寝ても覚めても本の虫 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 98
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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101306513

作品紹介・あらすじ

大好きな作家の新刊を開く、この喜び!本のためなら女房の小言も我慢、我慢。眺めてうっとり、触ってにんまり。ヒーローの怒りは我が怒り、ヒロインの涙は我が溜め息。出会った傑作は数知れず。運命の作家S・ツヴァイク、目下の"最高"N・デミル、続編が待ち遠しいT・ハリスに、永遠の恋人M・H・クラーク…。ご存じ読書の達人、児玉さんの「海外面白本追求」の日々を一気に公開。

感想・レビュー・書評

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  • 児玉さんを良くも悪くも唸らせてきた本の数々。海外文学を中心に、書評とエッセイが軽快に綴られています。
    2001年刊行の児玉さんの処女作です。テレビで拝見していたご本人の語り口より活字だと少し鋭さを感じるものの、全体を通してなんとチャーミングなお方か…!ものすごい量の本が登場するのでブックリストとしてはもちろん、間々に挟まれる話題もユニークです。
    本の虫に相応しくマニアックなエピソードも多く、置いてけぼりを食らう瞬間もあるのですがご愛敬。あらすじ曰く、本好きが災いして家や家庭(!)を壊しかねない事態まで陥っているので本好きもある程度まで進むと考えものです。
    以下、印象的なエピソードの感想を簡単に。

    「僕にとっての稀覯本」
    姉を負かそうとこっそり姉の部屋に潜り込み偶然手にした本は、少年を夢中にさせた。30年を経た後日談もとても素敵です。

    「クリスティを読んでいない」
    アガサ・クリスティを今まで一冊も読まないその理由とは。周りからすれば呆れる理由かもしれないけど、本人にとっては譲れない誓い。モノと思い出は深く繋がっていますからね…。

    「欠陥図書館」
    パリの建造物が抱えていたハリボテの華やかさとその裏で挙がっていた批判の声。

    「“夢の国”の裏の顔」
    美しい、平和という陽のイメージを背負ったスイス。しかし利害関係をもって接すると…?
    結局刊行から20年近く経っても日本人のスイス信仰はさほど変わっていないような。一度定着した印象ってなかなか変わらないもの。
    (関連memo:ホロコースト、スイス銀行)

    「名画の運命」
    ナチスに没収された名作の数々。関連本を読もう。

    「太宰治とゲイシャ物語」
    芸者ニッタ・サユリのエピソードがあまりにも面白く、翻訳本を探そうとAmazonで検索をかけたところ『さゆり』として刊行されていたうえに一時話題にもなったチャン・ツィー主演の映画『SAYURI』とイコールだったなんて…!(映画は昔DVDで観ました。懐かしい…)

    「淀川長治さんの一言」
    日曜洋画劇場をブラウン管テレビの前でかじり付いて観ることのできた世代としては、淀川さんのお名前を見るだけでわくわくしてしまう。児玉さんのもとへ寄せられた淀川さんからのクレーム。そこには映画を仕事として愛したご本人の真っすぐな姿勢が感じられます。

  • アガサ・クリスティー『杉の柩』を読んだが
    まあ、いつも通り達者、なにほどか言うこともなし
    クリスティーは文庫本で約86冊あるが、そのうちの54冊目だということぐらいかな
    (全作品を読破したいということをやっているので)

    ところであのクイズ番組で有名な、しかも
    超読書家でも有名になって、TVで読書案内、文章も、ものなさっていらした
    亡児玉清さんはクリスティーを読まず嫌いだったそう、、、、

    ふぇ~~~!とびっくり

    そのわけは

    大学時代の大嫌いな先輩がクリスティーを大変にあがめていたらしい
    おせっかいにも、違うものを愛読していた彼を小ばかにしたものだ
    そのことに反発して「読むものか!」と思ったのである
    そして一冊も読まずに、半世紀もたってしまったとのこと

    「果たして読まずに死ぬのか」
    とこのエッセイに記している

    そうだったんだろうか??

    わたしは違う、読まず嫌いはしたくない!
    しかし身体は一つ
    読みたくても、読まずに死んでしまう本の数万冊のことを思うと
    (世の中に日本語になっているものだけでもこんな数ではないだろうが)

    死んでも死に切れないよ

  • 分類としては書評本になるのだろうか。
    評論というよりは、お勧めの本を紹介しているブックガイド、という方がしっくりくる。
    紹介されているのは海外の作家が大半を占めていて
    自分の読書傾向とは少々方向性が違うのだが
    そこに挟まれているエピソード、書籍や作家に対する愛情というか執着心というものに
    いちいち共感しながら読み進めた。
    クリスティを読まない話、蔵書のことで奥様と喧嘩したエピソードなど
    本のことになるとあのダンディな児玉さんがこんなにも少年ぽくなってしまうのか、
    と意外に可愛らしい部分が見えたのも楽しかった。

    読み手の興味をそそる掴み(というかマクラ)、
    内容を紹介するときにどこまでネタバレにするかという匙加減が絶妙。
    海外モノは訳者との相性もあるのであまり手を出さないのだが
    児玉さんが本書で紹介していた海外ミステリをいくつか読んでみたくなった。
    ホントは原書で読めるといいんだろうけどなぁ…(´・ω・`)

    最近思うのは、役者さんには文章のお上手な方が多い、ということ。
    文体がどうこうではなく、エピソードを読ませる力がある文章を書かれる。
    児玉さんもそうだし、先日読んだ六角精児さん、鈴木砂羽さん、
    CREAだったかな、どこかの女性誌でエッセイを連載されてた
    堺雅人さんの文章も面白かった。
    何かを演じることと文章を書くことには共通項があるのだろうか。

