本の若者、さらに謎の中国人も流れ着きます。
    トウキョウとなずけた無人島の中で、オダイバやトーカイムラ、コウキョ、ブクロ、ジュク、シブヤ、キタセンジュ、チバ、ホンコンなど、自分たちの住むエリアに名前を付けてサバイバルする男31人。たった一人の女の清子と31人の男たちのキリノ版創世記といった様相です。

    その設定はいいんですけど、そこで語られる内容がイマイチ。
    ぶっちゃけ、男たちが清子を奪い合って、謀略・策略が展開される物語と思っていたのですが、全く違った。
    それぞれの生き方、卑屈な思いが語られていきます。
    徐々に明かされていく、若者達の生活、キャラ、その過去などなど。
    リアル感もあまりなく、話が盛り上がるわけでもありません。

    とはいえ、中国人達ホンコンと日本の若者達との生き方はある意味、今の日本の縮図ともとれます。

    ということで、正直イマイチな展開でした。
    ラストも、ふーんって感じでした。

    本書で描かれている清子のイメージと木村多江さんのイメージも合わないのですが、映画はどんな描かれ方をしているんだろ?

    いずれにしても、期待とは違って残念な話でした

  • 漂流モノは好きなジャンルです。

    【主人公について】主人公の清子には嫌悪感しかありません。自分が唯一の島の女という優越感から島に君臨しているというか・・・最後の最後まで嫌な女でした。

    【ストーリー】無人島に最初、清子夫婦が漂着します。次に日本のフリーター達、そして中国人達。村に漂着した人達が其々コミュニティを作り生活し何時か誰かが助けてくれるのではと只々待ち続ける・・・何人かが狂ったり問題を起こしたりという話

    【見所】村八分のワタナベの思考と行動、中国人のバイタリティ、清子の変わり身


    私がこの島に流れ着いたら中国人のグループと行動を共にしたい。


    木村タエや窪塚洋介が出演している映画があります。昔見た映画のイメージが最後まで抜けませんでした。

  • 一気に読み終わった。
    南国の無人島にはフルーツが豊富だったり、
    生き延びる手段はあるものの、
    脱出する望みが無い。
    助けにくる気配がない中で、それぞれが
    ルールを決めて社会を作ろうとしていく。
    女が1人だけではバランスもとれず、
    社会は成り立たないのだ。

    桐野作品の女は、
    世の中を俯瞰的に見ることはできないし、
    計画性もないが、
    「生」に対しての執着が強く、
    魅力的に描かれている。

    この『東京島』も
    最後まで、清子がどうなったのかが
    気がかりでしたが、
    最終章の島側と清子側の両方が
    明るい展望で描かれていて
    読後感はすっきりして良かった。

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著者プロフィール

1951年金沢市生まれ。1993年『顔に降りかかる雨』で「江戸川乱歩賞」、98年『OUT』で「日本推理作家協会賞」、99年『柔らかな頬』で「直木賞」、03年『グロテスク』で「泉鏡花文学賞」、04年『残虐記』で「柴田錬三郎賞」、05年『魂萌え!』で「婦人公論文芸賞」、08年『東京島』で「谷崎潤一郎賞」、09年『女神記』で「紫式部文学賞」、10年・11年『ナニカアル』で、「島清恋愛文学賞」「読売文学賞」をW受賞する。15年「紫綬褒章」を受章、21年「早稲田大学坪内逍遥大賞」を受賞。23年『燕は戻ってこない』で、「毎日芸術賞」「吉川英治文学賞」の2賞を受賞する。日本ペンクラブ会長を務める。

桐野夏生の作品

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