優駿(上) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101307060

作品紹介・あらすじ

生れる仔馬が牡馬でありますように。風の申し子のように速く、嵐みたいに烈しく、名馬の天命をたずさえて生れますように…。若者の祈りに応えて、北海道の小さな牧場に、1頭のサラブレッドが誕生した。オラシオン(祈り)と名づけられた仔馬は、緑と光の原野のなかで育ち、順調に競走馬への道を歩みはじめるが、それと共に、登場人物ひとりひとりの宿命的な劇が、幕を開けた-。吉川英治文学賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 北海道の静内、渡海千造の営む小さな牧場のトカイファーム。
    そこへ息子の渡海博正と同い年で大学生の和具久美子が大阪から和具工業の社長であり、父の和具平八郎とともに、今、生まれようとする仔馬を見にやってきます。

    生まれてくる仔馬はウラジミールとハナカゲの子のサラブレッドで、のちに和具の秘書の多田により「オラシオン」スペイン語で祈りと名付けられます。

    仔馬は平八郎が三千万円で買いとり、平八郎は久美子に隠し子がいるという秘密を母に内緒にするかわりに譲ります。

    久美子は父の隠し子の誠が同じ血液型の血縁である父からの腎臓を提供され手術をしないと生きられない病気であると知り、誠の入院先の病院に逢いに行きます。

    そして久美子はオラシオンを誠の生きがいになればと思い誠に「譲る」と言います。

    平八郎もまた妻には秘密にしていますが、身辺整理を始めます。

    博正が久美子に見惚れていると姉に「あの娘はお前の手に負えるような娘じゃないよ」と言われたのは確かにと思いました。
    行動力があって世慣れていて、口が達者。でも愛すべきキャラクターだと思います。

    他にも子どものいない和具の秘書の多田。
    騎手の増谷、奈良などの登場人物がいます。

    久美子と誠の義姉弟がどうなるのか。
    オラシオンのサラブレッドとしてこれからの活躍ぶりを期待して下巻へ続く。

  • 「共感」に過剰な価値を置かれる雰囲気がある昨今。
    「そうそう、私も!」「誰にでもそういうところはあるよね」

    異質なもの、未知の世界にも自分の心を揺さぶる確かなものがあると宮本さんの描く競走馬を巡る本作から感じる。

    誰もが抱く罪悪感、劣等感、競争心といかに向き合うか。
    手に負えない状況、自分ではいかんともしがたいなりゆき、沸き起こる、抗えない感情に面して、人はどう対処するのか。

    登場人物たちの所業を決して裁かず、描き過ぎず、人が動き、物語が展開していく。
    作品にどっぷり浸る充足感がたまらない。
    後編へ。

  • 再読。
    何度も読んでる大好きな本。

    仔馬の誕生を軸に描かれる登場人物に魅力されます。
    第一章の渡海博正の純粋さ、第五章の奈良騎手の部分は下巻を早く読みたくなるようなテンポで良いです。

  • 『錦繍』では、宮本輝って女の心がよくわかる人だわって感動したものですが、『優駿』はけっこう男の物語です。それも、『青が散る』よりもだいぶん中年になった男の夢とロマンと欲望の物語(笑)27の女がのめり込めるような話ではなさそうですが、それでもどうしたことでしょう、ページをめくる手が止まりませんでした。

    登場人物のそれぞれの過去や現在の物語をとても丁寧に描写してくれるのが、宮本輝作品の大好きなところ。主人公の和具平八郎・久美子の親子のみならず、博正、多田、誠、奈良... と、チェスの盤上を躍る駒たちのように、登場人物たちを物語の中心に集めてくる手法がとても鮮やかでした。

    さて、舞台は整いました。続く下巻では、いよいよオラシオンと誠の2つの命が躍動していく(?)のだろうと思います。読むのがとても楽しみ。(Sept. 3, 2020 レビュー)

  • 昔映画で観たことのある作品。
    競馬のことをよく知らなかったり、主要人物の久美子に共感できなかったりと、読み始めはあまり進まなかった。
    しかし、後半からの秘書の多田の内面の描写や、騎手の奈良に起こった出来事のあたりからぐいぐい引き込まれた。
    一度は自分の犯したことから堕ちかけた奈良の今後の成長に期待。

  • 久美子は羨ましいといえば羨ましいけど、恐ろしいなあ
    登場人物のとことん自己中心的な人間臭さはもしかしたらこれまで読んだ宮本輝作品で一番かもしれない

  • 友人の薦め。ミラクルバード第3戦の描写は圧巻。北海道の牧場や競馬場の情景が目の前に出てくるようで面白く読めた。「ウマ娘。」で競馬を知った人にも読んで欲しいな。

  • これ読んで馬が好きになった。めちゃ面白い。


  • 1987年吉川英治文学賞受賞

    個人的宮本作品金字塔。
    人物の主観が章ごとに変わり2回転ほどする。
    どの章も生への執着が強く感じられとても良かった。

  • 面白くどんどん読めた。久々の宮本輝、やっぱりいい。騎手も大変な稼業だな。引き込まれて読んだ。勝ち負けの世界に身を置くのは厳しい。強くないと生きていけない。人間のイヤなところ、汚いところ、あぶり出されています。

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著者プロフィール

1947年兵庫生まれ。追手門学院大学文学部卒。「泥の河」で第13回太宰治賞を受賞し、デビュー。「蛍川」で第78回芥川龍之介賞、「優俊」で吉川英治文学賞を、歴代最年少で受賞する。以後「花の降る午後」「草原の椅子」など、数々の作品を執筆する傍ら、芥川賞の選考委員も務める。2000年には紫綬勲章を受章。

「2018年 『螢川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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