  • 2011年に亡くなった「アタックチャンス!」の名セリフで有名だったダンディな博識タレントで「週刊ブックレビュー」では趣味と実益を兼ねた司会振りが素敵でした。
    本書で紹介されるのは、ミステリー小説がメインですが、登場人物名も含めての細かな記述が可能なのはおそらく読後メモをとっていたとものだと思われます。となると、是非その読後メモも出版化して欲しいものです。
    そして、海外ミステリー小説の日本語訳が待てなく原書で読み始めた(筆者は学習院大学ドイツ文学科卒)というのも、素晴らしい。とはいえ、本書で引用されている原文(英語)のどこがそれほど魅力的だったのかはよくわかりませんでした。
    本好きの人の本棚を覗けるドキドキ感を味わいたい人にはおすすめです。

  • 児玉さんの本に対する愛情がもの凄い伝わってきた。
    レビューの質は逸品で、そんな本の感想を書くのは失礼だが、敢えて書かせていただく。
    これを読めば、一層本に対する気持ちが熱くなると思う。
    挙がっている本が本当に面白そうなことったらない‼読ませるレビューってこういうのを言うのか…と痛感する。いや、本当に面白そうな本ばっか。(早く読みたい!)
    SF、推理小説、ノンフィクション、刑事系が多いので、そういう話が読みたい人には良本だと思う。
    本を何の気兼ねなく買えるようになりたいと思うのは、児玉さんも同じだったんですね。
    しかし、海外小説を原本で読んでしまう根性には感服する。英語力が皆無な自分には夢のまた夢…。

    本好きって映画も結構観てる確率が高いような気がする。

  • 児玉清さん、読書家だとは聞いたことがありましたが本当に色々読んでますね……。
    洋書の話が多いので、なかなか理解できないところも多かったのですが、いつか私も読んでみたい。
    これもまた、”読み手側の知識が足りない為に楽しみづらい”本だと思うのでちょっと悔しいです。海外作家・海外俳優の知識がもっと必要ですね……。
    いつか再読したときに、もっと理解が出来るようになっていれば嬉しいです。

  • 今年の5月に亡くなられた児玉清さんの、読書エッセイ。
    本を読むことが本当に好きだった方なのだな、というのがよく分かるし、紹介されている本は実際に読みたくなるような紹介の仕方がされている。

  •  児玉清さんの遺稿集『すべては今日から』を読んだ後、もう少し児玉さんの話を聞いていたいなぁと思って、本書を手に取りました。こちらは児玉さん最初の著書の文庫です。

     タイトルからもわかるとおり、本への愛が炸裂しております。それもかなり濃密で、読みごたえがありました。児玉さんの大好きな作品、大好きな作家のことが、具体的にこれでもかというほど語られています。ディック・フランシス、ジョン・グリシャム、マイクル・クライトン、ネルソン・デミル、トム・クランシー、ケン・フォレット、ジェフリー・ディーヴァー、スティーヴン・ハンター、パトリシア・コーンウェル、などなど。

     少しだけ内容が『すべては今日から』とかぶる部分もありますが、本の話は何度読んでもいいものです。〈本は何物にも替えがたい貴重な宝であり、本は僕にとって命に次いで大事なもの〉とおっしゃる児玉さんの情熱と至福がこちらにまで移ってきて、読んでいる間ずっと楽しく幸せな気分でした。

     とくに興味深かったのは、児玉さんがなぜアガサ・クリスティを読まないのか、ということと、映画と原作についての話。結局児玉さんはクリスティを一冊も読まなかったのかどうか、すごく気になります。それから、小説を読んでその映画を見ると失望することがほとんどというところでは激しく同意。『ジュラシック・パーク』などの原作者マイクル・クライトン自身も〈最初から諦めている〉と言うほどだから、ここはやはり児玉さんも書いているとおり、映画は原作とは別物だと思っていたほうが良さそうですね。

     さて、児玉さんのおかげで、私も猛烈に本を読みたくなっております。火がつきました。すごい勢いで燃えております。この命ある限り、読み続けよう。児玉さんのように、面白い本を読み尽くす!

    〈読むことも大好きだが、本そのものが大好きなのだ。だから本を買ったときの喜びは格別なものがあり、特に欲しかった本を手に入れたときなどは何度も手に取っては、矯めつ眇めつ手触りを愉しむことになる〉

  • 本への想いと愛情がよく伝わってくる。自分も、妻との戦いを30年続けているし、何より、寝転んで読むスタイルが同じで嬉しい。

    本書で紹介されているのは海外のスリラー、サスペンスが中心だが、この分野、一時、内藤陳さんのお勧めに夢中になり、かなり読んだ事がある。

    ここ暫く、特に翻訳物はあまり読んでないが、また読んでみたい気持ちがふつふつと湧いてきた。

    たしか、数年前にお亡くなりになったとおもうが、紹介されている本を読む事でお弔いしたい。

  • 児玉清さんが英語原書の本を読むほど本好きと知らなかった。好きな作家の本が翻訳されなくなったことを機に読み始めたそうだ。英語力がある訳じゃないと児玉さんは自分で言っている。読み進むうちに解ってくるとのこと。後半にはミステリー女流作家の話題に入るが、どの作家さんも美人らしい。ハードカバーに載る写真からも惹きつけられて手に取るらしい。それにしても、アガサ・クリスティは読んでいないとあるからビックリだ。亡き児玉清さん、生前のブックレビュー番組を見てみたかった。

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