幻の光 (新潮文庫)

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著者 : 宮本輝
  • 新潮社 (1983年7月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (171ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101307015

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幻の光 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 表紙の裸婦絵は高山辰雄でとても印象深い。
    表題作「幻の光」ほか短編3作を所収で、どれもしっとりとした雰囲気の中で人間の情念を丹念に描いた作品になっている。
    「幻の光」は前夫の自殺した理由をわからず空虚にさまよう心を抱えながら再婚し、奥能登曾々木で暮らす主人公が、前夫に語りかけることで自らと対話するというスタイルをとる。兵庫尼崎での貧乏で暗い少女時代から、前夫との生活の中での会話、曾々木での安定した生活という人生の流れの中で、様々なエピソードが繊細な描写で深い余韻を残してくれる。すうっと消えていった祖母の話や大阪駅で見送ってくれた知り合いのおばちゃん、曾々木で蟹を獲りに行って遭難したと思われたおばちゃんの話が特に印象深い。ともすれば生死のはざまで生きてきた主人公が、冬の日本海の荒波の中で前夫の死を見つめ直し、現在の夫の前妻の影に嫉妬できるまでに再生できたところに安堵した。死へと向かう光が生と結びついている描写が妙に納得感があった。
    「夜桜」は、若い頃にゆとりがなかったばかりに離婚したことを後悔し、息子を事故で喪ったばかりの主人公の自宅に、奇妙なお願いに登場した見ず知らずの青年との、ある1晩の物語。ややもすれば長く住んでいると見落としがちな光景に、ちょっとの幸福感を共有できた心温まる物語となっている。
    「こうもり」は、少年時代の出来事と不倫プチ旅行を行っている現在とをパラレルに行き来しながら何ともいえない主人公のいたたまれなさを表した作品。少年時代の友人?との冒険的行動が印象深い。
    「寝台車」は大阪から東京に出張することになった主人公が、現在の商談経緯と少年時代の心に突き刺さる思い出を振り返りながら、情感に浸る作品。寝台車というロートルな情景で思い返される記憶の湧き起こりが印象的な物語になっている。
    どの作品も、喪失感を抱える主人公たちが「プチ旅行」「現在と過去」などを背景に、心の暗部を見つめながらも明日に向かって生きる、人間の生死のはざまに漂う思いを優しく包み込んでくれるような感じがする。

  • 松山市図書館
    到底かきえない文章の美味さに
    舌をまく

  • 短編集。
    どの作品も「喪失」というものが背景に感じられます。
    明るい話ではないけれど、読んだ後に、柔らかな余韻が残るような一冊。

  • 日常に覆われた悲しみ、命拾いした人のそれから死ぬまでの数十年というのは何か。

  • 宮本輝さんの小説、初めて読んだ。
    人の精神にぞっとする場面もいくつかあったけど、それも含めて人間の心は美しいと思わせる不思議な物語であった。短編小説だから読みやすいし、作者の小説をこれからも愛読していきたい。2016.11.23

  • 艶と哀愁が漂ってい情景が鮮やかに見える。暗いストーリーに反して登場人物が煌めいていて、心が震えた。「幻の光」と「夜桜」がお気に入り。

  • 何の理由もわからないまま、愛する人を自殺という形で失った女の不安定な心情。
    喪失感や虚無感、自責の念・・・
    短編を書ける作家こそ一流作家だと思う、そんな短編集。

  • 宮本輝の本は、安心して読むことができるので好き。

  • うまい。個人的に『こうもり』が特に気に入った。表題作も緻密に書かれている。過去を思い出しながら生きて行くってことを考えさせられた。

  • 短編集。表題作は映画になったらしい。
    子連れで再婚し特に生活に不足はないが、不意に鉄道自殺で亡くした前夫のことや、出奔して生死不明の祖母のことが想いだされる中年女の話「幻の光」。
    息子を亡くし、離婚した夫と再会した豪邸に住む女が、得体の知れない若者に一夜の宿を提供する「夜桜」など、過去に親しい人を喪失した体験を現代から照射する、しかも事件とは関わりにない第三者の介在によって、というかたちがとられている。

    この著者の女性は男性に都合がいいと言えばそれまでなのだが、たくましく勤勉な人が多く好感がもてる。情緒を追うたくみな文体もよい。

    ただし再読したくはない。

  • 久々の宮本輝。
    やはり心理描写がとても巧み。
    数編ある中で、表題作が一番胸に残った。
    幸も不幸も愛も恨みもない交ぜのままに作品に出来るというのは非常に力の要ることだと思う。
    心の底に溜まった水を乱されるような小説だった。
    静かに眠らせておきたかったもの、けれどそれを揺さぶられるのは不快ではない。
    逆に薄らな快感さえあるのだ。

