優駿(下) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (394ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101307077

作品紹介・あらすじ

母の肉は子の肉、子の骨は母の骨なり…。いのちの哀しさ尊さに突き当りながらも、虚無と喧噪のなかで人間の業から逃れられない男たち、女たち。だが、そういう彼らも、いつしかオラシオンの美しさ危うさに魅せられて一体化し、自らの愛と祈り、ついには運命そのものを賭けていった。やがて迎えるダービー決戦-。圧倒的な感動を呼ぶサラブレッド・ロマン。吉川英治文学賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 額に白い星印を捺された漆黒の仔馬、オラシオン、祈り。

    オラシオンの誕生、育成から宿命のダービー戦までの三年間。
    二分何十秒かで決まる勝負の世界。

    和具平八郎の私生児として15年間生きた誠は「お父さんの腎臓をください。お願いですから」と言いながら亡くなっていきました。
    平八郎は「俺は生涯、俺を許さん」と言うほかありませんでした。

    平八郎の秘書の多田は久美子と一線を越えようとして、手前で逃げられ、そして平八郎をも裏切ります。

    そして騎手仲間の寺尾を殺したと思い込んでいる騎手の奈良がオラシオンに乗ります。

    トカイファームの渡海千造は亡くなりますが、息子の博正と平八郎、久美子には共通の夢が生まれます。

    オラシオンがスタンドに姿を見せたときのスタンドからの喚声と拍手。
    オラシオン。何十年に一度の馬。
    博正と久美子の夢は叶うのか。

    最後のダービーの文章は、大変勢いがあり競技場の雰囲気が伝わってきて上手いです。
    圧倒されました。
    さすが!と思いました。

    吉川英治文学賞受賞作。

  • 改めて宮本輝さんの筆の巧みさにうっとり。日本語が美しく、心地よい。

    「頑張れば努力は報われる」、「夢はかなう」など、尤もらしい定説など一蹴してくれる。

    ゆったりと流れる時間のなかで、それぞれ業を背負った多様な登場人物が巡り合い、交錯し、互いの変容を引き起こす。

    勿論宮本さんの多くの作品のなかに必ず描かれる登場人物の病や不慮の事故による「死」も過剰な湿り気なしに呈され、周囲の人々の喪失感も巧みな筆で丁寧に掬い取られる。

    一頭の奇跡の競走馬オラシオンを巡る周囲の人々の造形がとても魅力的で上下巻あっという間の至福の読書時間。

    他人や周囲にどう承認されるかに大きな価値を置きがちな私たちの現代社会において、高潔さが過剰に求められることに息苦しさを禁じ得ない。

    35年前初出の本作において、世相は若干異なれど、宮本さんが描く人間の姿には、弱さ、狡さ、嫉妬、背信も、たおやかさ、大胆さ、誠実さ、思い切りの良さも同時に存在する。
    実に興味深く、どの登場人物にも心惹かれる。
    善人、悪人と人物を書き分けず、宮本さんは裁かないし、断じない。

    自分の力でコントロールできるものと、自分では制御できないもの(例えば、生まれ育ちや親や、家族の病気など)の配合も絶妙。

    競走馬について何の知識もなく頁を捲りながら、一頭の馬の血統や育ち、人との出会い、その馬の持つ運命についても心揺さぶられる。

  • 競馬を一度もやった事なかったけどやってみたくなる。久美子が牧場仕事やれるか?なんて野暮は言うまい^ ^

  • 物語は、牧場、騎手、馬主、社長、秘書と様々なシーンの主人公が、それぞれの想いを胸に精一杯生きた生き様が交錯する展開にグイグイ惹かれた。
    また話の流れも色々人が死んだり予想外の展開に驚きの連続で一気読みでした。

    余談だけど、若い頃、競馬に没頭して、北海道にわたり馬に乗っていた頃を思い出した。物語の時代は物心ついてないけれど、メチャメチャ勉強したので、色んなワードに心踊りました。単枠指定、阪神3歳S、数え年、ノーザンダンサー系が席巻とか、、、

    牧場に行きたくなってきたなぁー

  • 最後のダービー戦は燃えました!!!
    オラシオンがスタートボックスに入った時、奈良はいつもとようすが違うことを察知しましたが、読んでいる私まで、大丈夫か?ここでダメになってしまうのか?とハラハラしました。
    オラシオンの内側に入る癖がこんな重要な場面で出てくるなんてと思いましたが、最後は運よく優勝を勝ち取れてほっとしています。
    輝さん、こんなところに種をまきよって・・・!笑

    博正、久美子、平八郎、多田、奈良、そして読者の誰もが、このダービー戦ではオラシオンの勝利を心から<祈った>のではないでしょうか。
    奇跡としか言えないこのサラブレットが、千造という小さな産馬者の夢から生まれ、様々な人の手によって育てられていく。
    そして、オラシオンに関わる人々のヒューマンドラマが幾重も重なり合いながらダービー戦での勝利へと祈りが一つになった。

    輝さんは複数の人のドラマを一つの物語に描くのが上手ですが、優駿ではその構成が秀逸です。
    氏の作品の中でも、久々に興奮する小説に出会ったような気がします。

    唯一、トカイファームの今後や博正と久美子の将来について書かれていないのがの心残りです。
    ですが、きっと博正は平八郎と事業を発足し、手元に多田を置いて新しいスタートを切ったのではなかろうか、と勝手に想像しております。
    また、博正と久美子の関係も相変わらず縮まりそうにないが、いずれ時を経て共にトカイファームを大きな牧場にしていくのではないだろうかと、そんな空想を広げ、私の中で優駿を終わらせたいと思います。

  • 競馬ファンにとっては必読

  • 職場の先輩と競馬の話をしていた際に、おすすめされた一冊。レースの待ち時間にも競馬場でも読んでた。

    上下巻を通して1頭の馬に携わっていく複数の人たちのお話。

    読了後、競馬の残酷さとそれを上回る魅力を痛感し、
    競馬が趣味、と言っときながら自分は本当に無知で上辺でしか競馬のことを考えてられていないことを恥ずかしく思った。

    競馬、競馬と書いているが、
    取り巻く人間模様も面白く、目を背けたいが共感してしまう部分やなるほど、と思った部分が多くあったため、
    競馬をやってない人にも薦めたい。

  • 以前、ドラマを見たけれど、優駿を元に作った作品だったのだろうか❓想像通り面白かった。競馬界の裏側を少しだけ覗けた感じ。

  • 『風の向こうへ~』を読んだので、その関連で、名著とされるこちらの作品を読みました

    『風の向こうへ~』は、騎手と競走馬との直線的青春物語であるのに対し、『優駿』は、競走馬の成長に博正、平八郎、久美子他複数の人達の人生模様が絡んだ大人の濃厚な物語でした

    ダービーってすごいんですね(*^^*)

  • 弱肉強食という残酷で醜い世界
    それでも運命や自然という畏れと美しさは必ずある

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著者プロフィール

1947年兵庫生まれ。追手門学院大学文学部卒。「泥の河」で第13回太宰治賞を受賞し、デビュー。「蛍川」で第78回芥川龍之介賞、「優俊」で吉川英治文学賞を、歴代最年少で受賞する。以後「花の降る午後」「草原の椅子」など、数々の作品を執筆する傍ら、芥川賞の選考委員も務める。2000年には紫綬勲章を受章。

「2018年 『螢川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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