  • 私にとって、宮本輝さんの作品は全て星5つです。特に、関西を舞台にした作品は、好きです。柔らかい関西弁、綺麗な文章。この短篇集は、いずれも死というものについて書かれていますが、読み終わると何か救いのようなものを感じることが出来ました。

  • なんか、若いなあという感じがした…。

  • 静かな雰囲気の本。

  • 能登の海はこういう感じだった覚えがあります。

  • 錦繍を星5つにしたので、しかたなく星4つ。宮本輝の小説の結末の深さは絶品である。

  • どの話も主人公の過去に起こった身近な人の死が強く話に影響を与えて、全般的に暗い印象でした。
    しかし淡々と主人公が語るうちに上手く言えないのだけれど…何と言うかこの先には明かりがある、と思わせられるようになる不思議な話が殆どで少し救われたような気持ちになりました。

  • 著者の初期の作品集。先生の短編は初めてで、しかも芥川賞受賞者の短編作品はとっつきにくかったのですが、結構スラスラ読めました。

  • 短編集は、あまり読まないが、
    気楽に読んで、また新しい発見をしたようにも思える。

    あんたが突然線路のうえを歩いているうちに、
    列車にひかれてしまった。
    自殺だった。
    あんたがなぜ死んだのかよくわからない。
    まだ子供も小さいのに。
    そのことを引きずって生きてきた。
    奥能登の曽々木というところに再婚にいった。
    海の描写がうまくできている。

    (再読)
    幻の光

    奥能登の海で 海を見ながら
    自殺した 前夫のことを思い出している。
    25歳という 若さで 自死を選んだ夫。
    なぜ 死んだのだろう という問いかけが 巻き起こってくる。
    海は きらきらと輝いているときもあり、
    うねりのある くらい海にも変身する。
    独り言のような物語。

    自分の中の心象風景が 宮本輝のタッチで
    うまく描き出される。

    夜桜

    高級住宅街の一つの家には 大きな桜がさいている。
    そこから、神戸の海も見ることが出来る。
    別れて住んでいる 綾子は 子供がいたが
    交通事故でなくしてしまった。
    そんな彼女のもとに 青年が来て。

    こうもり

    高校時代の ランドウという男の思い出。
    洋子と京都の詩仙堂にいく。
    脈絡のない物語。

    寝台車

    一緒に乗った老人が すすり泣いていた。
    そこから ぷかりと浮かぶ カツノリ君と
    おじいさんの医者を思い出した。

  • 関西に所縁のある四編。土地の知識があるのでより満喫できた気がする。
    ・『幻の光』何て言ったらいいものか。なぜそんな言葉を言ったのかわからない、なぜそんな行動をしたのかわからない、という主人公ゆみ子の支離滅裂がわかりすぎて辛い。
    ・『夜桜』宮本輝の小説のよさって、人が生きているところなんだろうなと思った。こういう話を作ろうとか、こういう主張をしようとかではなく、登場人物が息をしたことによって物語が生まれている。
    ・『こうもり』こうもりの記憶。こうもりのようだった頃の個人的な記憶と重なった。
    ・『寝台車』他者のなかを通り抜ける心地よさ。これは他の話にも共通するけど、物語のなかを通り抜ける気持ちよさがある。入るだけじゃなくて、ちゃんと抜けてくる。だから前を向ける。光になる。

  • 生きていることと死ぬこと、幸せと不幸せ。現在と過去。
    相反するものを、巧く微妙に織り込みながら書かれていて、全体的には何かすごく哀しげやのに、その中にもほのかな明るさを感じる。

    一緒に収録されている夜桜もオススメ。
    最初から真ん中くらいまでは、何てことないけど最後の数文の巧さは、さすが宮本輝。
    満開の桜を上から見下ろす若い男女と、下からポロポロ散って行く様を眺める主人公の対比がまさに人生を描写しているよう。
    女に生まれてよかったとしみじみします。

  • 表題作は、自殺した夫に対して淡々と話しつづける女の話し。幼いころに突然姿を消した祖母。線路の上で自殺をした夫。人間の心の奥底にあるものを蝕むものとはいったい何なのだろうか。

  • 再読。やっぱりすごい作品。読んだ時の自分の状況によって発見が何度もある作品。

    ブログにレビューを書きました。

    http://rucca-lusikka.com/blog/archives/3857

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幻の光 (新潮文庫)の作品紹介

人は精がのうなると、死にとうなるもんじゃけ-祖母が、そして次に前夫が何故か突然、生への執着を捨てて闇の国へと去っていった悲しい記憶を胸奥に秘めたゆみ子。奥能登の板前の後妻として平穏な日々を過す成熟した女の情念の妖しさと、幸せと不幸せの狭間を生きてゆかねばならぬ人間の危うさとを描いた表題作のほか3編を収録。芥川賞受賞作「螢川」の著者会心の作品集。

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